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〈SDGs×SEIKYO〉 干ばつ、洪水、飢餓……気候危機に苦しむ私たちの声を聞いて ウガンダの環境活動家 バネッサ・ナカテさん 2022年4月14日

  • インタビュー:気候変動と若者
©Mondadori Portfolio/Getty Images
©Mondadori Portfolio/Getty Images

 ウガンダ出身のバネッサ・ナカテさんは、気候危機への対策を求める若者のストライキを、同国で初めて行った25歳の環境活動家。COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)などの国際的な舞台で、「アフリカの声」を世界に伝えてきました。そんな彼女に、アフリカが直面する課題や現在の活動について聞きました。(取材=木﨑哲郎、サダブラティまや)

◆最初のストライキ

 ――ナカテさんが環境活動家になった経緯について教えてください。
  
 私が大学4年生だった2018年、アフリカ東部で大洪水が発生しました。ウガンダでも洪水や土砂崩れが発生し、東部の山間部では51人が亡くなり、1万2000人が避難を余儀なくされました。ある山村では、小学校の校舎に土砂がなだれ込み、子どもたちも命を失いました。

 それまで遠い未来の話だと思っていた気候変動の危機が、「今、目の前で起きている」と気付いたのです。そんな中、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリから始まった「フライデーズ・フォー・フューチャー」(金曜日に学校ストライキを行い、気候変動対策を訴える世界的な運動)について学びました。自分よりも年下の彼女の勇敢な姿に、「自分も何かしなくては」との衝動に駆られたのです。

 2019年1月、それは空気がひんやりとした日の朝でした。私は、「自然は命」「木を植えることは、森を植えること」「今こそ気候ストライキを」と書いた手作りのプラカードを手に、弟やいとこたちを連れて、首都カンパラの市場やショッピングモールへと向かいました。

 初めてのストライキです。“何を言われるだろう、どんな目で見られるだろう”と心は不安でいっぱいで、足の感覚がなくなるほど緊張しました。ですが、「一人でも多くの人に、このメッセージを届けるんだ」と自分に言い聞かせ、プラカードを掲げて立ち続けました。
  
 ――ウガンダで若者がストライキを行うには大きな困難が伴うと伺いました。
  
 以前、国会議事堂の前でストライキをしたことがあります。その時は、警備員に対して、私たちの活動が政治目的ではなく、あくまで環境への意識を啓発するものであることを、何度も説明しないといけませんでした。

 私の友人の中には、同じように議事堂前でストライキを行い、逮捕されてしまった人もいます。

 またウガンダでは、親が経済的に大変な苦労をして、子どもを学校に送り出しています。子どもが学校を休み、ストライキを行えば、停学や退学になりかねません。子ども自身も親の苦労を思うと、そんなことはできません。

 そこで私は自ら学校に出向き、許可を得た上で、気候変動について子どもたちに語る活動を始めました。私が木を守ろうとしていること、洪水から人々を守ろうとしていること……。思いを率直に伝えると、子どもたちも気候変動対策の重要性を深く理解してくれるようになりました。

豪雨により河川の堤防が決壊し、土砂災害が起きたウガンダ東部。51人が命を落とした(2018年10月) ©新華社/アフロ
豪雨により河川の堤防が決壊し、土砂災害が起きたウガンダ東部。51人が命を落とした(2018年10月) ©新華社/アフロ
◆写真から消された

 ――環境活動家として転機となったのが、2020年1月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)です。アメリカの通信社が、各国の若い活動家が並んで立つ写真を配信した際、左端にいたナカテさんだけを切り取って消していたのです。ナカテさん以外は皆、白人でした。
  
 写真を見たのはウガンダに帰国する当日です。涙が止まりませんでした。

 私は、アフリカを代表してダボスにいると感じていました。写真から「自分が消された」ことは、「アフリカが消された」のと同じです。気候変動の影響によるアフリカの問題が、国際社会から消されている、ということです。そしてこれは、明らかな人種差別でした。

