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【創価学園NAVI】 本を好きになる生徒が急増中!――関西創価中学校の読書推進の取り組み 2021年3月14日

  • 本を読み、世界を知り、心を磨く

 “活字離れ”が叫ばれて久しい。「読書は大切」――そう頭で分かっていても、なかなか実践できない人も多い。そうした中、「読書の推進に、全校挙げて取り組んでいる」と聞き、関西創価中学校(大阪・交野市)を訪ねた。

全校でビブリオバトル(書評合戦)

 「皆さんは自分の名前をネットで検索したことはありますか。よほど珍しい名前でない限り、きっと自分と同じ姓、同じ名、すなわち同姓同名の人物が出てくるはずです。
 では、もし同姓同名の人物が日本中を震撼させるような事件を起こしたら、あなたの人生はどう変わっていくのでしょうか。
 私が今回、皆さんに紹介する本は……」
 
 2月上旬、関西創価中学校では、伝統となった「全校ビブリオバトル(書評合戦)」が行われていた。

関西創価中学校の「全校ビブリオバトル」で“学校一”を懸けて本の紹介を行う代表生徒
関西創価中学校の「全校ビブリオバトル」で“学校一”を懸けて本の紹介を行う代表生徒

 ビブリオバトルとは、発表者たちが5分間で自身のお気に入りの本を紹介し、聴衆が読みたくなった本(=チャンプ本)を投票で決める大会だ。全国の学校でも取り入れられているが、関西中はその“熱”の入れようがすごい。
 
 同校では、この催しを5年前から開催。全校生徒が参加し、班・クラス・学年と予選を行い、最後には各学年の代表生徒の中から「学校一」を決める。しかもそれを毎学期、つまり年3回も実施しているのだ。昨年の休校期間中もオンラインで開催された。
 
 今回は、感染防止のため、学年代表に選ばれた3人の発表を各教室で視聴。どの教室でも生徒たちは発表にくぎ付けだった。

「全校ビブリオバトル」の様子は各教室に配信され、生徒たちはモニターに熱視線を送る。発表の後、全校生徒がインターネットで一番読みたい本に投票し、チャンプ本を決める
「全校ビブリオバトル」の様子は各教室に配信され、生徒たちはモニターに熱視線を送る。発表の後、全校生徒がインターネットで一番読みたい本に投票し、チャンプ本を決める

 国語科の舟木実教諭は語った。「大人が“本を読んだ方がいい”と言うより、同級生から“この本、面白いよ”と紹介される方が、よっぽど生徒の心に響くようです。また、ビブリオバトルは、単に本を読むだけでなく、本の主題を的確に捉え、その魅力が伝わるように原稿をまとめ、発表する力が求められます。『読む・書く・話す・聞く』の四つの技能が鍛えられ、“自分で考える力”が磨かれていきます」
 
 これまで、同校の生徒はビブリオバトルの全国大会(2016年度)で優勝したり、全国中学生人権作文コンテスト(18年度)で93万人の応募者の中から入賞(25作品)を果たしたりしている。さらに毎年、数多くの生徒が大阪府や全国規模の作文コンクールなどで入選している。
 
 また、学校全体としては19年度に、「子供の読書活動優秀実践校」の文部科学大臣表彰(関西創価高校とともに受賞)、「朝の読書大賞」優秀校(高橋松之助記念顕彰財団主催)に輝くなど、生徒の読書意欲を高める模範的な取り組みが高く評価されている。

全教員で後押し

 教員全員が一丸となって読書の推進に取り組んでいるのも、関西中の大きな特徴だ。
 
 例えば、「Book Navi Week」。これは、1週間、全教員が授業の冒頭にお薦めの本を紹介するキャンペーン(毎学期実施)である。国語や社会科の教員はもちろん、体育や数学の教員も、愛読する小説や偉人伝について熱く語る。
 
 「若いうちに、たくさんの良書を」――これは、草創期から創立者・池田先生が折に触れ、学園生に訴えてきたことでもある。
 
 「読書が大事である。読書は、頭脳を磨き、精神を鍛え、心を耕し、忍耐力を培う。読んだ分だけ、自分が得をする。活字離れの時代であるからこそ、学園生は、勇んで、読書に挑戦してもらいたい」(04年5月)
 
 こうした創立者の思いを受け、教員たちは生徒一人一人に、読書の喜びを知ってもらうにはどうすればいいかと、模索してきた。

蔵書10万冊を超える図書館

 読書推進を行う上で重要な土台となるのが、学校図書館の存在である。同校の「万葉図書館」は学園創立50周年を迎えた17年度に蔵書数10万冊を超え、中高一貫校の図書館としては国内有数の規模を誇る。
 
