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【言語化特集】言葉と歩む若者たち〈1〉――「講談弁護士」として挑戦
【言語化特集】言葉と歩む若者たち〈1〉――「講談弁護士」として挑戦
2025年5月12日
「確実な遠回り」の先に
「確実な遠回り」の先に
講談と法律を掛け合わせる唯一無二の弁護士がいる。
〈今から申し上げますお話は、磯野波平という老人が霊山へと旅立ったところから始まります。葬儀が終わったら一段落かと思いきや、ここに最も大きな問題が残っておりました。それが……相続でございます〉
池田六法さん=東京都目黒区、男子地区リーダー=は、法律と話芸をなりわいとする「講談弁護士」だ。相続講談や労働法講談などオリジナルの法律講談を創作し、今年から活動を始めている。今春からは養成所にも入学し、弁護士芸人を目指して挑戦中だ。
六法さんは語る。「難しいと思われがちな法律や裁判例を講談にすることで、分かりやすく面白く伝えることができます」
講談と法律を掛け合わせる唯一無二の弁護士がいる。
〈今から申し上げますお話は、磯野波平という老人が霊山へと旅立ったところから始まります。葬儀が終わったら一段落かと思いきや、ここに最も大きな問題が残っておりました。それが……相続でございます〉
池田六法さん=東京都目黒区、男子地区リーダー=は、法律と話芸をなりわいとする「講談弁護士」だ。相続講談や労働法講談などオリジナルの法律講談を創作し、今年から活動を始めている。今春からは養成所にも入学し、弁護士芸人を目指して挑戦中だ。
六法さんは語る。「難しいと思われがちな法律や裁判例を講談にすることで、分かりやすく面白く伝えることができます」
張扇と扇子で釈台をたたく六法さん
張扇と扇子で釈台をたたく六法さん
幼い頃は、“しゃべり”とも“勉強”とも無縁の少年だった。中学2年の夏、名門高校にあこがれるも、当時の成績では全く及ばなかった。担任の先生からは、「宝くじがあたるより合格は難しい」と言われた。でも、母は違った。「あなたなら絶対に合格できる!」
それから六法さんは、勉強法を工夫することで成績が急上昇し始め、なんと「奇跡の合格」を果たす。しかし、入学後、自分よりはるかに優秀な同級生たちに出会い、自信を喪失してしまう。そこで、六法さんは勝負にでる。生徒会長選挙に立候補したのだ。他の候補者は、人気者や部活の主将ばかり。「僕は泡沫候補でした(笑)」
六法さんは、秘策を考えた。全校生徒が参加する最終演説の場で、演台の前で縦横無尽に動きながら、原稿を持たずに自分の言葉で語り始めたのだ。聴衆からはどよめきと拍手が起き、まさかの逆転当選。この経験が“伝える喜び”を目覚めさせ、「将来はしゃべる仕事がしたい」と思い、弁護士を志すようになった。
創価大学時代は、司法試験に向けて勉強漬けの日々。3年間で早期卒業し、法科大学院を経て、司法試験に一発合格した。念願の弁護士になったが、その後の現実に打ちひしがれる。弁護士の仕事の中心は、しゃべることではなく、「書面を書く」ことだったのだ。さらにはストレスフルな毎日に、精神的に疲弊してしまう。そんな六法さんを励ましてくれたのが、男子部の先輩たちだった。「この時ほど学会の温かさを感じたことはありません」
幼い頃は、“しゃべり”とも“勉強”とも無縁の少年だった。中学2年の夏、名門高校にあこがれるも、当時の成績では全く及ばなかった。担任の先生からは、「宝くじがあたるより合格は難しい」と言われた。でも、母は違った。「あなたなら絶対に合格できる!」
それから六法さんは、勉強法を工夫することで成績が急上昇し始め、なんと「奇跡の合格」を果たす。しかし、入学後、自分よりはるかに優秀な同級生たちに出会い、自信を喪失してしまう。そこで、六法さんは勝負にでる。生徒会長選挙に立候補したのだ。他の候補者は、人気者や部活の主将ばかり。「僕は泡沫候補でした(笑)」
六法さんは、秘策を考えた。全校生徒が参加する最終演説の場で、演台の前で縦横無尽に動きながら、原稿を持たずに自分の言葉で語り始めたのだ。聴衆からはどよめきと拍手が起き、まさかの逆転当選。この経験が“伝える喜び”を目覚めさせ、「将来はしゃべる仕事がしたい」と思い、弁護士を志すようになった。
