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〈インタビュー〉 舘ひろしさん主演 映画「港のひかり」 2025年11月20日

  • 全国公開中

 少年は男から“光”をもらい、男に“人生”を与えた――。弱視の少年と、元ヤクザの漁師による交流を描いた映画「港のひかり」が全国公開中だ。主演を務めるのは、デビュー50年を迎えた舘ひろしさん。彼自身が“俳優人生の集大成”と位置付ける、本作の魅力を語ってもらった。

主人公の三浦諒一を演じる舘ひろしさん
主人公の三浦諒一を演じる舘ひろしさん
◆ストーリー

 元ヤクザの三浦諒一(舘ひろし=写真㊨)は漁師として、ほそぼそと暮らしていた。そんなある日、白いつえをついて歩く小学生の幸太(尾上眞秀=同㊧、少年期)を見かける。両親を亡くした幸太は、彼を引き取った叔母らに虐待を受けていた。孤独な弱視の少年に、どこか自身の姿を重ねた三浦は、彼を船に誘う。それから二人は、年の差を超えた“友情”を築いていく。

 日に日に幸太への思いが増す三浦は、幸太に視力回復の手術を受けさせようとする。ヤクザから金を奪った三浦は、幸太に一通の手紙を残して自首し、刑務所に入る。その後、十数年の時を経て、三浦と幸太(眞栄田郷敦)は再会するのだが――。

©2025「港のひかり」製作委員会
©2025「港のひかり」製作委員会
◆他者のために生きることで強く

 ――本作でメガホンを取った藤井道人監督とのタッグは、「ヤクザと家族 The Family」(2021年)以来となります。

 藤井監督とは、もう一度映画を作りたいと思っていました。プロデューサーからは医師や教師といった役柄の素案を頂きましたが、僕は“非日常”を描きたかったんです。そのために、主人公はヤクザか元ヤクザがいいと思い、提案しました。

 ――企画、脚本作りにも携わったんですね。

 携わったというか、文句を言っていただけです(笑)。最初のプロット(筋書き)では、幸太の少年時代が長くて。これだと非日常感を出せないと思い、大人になってからの話を膨らませました。

 ――三浦のせりふに「幸太の心の目には私が見えていた。一人の人間として接してくれた」とありました。いじめや虐待を受ける幸太を守るため、三浦が手段を選ばずに奔走する姿は胸に迫りました。

 三浦は幸太と出会うまで、人を遠ざけていました。しかし、少年の純粋な心に触れたことで“人間らしさ”を取り戻していきます。それでも時には、幸太の幸せを思うが故に、元ヤクザの“破れた部分”が出てしまうこともある。

 これは持論ですが、男って弱いものだと思うんですよ。弱いんだけど、他者のために生きることで強くなっていく。それを体現したのが三浦なんじゃないかな。行動で示さず、言葉だけで「誰かのために」と言っても、なんかむなしいですよね。

 ――舘さんにとって“人生の光”と言えるような存在はいますか?

 それは、やっぱり渡哲也さん(故人)でしょうね。海の向こうに見える灯台のように、俳優として進むべき指標を示してくれた方です。どんなに頑張っても決して届くことはありませんが、そこへ向かうことで自分の未来を開いてきたつもりです。あくまで“光”の存在なので、遺志を受け継ぐところまではいかないかな。それはちょっと荷が重すぎますね(笑)。

 ――ロケ地は石川県輪島市でした。撮影終了の9日後に能登半島地震が発生しましたが、被災地への思いを聞かせてください。

 被災地の皆さんのことを思うと、何も言えないというか何もできないんですよ。ただただ「頑張ってください」としか言葉が出てこなくて。それでも彼らの心に少しでも、一瞬でも光が差してほしいとの思いから、最初のプレミア上映会は輪島市で行い、炊き出しなどで地元の方々とも交流させてもらいました。

 ――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 僕は今年でデビュー50年なんですが、今回の映画はその集大成と言えるような作品です。自分がやりたかった役ができたと思っています。ぜひ、ご覧ください。

◆取材後記

 強い目力、屈託のない笑み、ダンディーな物腰――。どこを切り取っても自然と“絵”になる。銀幕で見せる硬派な印象とは異なり、一つ一つの質問に丁寧で誠実に受け答える。

 駆け出しの頃、周りには高慢な態度を取る俳優が少なくなかった。そんな中、自分の姿を見るなり立ち上がって「舘君ですね」と手を差し出してくれたのが、師と仰ぐ渡さん。その一挙一動が、舘さんの紳士的な立ち居振る舞いの原点になったという。

 柔らかなしぐさの奥に、確かに受け継がれた品格が息づいていた。

【記事】鈴木政己 【写真】工藤正孝

◆プロフィル

 たち・ひろし 1950年3月31日生まれ、愛知県出身。75年、ロックバンド「クールス」のボーカルとしてデビュー。83年に「石原プロモーション」に入社。ドラマ「あぶない刑事」(86年)でブレークする。近年の主な出演作は、映画「アルキメデスの大戦」(2019年)、「ゴールデンカムイ」(24年)など。20年に旭日小綬章を受けた。

本作の公式ホームページはこちら

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