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◆価値創造への挑戦 廃棄される米粉を活用して バイオマスプラスチックを開発 2023年10月30日

  • 【創大・短大マガジン】
理工学部 丸田研究室
学生の自由な発想で 地域と社会に貢献!

 若者たちの社会貢献意識が高まる中、創価大学理工学部の丸田晋策教授の研究室では、学生たちのアイデアを生かして、企業や自治体と連携しながら、SDGs(持続可能な開発目標)の推進に寄与するユニークな取り組みを行っている。専門分野の領域を超えて、地域と社会に新たな価値を創造する丸田研究室を取材した。

丸田教授(左から3人目)と学生たちが試行錯誤を繰り返す実験室は、社会に新たな価値を生み出す未来創造の場
丸田教授(左から3人目)と学生たちが試行錯誤を繰り返す実験室は、社会に新たな価値を生み出す未来創造の場
アイデアが勝負!

 「今後、多くの技術や仕事がAI(人工知能)やロボットに置き換えられるという予測がありますが、人間のアイデアは、置き換わりにくいと言われています。だからこそ、学生一人一人の創造力を養うことが“勝負”なんです」
     
 創価大学理工学部共生創造理工学科の丸田晋策教授が熱く語る。
     
 専門は「生物分子科学」。体の中にある分子機械を研究し、抗がん剤などの開発に役立てる――。そんな先進的な研究を進める傍ら、生化学の知見を生かした、ユニークな取り組みを行っている。それが「米粉プロジェクト」だ。
     
 創価大学がある東京・八王子市特産の吟醸酒「髙尾の天狗」。その製造過程で廃棄される大量の酒米米粉を使って、地球環境に優しい製品を産学一体で開発するという同プロジェクト。
     

吟醸酒「髙尾の天狗」
吟醸酒「髙尾の天狗」

     
 「SDGs(持続可能な開発目標)に貢献したいとの思いで、先輩方の研究を引き継ぎながら、現役学生の自由な発想を加えて取り組みを発展させています」
     
 塩田賢伸さん(4年)が語る通り、同プロジェクトは年々、進化を遂げている。元々は、八王子市の特産米「高月清流米」の出荷過程で、廃棄されてきた「くず米」を使って「米粉パン」を作ったことから、この取り組みは始まった。
     
 米粉パンは、地域活性化と食品ロス削減につながるとして、企業や自治体から注目を浴びた。その中で、八王子産の酒米を使った吟醸酒「髙尾の天狗」を製造・販売する会社から、製造の過程で、年間7、8トンにも及ぶ大量の米粉が廃棄されていることを聞いた。
     

食べられるスプーン

 “この酒米米粉で、クッキーを作ろう”――学生の発案で実際にクッキーを焼いてみたが……試作品は失敗。硬くて食べられたものではなかったという。
     
 そこで、分子構造や性質を分析してみた。すると、この米粉は、でん粉の糊化温度が低く、分子のサイズが小さいことが分かった。
     
 “クッキーなどの焼き菓子では硬くなるが、しっとりとした食感のスイーツなら活用できるかもしれない”と、市内の洋菓子店に協力を仰ぎ、髙尾の天狗の酒米米粉を使った「チョコブラウニー」を試作。それまでの小麦粉で作ったブラウニーよりもおいしいと好評を博し、地産地消のスイーツとして商品化することができた。
     
 さらに、焼くと硬くなる米粉の性質を逆手に取り、スプーンの形に焼き上げて「食べられるスプーン」を開発した。

食べられるスプーン
食べられるスプーン

     
 この時、プラスチックの代替品として米粉が使用できる可能性を見いだしたことで、研究は新たな展開を迎える。学生から“米粉を使ったバイオマス(生物由来資源)プラスチック製品を作りたい”というアイデアが生まれたのだ。
     
 早速、新潟・上越市のバイオマスプラスチック製造会社・バイオポリ上越の協力を得て、米粉51%を含むスプーンやフォーク、箸などを作成。さらに、八王子市のプラスチック成形会社・セイホーと連携し、市の木であるイチョウとモミジをかたどったバイオマスのクリップを開発すると、これが、八王子市の各種イベントで配られるノベルティーに採用された。
     

バイオマスプラスチックで作られたスプーンやフォーク、箸など
バイオマスプラスチックで作られたスプーンやフォーク、箸など
イチョウとモミジをかたどったバイオマスのクリップ
イチョウとモミジをかたどったバイオマスのクリップ

     
 昨年度、こうした取り組みをまとめて「大学コンソーシアム八王子」が主催する第14回「学生発表会」に出場。農・食提案セッションの最優秀賞を受賞した。
     
 この発表会に出場し、今年、難病治療薬を開発する製薬会社に入社した田中玲花さん(49期)は、当時を振り返る。
     
 「抗がん剤の基礎研究に取り組んできた私は、あまりSDGsを意識してこなかったのですが、米粉プロジェクトで社会課題に向き合えたことは、自身の視野を広げる大切な経験になりました」
     
