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【電子版先行】苦しんでいる人を放っておけない――ケニアでスナノミ症に立ち向かった創大生 2026年10月25日

  • 〈創価大学のページ〉学生NGO「Waka Waka Kenya」の挑戦

 アフリカ・ケニアでは「スナノミ症」への誤った認識が広がり、偏見や差別に苦しむ人がたくさんいる――。ケニア・ナイロビ大学への留学を控えていた創価大学の西松和郎さん(経済学部4年)は、留学経験のある先輩からこんな話を聞きました。“苦しんでいる人がいるなら、放っておけない”。その思いを胸に、西松さんはケニアに留学予定の創大生たちと共に、“ある挑戦”を開始しました。(取材=近藤翔平)

「Waka Waka Kenya」の設立メンバー。頭文字の「W」を表すポーズで(右から西松さん、飯田さん、山本さん、前沢さん)
「Waka Waka Kenya」の設立メンバー。頭文字の「W」を表すポーズで(右から西松さん、飯田さん、山本さん、前沢さん)
 
■一足の靴を買えない

 スナノミ症とは、ノミの一種である「スナノミ」が主に足の皮膚に寄生して起こる疾患で、痛みやかゆみなどの症状を伴います。
  
 西松さんがスナノミ症の話を聞いたのは、昨年の春でした。
 ケニアでも多くの人が感染していること。人から人へ感染しないにもかかわらず、患者が差別されていること。その背景には、一足の靴すら手に入らないという貧困があること……。
  
 そんな実情を知り、西松さんは強い憤りを覚えました。「創大で学び、世界で活躍することを目指してきた自分たちだからこそ、何か行動を起こしたい」
  
 西松さんは同じくケニアの大学に留学する飯田美幸さん(経済学部4年)、前沢有咲さん(国際教養学部4年)、山本結月さん(同学部4年)に声をかけ、昨年5月、学生NGO「Waka Waka Kenya」を設立しました。
 「Waka Waka」とは、スワヒリ語(ケニアの公用語)で「光る」「燃える」という意味。「置き去りにされてきた人々に光を当て、ケニアから希望を灯す」との思いが込められています。
  
 とはいっても、スナノミ症に関する専門的な知識もなければ、改善のために何をすればよいのかも分かりませんでした。ケニアに渡航するまでの間、スナノミ症の問題解決に取り組むNGOや研究機関に話を聞き、現地での活動内容を計画しました。
 また、活動資金を調達するためのクラウドファンディングも実施しました。
  
 そして昨年の8月から9月にかけ、4人はケニアへと出発しました。
  

「SAFE FEET PROJECT」に参加した人たちが記念のカメラに(ケニア・エスンバ村で。写真提供=「Waka Waka Kenya」)
「SAFE FEET PROJECT」に参加した人たちが記念のカメラに(ケニア・エスンバ村で。写真提供=「Waka Waka Kenya」)
 
■差別する側の意識

 訪れたのは、ケニア西部に位置するエスンバ村。留学先の大学での勉強の合間を縫って、月に1回程度、村に通いました。
  
 ケニア農村部の貧困率は高く、1日3ドル以下で生活する人が約58%に達します(世界銀行、2026年発表)。エスンバ村でも多くの人が靴を購入できず、スナノミ症に複数回、感染する人も珍しくない状況でした。4人は「SAFE FEET PROJECT」と題して、スナノミ症の治療や予防を推進するプロジェクトを実施しました。
  
 衛生用品を開発・販売し、スナノミ症の治療活動にも尽力してきたサラヤ株式会社(大阪市)と、現地法人のサラヤケニア株式会社の協力を得て、300人以上の治療を支援。予防策として靴の配布も行いました。
  

治療薬を塗る前に、足をきれいに洗う
治療薬を塗る前に、足をきれいに洗う
治療薬「ジガーローション」を足に塗る様子。少量でも広がりやすく、刃物を使ってノミを取り除いていた従来の方法よりも安全に治療できる
治療薬「ジガーローション」を足に塗る様子。少量でも広がりやすく、刃物を使ってノミを取り除いていた従来の方法よりも安全に治療できる
プロジェクトでは靴の配布も。靴を履くことが最も効果的な予防策となる
プロジェクトでは靴の配布も。靴を履くことが最も効果的な予防策となる

  
 さらに、スナノミ症に関する正しい知識の普及にも努めました。同級生から「学校に来るな」と言われ、登校できなくなったスナノミ症の子どももいるなど、偏見と差別が根強く広がっていたからです。
  
 「差別する人々の意識を変えることが、最も重要だと感じました」と西松さんは振り返ります。
  
 そこで4人は、正しい知識を学べる絵本や紙芝居を作成。ある時は小学校の教室で、ある時は個人宅を借りて読み聞かせを行い、スナノミ症の正しい知識と予防策について伝えていきました。この取り組みはケニアの国営テレビやラジオ局にも取り上げられました。
  
 プロジェクトの前後には、患者へのアンケート調査を行いました。すると、「スナノミ症が原因で差別を受けた」と回答した人が68・3%から11・8%へ減少。正しい知識を伝えることは、差別をなくす上で一定の効果が期待できると分かりました。
  

