• ルビ
  • シェア
  • メール
  • CLOSE

【電子版連載】社会学者・富永京子さんとイドバタ会議――“世代間ギャップ”感じてますか? vol.1 2025年10月20日

 池田華陽会・ヤング白ゆり世代の読者と共につくりあげる連載「社会学者・とみながさんとイドバタ会議」。今回のテーマは「世代間ギャップ」。懐かしい写真を見ながら「エモい」と盛り上がる若者の横で、「それ、どういう意味?」と首をかしげるその時代を生きた世代。言葉の違いや価値観の違いなど、お互いにズレを感じてしまった経験は少なくないだろう。
 今回は、本連載のアンケートを通じて、「世代間ギャップ」に関する声を寄せてくださった20代・30代の女性読者の中から3人に協力してもらい、社会学者で立命館大学准教授の富永京子さんとイドバタ会議を行いました(3回にわたって配信します)。

「会合で“タコパ”はだめですか?」

A:「世代間ギャップ」がテーマですが、普段から仕事で接しているのは、70代・80代の方がほとんどです。孫世代に当たる私が、今後の人生の過ごし方について相談を受けることもありますが、ただギャップを感じているだけでは前に進まないので、とにかく仕事に向き合う中で、私にできるサポートをしていこうと心がけています。

B:創価学会にも幅広い世代の方がいますよね。特に婦人部と女子部が一体の体制になってからは、世代を超えて関わる機会が増えました。そこで感じるギャップはありますか?

A:正直、あります。例えば、座談会などで、80歳、90歳くらいの方が、友人に対話をするために、県をまたいで遠方に行かれたり、私より何十歳も年上の方が、100人の友人に仏法対話したという話を聞いたりすると、“なんでそこまで頑張れるんだろう”とギャップを感じます。私の場合は、友人から「宗教ばっかりの人」として見られないか不安で、どうしてもそこまでは無理だと思ってしまいます。

B:分かります。あと、これは話すかどうか迷ったんですが、思いきって話します(笑)。一緒に活動していたあるメンバーは、彼氏と手をつないだ影を映した写真をLINEのアイコンにしたんです。そうしたら、当時、未来部の担当者をしていたこともあって、上の世代の方から、やんわり注意を受けたそうです。その後、静かに自分がピースしてる写真に変えたと言っていました……。

A:私の地域では、上の世代の方に彼氏の相談もオープンにしていますが、そういうこともあるんですね……。あ、でも別の地域に住むある池田華陽会世代のメンバーが、会合でタコパ(たこやきパーティー)を提案した時は、さすがに「研さんとかした方がいいんじゃない?」と言われて、結局、タコパはできずじまいだったようです(笑)。

C:信仰をする意義を何によって感じるかという点が違うように思います。上の世代では多くの方が、経済苦や病苦を乗り越えた体験を持っている印象ですが、私たち世代はそこまでの体験を持っていない印象です。それよりも「学会というコミュニティーが好き」「何でも話せる人がいる安心感」といった声を聞きます。

富永:非常に興味深いです。皆さんのお話を聞いて思い出したのは、野党のある議員が語っていた自民党との違いについてです。自民党は世襲議員が多いためまとまりやすい。なぜ世襲だとまとまりやすいかというと、自身の政策へのこだわりが必ずしも強くないからだと。一方で、家族の中で初めて議員になったという、いわゆる1代目の議員が多い党は、自分自身の方針や政策にこだわりのある人がたくさんいるので、まとまりづらく、分派化しやすい側面もある。
 つまり、2世・3世が多く、継承の側面が強い中間集団では、こだわりを持っていないことを卑下してしまう傾向がありますが、むしろ、コミュニティーとしてまとまりやすく、個人主義にならずに済んでいるという見方もできると思います。「それぞれが思う信仰をしてます」だと、それこそ分派化しかねませんよね。なので、若い世代は“上の世代とは違うモチベーションだけれども信仰してます”でもいいのではないかと思います。

