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【創価学園NAVI】 「音」から身に付く語学力――創価中学校「英語のラウンド学習」 2023年2月5日

  • 生徒の9割が英検3級に、6割が準2級に合格

 対話を基調とした学園生活の中で、世界市民を育む創価中学校(東京・小平市)では英語教育に力を入れている。週5回の英語の授業や放課後に希望者で行う英会話クラスなどを通して、「聞く・話す・読む・書く」の4技能を身に付ける。中でも、2017年度に導入した「ラウンド学習」によって、生徒の英語に取り組む姿勢が“劇的に変化した”という。どのような学習法なのか、同校を取材した。

「リテリング」を行う2年生。全員が知るストーリーを話題にするため、生徒同士のやりとりの中で新たな表現に気付くことも
「リテリング」を行う2年生。全員が知るストーリーを話題にするため、生徒同士のやりとりの中で新たな表現に気付くことも

 1月中旬に訪れた2年生の英語の授業。その光景に驚いた。
 
 4~5人のグループで、プリントに描かれた絵を英語で説明するという課題に取り組んでいたのだが、どの生徒も、積極的によく会話している。
 
 流ちょうに説明する人、単語をひねり出すように話す人……会話のスピードはまちまちだが、皆が“楽しそう”に発表し、最後に互いの良かった点を伝え合っていた。
 
 英語科の野下康子教諭は「『ラウンド学習』を取り入れてから、『話す』『書く』といったアウトプットを積極的にできる生徒が格段に増えました」と教えてくれた。

ネーティブスピーカーの教員(外国語指導助手)もラウンド学習をサポート。正しい発音に導く
ネーティブスピーカーの教員(外国語指導助手)もラウンド学習をサポート。正しい発音に導く

 「ラウンド学習」とは、1冊の教科書を1年間で4~5周、繰り返して学ぶ学習方法。横浜市立の中高一貫校が開発したプログラムで、その学習効果の高さから、近年、多くの中学校で取り入れられている。
 
 創価中学校では、さらに生徒同士の学び合いやアクティブラーニング(能動的学び)の要素を加え、教育内容を独自に進化させてきた。
 
 同校では次のようにラウンド学習を進める。
 
 ラウンド1(1周目)…文字を見ずに、ひたすら音として聞く。
 
 ラウンド2(2周目)…格好よく音読する。
 
 ラウンド3(3周目)…一部、単語が隠された本文を音読・筆記する。
 
 ラウンド4(4周目)…教科書のイラストをもとにリテリング(教科書を見ずに、文章の内容を自分で考えた英文で再構成して話す練習)。さらにその内容を文章に書き起こす。

 
 「赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスと同じです」――佐藤光一教諭は語る。
 
 「①まず音として言葉を聞く②まねして話す③文字を理解する④文字を書く、という、つまり幼児が母語を習得する過程に沿うようなプログラムになっており、リスニングとスピーキングに抜群の効果があります」
 
 多くの生徒が、ラウンド1の最初の頃は、まったく英語が分からず戸惑う。それでも失敗を恐れず学習を繰り返すうちに、確実に理解が進み、英語を使うことが楽しくなるというのだ。
 
 事実、創価中学校の生徒たちの英語に対する意欲は高く、昨年の卒業生は、実用英語技能検定(英検)において、全生徒の90%が3級(中学卒業程度)、60%が準2級(高校中級程度)、20%が2級(高校卒業程度)を取得した。

耳が変わった!

 実際、生徒たちはどう感じているのか――話を聞いた。
 
 篠川智恵さん(2年)は、自身の変化を語ってくれた。
 
 「ラウンド1では、約2カ月、徹底的にリスニングの反復を行います。当初は、何も理解できず、戸惑ったんですけど、ある瞬間から“耳が変わった”という感覚を味わいました。はっきりと単語が聞き取れるようになり、自分の口で英文を少しずつ言えるようになったんです」
 
 変化があったのは、英語の学習をしている時だけではなかった。
 
 昨夏、篠川さんは通学の電車内で耳にした、外国人同士の英語での会話内容が、自然に理解できたのだ。
 
 「思わず、会話に入ってみようかと思うほど、理解できたことがうれしかったです。英語力の向上を感じた瞬間でした」
 
 授業以外でも英語を話したくなった彼女はある日、母に学校での出来事を英語で伝えてみた。
 
 母は驚き、「英語の学び方が昔と全然違うわね! そうやって学ぶことは絶対、今後に生きてくるよ」と喜んでくれた。

ラウンド学習に取り組む1年生の授業。生徒同士での学び合いが英語学習を大きく後押ししている
ラウンド学習に取り組む1年生の授業。生徒同士での学び合いが英語学習を大きく後押ししている

