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【創価学園NAVI】 コロナ禍と学校行事 2020年12月12日

  • 試練の中で新たな伝統を築く

 本年は、新型コロナウイルスの感染防止のため、全国の教育現場で、学校行事の中止や縮小、開催方法の見直しが余儀なくされている。例年と違う取り組みに創価学園生はどう向き合ったのか。東西の創価高校生の創意工夫の挑戦を紹介する。
  
  

教育研修旅行

 「『46期の朝かラジオ』! みなさん、おはようございます。さあ、本日も始まりました!」
 
 「この配信では、ステイホーム中の46期生のあんなことやこんなことを聞き出して紹介。皆の“おうち時間”を、より有意義なものにしていこうと行っています!」
 
 午前8時50分、元気な声がパソコンやタブレット端末から聞こえてくる。
 
 これは関西創価高校(大阪・交野市)の3年生(46期生)が本年の休校期間中に取り組んだ、ビデオ会議システムを活用した“ラジオ番組”である。

関西高3年生による「46期の朝かラジオ」の告知・紹介画像。“朝からラジオ”の「ら」と「ラ」の重複を取り除いて、ネーミングした
関西高3年生による「46期の朝かラジオ」の告知・紹介画像。“朝からラジオ”の「ら」と「ラ」の重複を取り除いて、ネーミングした

 5月のゴールデンウイーク明けから7月の一斉登校までの間、オンライン授業が始まる前の約20分間、ライブ配信された。
 
 パーソナリティーは毎回、交代で2人の生徒が務める。それ以外のリスナーの生徒は、ビデオ会議システムの「映像」も「入力音声」もオフにして番組を楽しむ。
 
 この「朝かラジオ」を企画・運営したのは、3年生の教育研修旅行(=修学旅行)の実行委員会の生徒である。
 
 関西高3年生は6月に、研修旅行として、世界遺産の岐阜・白川郷などを訪れ、地球環境や生物を保護する重要性を学ぶ予定だった。例年であれば、4・5月は研修旅行に向けて、学習会や対話会、学年集会などを重ね、団結を強めていく期間である。

休校期間中、ビデオ会議システムで朝のホームルームを行う関西高の3年生
休校期間中、ビデオ会議システムで朝のホームルームを行う関西高の3年生

 しかし、本年はコロナ禍によって、今までと同じようにはいかない。4月中旬からオンライン授業は始まったものの、生徒同士の“つながりの場”をもてずにいた。
 
 研修旅行の実行委員長を務めた竹村英一さん(3年)。「僕たちの学園生活をコロナに踏みにじられたくなかった。こうした状況でも、学園生として友情を深め、触発し合いたい。そうした思いを皆で語り合う中、『朝かラジオ』として形になっていきました」
 
 この取り組みの一番の魅力は、リスナーの生徒が参加する多様な企画である。
 
 生徒が休校期間に励まされた言葉を紹介する「パワーワード・コレクション」。
 
 友達の頑張りを紹介し、その友達に日頃は言えない感謝を伝える「友達ダイアリー」。
 
 地元の魅力を紹介する「ホームタウンツアー」では、寮生・下宿生の多彩な“郷土自慢”も披露された。
 
 「暗いニュースばかりで気分が沈みそうだったけれど、元気になる言葉を教えてもらった」
 「友達の新たな一面を知ることができて、毎回、感動していました」
 
 5月末、生徒たちの安全を第一に考え、研修旅行の中止が決まった。
 
 そうなることを覚悟していた生徒ですら、中止の発表を聞き、ショックを受けた。それでも3年生は前を向き、実行委員会のメンバーを中心に確認し合った。
 
 「研修旅行に行くことだけが目的ではなく、それまでの過程で一人一人が成長することが、“最も大切”じゃないか」と。
 
 7月末、3年生たちは岐阜の人々と、オンラインでの交流会を開催。研修旅行で出会うはずだった現地の方々へ、真心こもるあいさつと演奏を届けた。その姿は晴れ晴れとしていた。

教育研修旅行の代替行事となった、岐阜各地の方々とのオンライン交流会の模様
教育研修旅行の代替行事となった、岐阜各地の方々とのオンライン交流会の模様

 実行委員長の竹村さんと山田莉瑚さん(3年)は語った。
 
 「研修旅行は中止となりましたが、“今何ができるのか”と皆でアイデアを出し合い、挑戦を重ねる中で、学年が一段と団結し、友情が深まりました。思い通りにいかない日々だからこそ、『価値を創造する』という創価教育の精神を学べたと思います」

