〈創価大学駅伝部2024―2025 vol.2〉 夏の北海道・深川合宿
〈創価大学駅伝部2024―2025 vol.2〉 夏の北海道・深川合宿
2024年9月15日
- “速さ”を備えた“強さ”を武器に
- “速さ”を備えた“強さ”を武器に
「真価の創花~Next Stage~」のスローガンのもと、“勝負の夏”に挑んだ創価大学駅伝部。今夏、各地で強化合宿が行われ、第1次の長野・菅平高原、第2次の新潟・妙高高原ではチーム全体の走力向上に取り組んだ。本格的な“駅伝シーズン”の開幕を前にした今月上旬、メンバー入りへ、しのぎを削る北海道深川市での第3次合宿を取材した。
「真価の創花~Next Stage~」のスローガンのもと、“勝負の夏”に挑んだ創価大学駅伝部。今夏、各地で強化合宿が行われ、第1次の長野・菅平高原、第2次の新潟・妙高高原ではチーム全体の走力向上に取り組んだ。本格的な“駅伝シーズン”の開幕を前にした今月上旬、メンバー入りへ、しのぎを削る北海道深川市での第3次合宿を取材した。
大学三大駅伝の開幕へ、真の“強さ”を磨く時は今! 4日午後に行われた創大駅伝部のポイント練習。先輩・後輩の垣根を越え、約30キロにわたり、しのぎを削った(北海道深川市内で)
大学三大駅伝の開幕へ、真の“強さ”を磨く時は今! 4日午後に行われた創大駅伝部のポイント練習。先輩・後輩の垣根を越え、約30キロにわたり、しのぎを削った(北海道深川市内で)
下級生がチームを底上げ
下級生がチームを底上げ
収穫を待つ稲穂の海をさわやかな風が吹き抜け、疾走する選手たちの背中を押す。「合宿の里」として知られる深川市。日中は厳しい日差しが残るが、朝夕の気温は20度ほどで、心地良さを感じる。
今月4日、深川市桜山公園内のクロスカントリーコースで、創価大学の主力選手3人が熱い競り合いを展開していた。先行するケニア人留学生のスティーブン・ムチーニ選手(2年)とソロモン・ムトゥク選手(1年)に、吉田響選手(4年)が必死の形相で食らい付き、抜き返す。高低差が最大で約50メートルになるコースを周回。起伏の激しい30キロを、ラストまで一団となって走り切った。
吉田響選手はこの夏、自ら希望して強度の高いメニューを組んだ。「同じ練習をしていても、他大学のエースに追い付けません。そして、彼らを越えなければ、チームの勝利はないという覚悟で臨んでいます」
収穫を待つ稲穂の海をさわやかな風が吹き抜け、疾走する選手たちの背中を押す。「合宿の里」として知られる深川市。日中は厳しい日差しが残るが、朝夕の気温は20度ほどで、心地良さを感じる。
今月4日、深川市桜山公園内のクロスカントリーコースで、創価大学の主力選手3人が熱い競り合いを展開していた。先行するケニア人留学生のスティーブン・ムチーニ選手(2年)とソロモン・ムトゥク選手(1年)に、吉田響選手(4年)が必死の形相で食らい付き、抜き返す。高低差が最大で約50メートルになるコースを周回。起伏の激しい30キロを、ラストまで一団となって走り切った。
吉田響選手はこの夏、自ら希望して強度の高いメニューを組んだ。「同じ練習をしていても、他大学のエースに追い付けません。そして、彼らを越えなければ、チームの勝利はないという覚悟で臨んでいます」
吉田響選手㊨、ムチーニ選手㊥、ムトゥク選手の3人が起伏の激しいコースを駆ける
吉田響選手㊨、ムチーニ選手㊥、ムトゥク選手の3人が起伏の激しいコースを駆ける
第3次合宿は、深川市と御嶽山(長野と岐阜の県境)の2カ所に分かれて行われる。選抜メンバーが集う深川合宿は例年、上級生が参加者の大半を占める。ところが今年は、参加した15人のうち半数以上が1、2年生だ。
同日午後に行われたポイント練習でも、下級生の積極性が垣間見えた。数人の1年生が志願して上級生と同じメニューに挑戦。榎木和貴監督は「チームを底上げする強い世代。先輩たちも負けじと張り切っていて、練習の消化率や月間走行距離などの指標は、昨年を大きく上回っています」と目を細める。
第3次合宿は、深川市と御嶽山(長野と岐阜の県境)の2カ所に分かれて行われる。選抜メンバーが集う深川合宿は例年、上級生が参加者の大半を占める。ところが今年は、参加した15人のうち半数以上が1、2年生だ。
