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〈未来を想像/創造する倫理〉27 サイバーセキュリティーと予防 2026年11月3日
限られた資源で非常時に備える
今年10月、ウェブサイトで使われる言語「PHP」の脆弱性をめぐり、政府機関や企業が対応を迫られました。脆弱性とは、サイバー攻撃に悪用され得るシステム上の弱点のことです。今回の脆弱性は既知でしたが、悪用の危険性が高まりました。行政や医療が情報システムに依存する現在、その安全をどう守るべきでしょうか。
事例 近未来の日本。全国の病院をネットワークで結ぶ医療情報共有システムが普及し、どの病院でも患者の診療歴や検査結果、投薬情報を確認できる。
ある日、このシステムに重大な脆弱性が見つかった。すでに何者かが侵入し、診療情報を改ざんしている可能性もある。バックアップはあるが、侵入時期が分からず、どの時点のデータが正しいのか確認できない。被害の拡大を防ぎ、安全性を確認するには、情報共有の一時停止が必要だという。
政府内の協議で、担当者Aは「情報漏洩や改ざんの拡大を防ぐため、直ちに停止すべきだ」と主張した。一方、担当者Bは「診療情報を共有できなくなれば、救急医療などに重大な支障が生じる」と反論した。政府はどう判断すべきだろうか。
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サイバーセキュリティーには、「機密性」「完全性」「可用性」という三つの目標があります。機密性とは、許可されていない人に情報を知られないこと、完全性とは、情報が不正に改ざんされないこと、可用性とは、必要なときに情報やシステムを利用できることです。英語の頭文字を取って「CIAの三原則」と呼ばれます。
この三つの目標は必ずしも両立しません。事例では、情報漏洩や改ざんの拡大を防ぐために情報共有を停止すると、可用性が損なわれます。
米国の国立標準技術研究所(NIST)は、サイバーセキュリティー対策を「統治」「識別」「防御」「検知」「対応」「復旧」という六つの機能に整理しています。防御だけでなく、対応や復旧も重要です。
ここで重要なのが「レジリエンス」、すなわち危機に耐え、機能を維持・回復する能力です。そのためには、予備システムを用意して機能を二重化する「冗長性」の確保など、平時からの備えが欠かせません。これは防災にも通じる思想です。
こうした備えには費用がかかります。平時には無駄に見える設備や人員の余裕も、非常時には人々の命を守るかもしれません。限られた資源を、現在のサービスと将来の危機への備えにどう配分するか。サイバーセキュリティーもまた、予防の倫理の問題なのです。

















