昨年10月から11月にかけて、インドネシアの国立モスクやインドネシア大学などで、「文明の対話」展が開催されました。アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領と池田大作先生が築いてきた対話の精神を受け継ぐもので、信仰や世代を超えて大きな反響を呼んでいます。世界最大のイスラム人口を擁する同国において、なぜ今、池田先生の思想が注目されているのでしょうか。インドネシア大学でコミュニケーション学を教え、テレビやメディアのコメンテーターとしても活躍するデフィ・ラフマワティ准教授(職業教育プログラム学部長)に話を聞きました。(聞き手=小野顕一、石塚哲也)
昨年10月から11月にかけて、インドネシアの国立モスクやインドネシア大学などで、「文明の対話」展が開催されました。アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領と池田大作先生が築いてきた対話の精神を受け継ぐもので、信仰や世代を超えて大きな反響を呼んでいます。世界最大のイスラム人口を擁する同国において、なぜ今、池田先生の思想が注目されているのでしょうか。インドネシア大学でコミュニケーション学を教え、テレビやメディアのコメンテーターとしても活躍するデフィ・ラフマワティ准教授(職業教育プログラム学部長)に話を聞きました。(聞き手=小野顕一、石塚哲也)
――DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術の活用)とリテラシー(情報を読み解く力)を主な研究テーマにされています。
私が今、関心を抱いているのは、テクノロジーがコミュニケーションや社会、文化をどう形づくっているのか、そして、若い世代が知識や情報をいかに人間的成長につなげていくのかという点です。
DXは効率化や利便性、経済成長と結びついて語られがちですが、私はその過程で、人間のコミュニケーションや価値観がどう変容しているのかに着目してきました。特に情報社会への急激な適応が、若年層の思考や感受性に与える影響を研究しています。
現代の若者は膨大な情報に囲まれていますが、それが人間性や倫理観の形成に十分寄与しているとは限りません。むしろ情報過多によって、深く考える力や他者への想像力を弱めている側面も見受けられます。さらに、AIやロボットが急速に進化し、人間のように振る舞う一方で、人間の側が機械のようになりつつある。この状況に、私は強い危機感を覚えています。
常にオンラインの環境で、若者たちは絶え間ない比較と評価にさらされ、心身ともに疲弊しています。その結果、自身と向き合う時間や、他者と関係を築く力が損なわれつつあるのです。
DXは社会に大きな可能性をもたらしました。問題は、その速度に価値観の更新が追いついていない点です。私は、テクノロジーと人間の間に生じているこの緊張関係を明らかにしたいと考えています。
――DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術の活用)とリテラシー(情報を読み解く力)を主な研究テーマにされています。
私が今、関心を抱いているのは、テクノロジーがコミュニケーションや社会、文化をどう形づくっているのか、そして、若い世代が知識や情報をいかに人間的成長につなげていくのかという点です。
DXは効率化や利便性、経済成長と結びついて語られがちですが、私はその過程で、人間のコミュニケーションや価値観がどう変容しているのかに着目してきました。特に情報社会への急激な適応が、若年層の思考や感受性に与える影響を研究しています。
現代の若者は膨大な情報に囲まれていますが、それが人間性や倫理観の形成に十分寄与しているとは限りません。むしろ情報過多によって、深く考える力や他者への想像力を弱めている側面も見受けられます。さらに、AIやロボットが急速に進化し、人間のように振る舞う一方で、人間の側が機械のようになりつつある。この状況に、私は強い危機感を覚えています。
常にオンラインの環境で、若者たちは絶え間ない比較と評価にさらされ、心身ともに疲弊しています。その結果、自身と向き合う時間や、他者と関係を築く力が損なわれつつあるのです。
