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◆価値創造への挑戦 生活支援ロボットの国際大会で優勝 2023年2月24日

  • 【創大・短大マガジン】
理工学部 崔研究室 チーム「SOBITS」
科学や未来の発展は 人を育てることから

 創価大学理工学部、崔龍雲研究室のチーム「SOBITS」は、人工知能(AI)を搭載した自律移動型ロボットを開発し、国際競技大会で優勝するなど、目覚ましい成果を上げる。経済産業省は、2019年に「ロボットによる社会変革推進計画」を発表。未来型の新たな産業の創出や、少子高齢化・人口減少などによる課題の解決へ、期待が高まる。今回の「価値創造への挑戦」では、今、注目の先進分野で活躍する創大生の奮闘を追った。

ロボットの国際競技大会で幾度も優勝しているチーム「SOBITS」の友
ロボットの国際競技大会で幾度も優勝しているチーム「SOBITS」の友
責任感と団結

 2月上旬、創大は春休みに入っていたが、理工学部・崔龍雲教授の研究室は、多くの学生とロボットの動作音でにぎわっていた。
 専門は「知覚情報処理・知能ロボティクス」。2010年に、チーム「SOBITS」を結成し、人工知能(AI)を搭載した自律移動型ロボットを開発。ロボットの国際競技大会で優勝するなど、輝かしい成果を上げている。
   
 SOBITSが出場する「@ホーム」部門は、キッチンやリビングでのロボット利用を想定し、人と会話しながら、物を取ったり運んだりする生活支援能力を競う。
 昨年度は、「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」に出場し、二つのリーグで優勝。また、「ロボカップジャパンオープン2021」では、最難関の「オープン・プラットフォーム・リーグ」(OPL)で初優勝した。
   

教室に大会を想定したブースを設置し、ロボットの動作を確認する崔教授(右端)と学生たち(左から4人目が鶴江さん、同5人目が池田さん)
教室に大会を想定したブースを設置し、ロボットの動作を確認する崔教授(右端)と学生たち(左から4人目が鶴江さん、同5人目が池田さん)

   
 「チームワークで勝ち取った結果です」と語るのは、SOBITSのリーダーとしてチームを優勝に導いた池田勇輝さん(情報システム工学専攻博士前期課程2年)。
 人が操作する“ラジコン型”のロボットとは違い、“自律型”は、画像認識、音声処理、移動、機械制御などを、ロボット自身が行う。ボディーやアームといったハードウエアの設計から、能力や動きを決めるソフトウエアの開発まで、ロボット作りには、創造力、技術力、知力、体力、精神力などが高いレベルで要求される。
 「ロボットの開発には“一人立つ責任感”と“団結力”の両方が必要です。大学では毎年、人が入れ替わるため、学生同士が切磋琢磨し合える、強い“チームづくり”に力を入れてきました」
 池田さんは、自ら率先して、研究・開発をリードするとともに、大学院生が学部生の研究をサポートする「メンター制度」の導入や、メンバー同士が試合形式でロボットの性能を競い合う「SOBITSオープン」の開催など、チーム力の強化に取り組んだ。
   

研究室でロボットを点検
研究室でロボットを点検

   
 そんな池田さんを、副リーダーとして支えてきたのが、鶴江匠さん(同)だ。
 「池田君とは四六時中一緒にいて、何でも語り合いました。チームの課題に対しても、本気で意見をぶつけ合ってきたので、周囲から、けんかをしていると思われたかもしれません(笑)。その分、お互いのことを何でも知っているし、心から信頼し合っています」
 “本気の語らい”は、研究だけにとどまらない。例えば就職活動について。昨年度はコロナ禍の影響でロボカップの開催時期が遅れ、本年度の就活開始のシーズンと重なった。ロボット開発には、多くの時間と労力が費やされ、就活に支障をきたすかもしれない。大会に出るか出ないか。徹底的に議論した結論は――「皆で力を合わせて、すべてに勝とう!」
 ロボカップに向けて、普段なら独立して行う作業の状況も、互いに細かく共有し、企業の採用面接等で誰かが抜けてもサポートできる態勢を敷いた。SOBITSとして就活エントリーシートの添削会やTOEICの勉強会も開催。面接では各人がロボット開発の取り組みを堂々と語った。
 結果、前述したロボカップ最難関リーグでの優勝に加え、本年度の就活生は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車(2人)、SUBARU(スバル)、パナソニックコネクト、凸版印刷、日本マイクロソフトと、名だたる企業等から内定を得た。
 鶴江さんは語る。
 「本気で語り合ったからこそ、決まったことには全力で取り組みました。何事も正解は一つではありません。最適解を導くために、多面的に考え、失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返す。その経験を集積して、より良い結果を導き出す。SOBITSで学んだ生きる姿勢です」
   
  

悔しさを力に

   
 「SOBITSの発展は、真剣勝負で学生を育ててくださる崔先生の指導と、先輩方からの蓄積のおかげです」と池田さんは言う。
 卒業生の久郷紀之さんは、2018年の「ロボカップジャパンオープン2018おおがき」にリーダーとして臨み、「エデュケーション・リーグ」で優勝。さらに「ワールド・ロボット・サミット2018」でも第2位に輝いた。
 それまでコンピューターを使った「シミュレーションリーグ」で優勝することはあった(本年度も同リーグで優勝)が、自ら開発したロボットの実機を用いて優勝したのは、この年が初めてだった。
 「その前年、全力で開発したロボットが、大会会場の環境に対応できず、ほとんど動けずに大敗したんです。その時、崔先生が『一番良い勉強をしたな』と。悔しさを力に変えて、ロボットだけではなく仲間と向き合うと決め、メンバーの成長に力を注ぎました」
   
