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【創価学園NAVI】 生徒たちから大人気! 東京・創価中学校のコラボ授業 2023年11月3日

  • 教科横断と学年縦断で興味を引き出す
  • 学びが“つながる”楽しさを

 “コラボ授業”をご存じだろうか。教科の壁を超え、複数の授業をコラボレーション(共同)して取り組むもので、新しい学習指導要領が全面実施された2021年より、全国の中学校で行われ始めている。創価中学校では、この1年で12ものコラボ授業が実施され、生徒たちから大人気だという。どんな授業が行われているのか――東京・小平市の同校を取材した。
 

創価中にイルミネーション?

 「わー、きれい!」「持って帰ったら家でも飾ろう!」
 
 昨年12月、創価中学校の校舎の階段は、210個もの明かりで美しく飾られていた。まるで、冬の街を彩る“イルミネーション”のようだ。

美術と技術のコラボ授業で作製したLEDライトの「キラキラピラミッド」
美術と技術のコラボ授業で作製したLEDライトの「キラキラピラミッド」

 
 これは、技術と美術の“コラボ授業”において、2年生が手作りで作製した「キラキラピラミッド」の展示会。技術科で学ぶ「LED照明機器の製作」と、美術科の「デザイン思考の学習」をかけ合わせた授業だ。
 
 生徒に感想を聞いてみた。
 
 「はんだごてを使っての電子回路の作製には興味が湧かなかったのですが、美術と組み合わさることで、とても楽しく取り組めました」(女子)
 
 「最近、たくさんのコラボ授業が行われるようになって、勉強するのが、おもしろくなってきました」(男子)
 
 

苦手意識が変わる

 この1年で、同校では12のコラボ授業が実施された。
 
 小学校と違い、専科の教員が担当する中学校の授業では、一つ一つが専門的になりがちで、生徒にとって「何のためにこの勉強をしているのか」が分かりにくくなる傾向にある。しかし、授業が組み合わさることで、座学で学んだ知識を活用できる機会が生まれ、生徒たちが学ぶ意味を捉えやすくなる。生徒たちは、主体的に学ぶようになり、思考力や判断力、表現力が鍛えられていくという。
 
 本年、創価中学校に入学した畔上尚大さん(1年)は「創価中に入ってから、授業が楽しいと感じることが増えました。それは、各教科で学んだことがつながり、“あ、分かる!”と実感できるからです」と語る。
 
 畔上さんにとって一番印象的だったのは、理科の「観察」と、体育の「遠投」のコラボ授業だ。
 
 どうしたらより遠くにボールを投げられるか、という課題に対して、まず生徒同士でボールを投げる映像をタブレット型PCで撮影し、自身のフォームを観察。その後、やり投げのオリンピック選手やプロ野球選手などの投法が収められた動画を視聴し、改善点を洗い出す。そして実際に自分のフォームを修正し、投げてみる。

体育と理科のコラボ授業で、生徒たちが遠投の工夫を研究する
体育と理科のコラボ授業で、生徒たちが遠投の工夫を研究する

 
 「利き手ではない、もう片方の腕をしっかり振って投げることでボールに力が伝わることに気付きました。実際に記録が大きく伸びて、驚きました!」と畔上さん。
 
 「実は理科が少し苦手だったのですが、大好きな体育にも生かせると知って、理科に対する見方が変わりました。“どんな勉強も、生活や人生に生きるのかも”と考えるようになり、苦手なことも、学んでみようと思っています」
 
 ◆◇◆ 
 
 国語と美術のコラボ授業では、「随筆文の執筆」と「絵巻物の制作」が組み合わさった。
 
 まず国語の授業で、四季をテーマにした随筆文を執筆。次にその文に沿った絵巻物を描いていく。絵巻物の特徴は、マンガのように、1枚の横長の用紙に何度も同じ人物や動物を登場させ、右から左へと“ストーリーの流れ”を描いていくことにある。
 
 この授業では、随筆文を書くための論理的な思考と、絵を描くための想像力の両方を鍛えることができるという。

国語と美術のコラボ授業で絵巻物を描く生徒
国語と美術のコラボ授業で絵巻物を描く生徒

 
 岩間日陽莉さん(3年)は振り返る。
 
 「絵巻物で描く、具体的なイメージを想像しながら随筆文を書くことで、驚くほど文章が書きやすく、楽しく取り組めたんです」
 
 犬と四季をテーマに、折々の季節に犬が飼い主と戯れる様子を生き生きとつづった岩間さん。美術部に所属し、今まで写実的に油彩画や水彩画を描いてきた。しかし、今回の絵巻物の制作では、“ストーリー”をもとに描くことで、新たな視点を得ることができたという。
 