 木村正雄さん(3年)は「英語が自分の“武器”だと思えるなんて、思ってもみませんでした」と笑顔で語る。
 
 1年生の2学期、英検4級(中学校中級程度)に不合格。苦手意識が芽生えた。
 
 良い成績を取ろうと、教科書の本文を丸暗記してテストに臨んだこともあった。しかし、リテリングのテストで、ある単語が思い出せず、言葉に詰まってしまった。
 
 「会話は本来、暗記して臨むものではなく、完璧な表現でなくても“相手に伝わる”ことが大事だと気付いて。その場で考えて、思ったことを伝えられるようになるために、もっと地道に英語力を磨こうと思いました」
 
 そんな木村さんの挑戦を後押ししてくれたのは、友達の存在だった。
 
 英語が得意な友達に、教えてもらったり、同じ目標を持つクラスメートと切磋琢磨し、教え合ったりしながら、学びを深める中、徐々に苦手意識が消え、英語の表現が広がることへの喜びを感じていった。
 
 いつしか、木村さんにとって「英語」は、勉め強いる「勉強」ではなく日常に変わっていた。
 
 毎日、自宅でシャドーイング(英語の音声を聴きながら同時に発音するトレーニング)を続け、授業も積極的に受ける中、英語力が飛躍的に向上した。英検への挑戦では、2年の1学期に3級、2学期に準2級に合格。3年の2学期には、高校卒業程度の2級を勝ち取った。
 
 「先生が教えてくれた通り、英語は“やれば必ずできる”と実感しました。1年の時、英会話の授業で講師と話すことが恥ずかしくて嫌だった僕が今では、もっと話したいと思うようになりました。この3年間を通して、アメリカ創価大学にも興味が湧き、視野が大きく広がりました」

オンラインでフィリピンの講師と会話する授業も
オンラインでフィリピンの講師と会話する授業も

 このように、創価中の英語教育によって得られる成果は、語学力の向上だけにとどまらない。
 
 コミュニケーション力やチャレンジ精神が身に付き、友情や人格の形成にも大きな役割を果たす。こうした成長によって、生徒たちは、将来へのビジョンを広げている。
 
 野下教諭が語る。
 
 「語学は“筋トレ”と一緒で、毎日のトレーニングを欠かさないことが大切です。だからこそ、生徒たちが楽しんで学べる環境をつくることが、英語教育の最重要の課題です。創価中では、教員だけでなく生徒同士が、そうした雰囲気をつくり出している。英語を学ぶ最高の環境があると思います」

創立者の呼びかけ

 創立者・池田先生は折あるごとに、学園生に語学の重要性を語りかけてきた。
 
 ある年の卒業式では、歴史学者であるトインビー博士との対談を振り返り、自身が戦時中、英語学習を禁じられていた世代だったことに触れ、学園生に呼びかけた。
 
 「学園生の皆さんは、学ぶことに貪欲であってもらいたい。学ぶチャンスを逃してはなりません」
 
 こうした創立者の期待と願いを「学びの原動力」にして、教員と生徒が一体となって、新たな挑戦を続けてきた創価中学校の英語教育。

 佐藤教諭は言葉に力を込める。
 
 「創立者の期待にお応えしたいという思いは、生徒も教員も同じです。
 英語科の教員も、ラウンド学習を開発した横浜の中学校に足を運び、そのプログラムを学んできました。
 あらゆる手法を試みながら、生徒たちが意欲をもって学ぶ方法を探し続ける。これは教員たちにとっても挑戦です。
 その意味で、ラウンド学習と学園伝統の“生徒による学び合い”が合致した今の英語教育は、現時点での最良の手法だと思います」
 
 最後に、今後の英語教育の展望について、野下教諭が語ってくれた。
 
 「学園では、英語習得とともに、豊かな人間性を育てています。英語はあくまでもツールでしかありません。英語を使って、何を語れる人間になるのかが大切です。
 学園生には、創立者が世界の一流の知性と語り合い、築き上げてこられた“友情の道”が広がっています。
 一生涯の友情を育みながら、共に悩み、励まし合って、世界に希望を発信する一流の人材に成長してもらいたいと願っています」
 
 人々に希望を送る世界市民の育成へ、創価中学校の挑戦は続く。
  
  
  
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 kansou@seikyo-np.jp
   
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