 この万葉図書館の運営を支え、学園生に本の魅力を伝えてきたのが、学校司書の硲口浩美さんだ。
 
 「学園生が気軽に足を運べるよう“親しみやすい空間”を目指して、工夫してきました」
 
 図書館の貸し出しカウンター付近には、広々とした本の展示スペースがある。新刊本だけでなく、学校の行事・イベントと連動した書籍が並ぶ。各教科の教員とも協議しながら、授業の内容に合わせたコーナーも作っている。面白さが伝わるような手作りのPOPも添えられている。
 
 この展示スペースは、月に1回以上のペースで展示書籍を更新している。
 
 全校ビブリオバトルが行われる期間に、班予選を勝ち抜いた書籍などを展示すると、あっという間に借り出されてしまうという。中には予約が殺到する本も。

生徒が作成したPOP
生徒が作成したPOP
ビブリオバトルのコーナー
ビブリオバトルのコーナー

 こうした取り組みの結果、貸出冊数は年々増加し、一昨年度の1人平均は23冊に。また昨年の休校期間中には、パソコン等で電子書籍が読める万葉図書館独自のデジタルライブラリーの利用数が急増した。コロナ禍でも学園生の“読書熱”は冷めなかった。
 
 硲口さんは言う。「一般的に中高生の間で動画コンテンツがはやっていますが、映像は本に比べて考える力を養いづらいといわれています。世の中にいろんな考えや情報があふれている時だからこそ、読書を通じて、思考力を鍛え、中学生、高校生時代にしっかりと正しい価値基準を持つ人に成長してほしいと願っています」

成長を実感

 関西中ではホームルーム前の10分間、「朝の読書」を実施。生徒の読書習慣の定着につながっている。
 
 秋山悠さん(3年)は軟式野球部に所属。勉強とクラブ活動で忙しい日々の中、読書を続けられたのは、「朝の読書」のおかげだという。毎朝、本に向き合う時間があることで、自然と本の世界に引き込まれ、一日の隙間時間を見つけては本を開くようになった。
 
 万葉図書館の“常連”の彼は読書を通して「集中力」が磨かれたと語る。
 
 クラブではピッチャーとしてひたむきに練習に励む中、2年の後半から試合で結果を出せるように。3年次では「背番号1」を任された。「本は集中して読まないと、何が書かれているか、分からなくなってしまいます。毎日の読書の習慣によって、集中力が向上し、勉強にも、野球にも生かすことができていると実感しています」

万葉図書館で本を読む関西創価中学生。昼休みには大勢の生徒が訪れ、貸し出しカウンターには行列ができる
万葉図書館で本を読む関西創価中学生。昼休みには大勢の生徒が訪れ、貸し出しカウンターには行列ができる

 入学して本が好きになったという生徒も多い。
 
 吉田美音さん(3年)はもともと読書に対し、苦手意識を持っていた。
 
 1年生の初めてのビブリオバトルで、同級生たちが楽しそうに本を紹介する姿に触発を受けた。薦められた本を読んでみると、「何で今までこんなに面白い本に出合えなかったのだろう」と感動。読書の楽しさに引かれ、多い時には月に10冊程度の本を読むという。
 
 友人の影響を受け、いろんなジャンルの本を読むようになり、人間的な成長も感じている。
 
 「ある小説に意地の悪い登場人物がいました。本を読み進めていくと、実は、複雑な家庭環境で育ったことが描かれていました。そうした読書の経験を重ねる中で、“見えている側面だけが全てじゃない”と思うようになりました。人と接する時には、一面だけを見て判断するのではなく、相手の良い面を探し出そうと思ったんです。すると、今まで以上に多くの人と話せるようになりました」
 
 読書は生徒一人一人の想像力を養い、視野を広げ、豊かな心を育んでいる。“本との出合い”によって、将来の夢を見つけた生徒も数多くいる。生徒たちは自分らしく“読書の翼”を大きく広げ、使命の大空へと羽ばたいていく。

  
  
◆工夫が凝らされた万葉図書館
  
 蔵書10万7000冊を誇る関西創価中学・高校の「万葉図書館」。館内には生徒が読書に興味を持てるよう至る所に工夫が凝らされている。2012年度からは、読書講座、百人一首大会、朗読会などのイベントを館内で開催する「図書館に行こうDay」をスタート。18年度から国語の授業と連動して「名作駅伝」を実施。数人でチームを組み、読んだ「名作」のページ合計数と、感想の内容で順位を決める。生徒の発案でゆるキャラ「マンヨ~ちゃん」も誕生した。

館内にある電子掲示板。図書館のイベントなどがPRされている
館内にある電子掲示板。図書館のイベントなどがPRされている
生徒の発案で誕生したゆるキャラ「マンヨ~ちゃん」。体は一万の葉に覆われ、本を読むと“幸せ”がたまり、花を咲かせるという
生徒の発案で誕生したゆるキャラ「マンヨ~ちゃん」。体は一万の葉に覆われ、本を読むと“幸せ”がたまり、花を咲かせるという

 関西中の生徒によるビブリオバトルの紹介動画はこちら
 
 
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