オンライン学園祭

 東京の創価高校(小平市)では本年、10・10「情熱の日」を記念した「学園祭」を“オンライン”で開催することに決めた。
 
 果たしてオンラインで、納得できる内容となるのか――初めての試みに、戸惑う人も多かった。
 
 「情熱の日」実行委員会の生徒たちは夏休み、過去の「情熱の日」に贈られた創立者・池田先生のスピーチなどを学び合った。
 
 「一時の勝ち負けよりも大事なことは、何か。それは、『がんばろう! 戦いきろう!』という熱き“情熱”が、わが胸に赤々と燃えているかどうかです」(1995年、第1回「情熱の日」へのメッセージ)
 
 また、学園の歴史をひもとく中で、一つ一つの伝統は、何もないところから築き上げられたものであることを知った。
 
 「先輩たちも試行錯誤を重ねてきたんだ。私たちも新たな伝統を作ろう!」
 
 実行委員会は前例のない行事の開催に向け、決意をテーマに託した。「今に勝て! 次代を担う 僕らの情熱 燃やSOKA!!!」
 
 こうした実行委員会のメンバーを中心に、生徒たちは、新たな取り組みに勇んで挑戦を開始した。

東京高の「情熱の日」実行委員会が立ち上げたオンライン学園祭の特設サイト(限定公開)。当日までのカウントダウン画像、出演団体の紹介、「情熱の日」の学習資料など、全て生徒が考え、運営した
東京高の「情熱の日」実行委員会が立ち上げたオンライン学園祭の特設サイト(限定公開)。当日までのカウントダウン画像、出演団体の紹介、「情熱の日」の学習資料など、全て生徒が考え、運営した

 オンライン学園祭では、クラスやクラブ、委員会ごとに30分の映像を作成。3日間にわたり、インターネットで各映像を放映することに決めた。また各映像は、国連が示す17項目の「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマにした作品と定め、映画や模擬番組など、映像の種類は問わないことにした。
 
 初めての映像制作は、困難の連続だった。
 
 “何を伝えたいか”と何度も話し合いを重ね、脚本を練り上げていった。衣装や小道具も自分たちの手で作った。撮影班は一つ一つのカメラアングルにもこだわった。

小道具の作成、撮影、動画の編集――“オンライン学園祭”で披露する映像作品のために、準備を進める東京高の生徒たち。どのクラス・クラブ・委員会も魅力にあふれる作品を手掛けた
小道具の作成、撮影、動画の編集――“オンライン学園祭”で披露する映像作品のために、準備を進める東京高の生徒たち。どのクラス・クラブ・委員会も魅力にあふれる作品を手掛けた

 
 こうして学園祭当日、英知と努力が光る映像作品が出そろった。
 
 教員たちは「想像を超える作品の数々に驚きました」と口をそろえる。
 
 今回の学園祭では「創価アカデミー賞」を設置し、優秀な映像作品をたたえている。中でも「最優秀作品賞」に輝いた『32DAYS――シェルターでの日記』(3年2組制作)は、大きな反響を呼んだ。
 
 この作品は、爆撃に遭った町の市民たちが避難先のシェルターで必死に生きる32日間を描いた短編映画。シェルター内では感染症が広がる中、市民は身分の差によって、限られた食料や物品を争うことに。主人公の青年は、不平等を目の当たりにし、“犠牲の上に生きる苦しみ”を知る。主人公が懸命に皆へ協調を働き掛け、それぞれの“正義”を掲げて対立していた人々の心を一つにする――。
 
 厚みのある内容だけでなく、工夫を凝らした舞台セットや衣装、画角や映像の間といった細部にまでこだわった力作だった。 
 
 “総監督”を務めた董福煌さん(3年)は語る。
 
 「クラスの皆で真剣に話し合い、脚本を何度も修正し、撮影し直して、最後まで妥協せずに作り上げました。“負けじ魂ここにあり”と胸を張れます!」
 
 実行委員長の渡邊隆志さん(3年)と石村美紀さん(同)は振り返った。
 
 「今までにない新しいものをつくる喜びが、学園中に満ちていました。苦労は絶えませんでしたが、“やって良かった”と心から言えます」

私たちはパイオニア(開拓者)!

 生徒たちはコロナ禍で昨年までとは違った日々を強いられている。それでも、不満や閉塞感ばかりにとらわれず、学園生は「新たな伝統を創り出すパイオニア(開拓者)」との自覚を持って、“今できること”に精いっぱい挑戦している。その負けじ魂光る日々が、一人一人の可能性を引き出している。

  
  
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