 本年度、丸田研究室ではさらにプロジェクトを発展させ、ゴミ袋など、フィルム状のバイオマスプラスチック製品の実用化に取り組む。この研究に携わる田口尚祐希さん(4年)は、「前例のない研究に踏み出すことは勇気が必要ですが、そこが研究の醍醐味でもあります。常に新しい挑戦を続けることが、丸田研究室の最大の特長です」と胸を張る。
     

米粉を使った製品開発の流れ(提供:丸田研究室)
米粉を使った製品開発の流れ(提供:丸田研究室)
情熱をつなげる

 豊かな創造力と、未知の領域に踏み出す勇気を育む丸田研究室は、卒業生の活躍もめざましい。
     
 「丸田研究室は、自分のやりたいことを実現できる場所です!」
     
 髙市真央さん(43期)は、高校時代、最愛の母を病気で亡くしたことをきっかけに、より良い薬を世の中に普及させたいと製薬業界を目指すように。研究室では、創薬の基礎研究を進め、学部生でありながら、多くの研究者に交じって学会発表なども経験した。
     
 「化学の専門性はもちろん、プレゼンテーション力やチャレンジ精神も研究室で鍛えられました」
     
 卒業後、世界有数の製薬会社に就職し、日本の支社でMR(医薬情報担当者)として勤務。国内に約500人いるMRの中で、トップ3の営業成績を勝ち取るなど、社会の第一線で活躍している。
     
 神原丈敏さん(21期)は、丸田研究室が開設した時の“最初の学生”の一人。「専門ではない、バイオマスの研究をここまで発展させるなんて、丸田先生らしいですね」と笑う。
     
 丸田教授と海外での共同研究に参加したり、学会発表に挑んだりと、多くの貴重な経験を積んだ神原さん。創大卒業後、海外の大学で博士号を取得。現在は、理化学研究所で常勤の研究者として、先端科学の研究に力を注ぐ。
     
 「今、最先端の研究では、『異分野融合』が主流になっています。多様化する課題解決のために、専門領域の境界を超えて、さまざまな分野の知見を学ぶ考え方です。まさにそれを実践しているのが、丸田研究室ですね」
     

丸田晋策教授
丸田晋策教授

     
 時代を超え、形を変えて、常に新たな価値を生み出し続ける丸田研究室。長年、学生たちの成長を見守ってきた丸田教授は、感慨を込めて語る。
     
 「私自身も、このような展開になるなんて、想像もしていませんでしたが(笑)、多くの企業の皆さまにご協力いただき、学生たちのアイデアと情熱をつなげることで、社会に大きな価値を生み出せたのではないかと思います。一人一人が持つ力を合わせることで、未来の可能性はさらに広がっていくと確信しています」
     
 

◆期待の声
株式会社セイホー
代表取締役社長 青木邦貴さん
※本人提供
※本人提供

 わが社は1970年代から、八王子市でプラスチックの成形加工業を営んでいます。昨今、脱プラスチック化が進む中、数年前からバイオマスプラスチックの開発に注力してきました。そんな折、創価大学の丸田先生から「八王子の米粉を使って、SDGsに貢献できる製品を作りたい」と連絡をいただき、共同開発を開始しました。
     
 驚いたのは学生の皆さんの主体性です。熱意を持って研究を進め、開発に関する実験や調査結果を資料にして、社内で発表してくれました。先輩から後輩へ世代を超えて取り組みが受け継がれていることにも感心しました。
     
 こうして昨年、イチョウとモミジのクリップが完成し、11月の「八王子ものづくりEXPO」では、わが社の展示ブースで創大生が製品を紹介してくれました。若い学生が、親子連れの来場者らと地球環境について語り合う姿に、将来への可能性を感じました。
     
 環境保護や地域活性化につながる、こうした学びや取り組みは、未来への希望を生み出します。創価大学の皆さんのさらなる成長に期待しています。
     

◆News&Topics
創価大学 創価女子短期大学
来年度の入学者を募集

 創価大学、創価女子短期大学では、2024年度の入学者を募集している。入試の出願受け付けの日程は、次の通り。
 ◇ 
 【創価大学】
 公募推薦入試=23年11月1日(水)から8日(水)まで。
 総合型選抜入試(小論文方式)=23年11月15日(水)から12月5日(火)まで。
 大学入学共通テスト利用入試(前期)=23年12月15日(金)から24年1月12日(金)まで。
 全学統一入試=23年12月15日(金)から24年1月16日(火)まで。
 一般入試=23年12月15日(金)から24年2月1日(木)まで。
 一般入試(後期)=24年2月2日(金)から26日(月)まで。
 大学入学共通テスト利用入試(後期)=24年2月27日(火)から3月8日(金)まで。
 【創価女子短期大学】
 公募推薦入試=23年11月6日(月)から15日(水)まで。
 一般入試=24年1月4日(木)から18日(木)まで。
 ※全て締め切り日消印有効。
 ◇ 
 詳細は、創大・短大のホームページを参照してください。
 お問い合わせは、「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉、「創価女子短大入試事務室」〈042(691)9480〉まで。
 ※創大の「PASCAL入試」、創価女子短大の「自己推薦入試、同窓生(子女を含む)推薦入試」の出願受け付けは終了しました。

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