〈Seikyo Gift〉 ウイルスの侵入を防ぐ「鼻の力」〈健康PLUS〉
〈Seikyo Gift〉 ウイルスの侵入を防ぐ「鼻の力」〈健康PLUS〉
2026年1月31日
内科医 今井一彰さん
内科医 今井一彰さん
低温や乾燥でウイルスが浮遊しやすい時季は、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症に注意が必要です。感染症予防のポイントの一つが、鼻の機能を守ること。鼻呼吸のための「あいうべ体操」で有名な今井一彰さん(内科医、東洋医学会認定漢方専門医)に聞きました。(2025年12月13日付)
低温や乾燥でウイルスが浮遊しやすい時季は、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症に注意が必要です。感染症予防のポイントの一つが、鼻の機能を守ること。鼻呼吸のための「あいうべ体操」で有名な今井一彰さん(内科医、東洋医学会認定漢方専門医)に聞きました。(2025年12月13日付)
〈ポイント〉
〈ポイント〉
① 加温・加湿・清浄の機能
② 冷やさず、乾燥させない
③ 舌の位置や姿勢を意識
① 加温・加湿・清浄の機能
② 冷やさず、乾燥させない
③ 舌の位置や姿勢を意識
流行を防ぐカギ
流行を防ぐカギ
PIXTA
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冬は毎年のように、呼吸器系のウイルス感染症(インフルエンザなど)が流行します。
冬に増える主な感染経路は二つあります。一つ目が感染者のくしゃみや咳によって飛沫(飛び散る水滴)を直接、口や鼻から吸い込む「飛沫感染」。二つ目が空気中に浮遊したウイルスを口や鼻から吸い込む「空気感染」です。
低温・乾燥の冬の気候では、ウイルスが長時間にわたって浮遊してしまいます。これが、感染流行が起きる一因です。
一方、ウイルスを体内に吸い込む口と鼻にはそれぞれ、ウイルスから体を守る防御機能が備わっています。特に鼻には、多重な機能があります。ある小学校の児童を対象にした活動で、鼻呼吸のトレーニング(下の「あいうべ体操」)を継続的に実施した結果、その小学校では2年間でインフルエンザの罹患率が8分の1に低下した事実もあります。
しかし、この鼻の防御力も、低温・乾燥の環境にさらされ続けると低下します。
低温・乾燥から鼻を守るとともに、口ではなく鼻で呼吸をする――これが、冬のウイルス感染症を防ぐ大きなポイントです。
冬は毎年のように、呼吸器系のウイルス感染症(インフルエンザなど)が流行します。
冬に増える主な感染経路は二つあります。一つ目が感染者のくしゃみや咳によって飛沫(飛び散る水滴)を直接、口や鼻から吸い込む「飛沫感染」。二つ目が空気中に浮遊したウイルスを口や鼻から吸い込む「空気感染」です。
低温・乾燥の冬の気候では、ウイルスが長時間にわたって浮遊してしまいます。これが、感染流行が起きる一因です。
一方、ウイルスを体内に吸い込む口と鼻にはそれぞれ、ウイルスから体を守る防御機能が備わっています。特に鼻には、多重な機能があります。ある小学校の児童を対象にした活動で、鼻呼吸のトレーニング(下の「あいうべ体操」)を継続的に実施した結果、その小学校では2年間でインフルエンザの罹患率が8分の1に低下した事実もあります。
しかし、この鼻の防御力も、低温・乾燥の環境にさらされ続けると低下します。
低温・乾燥から鼻を守るとともに、口ではなく鼻で呼吸をする――これが、冬のウイルス感染症を防ぐ大きなポイントです。
【あいうべ体操】
【あいうべ体操】
❶「あー」と口を大きく開く
❶「あー」と口を大きく開く
❷「いー」と口を大きく横に引っ張る
❷「いー」と口を大きく横に引っ張る
❸「うー」と口を強く前に突き出す
❸「うー」と口を強く前に突き出す
❹「べー」と舌を突き出して下に伸ばす
❹「べー」と舌を突き出して下に伸ばす
❶~❹を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける
❶~❹を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける
空気をきれいにする
空気をきれいにする
汚い外気を浄化させ、きれいな空気を肺に送る鼻の機能とは具体的には何でしょうか。
まず、鼻の入り口に生える鼻毛が、花粉やホコリなど異物の侵入を防ぎます。
そして、鼻毛をすり抜けるPM2・5やウイルスなどを体外に追い出す役割を担っているのが鼻腔(鼻の穴から喉につながる空間)です。