同日午後に行われたポイント練習でも、下級生の積極性が垣間見えた。数人の1年生が志願して上級生と同じメニューに挑戦。榎木和貴監督は「チームを底上げする強い世代。先輩たちも負けじと張り切っていて、練習の消化率や月間走行距離などの指標は、昨年を大きく上回っています」と目を細める。
安達マネジャー㊨が選手の給水をサポート
安達マネジャー㊨が選手の給水をサポート
「対話」がもたらした進化
「対話」がもたらした進化
創大駅伝部は今季、大学三大駅伝の目標を「出雲、全日本は3位以上、箱根は往路を制して総合優勝」と掲げて出発した。今年の箱根駅伝は総合8位。5年連続でシード権を獲得したものの、榎木監督の心中は穏やかではなかった。
「強豪校の壁を破るために、これ以上どうすればいいのかと、行き詰まりを感じていました」
シード権争いから、毎年のように優勝争いを演じられるチームへ。進化のためのキーマンとして加入したのが、実業団の名門・旭化成でコーチを務めた川嶋伸次総監督だった。
“名伯楽”がチームにもたらしたものは「対話」だった。「強くなりたいという彼らの思いは真っすぐで、真剣です。だからこそ、一人一人の考えにじっくりと耳を傾け、熟慮のうえでアドバイスを送るようにしました」(川嶋総監督)
石丸惇那選手(3年)は、1年生から大学三大駅伝“皆勤賞”ながら、納得のいく走りができていなかった。「川嶋さんと言葉を交わす中で、1万メートルを27分台で走るために必要な改善点を明確にできました」と自信を深める。
久保田満ヘッドコーチや築舘陽介コーチにとっても大きな刺激となり、指導の“引き出し”が増えた。新たな試みにチャレンジする余裕が生まれ、榎木監督の指導方針も変化していく。「今シーズンは、選手たちには“速さ”だけでなく、確実に結果を出していく“強さ”も求めています」
創大駅伝部は今季、大学三大駅伝の目標を「出雲、全日本は3位以上、箱根は往路を制して総合優勝」と掲げて出発した。今年の箱根駅伝は総合8位。5年連続でシード権を獲得したものの、榎木監督の心中は穏やかではなかった。
「強豪校の壁を破るために、これ以上どうすればいいのかと、行き詰まりを感じていました」
シード権争いから、毎年のように優勝争いを演じられるチームへ。進化のためのキーマンとして加入したのが、実業団の名門・旭化成でコーチを務めた川嶋伸次総監督だった。
“名伯楽”がチームにもたらしたものは「対話」だった。「強くなりたいという彼らの思いは真っすぐで、真剣です。だからこそ、一人一人の考えにじっくりと耳を傾け、熟慮のうえでアドバイスを送るようにしました」(川嶋総監督)
石丸惇那選手(3年)は、1年生から大学三大駅伝“皆勤賞”ながら、納得のいく走りができていなかった。「川嶋さんと言葉を交わす中で、1万メートルを27分台で走るために必要な改善点を明確にできました」と自信を深める。
久保田満ヘッドコーチや築舘陽介コーチにとっても大きな刺激となり、指導の“引き出し”が増えた。新たな試みにチャレンジする余裕が生まれ、榎木監督の指導方針も変化していく。「今シーズンは、選手たちには“速さ”だけでなく、確実に結果を出していく“強さ”も求めています」
黄金の“稲穂の海”に水色のユニホームが映える
黄金の“稲穂の海”に水色のユニホームが映える
選手の経験値を上げるため、国内のハイレベルな大会や海外レースに参戦。実業団合宿など、積極的に学外へ飛び出した。夏には、過去最多となる6人がケニア合宿へ。厳しい練習環境の中で、主将の吉田凌選手(4年)は「ケニア人選手の強さの背景にあるストイックな部分を、肌で感じることができました」と振り返る。織橋巧選手(2年)もケニアでの経験を踏まえ、「たとえ単独走でも、タイムを出せるような強さを身に付けたい」と意気込む。
春のトラックシーズンは1万メートルやハーフマラソンを中心に、例年を上回る好記録が続出。1万メートル28分台の選手を16人そろえるという目標も、秋には達成しそうな勢いだ。また、5月の関東インカレでは、3000メートル障害で黒木陽向選手(3年)が優勝するなど、過去最高の7人が入賞。狙ったレースで勝負強さを発揮している。