現地で読み聞かせを行った「紙芝居」の中の一枚。見ただけで伝わるように工夫されている
現地で読み聞かせを行った「紙芝居」の中の一枚。見ただけで伝わるように工夫されている
ケニアの国営テレビやラジオ局からインタビューを受ける西松さん。スナノミ症の実態などについて広く発信した
ケニアの国営テレビやラジオ局からインタビューを受ける西松さん。スナノミ症の実態などについて広く発信した
治療を受けた人たちに、治療前後の変化を尋ねるアンケート調査を実施
治療を受けた人たちに、治療前後の変化を尋ねるアンケート調査を実施
 
■「世界市民」を実践

 実際に活動する中で、目の当たりにした課題もありました。貧しさから靴を買えず、スナノミ症を繰り返し発症する人がいること。さらにスナノミ症以外の病気も深刻だったこと。そのたびに、自分たちの無力さを痛感したといいます。
  
 それでもスナノミ症の問題に立ち向かえたのは、創価大学で学んだ「世界市民」の思想があったからだと、皆は口をそろえます。
  
 創立者・池田大作先生は、1996年に行った米コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジでの講演において、世界市民の要件として「智慧」「勇気」「慈悲」を提示しました。
  
 4人は、その意味を自らに問い続けました。「智慧」とは、困難な中でも何ができるのかを考え抜くこと。「勇気」とは、言語や文化の違いにとらわれないこと。「慈悲」とは、苦しんでいる人のために行動を起こすこと――。「Waka Waka Kenya」の活動は、「世界市民」の三要件を実践する挑戦でした。
  

スナノミ症の子どもたちに、「治ったら靴を履いて何をしたいか」を尋ねたところ、「サッカー」との答えが多数返ってきた
スナノミ症の子どもたちに、「治ったら靴を履いて何をしたいか」を尋ねたところ、「サッカー」との答えが多数返ってきた
他のNPO法人と協力して開催したサッカー大会には、スナノミ症ではない子どもも参加。偏見を恐れて外出できなかった子どもたちと一緒に、元気にボールを追いかけた
他のNPO法人と協力して開催したサッカー大会には、スナノミ症ではない子どもも参加。偏見を恐れて外出できなかった子どもたちと一緒に、元気にボールを追いかけた

  
 現在、4人は就職や大学院進学など、次の舞台への歩みを進めています。
 一方、「Waka Waka Kenya」は、4人の2期生を迎えました。そのうち3人がケニアの大学へ留学中。エスンバ村での活動を開始しました。
  
 西松さんたちが起こした行動は、小さな灯かもしれません。しかし、「Waka Waka」(光る、燃える)という言葉のように、その灯はスナノミ症に苦しんできた人の人生を照らし、明日を生きるための力となりました。そして今、その思いは次の世代へと受け継がれています。
  

 
【スナノミ症とは?】

 メスのスナノミが主に足の皮膚に侵入して発症する寄生虫性皮膚疾患。激しいかゆみや痛みを伴い、重症化すると歩行困難なども引き起こす。
 アフリカ地域では3人に1人が感染しているとされる。貧困により、はだしでの生活を余儀なくされていることが要因の一つに。先進国の患者が少なく、これまで十分な対策が取られてこなかったため、WHO(世界保健機関)から「顧みられない熱帯病(NTDs)」の一つに指定されている。

スナノミ症患者の足裏
スナノミ症患者の足裏
●サラヤケニア株式会社ゼネラルマネージャー 松尾康平氏

 弊社では、以前からスナノミ症の問題解決に取り組み、専用治療薬の開発や、東アフリカ地域での治療活動などを行ってきました。
  
 「Waka Waka Kenya」の皆さんとは、弊社の治療薬を提供する形で協力させていただきました。皆さんは、単に「アフリカの社会問題を解決したい」というのではなく、実際に現場を自分たちで見て、患者とも抵抗感なく接し、一緒に活動を続けてこられました。その姿勢を、私たちは高く評価しています。
  
 そうした皆さんの熱量に、私自身もとても刺激を受けています。これからも、「自分たちは誰のために、何のために活動するのか」を問い続けながら、ますます活動を発展させていくことを願っています。

●「Waka Waka Kenya」設立者 西松和郎さん(経済学部4年)

 活動を通して、無知や無関心が大きな問題であると気付きました。スナノミ症も、先進国での認知度が低いことから「顧みられない熱帯病」に指定されています。
 だからこそ「知る」ことが、私たちにできる第一歩だと思います。「知らなかった」ことに「気付く」だけでも、当事者意識が生まれます。
  
 学生NGO「Waka Waka Kenya」は、どこまでも現地の人々の心に寄り添う団体でありたいと思います。私も今後は、途上国で教育と雇用をつなぐ取り組みに携わることを目指していきます。

  
●「Waka Waka Kenya」の最新情報は、インスタグラムで配信されています
https://www.instagram.com/waka2_kenya/
 
●記事へのご感想を、こちらからお寄せください
https://www.seikyoonline.com/intro/form/kansou-input-mk.html

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