DXは社会に大きな可能性をもたらしました。問題は、その速度に価値観の更新が追いついていない点です。私は、テクノロジーと人間の間に生じているこの緊張関係を明らかにしたいと考えています。
心の“再起動”
心の“再起動”
――インドネシア社会において、DXが及ぼす影響をどのように感じていますか。
インドネシアは、民族・宗教・言語・文化の全てにおいて多様な国です。「多様性の中の統一」という理念のもと、異なる価値観を柔軟に受け入れ、調和させてきました。ところが、DXの急速な進展が、その調和を揺るがしています。対面では礼儀正しく振る舞う人が、SNS上では怒りや攻撃性を露わにする。人と人をつなぐはずの技術が、逆に分断を加速させているのです。
感染症のパンデミック(世界的な大流行)以降、デジタル化は一気に進みました。物理的な距離は縮まったように見えますが、その一方で、地域社会の知恵や人間らしさが失われつつある。このギャップこそが、インドネシア社会の深刻な課題だと感じています。これは決して、私たちだけの問題ではないでしょう。
私は以前から、ネット依存やフェイクニュースが、集中力や社会的信頼をいかに蝕むかを研究してきました。これは“社会毒”とも呼ぶべきもので、すぐには症状が現れませんが、気付いた時には手遅れとなり非常に厄介です。
重要なのは、これが個人の道徳の問題ではなく、社会構造が生み出す現象だという点です。「人とどう向き合うのか」「言葉に責任を持つとは何か」を、教育と対話を通じて学び直す必要があるのです。
――そうした状況の中で、池田先生の思想はどのような意味を持つとお考えですか。
池田先生の「対話主義」と「人間革命」の理念は、現代社会が直面している課題の核心に、真正面から応える思想であると感じています。
対話とは、単なる言葉の往復ではなく、相手を理解しようとする姿勢そのものです。そして、その姿勢を支える人間の在り方に迫るのが、人間革命だと理解しています。
人間革命とは、外側を変える以前に、人間の内にある良心や尊厳、他者への共感を呼び覚ます内面の変革です。
人間本来の在り方を取り戻し、人生の価値と可能性を最大限に開く土台を立て直す。その意味で、私はこれを“心の再起動”と捉えています。
――インドネシア社会において、DXが及ぼす影響をどのように感じていますか。
インドネシアは、民族・宗教・言語・文化の全てにおいて多様な国です。「多様性の中の統一」という理念のもと、異なる価値観を柔軟に受け入れ、調和させてきました。ところが、DXの急速な進展が、その調和を揺るがしています。対面では礼儀正しく振る舞う人が、SNS上では怒りや攻撃性を露わにする。人と人をつなぐはずの技術が、逆に分断を加速させているのです。
感染症のパンデミック(世界的な大流行)以降、デジタル化は一気に進みました。物理的な距離は縮まったように見えますが、その一方で、地域社会の知恵や人間らしさが失われつつある。このギャップこそが、インドネシア社会の深刻な課題だと感じています。これは決して、私たちだけの問題ではないでしょう。
私は以前から、ネット依存やフェイクニュースが、集中力や社会的信頼をいかに蝕むかを研究してきました。これは“社会毒”とも呼ぶべきもので、すぐには症状が現れませんが、気付いた時には手遅れとなり非常に厄介です。
重要なのは、これが個人の道徳の問題ではなく、社会構造が生み出す現象だという点です。「人とどう向き合うのか」「言葉に責任を持つとは何か」を、教育と対話を通じて学び直す必要があるのです。
――そうした状況の中で、池田先生の思想はどのような意味を持つとお考えですか。
池田先生の「対話主義」と「人間革命」の理念は、現代社会が直面している課題の核心に、真正面から応える思想であると感じています。
対話とは、単なる言葉の往復ではなく、相手を理解しようとする姿勢そのものです。そして、その姿勢を支える人間の在り方に迫るのが、人間革命だと理解しています。
人間革命とは、外側を変える以前に、人間の内にある良心や尊厳、他者への共感を呼び覚ます内面の変革です。
人間本来の在り方を取り戻し、人生の価値と可能性を最大限に開く土台を立て直す。その意味で、私はこれを“心の再起動”と捉えています。