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〈SDGs×SEIKYO〉 ごみからつくり出す未来――廃棄物処理から考える地球 2023年11月10日

8:35

 香川県綾川町に本社を置き、産業廃棄物処理業で県内トップクラスの事業規模を誇る「株式会社富士クリーン」。代表取締役の馬場太一郎さん(41)=男子地区リーダー=は、SDGsが掲げるさまざまな目標に貢献する事業の中でも、「廃棄物」を通じて伝えたいものがありました。(今回はSDGsの7番目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について考えます。取材=石塚哲也、綿谷満久)

この記事のテーマは「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

 ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿――こうしたものは全て「廃棄物」に分類される。馬場さんが経営する「富士クリーン」では、2018年、廃棄物からバイオガスを生成する最新鋭の施設を、国内で初めて稼働させた。生成したバイオガスを電気と蒸気に変換し、社屋で活用するとともに、敷地内にある水処理施設の代替燃料として利用している。

 これまでに5000人以上の業界関係者が見学に訪れた。馬場さんは教育機関や社員の家族、地域住民にも来てほしいと、一般からの見学も受け付け、自ら説明に立つこともある。

 「環境について学ぶ機会は増えましたが、それに比べると、産業廃棄物処理について教えているところは少ない。だからこそ、地域の未来を担っていく子どもたちに、いの一番に見てもらいたいと思っています」

産業廃棄物処理の流れなどを解説したパネル。従業員の有志らが作成した
産業廃棄物処理の流れなどを解説したパネル。従業員の有志らが作成した

 「富士クリーン」は、農家を営んでいた父・一雄さん(72)=支部壮年長=が1975年に創業した。仕事で地域に尽くす父と、家族のように身近な従業員たちに囲まれて育った。

 大学卒業後、貿易会社を経て、同社に就職したが、2代目という「約束されたレール」の上を歩むことに、いつしか申し訳なさを感じるようになった。仕事に魅力を感じる一方で、このまま年を重ねても“役に立てない気”がした。

 「会社に貢献できる力を付けたい。その一心で留学を決意しました」

県内から収集された廃棄物の前に立つ馬場さん
県内から収集された廃棄物の前に立つ馬場さん

 26歳で渡米。留学先のサンフランシスコで語学学校に通い、ビジネススクールに進学する。文化の違いや言葉の壁に直面。差別を受けたこともあった。

 刺激的な毎日の出来事一つ一つに“意味”を見いだすきっかけをつくってくれたのが創価学会の活動だった。

 会合では悩みや目標、その結果を共有した。一人一人の考えに耳を傾け、“どうすればゴールに近づけるか”と意見交換することが、馬場さんにとって「学びと成長」につながった。

 2年後にはMBA(経営学修士)を取得し、米国資本のメガバンクの銀行員として世界中を飛び回るようになった。いつかは日本に戻ろうと思っていたが、契機となったのは思わぬ出来事だった。

 真冬のニューヨーク。
 勤務先の本社ビルの入り口で意識のないホームレスが横たわっていた。自分も含めて、誰も手を差し伸べようとはしない。不意に脱力感に襲われ、故郷の会社の従業員たちの顔が浮かんだ。

 “アメリカでやるべきことは終わった”

 身に付けた力で、父やかつての同僚に恩返しをしようと決めた。
  

 2016年、香川に戻り、経営改革に着手した。父のことを心から尊敬しつつも、トップダウンの手法は時代にそぐわないと感じた。

 広く社員の声を聞き、施策に生かした。ある女性社員は、こう語った。
 「瀬戸内海から香川を見るたびに“私はこの景色を守っているんだ”という誇りが湧いてくるんです」

 その声を聞いた時、馬場さんは大きな確信と自信を持つことができた。

 産業廃棄物処理業は人間が生活する上で、なくてはならない存在。しかし、かつては“ごみを扱う汚い仕事”という偏見があった。

 そんな仕事を“地域のため”“みんなのため”にと地域住民を訪ね、理解を得てきた父。そしてその仕事をさらに香川のため、日本のためにと発展させてきた馬場さん。

 「今挑戦していることは、『環境教育』です。地球のために、廃棄物のことを考えるきっかけとして、人の心に“環境を守る”という種をまきたい。それを世界平和を願う仏法者としての私の使命としていきたいんです」

 21年、代表取締役となり、2代目として、馬場さんは力強く歩みを進める。

 SDGsの達成のためには「0から1をつくり出し、増やし続けてきたこれまでの生活を見直すことが必要なのかもしれない」。それは増えてしまったモノの“捨て方”を考えることでもある。

 「目の前の“1”が及ぼす影響を踏まえて、現状を知ることから始まると思うんです」

 常に一歩先を見つめる、馬場さんの挑戦は続く。

【SDGs×SEIKYO特設HPはこちら】
※バックナンバーが無料で読めます※

●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ、ご感想をお寄せください→ sdgs@seikyo-np.jp

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