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東京富士美術館で好評開催中 写真展「岩合光昭の日本ねこ歩き」 2025年6月2日

  • 動物写真家・岩合光昭氏にインタビュー

 東京富士美術館(八王子市)で、写真展「岩合光昭の日本ねこ歩き」が好評を博している(6月22日まで)。本展では、動物写真家の岩合氏が、日本各地で撮影した約150点のネコの写真を紹介。撮影時の心がまえやエピソードなどをインタビューした。(聞き手=畑山伸一、福島尊弘)

福岡・宗像市の地島で。2匹のオスが鮮やかな花を愛でています ©Mitsuaki Iwago
福岡・宗像市の地島で。2匹のオスが鮮やかな花を愛でています ©Mitsuaki Iwago

 ――岩合さんはライフワークとして日本全国をはじめ、海外でもネコの写真を撮り続けてこられました。

 ネコは、自然や地域、人の生活に溶け込んでいると実感します。四国で出あったネコはうどんを食べていましたし、イタリアにはパスタをすするネコもいました(笑)。
 
 新潟の田んぼで、あるネコと出あいました。地元の方から「午前8時に姿を見せるよ」と聞いていたので、数時間前からカメラを構えていました。
 でも時間が過ぎても現れず……。“今日はダメかな”と思った直後、爽やかな風が田んぼを吹き抜けました。すると突然、ネコが姿を見せたんです。
 ネコは、朝のその時間に心地よい風が吹くことを知っていたんですね。風を背にして、気持ちよさそうに歩いていました。
 ネコも自然と一体となって生きているのだなあと、しみじみと感じました。

人も動物も思いやる心は通じる

 ――撮影の際、心がけていることを教えてください。
 
 被写体が動物であるため、人のように、話した通りにポーズを取ってくれるわけではありません。
 そのため僕は、目線を同じ高さにすることから始めます。上から“撮ってやるぞ”ではダメなんです。目線を合わせ、ネコと同じ感覚に近づけば、向こうがこちらに興味を持ち、自然な表情を見せてくれます。
 また、固定観念に縛られないことも大事。人は頭の中で思い描いたイメージで“シャッターチャンス”を限定してしまいがちです。そうではなく、被写体のありのままの姿を受け止めていくことで撮影の幅は広がっていきます。
 
 もう一つ心がけているのは、動物であっても相手の気持ちを考えて撮ることです。
 
 実は、小学生の時に僕はイヌにかまれた思い出があります。そのせいでイヌが嫌いになって、ネコを撮り続けているわけではありません(笑)。かまれてしまった原因は明確で、僕が好奇心のあまり、小屋に勝手に侵入したからでした。僕はその時、動物の気持ちに寄り添うことが大事だと学びました。言葉は通じなくても思いやる心は伝わります。信頼も深まるんです。
 人の世界でも、相手を思いやる心は大切ですよね。

青空と「須磨浦ロープウェイ」を背景に、屋根の上で日向ぼっこ(兵庫・神戸市) ©Mitsuaki Iwago
青空と「須磨浦ロープウェイ」を背景に、屋根の上で日向ぼっこ(兵庫・神戸市) ©Mitsuaki Iwago

――岩合さんは半世紀以上にわたって動物たちの生き生きとした姿を追い続けてこられました。その原動力は何ですか。
 
 動物たちは、常に伸び伸びと生活しており、その瞬間を捉える写真に完璧なものはないと思います。むしろ、撮影するたびに「次はもっと良い写真を撮ろう」と、向上心が湧いてくるのです。僕にとって毎回の撮影は、自分の腕を磨くための“鍛錬の場”でもあります。
 なので、写真集が完成した時には「最高のものができました」と言いながらも、“次はもっと”と思っていたりします(笑)。
 
 ネコは自由気ままなように見えて、人や自然との繫がりを大事にしながら生きています。そうした雰囲気が伝わるよう、僕は背景がぼやける望遠レンズをできるだけ使わず、広角レンズで“周囲と一体化したネコ”を撮っています。
 
 作品の奥にある物語を想像してもらいながら、この展覧会で“お気に入りの一枚”を見つけていただけたら幸いです。

【プロフィール】

 いわごう・みつあき 動物写真家。撮影した写真は「ナショナル ジオグラフィック」誌の表紙を2度飾るなど、世界的に高く評価されている。

【案内】

 ▷会期=6月22日(日)まで。月曜休館。
 ▷開館時間=午前10時から午後5時(入館は同4時半まで)。
 詳細はこちらから。

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