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電子版連載「著者に聞いてみよう」 20代独身記者が直撃! パパタレ・つるの剛士さんと子育てについて考える 2025年6月25日

 今回の電子版連載「著者に聞いてみよう」では、パパタレ(子どものいる男性タレント)として人気のつるの剛士さんが登場。新著『「心はかけても手はかけず」つるの家伝統・見守り育児 つるのの恩返し』(講談社)を片手に、20代独身の記者が「子育て」について率直に質問しました。

■“育ててもらってる”マスターを目指せ!?

 ――5人のお子さんがいるつるのさんは、世間では、「子育てマスター」だと思われているんじゃないでしょうか。今は幼稚園で先生もされていますし……。

 いやいや、子育てマスターだなんて、とんでもないです! はっきり言って僕は、“育ててもらってる”マスターなんですよ。家では妻に、幼稚園でも園児たちに教わりっぱなしですから。

 ――教わるというと?

 やっぱり、子どもってすごいんですよね。生命むき出しの“自然物”という感じで。僕ら大人は社会にのまれて、何でもかんでもシステマチックになり、“生”が受け身になっていると言いますか……。目が死んだ魚のようになってしまってることも多いかもしれないですよね。

 ――確かに、そういう面もあるかも……。

 でも、子どもたちは生き生きしていて、すくすく育ってますよね。それにやりたいことを「やりたい!」ってストレートに伝えてくれます。そういう姿を見ていたら本当にいいなあと。だから、企業の社長さんとか、忙しい人ほど子どもとがっつり触れ合ってみたら、いろいろ考えが変わると思いますよ。

 ――熱量がすごいですね……。でも、SNSなんかを見ていると、「子育てって大変だな」という気持ちが強くなってしまうのですが、つるのさんからはそんな印象が伝わってきません。

 もちろん、子育ては大変なもの。家庭ごとに事情は違うと思いますが、わが子の子育ては、身体的にも精神的にも、金銭的にも大変。でも、何にも代え難い“プライスレス”なものだと感じています。

 ――ちなみに「子育てっていいな」って思う瞬間はどんな時ですか?

 仕事から家に帰ってくると、リビングでああだこうだ言って、わちゃわちゃしてる子どもたちがいる。そんな光景を眺めながらダイニングでビールを飲んでいるだけで、「成長したなあ」と一人感慨にふける瞬間でしょうか。子どもが大きくなってきて、手がかからなくなってきた今だからこそ感じることかもしれませんが(笑)。
 ふとした日常で、何とも言えない幸せを感じます。家庭生活って楽しいだけでも、苦しいだけでもない、“楽苦面白い”ものなんですよね。

■「大丈夫だよ」は勇気がいる言葉

 ――ある調査では、15〜39歳の若い世代の半数は「育児はしたくない」と答えています。さまざまな要因が考えられますが、「子育てが自己実現やキャリアの足かせになるのでは」と考える若者もいるようです。

 結婚や出産だけが、人生の幸せや正解だとは言いません。でも、「子育てによって人間的に成長する」、これは断言できます。僕は、自分の子どもたちが困難に直面しても、「パパとママの子どもだから大丈夫だよ」と伝えるようにしています。僕自身もそう父と母から声をかけてもらい育ったので。そのおかげで僕は無敵の自己肯定感を手に入れました(笑)。でも、自分が親になり伝える側になって気付いたんです。これって相当、勇気がいる言葉なんだと。

 ――勇気がいる?

 言うからには、子どもに大丈夫だと思ってもらえるような親にならないといけないでしょう。つまり、自分のケツをひっぱたいて頑張らなきゃいけない。おかげで未熟な僕も、だいぶ成長させてもらいました。

 ――なるほど(笑)。

 お父さん、お母さんにも話を聞けるなら聞いてみてください。「あなたに相当成長させてもらった」と言うと思いますよ。

■人生はロッククライミング

 ――つるのさんって子どもと大人をあまり区別しないというか、目線が常にフラットな気がします。

 つい最近まで、僕も子どもだったので。いや、それはさすがに言い過ぎですかね(笑)? でもよく考えれば、子どもと大人の境界線なんて曖昧なものだと思いませんか? 子どもと同じく大人だって未熟だし、まだまだ成長段階。だから「僕から教えてあげる」なんて、恐れ多いです。 

 ――著書の中で、印象的なエピソードがありました。勉強しないわが子に何と伝えればいいか悩み、「分かった、塾にはパパが行く!」と、息子さんの塾につるのさん本人が通い始めたんですよね。

 「おバカタレント」として世に出た手前、「勉強しなさい」と言ったって説得力ないでしょう(笑)。でも、実際に行ってみたら、特に歴史の勉強が新鮮で楽しかったんです。結果、親の姿に子どもが触発されて、勉強するようになりました。だから、子どもに勉強してほしいなら、まずは親が勉強してみるといいかもしれませんよ。

 ――教育に対して、つるのさん夫妻のモットーは、子どもを心配するよりも、信頼する。いい意味で「期待しない」ことだと述べています。

 子育ては思い通りにならないのが基本で、そこが醍醐味でもある。僕たち夫婦は、子どもの「好き」を尊重して、その気持ちを盛り上げるように努めてきました。

 ――どのように盛り上げるんですか?