 会議に際した記者会見で私が訴えたのも、「気候変動による一番の被害者であるアフリカの声に、ちゃんと耳を傾けてほしい」ということでした。

 アフリカの温室効果ガス排出量は、世界全体の4%以下です。しかし今、気候変動の甚大な被害を受けているのはアフリカなのです。

 20年2月、ダボス会議の1カ月後には、異常気象により繁殖したバッタの大群がウガンダにも襲来しました。アフリカ東部の農作物が食い荒らされ、何百万人もの人々が飢餓の危機に直面しました。また同じ年の5月には、豪雨によりソマリアの町が流され、ウガンダでも病院が濁流にのみ込まれました。

 世界は、産業革命後の平均気温の上昇を「1・5度」以下に抑えようとしています。しかし、すでに1度以上が上昇したとされる現時点で、アフリカは破滅的な状況です。

 ダボス会議の報道写真を巡り、私が批判の声を上げると、アフリカ内外の人々から“泣きわめく赤ん坊”“感情的な女性”など、偏見に満ちたコメントを浴びせられました。

 「声を上げる」ことは、リスクを伴うものです。しかし、差別や不正義に対し、感情を抑える必要があるでしょうか。黙っていてはいけないと思います。この事件をきっかけに、私は以前よりも大胆に、はっきりと声を上げるようになりました。

 アフリカの女性として、気候変動、環境、人種やジェンダー平等などの問題解決のために、できる限りのことをしていこうと誓ったのです。

2020年1月、スイスでのダボス会議の開催に際し、各国から若い環境活動家が集結。アメリカの通信社がこの写真を配信した際、左端のナカテさんだけが切り取られていた ©AP/アフロ
2020年1月、スイスでのダボス会議の開催に際し、各国から若い環境活動家が集結。アメリカの通信社がこの写真を配信した際、左端のナカテさんだけが切り取られていた ©AP/アフロ
◆熱帯雨林を守る

 ――ナカテさんは、ウガンダ各地の学校にソーラーパネルや、環境に優しいコンロを設置する活動にも取り組んでいます。
  
 首都から離れた町にある多くの学校には、電気がありません。雨が降ると、室内が暗くて教科書も読めなくなってしまいます。ソーラーパネルの設置により、教室に明かりがともり、授業時間を延ばすことができました。学校に通う生徒も増えました。

 また学校の調理場では火を使うのに、まきを燃やしていますが、それが多くの木の伐採につながっているのが実情です。環境に優しいコンロを設置することで、自然を守り、調理場の空気汚染を防ぐことにもなっています。
  
 ――ウガンダと国境を接するコンゴ盆地の熱帯雨林の保護についても、強く訴えていますね。
  
 コンゴ盆地の熱帯雨林は、アマゾンに次いで世界で2番目の広さです。しかし、違法な伐採、道路建設、鉱物資源の採掘が続いており、2000年から2014年の間に、バングラデシュの国土よりも広い面積の森が消えました。この熱帯雨林は2100年までに消滅するかもしれない、との予測もあります。

 活動を進める中で驚いたのは、こうした熱帯雨林が存在すること自体、全く知らない人もいるという事実です。

 コンゴ盆地の熱帯雨林は、7500万人の生活を支えており、さらにオカピ(キリン科の動物)など多種多様な生物のすみかです。この森林が「誰にも知られないまま」消えてしまうのは絶対に防がねばなりません。

ウガンダの首都郊外にある森を歩くナカテさん㊨(昨年12月)。ここでは森林破壊の対策として、植林運動が進んでいる ©AP/アフロ
ウガンダの首都郊外にある森を歩くナカテさん㊨(昨年12月)。ここでは森林破壊の対策として、植林運動が進んでいる ©AP/アフロ
◆女性教育に力を

