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Z世代が選ぶフォトニュース 2025年3月10日

 Z世代(1990年代中盤以降生まれ)ならではの視点で、ニュースの中から注目した四つを選んでもらいました。

「グレッグのダメ日記」から考える、読書の在り方
『グレッグのダメ日記』シリーズの第1作㊧と最新刊
『グレッグのダメ日記』シリーズの第1作㊧と最新刊

 皆さんは、『グレッグのダメ日記』シリーズをご存じでしょうか。「お金持ちになりたい! 人気者になりたい! モテたい!」。そんな願いを持つグレッグが主人公なのですが、日記に書かれているのは“ダメダメな毎日”ばかりです。

 私が小学生だった12年以上前に、既にベストセラーでした。売り切れになることも多く、なかなか手に入らず、もどかしい思いをしたのを覚えています。

 現在、約20冊の作品が刊行され、売上数は全世界で2億9千万部を突破。翻訳は日本語を含め70言語にまで広がっています。

 これほどまでに愛される作品になった要因は何か。訳者の中井はるのさんは、“子どもの等身大の姿”が描かれているからだと指摘します。確かに「親に本を無理やり読まされる」など、多感な時期の子どもたちにとって共感できるポイントが多いんです。しかも、手書きメモや、簡単な図面などを交えて紹介されるので、読者は理解しやすく、こうした点も評価が高い理由なのだそうです。

 私は、児童文学や漫画には、異文化理解を深める効果があると思います。『グレッグのダメ日記』は、アメリカ文化を背景とした作品であり、日本の読者である子どもたちは、新たな価値観や考え方を自然に身につけることができるでしょう。

 友人の話に耳を傾けるような感覚で気軽に読める「グレッグ」シリーズ。読書が得意でない私でも好きになれた作品ですので、苦手意識がある人ほど、手に取ってみてほしいです。(眼鏡ゴリラ)

無人植物工場!? 日本の農業への可能性
「GKEアグリテック」の植物工場で収穫したレタス=2024年12月、シンガポール(共同)
「GKEアグリテック」の植物工場で収穫したレタス=2024年12月、シンガポール(共同)

 美容や健康維持のために欠かせない食材である、野菜。その生産現場が今、大きく変わろうとしています。日本をはじめ、世界各地でAIとロボット技術が台頭し、種まきから収穫、梱包までを完全自動化する「無人植物工場」の研究開発が加速しています。

 写真で紹介されているのは、シンガポールの最先端植物工場です。紫色のLEDライトが太陽光の代わりとなり、アーム型ロボットが収穫を、小型ドローンが生育状況を管理します。まるでSF映画のような光景ですが、これは現実です。しかも、再生可能エネルギーを活用することで環境負荷を低減しているというから驚きです。

 日本の農業就業人口は、20年前は約360万人でしたが、2024年には約120万人となり、3分の1近くに減少しました。担い手不足や高齢化、耕作放棄地の増加、海外との競争の激化などが原因として挙げられ、日本にとっても大きな課題となっています。

 「無人植物工場」は、これらの課題の解決策として期待されており、ロボットの投入による人材不足の解消や、天候に左右されない供給と品質の安定が図られています。

 しかしながら、「無人」化が進むことで、私たちは何かを失ってしまうのではないかというような心配もあると思います。土に触れ、汗を流し、作物を育てる――そんな「人間の営み」が、農業の本質なのだとすれば、なおさらです。個人的には、技術革新による効率化とともに、人間が営む持続可能な農業の在り方も模索すべきだと思います。

 近年、「売れる農業」を目指して、SNSを活用して販路を拡大する農家も増えています。これは、生産者と消費者を直接つなぐ取り組みともいえます。消費者として生産者を応援しつつ、未来の食卓について考えを深めていきたいです。(たぐっちゃん)

震災遺構が我々に投げかける問い
宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎=2024年6月
宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎=2024年6月

 これは宮城県南三陸町にある「旧防災対策庁舎」です。2011年の東日本大震災で津波にのまれ、ここで多くの町職員が亡くなりました。最後まで避難を呼びかける放送を続けた職員もいました。

 あの日から14年。亡くなった町職員の名前を刻んだ慰霊碑が3月、南三陸町役場に設置されました。町の元職員らでつくる実行委員会が立ち上がり、慰霊碑設置の計画を進めてきたそうです。

 「旧防災対策庁舎」をめぐっては、遺族や住民の間で、保存するか、解体するかで意見が分かれていました。そのため、宮城県が管理していましたが、昨年3月に町が震災遺構として保存することを決定し、その後、県から町に引き渡されました。

 私は2017年夏に南三陸町を訪れました。当時、庁舎の周りはまだ整備されておらず草が生い茂っていて、遠くから眺めながら語り部の方の話を聞いたことを覚えています。

 危険な状況に置かれた時、ぎりぎりまで自分の役目を果たすか、まずは自分の命を守るか。両方ともやらないとだめなのか。そのような問いを、震災遺構は我々に投げかけている。私はそう感じました。慰霊碑の建立は、犠牲者の鎮魂と、震災の教訓を未来へと継承するための新たな一歩になると思います。(インゲン)

アメリカ野球殿堂入りを果たしたイチロー選手
アジア人で初めて米国野球殿堂入りし、記者会見するイチローさん=1月21日、シアトル(共同)
アジア人で初めて米国野球殿堂入りし、記者会見するイチローさん=1月21日、シアトル(共同)

 1月21日、メジャーリーグで19年間プレーしたイチローさんが、アメリカ野球殿堂にアジア人として初めて選出されました。
 殿堂入りは、全米野球記者協会(BBWAA)に所属し、10年連続以上の取材歴を持つ記者の投票によって決定されます。有効投票数の75%以上の得票で殿堂入りとなる中、イチローさんの得票率は驚異の99.7%。満票からわずか1票足らずとなる、394人中393人の票を得たことになります。
 この結果に対して、イチローさんが語った言葉は意外なものでした。

 「1票足りないというのはすごくよかったと思います。(中略)やっぱり不完全であるというのはいいなと。生きていくうえで不完全だから進もうとできるわけで。そういうことを改めて考えさせられるというか、見つめ合えるというか、そこに向き合えるのはよかったなと思います」

 プレーに向かって、準備やルーティンなどを徹底して「完璧」に行うことで有名なイチローさん。「不完全さ」に対する彼独自の物の見方に驚きました。

 イチローさんが、大人の悩みに答える「イチ問一答」という動画シリーズがあります。「自己肯定感を高めるには」という質問に対して、“自分を肯定することには、抵抗がある”と答えていました。
 
 一見すると、自己肯定感を高く保っていそうなイチローさんが、拒否感を示すのも、これまた意外です。その理由は次のようなものでした。

 「(自分を強く肯定する人は)自分でも振り返らない、良いことしか考えない。第三者からも厳しい言葉を言われない。人間は基本的に弱い生き物なので、僕は堕落すると思いますけどね」「魅力的じゃない。そんな人が生まれるんじゃないかって思います」

 簡単に自分を認めてしまうのではなく、自身へ疑問を投げかけ対話し、成長し続ける――その考え方が、イチローさんの偉大な記録を生み出したのだと感じました。私自身も、イチローさんのように現状に満足することなく、どこまでも成長し続けたいと思います。(両)

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