 

3Dプリンターを使ったロボットのパーツ作り
3Dプリンターを使ったロボットのパーツ作り

   
 学生が力を発揮することでロボットの性能が格段に向上。久郷さんからロボット作りを学んだ池田さんなど、多くの後輩も育った。
 「この経験が、社会に出た今でも生きています」
 久郷さんは現在、大手総合電機メーカーの技術研究開発本部で監視・防犯システムに関するプロジェクトのリーダーに。また、会社が米国企業を買収して進める、サプライチェーン(供給網)の最適化に向けたプロジェクトにも、最年少の技術職として選ばれ、渡米して事業の推進に当たった。
 「誰もが安心して、笑顔で暮らせる社会のために、創大で学んだ技術を生かして頑張ります」
   
  

愛知で行われたロボカップアジアパシフィック2021での様子
愛知で行われたロボカップアジアパシフィック2021での様子
原点は感謝の心

   
 SOBITSのロボット開発の原点は、20年前にある。
 「今のような大発展は、想像もできませんでした」と目を細めるのは、卒業生の萩原良信さん。
 博士前期課程1年だった2003年、萩原さんが研究をしていると、カナダ人留学生の友人が話しかけてきたという。
 “僕らの学びを支えてくれている人たちに、恩返しがしたい”
 “ロボカップで優勝できたら、創立者・池田先生も両親も多くの人が喜んでくれるんじゃないか” 「その報恩感謝の心が、SOBITSのロボット開発の原点です」
 萩原さんはロボットの研究を続け、博士号を取得。創大の助教だった2010年に、学生と共にチーム「SOBITS」を結成し、翌11年にロボカップジャパンオープンに初出場。12年には、革新的な開発に贈られる「イノベーションアワード」を受賞した。
 萩原さんは、その後も知能ロボティクスの研究者として活躍し、現在は、関西屈指の名門私立大学で総合科学技術研究機構・同ロボティクス研究センターの准教授に。内閣府が2050年を目指して推進する、人が身体、空間、時間等の制約から解放された社会を目指す「ムーンショット型研究開発制度」にも携わる。
 「囲碁や将棋、運転など、高度な知能を要すると考えられてきたものは、AIが成し遂げてしまう一方で、『それ取って』と言われて『それ』が何かをその場の状況で判断することや、親とのコミュニケーションから言語を獲得することなど、多くの人が無意識にできることが、現在のAI技術における難問になっています。そう考えると、人が本質的に備えている能力の尊さに感動するんです」
   
  

ロボットの背中に積んだPCでプログラムを確認
ロボットの背中に積んだPCでプログラムを確認

   
 “人間の素晴らしさを再認識する”――取材の中で多くの学生が語っていた実感だ。
 長年、SOBITSを見守り、多くの人材を育ててきた崔教授は、言葉に力を込める。
 「科学や未来の発展は、結局は人で決まります。だからこそ、人を育てることが一番大切です。
 授業や研究は、単位や点数を取るためではなく、人生の目標を見つけるためにある。失敗や挫折こそが、一番大切な学びにつながるんです。ロボット作りを通じて、多くの学生に、生きる力を身に付けてもらいたいと願っています」
   
 

◆NEWS&TOPICS
創大・短大オープンキャンパス
3月21日(火・祝)開催!

 創価大学、創価女子短期大学では、3月21日(火・祝)に、オープンキャンパスを開催する。詳細は、各ホームページを参照。問い合わせは「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉、「創価女子短期大学入試事務室」〈042(691)9480〉まで。
 
 【オープンキャンパス情報】
創価大学

創価女子短期大学

PASCAL入試チャレンジプログラム締め切り迫る!
高校生向け 3月3日(金)まで

 創価大学では、今秋、総合型選抜「PASCAL入試」を受験予定の高校生らに向けた育成型プログラム「PASCAL入試チャレンジプログラム」の受講生を募集している。プログラムの詳細は、ホームページを参照。問い合わせは「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉まで。
  
 プログラムの詳細はこちらのホームページから

「就職偏差値が上がった大学」ランキングで第4位

 教育や受験関連情報を発信する「朝日新聞EduA」が1月24日、「就職偏差値が上がった大学」のランキングを発表。創価大学が中規模の部(主要企業の就職者が100人以上200人未満)で4位となった。
 同ランキングは、㈱大学通信が実施。企業規模や知名度などから「主要企業」を選定し、各大学の企業別就職者数を10年前と比較して、順位を付ける。創大がベスト5にランクインするのは3年連続となった。

2023年度入試
共通テスト利用(後期)の出願は2月28日(火)から
3月10日(金)まで

 ※1月14・15日に実施された大学入学共通テストを受験した人が対象

 ※創大・短大マガジンのバックナンバーが無料で読めます!

 ※ご感想をお寄せください。
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