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忙しいほど、人生は進まなくなる? 読書インフルエンサー・豊留菜瑞さんが語る「WANT TOリスト」の力 2026年2月24日

  • 電子版連載「著者に聞いてみよう」
写真は本人提供
写真は本人提供

 学び直しや働き方の選択肢は広がったはずなのに、一日は「やること」でいっぱい。将来を考え直したり、自分の気持ちに立ち止まったりする余裕が、いつの間にか失われてしまっている――そんなふうに感じた覚えはないでしょうか。
 一方で、やることに振り回されることなく、時間を使っている人もいます。読書インフルエンサーとして活動し、年間240冊以上の本を読むほか、企業経営にも携わる豊留菜瑞さんも、その一人です。著書『忙しさ幻想』(サンマーク出版)では、日々の充実感を左右するのは仕事量そのものではなく、時間とどう向き合っているかだ、と指摘します。

■何もしていないのに“忙しかった”

 ――時間に追われていると感じていた時期もあったそうですね。

 以前の職場でハラスメントを受けて出社できなくなり、1年半、家に引きこもっていた時期があったんです。布団の中でYouTubeを見て、一日が終わるような生活でした。ほとんど何もしていなかったのに、「ご飯作らなきゃ」「お風呂洗わなきゃ」と、やるべきことばかりが頭に浮かんでいました。

 ――頭の中が落ち着かない状態だったんですね。

 今思うと、あれはタスク量の問題ではなかったと思います。精神的な負荷がかかると、心が勝手に「忙しさ」を作り出してしまう。ずっと「やるべきこと」に縛られていたというか。

 ――そうした状態は、どんな考え方から生まれていたのでしょうか。

 「成果を出してから楽しむ」「役に立ってから自分のことを考える」という価値観が、自分には強く刷り込まれていたことに気づきました。その結果、私が心地良いと感じたり、ワクワクしたりするような、「やりたい」という感覚は、後回しにされやすくなっていたんだと思います。

『忙しさ幻想』(サンマーク出版)
『忙しさ幻想』(サンマーク出版)
■「したいこと」を大切にした生活を

 ――豊留さんは、著書『忙しさ幻想』で、「したいこと」を書き出す「WANT TOリスト」の作成を提案されています。「すべきこと」を列挙する「TO DOリスト」とは、発想が逆です。

 「TO DOリスト」を否定したいわけではありません。大事なのは、一日の中で、どんな順番で行動すると気持ちよく過ごせるかを考えることだと思っています。
 例えば、好きな作業の前後に少し苦手な作業を挟んでみるとか、午前中は集中力が必要なことをして、午後は定型的な作業にするとか。WANTを“最優先”にするというより、一日が楽しく回る順番を考える感覚に近いですね。

 ――そこに「忙しさ」に振り回されないためのヒントがあるわけですね。

 自分で選んでいない時間が増えていく感覚――それが忙しさを生むのだと思います。だから、何もしていなくても、心だけが忙しくなることがあるんです。

 ――豊留さんが読書を続けてこられた原点も、そうしたWANTに支えられていたんですか?

 ある本を手に取った際、最初は内容がほとんど理解できなかったんです。でも、「役に立つかどうか」よりも、「いつか分かるようになったら面白そう」という感覚の方が先にあったんです。
 結果を出すことや、誰かに評価されることを目標にしていたわけではありませんでした。その時その時に感じた「気になる」「もう少し読んでみたい」という自らの内面の引っかかりを、否定せずに大事にした。そうするうちに、持続して読書できるようになったんです。

 ――今の生活を振り返って、一番大切にしていることは何でしょうか。

 朝、目が覚めたら、3分後にインスタグラムでライブ配信をして、フォロワーの方と少し話す。それだけなんですけど、私にとってはすごく大事な時間なんです。
 「やらなきゃ」ではなくて、「やりたいからやっている」。その感覚を一日の最初に取り入れると、その日全体の見え方が変わるんですよね。
 WANTという内面にあるものを大事にするようになったことが、結果的に読書を続けることにつながり、今の活動や仕事にも広がっていきました。最初から「何者かになろう」と思っていたわけではなくて、気づいたら、ここまで来ていた、という感覚です。

〈取材後記〉

 普段から同世代の人たちと接している中で、「やりたいことがわからない」という声をよく耳にする。
 この「やりたいことが見つからない」という閉塞感は、個人の目的観や努力の問題というよりも、私たちが生きる現代社会そのものが生み出しているのではないだろうか。
 その要因の一つとして、「スマホ」の存在が挙げられる。朝起きた瞬間にスマホを手に取り、通勤中も画面を見つめ、仕事から帰宅してもまたスクロールを繰り返す。気づけば就寝時間になっている――。そんな日常の中に、「今、自分は何を感じているだろうか」と立ち止まって問いかける時間は、ほとんど存在しない。外からの情報が絶えず流れ込む中で、自分の内から湧き起こる小さな声は、いつの間にか、かき消されてしまっているのではないか。
 豊留さんが提唱する「“WANT(やりたいこと)”を中心とした計画を立てる」という考え方は、まず自分自身を知ることから始まる。それは、「日常の中にある、自分の小さな欲に耳を傾ける習慣をつける」ことにほかならない。そうした日々の小さな積み重ねの先に、自分自身の人生を生きているという主体性が得られ、「忙しさ」から解放されていく。その結果として「本来、自分が望んでいるもの」との出合いがあるのではないだろうか。
 記者自身も日々、気づけば「忙殺」されてしまっている一人である。この取材で得た気づきを、まずは自分の生活から実践してみたい。

〈プロフィル〉

とよどめ・なつみ 1989年生まれ。年間240冊の書籍を読破する、ビジネス書の探究者。読書を通して得た「働き方」や「生き方」の知恵を自身の人生で実践し、複数のフットケアサロンの起業・経営に成功。各メディアでの書評寄稿や、ビジネス書レビューの発信も精力的に行い、「本から学ぶ実践的ライフスタイル」を提唱している。本年2月19日に自身2冊目となる著書『人見知りの仮面』(サンマーク出版)を発売。

2月19日に発売された豊留さんの新著『人見知りの仮面』(サンマーク出版)。無理に明るく振る舞ったり性格を変えたりするのではなく、今の自分のままでコミュニケーションの壁を乗り越えるための視点を与えてくれる一書
2月19日に発売された豊留さんの新著『人見知りの仮面』(サンマーク出版)。無理に明るく振る舞ったり性格を変えたりするのではなく、今の自分のままでコミュニケーションの壁を乗り越えるための視点を与えてくれる一書

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