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ゼミ探訪「創大理工学部の研究室」 2021年12月6日

  • 〈創大マガジン〉

 創価大学や創価女子短期大学に入ると、どんなことが学べるの?――そうした疑問に答えるため、各学部のゼミや研究室を訪問。そこで学ぶ学生に、研究の面白さ、やりがいなどを聞いてみた。そんな“ゼミ探訪”の第1弾は、理工学部(情報システム工学科と共生創造理工学科)。

●共生創造理工学科 清水研究室
“新しい液体”を使って 廃棄物等から有用な物を

 創大の正門を入ってすぐ右手にあるのが「理工学部棟」。中には、さまざまな実験器具や機材が置かれた部屋があり、理系っぽい。
 
 訪れたのは「共生創造理工学科」。学科長を務める清水昭夫教授の研究室だ。
 
 「どうぞ、入ってください」。迎えてくれたのは、同学科4年の菊池廣大さん。研究室を案内してくれた。

菊池さん(手前)の研究を見守る清水教授
菊池さん(手前)の研究を見守る清水教授

 「これが、研究で使っている『イオン液体』です」
 
 そう言って瓶に入った黄色の液体を見せてくれた。
 
 イオン液体とは、液体状のイオン物質のこと。身近なものでは食塩もイオン物質だが、食塩は約800度まで熱しないと液体にならない。しかし、このイオン液体は、100度以下の低温で液体になったものだという。
 
 水、有機溶媒(水に溶けない物質を溶かす液体)に次ぐ“第3の液体”として注目され、宇宙での利用や、電池の素材としても研究が進んでいる。
 
 「この液体は『蒸発しない』『燃えない』という特徴のほか、『よく物を溶かす』という、とてもユニークな特性があるんです。この液体に、私はセルロースという物質を溶かしています」
 
 セルロースは木材などに多く含まれ、地球上で最も豊富な有機物といわれる。セルロースは水には溶けないが、イオン液体では溶かすことができるという。
 
 そこには、メリットがある。例えば、固形の木材よりも、液体にできた方が、それを型に流して固めることで、プラスチックのように自由な形に加工できる。間伐材や廃材を使えば、資源の有効利用にもなる。
 
 「近年、プラスチックゴミによる環境汚染が問題になっていますが、そうしたプラスチック製品を、この自然由来のセルロースの製品に置き換えることで、地球環境を守る力にもなるんです!」
 
 興味が湧いてきたところで、実際にやって見せてもらった。

セルロースを溶かしたイオン液体が入った容器に純水を入れる
セルロースを溶かしたイオン液体が入った容器に純水を入れる

 イオン液体に、白い粉状のセルロースを溶かす。十分に溶けると、サラサラだった液体が、水あめのように粘度が高くなる。そこに純水を入れると、下にイオン液体、その上に水の層ができる。しばらくすると、水との境界面の辺りから白い物体が出てきた。これは、イオン液体に溶け込んでいたセルロースが水と結び付こうとして、再び固体になったものだという。

実際にセルロースのゲル化の様子を見せてくれた菊池さん
実際にセルロースのゲル化の様子を見せてくれた菊池さん

 「固体にすることを『ゲル化』と言うんですが、四角い容器に入れてゲル化させたものがこちらです」
 
 見せてくれたのは、ナタデココのような四角い乳白色の物体。触ると弾力があり、乾燥させると、小さく堅くなる。形を維持したままゲル化させるのに苦労したという。

四角い型を使ってゲル化させたセルロース
四角い型を使ってゲル化させたセルロース

 最後に清水教授にも話を聞いてみた。「“天然物や廃棄物から、有効利用できるものを取り出したい”というのが、この研究室のテーマです。イオン液体は、物質的に非常に安定していて再利用もしやすいので、SDGsの観点でも大きな可能性を秘めています。化学は身近な生活とつながっています。学生の若い発想で、社会に役立つ研究を進めていきたい」

【学生の声】鄭宣珠さん(環境共生工学専攻・修士1年)

 私は高校卒業後、韓国から創価大学に留学しました。日本語別科、理工学部を経て大学院の清水研究室で学んでいます。
 私は、ゲル化させたセルロースの強度実験などをしています。セルロースはゲル化の過程で、中に小さな気泡ができてしまいます。そのままでは的確な強度を測ることができないので、できるだけ均一な“ゲル”を作ろうと、3カ月近く試行錯誤を続けて、その作成方法を確立しました。トライアル・アンド・エラーの繰り返しは地味ですが、成功した時の達成感は研究の醍醐味です。
 何度も作るうちに“ゲル”にも愛着が湧いてきました。つぶしたり、燃やしたりしていますけど(笑い)、とてもかわいいです。もっと良い物を作りたいと、日々、研究を重ねています。
 植物由来のセルロースの“ゲル”は、生体適合性に優れ、コンタクトレンズなどの医療の分野でも注目されています。
 将来は、人々が安心して暮らせる技術の開発に携わりたいと考えています。
  
  