選手の経験値を上げるため、国内のハイレベルな大会や海外レースに参戦。実業団合宿など、積極的に学外へ飛び出した。夏には、過去最多となる6人がケニア合宿へ。厳しい練習環境の中で、主将の吉田凌選手(4年)は「ケニア人選手の強さの背景にあるストイックな部分を、肌で感じることができました」と振り返る。織橋巧選手(2年)もケニアでの経験を踏まえ、「たとえ単独走でも、タイムを出せるような強さを身に付けたい」と意気込む。
春のトラックシーズンは1万メートルやハーフマラソンを中心に、例年を上回る好記録が続出。1万メートル28分台の選手を16人そろえるという目標も、秋には達成しそうな勢いだ。また、5月の関東インカレでは、3000メートル障害で黒木陽向選手(3年)が優勝するなど、過去最高の7人が入賞。狙ったレースで勝負強さを発揮している。
石狩川の河川敷を軽快にジョギング
石狩川の河川敷を軽快にジョギング
攻めの走りで頂点を狙う
攻めの走りで頂点を狙う
5日の早朝、宿舎から出てきた選手たちがストレッチを始めた。
入念なウオーミングアップ、動きづくりを終えると、それぞれのペースでジョギングへ。午前中の「アクティブレスト(積極的休養)」では、疲労回復も兼ねてバレーボールやモルックなどを楽しんだ。練習時の厳しい表情とはうって変わり、明るくリラックスした様子がうかがえる。
翌6日には、ロードの5キロを4本走る、恒例のポイント練習を実施。4本目はレース形式となり、出雲駅伝のメンバー選考会の様相を呈する。この日は、ムチーニ選手、吉田響選手、ムトゥク選手に続き、ルーキーの山口翔輝選手が4番目に駆け抜けた。
山口選手は語る。「このチームには、学年の垣根を越えて何でも言い合える関係性があります。本気で箱根の優勝を目指す先輩たちの思いに触れて、自分にもギアが入りました」
5日の早朝、宿舎から出てきた選手たちがストレッチを始めた。
入念なウオーミングアップ、動きづくりを終えると、それぞれのペースでジョギングへ。午前中の「アクティブレスト(積極的休養)」では、疲労回復も兼ねてバレーボールやモルックなどを楽しんだ。練習時の厳しい表情とはうって変わり、明るくリラックスした様子がうかがえる。
翌6日には、ロードの5キロを4本走る、恒例のポイント練習を実施。4本目はレース形式となり、出雲駅伝のメンバー選考会の様相を呈する。この日は、ムチーニ選手、吉田響選手、ムトゥク選手に続き、ルーキーの山口翔輝選手が4番目に駆け抜けた。
山口選手は語る。「このチームには、学年の垣根を越えて何でも言い合える関係性があります。本気で箱根の優勝を目指す先輩たちの思いに触れて、自分にもギアが入りました」
早朝練習で石狩川に架かる深川橋を快走する
早朝練習で石狩川に架かる深川橋を快走する
先月、OBの葛西潤選手(旭化成)が、パリ五輪の1万メートルに出場した。3、4年生にとっては、共に汗を流した先輩である。栄光の舞台を走る姿を目の当たりにして“いつか自分も”と胸に誓ったことだろう。
榎木監督に「大学三大駅伝に向けて、仕上がりは順調ですか」と水を向けた。すると「出雲駅伝は“悪くても”3位以上を狙っています」と、目標を“上方修正”。全日本、箱根についても「誰がどの区間を走っても強いといわれるような、層の厚さで勝負したいと思います。攻めに攻めたレース展開を期待してください」と力強く語った。
“速さ”を備えた“強さ”を武器に――。10月14日の出雲駅伝まで、あと29日。「進化」を遂げた創大駅伝部が「真価」を発揮する舞台が迫る。
先月、OBの葛西潤選手(旭化成)が、パリ五輪の1万メートルに出場した。3、4年生にとっては、共に汗を流した先輩である。栄光の舞台を走る姿を目の当たりにして“いつか自分も”と胸に誓ったことだろう。
榎木監督に「大学三大駅伝に向けて、仕上がりは順調ですか」と水を向けた。すると「出雲駅伝は“悪くても”3位以上を狙っています」と、目標を“上方修正”。全日本、箱根についても「誰がどの区間を走っても強いといわれるような、層の厚さで勝負したいと思います。攻めに攻めたレース展開を期待してください」と力強く語った。
“速さ”を備えた“強さ”を武器に――。10月14日の出雲駅伝まで、あと29日。「進化」を遂げた創大駅伝部が「真価」を発揮する舞台が迫る。
雄大な音江連山が選手たちの力走を見守る
雄大な音江連山が選手たちの力走を見守る