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◆価値創造への挑戦 環境経済学で社会課題を改善へ――学内のシェアサイクル導入に貢献 持続可能な未来の実現を 私たちのキャンパスから 経済学部 掛川ゼミ 2024年1月27日

【創大・短大マガジン】

 多くの「環境問題」は、私たち人類の「経済活動」に起因している。SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限である2030年末まで、あと7年を切る中、経済発展と環境保全の両立を目指す「環境経済学」が注目されている。今回の「価値創造への挑戦」では、創価大学で環境経済学の研究を進める、掛川ゼミの取り組みを取材した。

身近な課題から環境問題を考える掛川ゼミの授業風景。学生同士の活発な議論を掛川准教授(右から5人目)が見守る
身近な課題から環境問題を考える掛川ゼミの授業風景。学生同士の活発な議論を掛川准教授(右から5人目)が見守る
“現場”から学ぶ

 経済発展と環境保全は両立できるのか――そんな難問に果敢に挑むゼミがあると聞いて、昨年末、経済学部の掛川ゼミを訪れた。
   
 「持続可能な社会を目指した経済学」を掲げ、環境経済学、開発経済学を研究する同ゼミ。毎回の授業で、掛川三千代准教授が、環境や経済に関する世界の動向について、学生たちに問いかける。
   
 「皆さん、最近、気になるニュースはありましたか?」
   
 何人かの学生が、海外で起きた森林火災や、気候変動の対策を話し合う国際会議の話題について発言。それに対し、掛川准教授が、その要因や現場での課題について、自身の体験を交えながら掘り下げ、解説する。まさに今、世界で起きていることを“教材”に、学びを深めているようだった。
   
 一方、授業は学生主体で進む。学生たちは教材を予習して事前に疑問点を挙げ、授業ではグループで討議する。自ら調べ、他者の主張を聞き、解決策を皆でまとめる。こうした取り組みの中で、社会で必要な力が身に付くという。
   
 掛川准教授は、国連開発計画、在ラオス日本国大使館、外務省、国際協力機構(JICA)、環境省等の勤務を経て、2017年から創価大学の教壇に立つ、大学教員として異色の経歴の持ち主だ。
   
 「実務経験が豊かな掛川先生のもと、国際的な視点も含めて、環境問題について学べることが、ゼミの最大の魅力です」
   
 この日の授業で、プレゼンテーションを担当していた波澄奈那さん(3年)が瞳を輝かせる。
   

波澄奈那さん
波澄奈那さん

   
 特に印象的だと語ってくれたのが、「フィールド研修」だ。年2回、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて努力している企業などを訪問し、その現場を見学しながら、社員らと意見交換する。
   
 昨年9月には、東京・日野市の「イオンモール多摩平の森」を訪問。エコラベルの付いた食品やプラスチックトレーをなくした商品などをその目で見て、授業で学んだ環境保全の理念が、社会実装されている様子を確認した。
   

イオンへの企業訪問では、プラスチックのトレーをなくした食肉売り場等を見学
イオンへの企業訪問では、プラスチックのトレーをなくした食肉売り場等を見学

   
 「各企業が地域に根差し、協力し合いながら、地球に優しい経済の仕組みづくりをしていることを学びました」と波澄さん。
   
 同じく研修に参加した山内志穂さん(4年)は、「掛川先生の幅広い人脈のおかげで、教材だけでは学べない、多彩な経済活動の現場を知ることができ、自身の視野が広がりました」と笑顔で語る。
   

山内志穂さん
山内志穂さん

   
 山内さんは、2年の時、コロナ禍の中で受けたゼミのオンライン授業が忘れられないという。掛川准教授の依頼で、海外で活躍するトップ企業の経営者を講師に招き、世界経済の最前線で起きていることをリアルタイムで聞いた。
   
 “もっと世界を見てみたい”と、山内さんは3年の秋から、イタリアのボローニャ大学に交換留学へ。初の海外での長期滞在で、不安もあったが“創大生を応援したい”と支えてくれる人々が、現地にたくさんいたという。
   
 「創立者・池田先生が世界に結ばれた、平和のネットワークの広がりを、肌で感じました」
   

「ロマン」が「形」に

   
 「掛川ゼミの特長は、『学ぶ』ことだけでなく『変える』ことまで経験できる実践的な環境です」
   
 そう語る越村清志さん(4年)は、脱炭素社会を目指した「シェアサイクル」の利用促進に向けた研究をグループで進めてきた。
   

越村清志さん
越村清志さん

   
 きっかけは、3年の秋に参加した経済学部の「ゼミ対抗研究発表大会」。脱炭素化を目指す研究テーマを探す中、八王子市が、シェアサイクルの実証実験を行っていることに目を付け、その課題を洗い出し、改善策を発表。同大会でブロック2位を獲得した。
   
 しかし、これで終わるのはもったいないと、地域の偏りや広報の改善など具体的な提案をまとめ、八王子市の担当者に伝えた。
   
 すると、これを受けた市の側から“創大にシェアサイクルを導入できないか”との相談があった。
   
 昨年10月、創大の全学協議会で、大学へのシェアサイクル導入が決定。協議には、掛川ゼミの研究結果が活用された。これにより、移動の利便性向上、脱炭素化の推進、さらに毎年、学生寮から多く出る廃棄自転車の削減などが期待されている。
   