 美術科の浅野みさ講師はこう語る。
 
 「もともと絵巻物の授業は、習字と同じで、見本となるものをマネして描くものでした。それが、随筆文の作成でストーリーを考えることで、美術で養いたい想像力を育むことができたと思います。また美術が苦手な生徒も、絵の元となる随筆を考えてから絵に取り組むことで、すらすら描けている生徒が多くいて、驚きました」
 
 

教師たちの熱意

 この“コラボ授業”を成功させるために、最も重要なポイントとなるのが、教員同士のコミュニケーションとアイデアである。
 
 創価中学校では2015年から、教員の代表者が所属する「授業改革・研究部」を設置し、全教員のコミュニケーションを活性化させ、意見交換する機会をつくってきた。20年からは放課後の自主的研修会「S―LAB」を開催。また、研究成果をまとめた通信「GROWTH」を毎月発行し、教員たちが日常的に授業の改革を考える環境を整えてきた。特に「GROWTH」には、授業づくりのヒントとなる最新の教育理論や、研修会を振り返る内容がまとめられ、教員間の触発の大きなきっかけとなっていった。
 
 21年には、生徒たちの創造力を育む教科横断型の授業を計画するための研修が開かれ、昨夏には、他教科とのコラボ授業を行うためのワークショップを実施。一昨年、創価中学校に赴任してきた佐々木将成教諭(美術科)は、「生徒たちが“ワクワク”するような授業をつくろうとする教員たちの熱意に心を打たれました。教員間のコミュニケーションも活発で、連携が早く、コラボ授業もどんどん行われていくようになりました」と振り返る。

美術と理科のコラボ授業。生徒たちは理科で色が見える仕組み、色の効果、色が持つイメージなどを学んだ後、自分が表現したい感情の抽象画を描く
美術と理科のコラボ授業。生徒たちは理科で色が見える仕組み、色の効果、色が持つイメージなどを学んだ後、自分が表現したい感情の抽象画を描く
 
触発を与える

 教科の枠を超えた横断型の授業だけでなく、同じ教科で学年を縦断した授業を実施しているのも、創価中学校のコラボ授業の特徴である。
 
 先月には、初めて3学年合同での英語のコラボ授業が行われた。1~3年生が一緒の班になり、英語の朗読劇に挑んだ。
 
 1年生の佐藤直樹さんは「上手に英語を話す先輩の姿がかっこよくて、憧れました!」と語る。
 
 佐藤さんは小学校時代、英語に苦手意識があったものの、創価中学校の授業で、生徒同士の学び合いを通して、徐々に意識が変わっていった。
 
 「友達との仲も深まるし、英語も理解できて、授業が楽しいです」
 
 実は今回、先輩とのコラボ授業に少し緊張していたという佐藤さん。
 
 実際に授業に臨むと、「先輩はとても優しくて、いろんなことをアドバイスしてくれました。発音のことを聞くと、それだけじゃなくて、文法のポイントも教えてもらえて、うれしかったです」。
 
 佐藤さんはこの授業をきっかけに、さらに英語学習への意欲が湧いたという。

1~3年の生徒が一つの班になって行われた英語の授業。班ごとに英語の朗読劇に取り組む
1~3年の生徒が一つの班になって行われた英語の授業。班ごとに英語の朗読劇に取り組む

 
 英検準2級(高校中級程度)をすでに取得している3年生の木原知子さんはこう話す。
 
 「後輩と一緒に学ぶことで、久しぶりに思い出した単語や文法があって、良い復習になりました。また後輩に教えることで、発音の重要性に改めて気付くことができました。やっぱり英語はコミュニケーションなので、相手に伝わる発音、イントネーションが大切ですよね」
 
 海外への留学を夢見る木原さんは、「一生懸命に学ぶ後輩たちに刺激を受けました! 私も負けないように勉強に励みます」と笑顔で語る。
 
 ◆◇◆ 
 
 創立者の池田先生は、かつて語った。
 
 「時代は変化します。子どもたちを取り巻く環境も、子どもたちの気質も常に変化していきます。当然ながら、教育そのものも、常に成長し、発展していかねばなりません」「変化する現実に即応していく智慧が、教育には要請されます」
 
 社会が大きく変化している今こそ、最大の教育環境である教員自身がいかに熱意を持って、挑戦を続けていくかが生徒の成長の鍵になる。
 
 授業改革・研究部の主任を務める北山洋一教諭が語る。
 
 「この1年間に行われたコラボ授業では、生徒の興味や関心を引き出し、自ら課題を見つけ、探究する力を育むことができました。より一層、魅力ある授業をつくるために、授業改革・研究部では、これからの3年間で、生徒たちの学び合いを深化させ、本校独自のカリキュラムを体系化することを目指しています。今まで以上に教員間のコミュニケーションを深めながら、生徒たちと共に成長していきます」
 
 創価中学校の挑戦はこれからも続く。
 
 
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