粘膜の表面に広がる粘液(鼻水のもと)によって小さな粒子やウイルスを絡め取り、粘膜の表面に生える線毛の小刻みな動きで、咳やたん、鼻水とともにウイルスを体外に排出しています。唾液と一緒に飲み込み、胃液で分解することもあります。
また、鼻腔には低温・乾燥の外気を加温・加湿して喉や肺などの気管に送り届ける役割もあります。
鼻腔の粘膜には網の目状に血管が張り巡らされており、吸い込んだ空気を加温します。さらに、粘液の水分によって加湿しています。
鼻腔内が乾燥すると、ウイルスの除去に欠かせない線毛運動が弱まるため、この加温・加湿の機能は重要なのです。
そして、鼻腔とつながる八つの骨の空洞である副鼻腔も大切です。
副鼻腔は、鼻腔と同じく線毛運動が行われるとともに、高濃度な一酸化窒素を産生できるのが大きな特長です。一酸化窒素には、殺菌・抗ウイルス作用があります。さらに、線毛活動を活発化させたり、血流を増加させたりするなど、汚い空気を清浄にする鼻の機能にとって、重要な役割を果たしています。
しかし、ウイルスの侵入を防ぐ鼻の力も先述の通り、低温・乾燥の外気を吸い込み続けていると低下してしまいます。体温自体が低下することにも注意が必要です。
鼻の冷えや乾燥を軽減する方法を紹介します(下の「効果的な3つのケア」)。
汚い外気を浄化させ、きれいな空気を肺に送る鼻の機能とは具体的には何でしょうか。
まず、鼻の入り口に生える鼻毛が、花粉やホコリなど異物の侵入を防ぎます。
そして、鼻毛をすり抜けるPM2・5やウイルスなどを体外に追い出す役割を担っているのが鼻腔(鼻の穴から喉につながる空間)です。
粘膜の表面に広がる粘液(鼻水のもと)によって小さな粒子やウイルスを絡め取り、粘膜の表面に生える線毛の小刻みな動きで、咳やたん、鼻水とともにウイルスを体外に排出しています。唾液と一緒に飲み込み、胃液で分解することもあります。
また、鼻腔には低温・乾燥の外気を加温・加湿して喉や肺などの気管に送り届ける役割もあります。
鼻腔の粘膜には網の目状に血管が張り巡らされており、吸い込んだ空気を加温します。さらに、粘液の水分によって加湿しています。
鼻腔内が乾燥すると、ウイルスの除去に欠かせない線毛運動が弱まるため、この加温・加湿の機能は重要なのです。
そして、鼻腔とつながる八つの骨の空洞である副鼻腔も大切です。
副鼻腔は、鼻腔と同じく線毛運動が行われるとともに、高濃度な一酸化窒素を産生できるのが大きな特長です。一酸化窒素には、殺菌・抗ウイルス作用があります。さらに、線毛活動を活発化させたり、血流を増加させたりするなど、汚い空気を清浄にする鼻の機能にとって、重要な役割を果たしています。
しかし、ウイルスの侵入を防ぐ鼻の力も先述の通り、低温・乾燥の外気を吸い込み続けていると低下してしまいます。体温自体が低下することにも注意が必要です。
鼻の冷えや乾燥を軽減する方法を紹介します(下の「効果的な3つのケア」)。
【日常的な3つのケア】
【日常的な3つのケア】
①乾燥した空気を吸い続けない
①乾燥した空気を吸い続けない
・マスクの着用(鼻を保温・加湿できる)
・加湿器の活用(室内湿度40~60%を目安に)
・暖房の温風は直接顔に当てない
・マスクの着用(鼻を保温・加湿できる)
・加湿器の活用(室内湿度40~60%を目安に)
・暖房の温風は直接顔に当てない
②蒸気で鼻を直接温める
②蒸気で鼻を直接温める
・温かいタオルを鼻周りに数十秒当てる
・入浴時などに湯気をゆっくり吸う
・温かいタオルを鼻周りに数十秒当てる
・入浴時などに湯気をゆっくり吸う
③生理食塩水スプレーで潤す
③生理食塩水スプレーで潤す
・乾燥を感じた時に適宜、噴霧する
・鼻腔全体が潤うように吹き付けるとさらに良い
※生理食塩水は市販で手軽に購入できます。水道水では鼻がツンとして痛みを感じることがあるため、体の塩分濃度(約0・9%)に近い生理食塩水を使いましょう。
・乾燥を感じた時に適宜、噴霧する
・鼻腔全体が潤うように吹き付けるとさらに良い
※生理食塩水は市販で手軽に購入できます。水道水では鼻がツンとして痛みを感じることがあるため、体の塩分濃度(約0・9%)に近い生理食塩水を使いましょう。
○●口呼吸のリスクとは●○
○●口呼吸のリスクとは●○
鼻で呼吸をすると、きれいな空気を体内に取り込むことができます。一方、口呼吸は、冷たくて汚い空気をそのまま体内に取り込んでしまい、ウイルスに感染するリスクを高めます。