C:社会も常に変化していますもんね。これは、学会に限らずだと思いますが、今は社会的に“30歳”が一つの節目のような雰囲気を感じていて……。その頃になると、結婚のことを心配されたり、いざ結婚して、子どもが生まれると、「2人目は考えているの?」って聞かれたりして。悪意がないことは分かっているんですが、まだ迷って答えを出し切れていない自分がいるので、何も言えなくなってしまいます。
 上の世代の話を聞くと、“一度決めたら突き進む”という生き方をされてきた人が多いように感じます。尊敬する一方で、「結婚や出産という未来を、決めきれない自分って地に足が着いていないのかな。でも言葉にならない思いがあるんだけどな」と感じることがありました。その思いを率直に伝えようとしても、いざ上の世代の方を前にすると、答えを提示されているようで、「自分もそうならなくてはいけないのかな」と思い、言葉が出てこなくなるんです。

富永:「結婚は?」「2人目は?」という言葉は、正解の押し付けというより、自分たちの時代に当たり前だった幸せを、下の世代にも受け取ってほしいという気持ちではないかと思うんです。しかし、今は女性も経済的に自立できるし、一人で生きる選択もできる時代ですよね。だから、上の世代のアドバイスがちょっと“昭和っぽいな”と感じることもある。なので、ただ否定するのではなくて、「私たちは私たちの時代を生きているんです」と伝えながら、受け止める部分は受け止める。その上で、年長者は、若い人を自分のミニチュアだと思ってしまいがちですが、異なる時代、社会を生きている存在だということは、前提として知っておかなければいけません。違う時代を生きている存在として、お互いを尊重し、手を組んでいくことが大切ではないでしょうか。

A:実際に、創価学会の中でも、上の世代が若い世代を尊重してくれる雰囲気は感じています。むしろ、私たち以上に危機感を持って、社会の流れに乗っていけるように組織の在り方を変えていこうとされているようにも感じます。

B:ただ、その雰囲気だけが広がって、「若い世代の好きなように何でもやって!」と丸投げされてしまう時は、どこか突き放されているような気持ちになり、逆に不安になってしまうこともあります。

富永:「若い人が自由にやって」が、実は一番難しいですよね(笑)。社会運動や政治運動において考えると、たとえ若い人が反抗的でもあんまり気にしないんですよね。というのは、社会を新しくするのが社会運動なんで、基本的に若い人が上の世代に反発するのは大歓迎。ただ、信仰もそうかもしれませんが、経験という側面でみると、年長者の方が長く継続している分、偉いと感じてしまい、容易に太刀打ちできず、顔色を見ちゃう気持ちはすごく分かります。

C:ギャップを感じつつも、若い世代ができることってあるんですかね?

富永:大学生を見ていると、年長者になかなか反抗できないのは、どこかで反抗しちゃいけないと思わされているからではないかと思うんです。しかし実際、若い人の存在は大学においても、社会においても希少であり、貴重であることは間違いない。だから、言っていいんじゃないですか、「私たち貴重なので」って。
 「年長者イコール経験があるから偉い」と思いがちだけれども、若い人だって、その時代の若い人にしかない別の資源を持っている。その資源を年長者に分かってもらわなければいけないし、お互いの持つ資源を尊重し合い、融通し合う方が組織の活性化につながるはずです。(vol.2へ続く)

●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ご感想をお寄せください。
 メール youth@seikyo-np.jp

動画

SDGs✕SEIKYO

SDGs✕SEIKYO

連載まとめ

連載まとめ

Seikyo Gift

Seikyo Gift

聖教ブックストア

聖教ブックストア

デジタル特集

DIGITAL FEATURE ARTICLES デジタル特集

YOUTH

劇画

劇画
  • HUMAN REVOLUTION 人間革命検索
  • CLIP クリップ
  • VOICE SERVICE 音声
  • HOW TO USE 聖教電子版の使い方
PAGE TOP