創価大学時代は、司法試験に向けて勉強漬けの日々。3年間で早期卒業し、法科大学院を経て、司法試験に一発合格した。念願の弁護士になったが、その後の現実に打ちひしがれる。弁護士の仕事の中心は、しゃべることではなく、「書面を書く」ことだったのだ。さらにはストレスフルな毎日に、精神的に疲弊してしまう。そんな六法さんを励ましてくれたのが、男子部の先輩たちだった。「この時ほど学会の温かさを感じたことはありません」
六法さんが、受験生時代から大好きだったのが、人気講談師のラジオ番組だ。愚痴とぼやきで爆笑を誘うトークに腹を抱えるほど笑った。さらには、2024年1月の「大白蓮華」に掲載されていた上方講談師・旭堂南歩さんの記事に出あう。六法さんは決意した。「自分も講談をやってみよう!」
“初舞台”は創価学会の座談会。青年部企画で、六法さんは講談を披露することになった。見よう見まねでやったものだったが、参加者は立ち上がって拍手をしてくれた。「僕の講談で地区の皆さんが喜んでくださったのが、本当にうれしかった」
その後の座談会でも講談を披露する中で、六法さんはひらめく。「僕はせっかく弁護士なんだから、法律を題材としたオリジナル講談をつくれば、しゃべる仕事ができるんじゃないか」。創価大学の先輩でもある旭堂南歩さんにお願いし、講談の稽古をつけてもらい、懸命に練習を重ねた。
そして、心に刻んできた、池田先生の「青春の力走に恐れなし まず十年を目標に 使命の大道を一歩また一歩 創価の負けじ魂で進んでくれ給え!」との指針を通し、六法さんは「確実な遠回り」の人生を歩み始める。
六法さんが、受験生時代から大好きだったのが、人気講談師のラジオ番組だ。愚痴とぼやきで爆笑を誘うトークに腹を抱えるほど笑った。さらには、2024年1月の「大白蓮華」に掲載されていた上方講談師・旭堂南歩さんの記事に出あう。六法さんは決意した。「自分も講談をやってみよう!」
“初舞台”は創価学会の座談会。青年部企画で、六法さんは講談を披露することになった。見よう見まねでやったものだったが、参加者は立ち上がって拍手をしてくれた。「僕の講談で地区の皆さんが喜んでくださったのが、本当にうれしかった」
その後の座談会でも講談を披露する中で、六法さんはひらめく。「僕はせっかく弁護士なんだから、法律を題材としたオリジナル講談をつくれば、しゃべる仕事ができるんじゃないか」。創価大学の先輩でもある旭堂南歩さんにお願いし、講談の稽古をつけてもらい、懸命に練習を重ねた。
そして、心に刻んできた、池田先生の「青春の力走に恐れなし まず十年を目標に 使命の大道を一歩また一歩 創価の負けじ魂で進んでくれ給え!」との指針を通し、六法さんは「確実な遠回り」の人生を歩み始める。
25年2月には、六法さんが出演したSGI交流会に参加してくれた友人が、講談をきっかけに信心に興味を持ち、一緒に唱題にも挑戦している。
現在、六法さんは、法律系資格予備校の講師として働いている。とある参考書で「予備校講師の仕事は受験指導と“話芸”だ」という言葉を目にし、講談で培った話芸を生かせるのではないかと思ったからだ。
「講談弁護士としての講談と予備校講師としての講義には共通点があります。それは、法律を分かりやすく伝えること。法律って本当に難しい。自分の“言語化力”が試されます。インプットした知識を凝縮し、話芸としてアウトプットしていく、言葉をつむぎ出す挑戦です」。六法さんは“確実な遠回り”を続けている。
25年2月には、六法さんが出演したSGI交流会に参加してくれた友人が、講談をきっかけに信心に興味を持ち、一緒に唱題にも挑戦している。
現在、六法さんは、法律系資格予備校の講師として働いている。とある参考書で「予備校講師の仕事は受験指導と“話芸”だ」という言葉を目にし、講談で培った話芸を生かせるのではないかと思ったからだ。
「講談弁護士としての講談と予備校講師としての講義には共通点があります。それは、法律を分かりやすく伝えること。法律って本当に難しい。自分の“言語化力”が試されます。インプットした知識を凝縮し、話芸としてアウトプットしていく、言葉をつむぎ出す挑戦です」。六法さんは“確実な遠回り”を続けている。