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〈ターニングポイント 信仰体験〉 アクセサリー作家 ときめきを形に 2026年4月20日

  • 300円の宝物から始まった夢
  • 大型商業施設で売り上げトップ10に
「私の作品が誰かの希望になるのなら、頑張れちゃいます」と裕子さん。明るい笑顔に人が集まる
「私の作品が誰かの希望になるのなら、頑張れちゃいます」と裕子さん。明るい笑顔に人が集まる

 【広島市安佐北区】眺めているだけで、癒やされる。身に着けるだけで、幸せな気持ちになる。そんなアクセサリーを作りたい――。田中裕子さん(30)=区池田華陽会サブキャップ=は、ブランド「ウサギノアトリエ」を立ち上げて、今年で10年になる。

 優しい人柄が、そのまま作品に宿る。裕子が手がけるアクセサリーは、淡く柔らかな色合いで、宝石のようにキラキラと輝く。
 
 特徴は、本物の花や貝殻を使っていること。同じ物は、二つとしてない。「いつも、なんてかわいいんだろってワクワクしながら作ってます」。胸のときめきを、誰かと分かち合いたい。その心が輝きを添える。

裕子さんの作品たち
裕子さんの作品たち

 貧しい幼少期だった。おもちゃが欲しくて、何でも自分で作って遊んだ。段ボールでパソコン、道に落ちていた木でクリスマスツリー。小学2年の時に出あったのが、ビーズアクセサリーだった。小さなケースは「キラキラが詰まった宝箱」。
 
 初めての作品は花の指輪。近所の人から「売ってほしい」と言われ、300円で手放した。ちょっぴり寂しかったが、その人の喜ぶ顔を見ていると、うれしくなった。
 
 少しずつ本格的なアクセサリーを作るように。ただ、「仕事にする」未来は描けなかった。大学の教育学部に進むも、教師への道に心は動かない。
 
 “私のやりたいコトって何?”
 
 モヤモヤが心を覆っていた。

小学生の時に作ったアクセサリー
小学生の時に作ったアクセサリー
● 「笑顔の毎日に!」

 そんな時、女子部(当時)の先輩が、家を訪ねてきた。“信心って時間の無駄だよ”と思っていただけに、気が引けた。“でも、せっかく来てくれたしな……”。気が進まないまま玄関の扉を開けると、明るい笑顔が飛び込んできた。
 
 しばらく話をして、つい口に出ていた。
 
 「私も輝けますか?」
 
 先輩は「目標をノートに書いて、お題目をあげてみよう」と背中を押してくれた。裕子は手帳に記した。〈笑顔の毎日に! やりたい仕事を見つける!〉

信心で歩んだ日々には笑顔があふれている
信心で歩んだ日々には笑顔があふれている

 ある日、自作の指輪を見せた友達から「仕事になるんじゃない?」と褒められた。「いやいや、趣味だから」と曖昧に返したが、“ひょっとして、これかも……”。
 
 2016年(平成28年)、大学2年の時、ブランドを立ち上げた。ネットショップに商品を登録。4カ月目で初めて売れた時は、うれしくてスマホの通知を何度も見返した。
 
 次は大型商業施設での販売を目指した。2万人の応募から、採用されるのは30人。6回目の挑戦で、合格メールが届いた。
 
 “よし、私はアクセサリーで生きていく”
 
 大学卒業後、裕子はアクセサリー作家としてスタートを切った。

家族の励ましに支えられてきた(左から裕子さん、弟・智之さん、父・正信さん、母・貴子さん)
家族の励ましに支えられてきた(左から裕子さん、弟・智之さん、父・正信さん、母・貴子さん)

 好きを仕事にする。それ以上の幸せはないと思っていた。
 
 けれど……。
 
 コロナ禍で、委託販売の商品は全て返却。玄関に山積みにされた段ボール、通帳の残高は減る一方。やっとの思いでつかんだ対面販売も中止になって、過呼吸が止まらない時期もあった。今思えば、うつ病の一歩手前だったかもしれない。
 
 真っ暗な部屋から、ベランダ越しに見つめた空がまぶしかった。
 
 “もう、全部やめよっかな……”
 
 伏し目がちに作業机を見渡すと、アクセサリーケースに目が留まった。引き出しを開けて、指輪を取り出す。着けて、眺めて、外して、着ける。花びらの小さな輝きに、「不思議と気分がほぐれていった」。

出店時、両親も応援に駆け付けた(左から父・正信さん、裕子さん、母・貴子さん)
出店時、両親も応援に駆け付けた(左から父・正信さん、裕子さん、母・貴子さん)

 思い返せば、そばには同志の励ましがあった。販売会で何時間も隣にいてくれた華陽会メンバー。「よく眠れてる?」と電話で心配してくれた先輩。「一人じゃない」。その事実が、彼女を立ち上がらせた。
 
 池田先生の言葉が心に響く。
 
 〈感謝は、心の豊かさを意味する。感謝のある人には喜びがあり、幸せがある〉
 
 裕子は再び御本尊に向かった。「心の財第一なり」(新1596・全1173)。感謝の心こそ「心の財」と気付いた時、信心で勝とうと、もう一度、前を向けた。

一人一人の声に耳を傾ける
一人一人の声に耳を傾ける
● ひいばあちゃんと和紙

 祈る中でよみがえったのは、幼い頃、ひいばあちゃんが買ってくれた和紙。淡いピンクのぬくもりに心が和んだ。
 
 “あの柔らかさを形にしたい”
 
 しかし、理想の和紙は見つからなかった。
 
 「なら自分で作っちゃえ」。裕子は自宅で紙をすいた。水彩絵の具で色をつけ、花びらをのせてレジン(樹脂)で閉じ込める。苦しんだ分だけ、色彩は深く、柔らかくなった。

本物の花びらや貝殻を詰め込む
本物の花びらや貝殻を詰め込む
手作りの和紙に色づけ
手作りの和紙に色づけ

 昨年、大型商業施設での売り上げがトップ10に入った。それ以上にうれしかったのは、お客の一人が裕子のアクセサリーに心が癒やされて、社会復帰したことだった。
 
 〈きゅっと凝り固まった心を、ときほぐし、解放させてくれるのが、芸術であり、文化なのです〉
 
 池田先生が芸術に期待したのは、悩んでいる人に希望を届けることじゃないか――今なら、そう思える。
 
 300円の宝物から始まった夢。裕子が作るアクセサリーは、誰かを元気にしたいと願う、真っすぐで優しい祈りそのものだ。

お客の言葉を励みに、今日もアクセサリーと向き合う
お客の言葉を励みに、今日もアクセサリーと向き合う

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