 ――池田SGI会長はかねて、21世紀は「女性の世紀」であり、「アフリカの世紀」である、と訴えてきました。その根底には、“一番苦しんだ人が、一番幸せになる権利がある”との仏法を基盤とした哲学があります。2005年にはノーベル平和賞受賞者でケニアの環境副大臣だったワンガリ・マータイ博士と会見し、女性の持つ力などを巡って語り合っています。
  
 そうでしたか! 私はマータイさんを心から尊敬しています。彼女は、環境保護、そして女性のエンパワーメント(能力開花)の分野で後世に道を開きました。彼女は、私の人生の模範でもあります。
 〈マータイ博士はアフリカ全土に広がる「グリーンベルト運動」の創設者。砂漠化地域への植林を通し、緑化と女性の社会参画を促した〉

 まさに気候変動対策において、鍵を握るのは女性教育です。

 アフリカで、気候変動の影響を正面から受けているのが、女性たちです。各家庭で食料を確保する役割を担い、災害時には、長い距離を歩いて飲み水を運ぶのも彼女たちだからです。

 つまり、女性の教育に力を入れることは、ジェンダーの不平等を解決するだけでなく、困難に直面した際の、女性たちのレジリエンス(回復する力)を構築することにつながります。

 一人の女性を啓発することは、多くの人の命を守ることです。その良い影響は、女性個人だけでなく、家族やコミュニティー、さらには世界に波及していくのです。

深刻な干ばつにより、エチオピア、ケニア、ソマリアでは1300万人が飢餓に直面していると推定される。水不足のため、動物も死んでいる(昨年10月、ケニア北部で) ©AP/アフロ
深刻な干ばつにより、エチオピア、ケニア、ソマリアでは1300万人が飢餓に直面していると推定される。水不足のため、動物も死んでいる(昨年10月、ケニア北部で) ©AP/アフロ
◆信仰こそ希望の源

 ――ナカテさんは、SNSを活用しながら、気候変動対策に立ち上がるアフリカ各地の若者たちを紹介し、同世代の連帯を築く「ライズ・アップ・ムーブメント」も推進しています。青年の力について、どう思われますか。
  
 私が大事にしているのは、「若者の声」「若者の姿」を発信していくこと。「もっと経験のある年配の活動家を紹介したら?」と言う人もいます。しかし私は、運動に目覚めたばかりの若者たちの存在が大切だと思います。どんな変革も、新しい人が立ち上がることで始まるからです。

 環境活動といっても、難しいことではありません。気候変動について、家族や友人に話してみることから始めてもいい。世界を変えるのに、「小さすぎる行動」も「小さすぎる声」もありません。「一人一人に世界を変える力がある」のです。

 私は常に、「自分は一人ではない」ということを思い起こしています。今の自分の挑戦が「グローバルな運動の一部である」と感じると、勇気が湧きます。
 また私にとって、キリスト教への信仰が、未来に希望を見いだす源泉となっています。希望こそが、行動を起こす力を与えてくれるのです。

 近所の人が笑顔で暮らす姿。子どもたちが食べ物に困ることなく、学校に楽しく通える日常。誰にとっても健全で、安心できる世界――。その実現のために生きる中にこそ、本当の幸福があると信じています。

ウガンダの首都カンパラで気候危機への対策を訴えるナカテさん(2020年9月) ©ロイター/アフロ
ウガンダの首都カンパラで気候危機への対策を訴えるナカテさん(2020年9月) ©ロイター/アフロ

〈プロフィル〉
 Vanessa Nakate
 1996年、ウガンダの首都カンパラ生まれ。2019年、気候変動対策を求める若者のストライキを同国で初めて開始し、教育支援や熱帯雨林の保護など幅広い活動を展開。国連若者気候サミットやCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)で発言を重ね、アフリカを代表する環境活動家となる。昨年、著書『A Bigger Picture』を発刊。

 
 

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