 「私たちのキャンパスから持続可能な未来を実現したい――そんなロマンが形になり、本当にうれしかったです。今できることを考え、知恵を出し、行動する。掛川ゼミで学んだ姿勢を、これからも貫いていきます」
   

シェアサイクル等を研究した4年生と掛川准教授(右端)
シェアサイクル等を研究した4年生と掛川准教授(右端)
人間の尊厳を追究

   
 このように実践的な学びを続けてきた掛川ゼミ。卒業生たちも目覚ましい活躍を見せている。
   
 古賀誠人さん(48期)は、再生可能エネルギーの開発事業を行うベンチャー企業に就職。ゼミで環境問題について学んできたことを生かし、入社後すぐに、社員に向けて環境保全に関連する情報等を紹介する「脱炭素ニュース」の配信を担当。その中で着目した、系統用蓄電池や地理情報システムを利用して、新たな事業拡大を実現するなど、大きな成果を上げた。古賀さんは実感を込める。
   
 「表面的な情報から、その背景や歴史など、本質の部分を読み取る力を掛川ゼミで培いました。これからも、環境に良い経済活動を目指し、全力で取り組みます」
   

   
 深沢智恵さん(47期)は、世界最大級の総合コンサルティング企業で、公共サービス等の経営戦略の立案などを担当。取引先の幹部から担当を指名されるなど、大きく信頼の輪を広げている。
   
 「単なる学問ではなく、その哲学も同時に学ぶことができるのが、掛川ゼミです。経済学は、利益最大化の学問というイメージが強いのですが、その先にあるのは一人一人の人生です。人間の尊厳を追究し、誰も置き去りにしない社会を目指す――コンサルティングという社会経済の最前線でその信念を貫くことが、掛川ゼミの卒業生である私の誓いです」

   
 指導を担当してきた掛川准教授は、「皆の活躍が、何よりうれしいです」と目を細める。
   

掛川三千代 准教授
掛川三千代 准教授

   
 「私も創大卒業生の一人です。国連で働くことを目指し、ロンドン大学大学院に留学していた折、現地を訪問された創立者・池田先生にお会いしました。一人一人を全力で励まされる姿が、今も目に焼き付いています。その時、“力をつけて、創立者と共に世界平和に貢献する”と誓ったことが、自身の礎となっています。これからも創大生と共に学び、成長して、持続可能で、希望あふれる社会を築くことに貢献していきます」
   
   
   

◆期待の声
(公財)日本産業廃棄物処理振興センター 理事長
関 荘一郎さん
※本人提供
※本人提供

 国連や国際機関、省庁などの勤務経験を生かして、より実践的な学びを提供する掛川准教授の授業は、これからの大学に求められる教育のあり方を体現していると思います。
 私と掛川准教授は、10年ほど前に、環境省で共に働いていました。私が、地球環境局長や地球環境審議官、環境事務次官を務めていた頃、多くの仕事をサポートしてくださいました。
 そのご縁で、今では年に数回、掛川准教授から声をかけていただき、創価大学で行われる、環境関連の授業や催しに、講師として参加しています。
 そこでは、身近な環境課題の解決へ、地域を巻き込みながら、意欲的に取り組む学生たちの姿に驚かされます。
 私が触れ合う創大生は、自ら考え、皆で知恵を出し、行動する力が身に付いています。大げさに言えば、このような主体的な人材が、社会にどれだけいるかによって、日本や世界の未来が決まると思います。そうした観点からも、時代をリードする有為な人材が、創大から数多く輩出されることを期待しています。(元環境事務次官)

◆News&Topics
創大 一般入試の出願締め切り迫る!
2月1日(木)まで(消印有効)

 創価大学で実施される2024年度入試について、出願受け付けの締め切りが迫っている。日程は次の通り。
 ◇ 
 【創価大学】
 一般入試=24年2月1日(木)まで。
 一般入試(後期)=24年2月2日(金)から26日(月)まで。
 大学入学共通テスト利用入試(後期)=24年2月27日(火)から3月8日(金)まで。
 ※全て締め切り日消印有効。
 ◇ 
 お問い合わせは、「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉まで。
 ※創大、創価女子短大のその他の入試は、出願受け付けを終了しました。
   
 詳細は、創大のホームページを参照してください。

PASCAL入試チャレンジプログラム募集始まる!
高校生向け 1月29日から3月5日まで

 創価大学では、今秋、総合型選抜「PASCAL入試」を受験予定の高校生らに向けた育成型プログラム「PASCAL入試チャレンジプログラム」の受講生を募集する。
 対象は、2025年3月の高校等卒業予定者。同プログラムは、原則オンラインで行われ、受講は無料。期間は本年3月下旬から8月までの予定。修了者は、PASCAL入試の出願資格である学習成績の状況(評定平均値)が、「3.2以上」から「3.0以上」に緩和される(全学科対象)。
 【募集期間】本年1月29日(月)から3月5日(火)まで
 【募集人員】200人(応募者多数の場合は原則先着順)
   
問い合わせは「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉まで。
   
 プログラムの詳細はホームページを参照。

    
 ※創大・短大マガジンのバックナンバーが無料で読めます!

   
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