また、口腔内に雑菌が繁殖しやすくなり、口臭を強くします。虫歯や歯周病の危険性も高めます。
さまざまな健康上のリスクを抱えていますが、私の診療経験では、約9割の人が口呼吸の習慣があるといえます。
なぜ、口呼吸の方が多いのでしょうか。大きな原因に「呼吸が楽だから」という点があります。口は鼻の穴よりも圧倒的に大きいため、一度に大量の空気を吸い込んで吐き出すことができます。
一方、鼻には、鼻毛や粘膜など空気をろ過する多重な構造があり、空気が通る際に抵抗が強く、呼吸がしづらく感じてしまうこともあります。
また、口を閉じ続けていることは、口腔の筋肉が発達していない子ども、筋肉が衰える高齢者にとっては難しい側面もあります。
自身の健康を守るために、次のポイントを意識して、鼻で呼吸する習慣を身に付けていくことが大切です(下の「鼻呼吸を取り戻す」)。
鼻で呼吸をすると、きれいな空気を体内に取り込むことができます。一方、口呼吸は、冷たくて汚い空気をそのまま体内に取り込んでしまい、ウイルスに感染するリスクを高めます。
また、口腔内に雑菌が繁殖しやすくなり、口臭を強くします。虫歯や歯周病の危険性も高めます。
さまざまな健康上のリスクを抱えていますが、私の診療経験では、約9割の人が口呼吸の習慣があるといえます。
なぜ、口呼吸の方が多いのでしょうか。大きな原因に「呼吸が楽だから」という点があります。口は鼻の穴よりも圧倒的に大きいため、一度に大量の空気を吸い込んで吐き出すことができます。
一方、鼻には、鼻毛や粘膜など空気をろ過する多重な構造があり、空気が通る際に抵抗が強く、呼吸がしづらく感じてしまうこともあります。
また、口を閉じ続けていることは、口腔の筋肉が発達していない子ども、筋肉が衰える高齢者にとっては難しい側面もあります。
自身の健康を守るために、次のポイントを意識して、鼻で呼吸する習慣を身に付けていくことが大切です(下の「鼻呼吸を取り戻す」)。
【鼻呼吸を取り戻す】
【鼻呼吸を取り戻す】
舌が下に落ちていると、口の中に隙間ができ、無意識の口呼吸につながります。
舌が上顎に軽く触れている状態を保ちましょう。
姿勢が前かがみになると、気道が狭くなり、鼻からの空気が通りにくくなります。パソコンやスマートフォンを長時間見る習慣がある人は、知らないうちにこの姿勢を続けてしまいがちで注意が必要です。
□舌を上顎に軽く当てる
□背筋を伸ばし、首が前に出ないようにする
□(あいうべ体操などで)舌や口周りを鍛える
※朝起きて喉が痛い、唇が乾きやすい、ひび割れや出血がある、いびきが増えた、睡眠が浅いなどの自覚がある方は無意識の口呼吸が習慣化している可能性がある。
舌が下に落ちていると、口の中に隙間ができ、無意識の口呼吸につながります。
舌が上顎に軽く触れている状態を保ちましょう。
姿勢が前かがみになると、気道が狭くなり、鼻からの空気が通りにくくなります。パソコンやスマートフォンを長時間見る習慣がある人は、知らないうちにこの姿勢を続けてしまいがちで注意が必要です。
□舌を上顎に軽く当てる
□背筋を伸ばし、首が前に出ないようにする
□(あいうべ体操などで)舌や口周りを鍛える
※朝起きて喉が痛い、唇が乾きやすい、ひび割れや出血がある、いびきが増えた、睡眠が浅いなどの自覚がある方は無意識の口呼吸が習慣化している可能性がある。
いまい・かずあき 内科医。東洋医学会認定漢方専門医。みらいクリニック院長。山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し、集中・救急治療に従事。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)二つの「ソクイク」で病気にならない体づくりを提供。著書に『正しく「鼻呼吸」すれば病気にならない』(KAWADE夢文庫)など多数。
いまい・かずあき 内科医。東洋医学会認定漢方専門医。みらいクリニック院長。山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し、集中・救急治療に従事。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)二つの「ソクイク」で病気にならない体づくりを提供。著書に『正しく「鼻呼吸」すれば病気にならない』(KAWADE夢文庫)など多数。
ご感想、取り上げてほしいテーマなどをこちらからお寄せください
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