●情報システム工学科 今村研究室
他の分野と掛け合わせ 仮想技術の応用を探る

 続いて向かったのは、「情報システム工学科」の今村弘樹教授の研究室。まず教授に話を聞いた。
 
 「以前は、AI(人工知能)の画像認識処理をメインにやってきました。加えて現在は、VR(仮想現実)や、カメラを通して見た現実の風景にリアルタイムでイラスト等のデジタル情報を重ね合わせるAR(拡張現実)技術、仮想と現実の世界を融合させるMR(複合現実)技術なども扱っています」
 
 さっそく研究室に入ってみると、大きなゴーグルのような物を着けている学生が。手を前に伸ばして、上下左右に動かしている。

ゴーグル型の機器を着けて手を動かす飯田さん㊥を、今村教授㊧と中村さんが見つめる
ゴーグル型の機器を着けて手を動かす飯田さん㊥を、今村教授㊧と中村さんが見つめる

 何をしているのか聞いてみた。
 
 「これは、体の動きに応じて音が出るシステムを作っています。まだまだ開発途中ですが、ゆくゆくは踊りやステップに合わせて音楽を奏でられるようにしたいと思っています」
 
 “物は試し”と、体験させてもらった。
 
 ゴーグル型の機器を着けると、目の前に大きな虹色のキューブ(立方体)が現れた。右手を伸ばしてそれに“触れる”と、「ターン、ターン」とピアノの音がする。その手を左に動かすと、「タン、タン」「タタタタ」と左に行くほどテンポが徐々に速くなる。さらに、上に動かすと音の高さが上がり、手前に動かすと音量が大きくなる。

ゴーグル型の機器を持つ飯田さん。「画面で見るのと、ゴーグルで見るのとでは、迫力が全然違います。試してもらった時に“すげー”っていう反応があるとうれしいですね」
ゴーグル型の機器を持つ飯田さん。「画面で見るのと、ゴーグルで見るのとでは、迫力が全然違います。試してもらった時に“すげー”っていう反応があるとうれしいですね」

 研究しているのは、飯田大和さん(修士2年)。高校時代にドラムの演奏を始め、大学でもジャズバンドのクラブに所属していたのだという。
 
 「音楽に興味を持ち始めたのが仲間たちと比べて遅かったので、音楽を自在に演奏するための技術不足を感じることがありました。そこで、研究では、誰もが操作できるよう、直感的に音を奏でるシステムを開発しようと思ったんです」
 
 続いて、飯田さんの隣で注射器のような円柱状の部品を組み合わせた装置をいじっている学生にも声を掛けてみた。
 
 「私は、『ハプティクス』といわれる技術や機器の研究をしています」
 
 ハプティクス(触覚技術)とは、機器の振動や動きによって、皮膚感覚を与える技術のこと。応用することで仮想空間で物に“触れた”時に、実際に触ったような感覚を得ることができる。手に着ける装置の研究が多いというが、答えてくれた中村義哉さん(修士2年)が作っているのは足に着ける装置だ。
 

開発中の装置の説明をする中村さん。「足の動きを検知してパソコンに情報を伝える『入力デバイス』と、仮想空間の変化を足に伝える『出力デバイス』の両方の機能を兼ね備えたものを目指してます」
開発中の装置の説明をする中村さん。「足の動きを検知してパソコンに情報を伝える『入力デバイス』と、仮想空間の変化を足に伝える『出力デバイス』の両方の機能を兼ね備えたものを目指してます」

 「仮想空間は、360度、どこまでも世界を広げることができ、動き回ることができます。実際に歩いている感覚が得られたら、面白いんじゃないかと思って」
 
 中村さんは高校時代、足のけがをして、松葉づえで生活していた時期があったそう。大好きなバスケットボールができなくてつらい思いをした経験から、体の不自由な人にも役立つ物を作ってみたいとの考えが、発想の起点になっている。
 
 「仮想現実の技術は、まだ新しく、現在進行形で進化を続けている発展途上の分野です。それを自分の手で開拓できるところに、大きな魅力を感じます」

【学生の声】三宅藍子さん 長谷川佳蓮さん(ともに情報システム学科3年)
長谷川さん㊧と三宅さん
長谷川さん㊧と三宅さん

 〈三宅〉 社会のデジタル化が進み、セキュリティーや画像認識など「情報システム」の分野が大きく広がっています。
 私は今、AR(拡張現実)などに興味があり、空中に画像を表示させる「空中ディスプレー」の研究をしたいと思っています。
 バーチャル技術は、何にでも組み合わせられる面白さがあります。音楽や医療など、先輩たちが興味ある分野と融合させているのを見ていて、とても刺激になります。
 ◇ 
 〈長谷川〉 大学では数学やプログラミングなど、基礎から学べるので安心でした。
 これまで、やりたいことを探すために、いろんなことにチャレンジしてきました。今、Web上で3Dグラフィックを作製・操作できる「WebGL」という技術について勉強しています。
 仮想技術は、“こういうのがあったらいいな”という頭の中のイメージを実現できる技術です。夢を形にできるかもしれないワクワク感があります。

  
  
  
 次のキーワードに興味がある方、さらに詳しく知りたい方は、理工学部のホームページ

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 【共生創造理工学科】
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認定NPO法人フローレンス会長。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、社会課題解決のため、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組など数々の福祉・支援事業を運営。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長

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