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〈インタビュー〉 唐沢寿明さん主演「コーチ」 2025年10月16日

  • テレ東系 金曜 午後9時 ※10月17日からスタート
  • 相手に自発的な成長を促すには――自身が夢や希望を持って生きること

 誰と出会い、どのような影響を受けたかで、人生は変わる――。捜査に失敗して行き詰まる若手刑事たちが、唐沢寿明さん演じる警視庁人事二課に所属する主人公と縁することで、成長していく姿を描くテレ東系の連続ドラマ「コーチ」(金曜、後9・0)。10月17日からのスタートを前に、主演の唐沢さんに作品の魅力を聞いた。

唐沢寿明さん
唐沢寿明さん
◆“冴えないおじさん”の流儀

 物語では、「容疑者に言い負かされて、自供を引き出せない」「体格が大きく、尾行がすぐにバレる」などの悩みを抱える若手刑事たちの元に、“冴えない謎のおじさん”向井光太郎(唐沢)が派遣され、彼らに的確なアドバイスを送る。捜査一課で活躍するという夢を持った彼らを、刑事として、そして人間としても成長させていく。
 
 「主人公の向井が若手を引っ張って事件を解決するというのではなく、前半は若い刑事たちが毎話、主演のようなドラマの作りになっています。僕もあまり前に出るタイプではないので、今回のような役は合っていると思っていて。(話自体は)華々しくはないかもしれないけれど、見たら自然と前向きになれる作品ですよ」

◆「教える」ではなく「引き出す」

 「ティーチング」とは、知識や技術などを“一方的”に教えること。翻って、「コーチ」の派生語である「コーチング」は、対話を通じて相手に気付きを与え、自発的な成長を促すコミュニケーションのことをいう。向井が、挫折した若手刑事たちの潜在能力をどう引き出し、導いていくのかが今作の見どころだ。
 
 「このドラマは、向井が若手に『あれやれ、これやれ』と指示をして、再起させていく話ではないんです。最後は、彼らが自分で気付いて、勝ち取る物語です。現実の生活でも、自ら一歩踏み出す過程がないと、自分の成功体験にならないじゃないですか。経験に勝るものはありません。その部分に注目してもらえれば、見ている人に何か感じてもらえるところがあると思います」

取材に応じる唐沢寿明さん
取材に応じる唐沢寿明さん
◆忘れられないコーチング

 唐沢さんは若手時代、運よく優しい先輩と共演することが多かったと振り返る。その中でも、故・西田敏行さんに演技の相談をした際にかけられた“ある言葉”が忘れられないと話す。
 
 「西田さんから『自分自身の中に夢や希望がなくなったら、見ている人に夢とか希望は与えられないんだ』と言われて。“なるほどな”と、すごく考えさせられました。それからは、俳優としての自分の生きざまを見て、希望を感じてくれる人もいるんだと自分を奮い起こしながら頑張ってくることができました」

◆自分が変われば周りも変わる

 今作では、若手刑事たちに寄り添い、育成する役どころを演じる唐沢さん。令和を生きる若い世代へメッセージをお願いすると、温かくも力強い言葉が返ってきた。
 
 「『自分はこういう人間だから』って決めつけてしまうと、人としての幅が広がらないと僕は思う。『自分はここを変えたい』と思うことがあるなら、まずは一日でいいから、習慣を変えてみればいいんじゃないかな。そうしたら少しだけ人生が変わるよ。その積み重ね。自分が変わっていけば、周りも変わっていくからね」

◆取材後記

 「俳優になりたい」――戦隊シリーズのスタントマン、ドラマのエキストラなどから芸能界での生活が始まった唐沢さん。地道に苦労を重ねながら、夢を追い続けてきた一人だった。これまで、さまざまな人と出会い、どんな役でも演じてきた経験が、「振り返ると全部、意味があった」と。人間は人間の中でしか成長できないことを学んだ。
 
 唐沢さんが繰り返し語っていたのは、「俳優は地味な仕事」という言葉。“唐沢寿明”ではなく、演じる役に見えるまで、せりふ一つにもこだわって突き詰めていく。「それが楽しいから」と話す唐沢さんの瞳の奥に、俳優としての矜持が輝いていた。
 
 努力は振る舞いに、信念はまなざしに表れる――。インタビュー中の飾らない人柄と脈打つ情熱に、取材している自分も知らず知らずのうちに“コーチング”していただいたようだ。

◆第1話(10月17日放送)あらすじ
©「コーチ」製作委員会
©「コーチ」製作委員会

 東京・池袋西署の係長・益山瞳(倉科カナ)は、若くして管理職となったが、年上の部下やマイペースな後輩たちをまとめるのに苦労していた。
 
 ある日、警視庁の人事二課から新入りが来るという異例の辞令が。その人物は、冴えない見た目をした向井(唐沢)。経歴は謎だらけだが、刑事としてはやけに有能で、捉えどころのなさに、瞳は困惑する。
 
 そんな中、ある一軒家で殺人事件が発生。瞳が現場に駆け付けると、そこには既に向井の姿があり……。

【記事】松浦伸二 【写真】吉橋正勝

◆プロフィル

 からさわ・としあき 1963年6月3日生まれ、東京都出身。92年、ドラマ「愛という名のもとに」で注目を浴びる。97年、映画「ラヂオの時間」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受ける。以降、映画やドラマ、舞台での活躍のほか、「トイ・ストーリー」シリーズなどの吹き替えも担当する。主演作は、ドラマ「白い巨塔」(2003年)、映画「20世紀少年」シリーズなど。近年は映画「九十歳。何がめでたい」(04年)、ドラマ「万博の太陽」(同年)、本年は「プライベートバンカー」(25年)に出演。

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せきや・なおや 1975年新潟生まれ。東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長・教授(災害情報論、社会心理学)。東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員。福島大学食農学類客員准教授を兼務。近著に『災害情報――東日本大震災からの教訓』がある

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