〈SDGs×SEIKYO〉　ゴールはみんなの「笑顔」――フィットネスインストラクター

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〈SDGs×SEIKYO〉　ゴールはみんなの「笑顔」――フィットネスインストラクター 2023年7月4日

3:07

　青木宏和さん（41）＝男子部副本部長（部長兼任）＝は、愛知県豊田市で「楽しく遊びながら健康に」をコンセプトに、“野外健康運動指導士”と名乗って地域コミュニティーの活性化に取り組んでいます。挑戦の背景には、自らが体調を崩した経験がありました。（今回はSDGsの3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」について考えます。取材＝石塚哲也、野呂輝明）

この記事のテーマは「すべての人に健康と福祉を」

　青木さんは、毎週土曜日に「パークラン」というイベントを開催している。2020年11月から開始し、これまでに、延べ2000人以上の老若男女が参加した。「ラン」という名称だが、“走ること”が目的ではない。歩いたり、犬を散歩させたりする人もいる。5キロの距離をおのおののやり方で、“運動”するのだという。

　「手のひらをグーとパーにすることも立派な運動。もっといえば、頰を動かして笑顔をつくること。それも運動。気軽に参加してほしいんです」
　

　
　大学卒業後、都内の大手企業でシステムエンジニアとして働いた。同僚の多くが、業務に忙殺されていた。顧客に会うことは全くない。どれだけ頑張っても、ねぎらいの言葉がかけられることもない。案件が一つ片付けばまた次の案件、そしてまた次……。自分は機械になったのかと錯覚する日々だった。

　入社から3年を経た頃、仕事のプレッシャーも相まって、睡眠障がいと診断された。久しぶりに休日を取る。トレーニングウエアに着替えて近所を駆けてみた。おなかが減り、喉も渇いた。息が弾み、首すじに汗が伝った。体の内側から心臓の鼓動が聞こえてきた。

　「自分は生きているんだ」

　公園に差しかかると、ベンチに座る初老の人、楽しげに語り合う人、いろんな人たちの姿が目に飛び込んできた。

　すれ違う人々と「おはようございます」とあいさつを交わす。笑顔と笑顔、手を振って応えてくれる人も。一瞬のそのやりとりに、何ともいえない心地よさがあった。心と体のバランスが、整っていくように感じた。
　

　
　体調は一進一退だったが、休日は体を動かすことが習慣となった。ランニングイベントを主催したり、フィットネスクラブのインストラクターを手伝ったりもした。

　15年、会社を退職。都内でフィットネス事業を始めた。ある朝、近所の公園で行われていたラジオ体操に参加し、衝撃を受ける。そこには100人以上が集まっていた。

　SNSで告知もしていないのに、自然と人が集まるようになったという。何が魅力なのかと思い、直接、参加者に聞いてみると、「友達に会えるから来ているんだよ」と、教えてくれた。

　これまで経験してきたことが一本の線で結ばれたような気がした。体を動かすことで“生”は感じられる。そして、それを誰かと分かち合うことで、喜びが何倍にもなり、“長く”続けていくことができる――自分も、そうしたアクションを起こしたいと思った。
　

　
　青木さんは20年に、活動の場を故郷・愛知県豊田市に移した。フィットネスインストラクターの資格を生かし、屋外で体を動かす運動プログラムを考案。野外健康運動指導士と名乗り、活動を始めた。

　昨年9月からは豊田市藤岡地区の観光協会の事務局の一員となり、地域振興にも携わる。地域でレッスンや行事を開催。運動の楽しみを伝えている。

　そんな青木さんを支えてきたのは、創価学会の活動、仲間との絆だ。

　実際、体調は、すぐに好転しなかった。休職と転職を繰り返し、独立後も、何度も経営に行き詰まった。
　

　苦しい時、いつも創価学会の同志に勇気づけられた。先輩は、「運動を続けていけば、体は鍛えられる。けれど、人生に勝つためには『生命そのもの』を鍛えるのが大事だ。そのための信心なんだよ」と励ましてくれた。だから負けなかった。真剣に祈りを重ね、人のために尽くそうと挑戦を続けてきた。

　青木さんの活動には、歩けるようになった幼児から、つえをついた老人まで、老若男女が参加し、交流を深めている。

　「僕の考える取り組みの“ゴール”は、一人でも多くの人が運動を楽しみ、笑顔になってくれること」

　「すべての人に健康と福祉を」という目標に向かって、一人また一人と、生きる喜びと笑顔を広げていく。
　