 たとえば、まだ長女が幼かった頃のこと。家族で訪れたある地域を娘が気に入ったようなので、「なぜ好きなの?」と聞いてみたんです。そうしたら、そこに暮らす人々がすてきだと答えました。ならばと、その地域の文化にもっと触れられるように、その国の音楽を家で流したり、民族料理が食べられる機会を設けたりしたんです。そんな娘は今、その国の大学に留学して観光学を学び、夢に向かって挑戦しています。

 ――「ああしろ、こうしろ」とは言わなかったんですね。

 「心はかけても手はかけず」という姿勢で、なるべく接しています。人生も子育てもロッククライミングみたいなもので、たとえ親があらかじめルートを設定しても、子どもはその通りには登りません。自分で道を決め、足場を作って上へ上へと向かう。失敗して落ちても、また岩場にくらいつけばいいんですよ。親は最初の一歩を後押しすることはできるけれど、後は信じて見守るだけだと思っています。

■ウルトラマンでもダメなんだから、仕方ない

 ――そうした考えに至るまでに失敗や苦い経験もありましたか。

 たくさんありますね。息子のゲーム機をぶん投げて壊したこともありました。

 ――え、つるのさんが?

 当時、妻から「受験が近いのに息子が勉強しない」と相談されていました。そんな矢先、息子がオンラインゲームに興じているのを見かけたものだから、思わずカッとなってしまったんです。いつもと違う父親の姿にびっくりしたのでしょう。息子がすごくおびえてしまったのを覚えています。冷静になって「ごめんね」としっかり謝りました。

 ――ちなみにその時のゲーム機は?

 自力で直そうとしましたが無理で、弁償しました。まあ、しょうがないですよね。また一つ学ばせてもらったと捉えるようにしました。

 ――「失敗しても落ち込みすぎず、前向きでいく」。ズバリ、これは子育てに必須のスキルだとお見受けしました。

 かもしれません。無理しても続かないですしね。僕は、ちゃらんぽらんでしょうがない人なんです。みんなももう少し、良い意味で開き直ってみたらいいと思います。「そうか、(つるのさんが役を務めた)ウルトラマンでもダメなんだから、仕方ないや」って。すると、肩の力が抜けて、反対にできることが広がると思いますよ。

■個人の努力を超えて

 ――ここまでお話を聞いてきて、つるのさんって、実は控えめというか謙虚な方なのかなと思ったのですが。

 自分は元々、すごい自信家なんです。でも、自信はあるけれど、自信がないんですよ。

 ――いや、意味が分からないです(笑)。

 妻は、僕の向き不向きを理解した上で、冷静にジャッジしてアドバイスしてくれるんです。だから、僕は自信を持って新しいことに挑戦できる。逆に言えば、彼女がいなければとたんに自信がなくなっちゃうんです(笑)。

 ――「自分一人で何でもできる」のではなく、「家族というチームで連携すれば成し遂げられる」という確信なんですね。

 結婚して、子育てを通して痛感したのは、「僕はたくさんの人に育ててもらい、支えてもらってここまで来た」ということ。今のポジションや成果と言っても、もちろん僕の努力もありますが、周囲の尽力あってこそですよ。こういう認識を深めるほど、家族がより一層、愛おしくなり、感謝の気持ちでいっぱいになります。少しでも恩返しできるよう、自分なりに励んでいきたいと思う今日この頃です。

〈プロフィル〉
 つるの・たけし 1975年生まれ。福岡県出身。神奈川県藤沢市在住。1997年、「ウルトラマンダイナ」のアスカ隊員役を好演。2008年にはバラエティー番組「クイズ!ヘキサゴンⅡ」でユニット“羞恥心”を結成しブレイク。私生活では2男3女の父親で、芸能界初の男性育休を取得した。2022年に短期大学を卒業し、幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得した。2025年に大学のこども心理学部を卒業し、認定心理士資格のための単位をすべて取得。非常勤の幼稚園教諭としても働いている。

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