作家・佐藤優さんと学園生の対話プロジェクト「明日への扉」 第2回 関西創価高校
作家・佐藤優さんと学園生の対話プロジェクト「明日への扉」 第2回 関西創価高校
2025年7月28日
- 「何のため」を問い続けよう
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佐藤優さんと関西創価高校生の対話プロジェクト。正義や師弟、恋愛など話題は多岐にわたった(14日、関西創価学園・池田講堂で)
佐藤優さんと関西創価高校生の対話プロジェクト。正義や師弟、恋愛など話題は多岐にわたった(14日、関西創価学園・池田講堂で)
作家の佐藤優さんと東西の創価学園生による対話プロジェクト「明日への扉――君たちだから伝えたいこと」。初回となった東京校での開催(本紙6月19日付に詳報)に続き、第2回は今月14日、大阪・交野市の関西創価学園で行われました。対象は東京校と同じく高校生。教材も同様、創立者・池田大作先生の著作『青春対話』です。学園生たちはこの日に向けて同書を読み、自分なりに思索を深め、友人と意見を交わしてきました。現代日本を代表する“知の巨人”とされる佐藤さんが、池田先生の人生や言葉を巡って、どんな話をするのか――当日の模様を紹介します。(記事=真鍋拓馬)
※第1回の記事はこちら
作家の佐藤優さんと東西の創価学園生による対話プロジェクト「明日への扉――君たちだから伝えたいこと」。初回となった東京校での開催(本紙6月19日付に詳報)に続き、第2回は今月14日、大阪・交野市の関西創価学園で行われました。対象は東京校と同じく高校生。教材も同様、創立者・池田大作先生の著作『青春対話』です。学園生たちはこの日に向けて同書を読み、自分なりに思索を深め、友人と意見を交わしてきました。現代日本を代表する“知の巨人”とされる佐藤さんが、池田先生の人生や言葉を巡って、どんな話をするのか――当日の模様を紹介します。(記事=真鍋拓馬)
※第1回の記事はこちら
歴史を見つめて
歴史を見つめて
対話プロジェクトの開会まで、あと1時間と迫った午前9時30分。関西創価中学・高校の記念展示室(希望ホール)に、佐藤さんの姿がありました。創立者・池田先生と学園生の歴史を、パネルや思い出の品々でたどる場所です。
先生が学園生に贈った励ましのメモや、健康祭(体育祭)の男子マラソンで、ふらふらになりながらゴールテープを切った最終ランナーを、創立者が両腕をVの字に上げて迎える瞬間の写真……。その一点一点を、佐藤さんは丹念に鑑賞しました。
展示では、旧ソ連の大統領を務めたミハイル・ゴルバチョフ氏夫妻が関西創価中学・高校を訪れた際の模様も紹介されていました(1997年11月20日)。佐藤さんにとって、池田先生とゴルバチョフ氏との交流の歴史には、格別の思いがあります。
今から35年前の1990年7月、モスクワでの池田先生とゴルバチョフ氏との初会見がきっかけとなり、翌年春に氏の初来日が実現。当時、外交官としてモスクワの日本大使館に勤めていた佐藤さんは、その背景と経緯を鋭く見つめていました。
「私は、池田先生の歴史をつくる行動に感銘を受けたのです」
対話プロジェクトの開会まで、あと1時間と迫った午前9時30分。関西創価中学・高校の記念展示室(希望ホール)に、佐藤さんの姿がありました。創立者・池田先生と学園生の歴史を、パネルや思い出の品々でたどる場所です。
先生が学園生に贈った励ましのメモや、健康祭(体育祭)の男子マラソンで、ふらふらになりながらゴールテープを切った最終ランナーを、創立者が両腕をVの字に上げて迎える瞬間の写真……。その一点一点を、佐藤さんは丹念に鑑賞しました。
展示では、旧ソ連の大統領を務めたミハイル・ゴルバチョフ氏夫妻が関西創価中学・高校を訪れた際の模様も紹介されていました(1997年11月20日)。佐藤さんにとって、池田先生とゴルバチョフ氏との交流の歴史には、格別の思いがあります。
今から35年前の1990年7月、モスクワでの池田先生とゴルバチョフ氏との初会見がきっかけとなり、翌年春に氏の初来日が実現。当時、外交官としてモスクワの日本大使館に勤めていた佐藤さんは、その背景と経緯を鋭く見つめていました。
「私は、池田先生の歴史をつくる行動に感銘を受けたのです」
関西創価学園の中西学園長㊧の案内で、佐藤さんが記念展示室を見学
関西創価学園の中西学園長㊧の案内で、佐藤さんが記念展示室を見学
一歩後退 二歩前進
一歩後退 二歩前進
午前10時30分。第1部となる「講演」に立った佐藤さんが言及したのは、「大阪事件」でした。池田先生が1957年7月に、事実無根の公職選挙法違反の容疑で不当に逮捕・勾留された出来事です。
取り調べの場で検事は“罪を認めなければ戸田会長を逮捕する”と高圧的な言い方で迫りました。池田先生はひとたびは無実の罪をかぶり、裁判で真実を明らかにする道を選んだのです。
佐藤さんは言います。「池田先生がひとたび罪をかぶったのは、先生が弱かったからではありません。先生には、本当に守らなければいけないものが分かっていた。衰弱していた戸田先生がもしも投獄されていたら、亡くなりかねない状況でした」と。
15日間の獄中闘争を終え、池田先生が大阪拘置所から出獄したのは7月17日。現在、創価学園はこの日を「栄光の日」と定め、一人一人が創立者の精神を学んでいます。かつて先生は、学園生にこう語ったことがあります。
「私の人生で忘れられない日だ」「民衆をいじめる権力と、真っ向から、正義のために戦ったんだ」
池田先生は、4年半にわたる法廷闘争の中で、「恩師と学会に傷をつけてなるものか」と、事実に基づいた反論を重ねました。その結果、無罪を勝ち取るのです。
この「大阪事件」の歴史を確認しつつ、佐藤さんは語りました。
「人生では『一歩後退』のように見えて、実は『二歩前進』につながっていることがある。それを池田先生は身をもって示されたのです」
午前10時30分。第1部となる「講演」に立った佐藤さんが言及したのは、「大阪事件」でした。池田先生が1957年7月に、事実無根の公職選挙法違反の容疑で不当に逮捕・勾留された出来事です。
取り調べの場で検事は“罪を認めなければ戸田会長を逮捕する”と高圧的な言い方で迫りました。池田先生はひとたびは無実の罪をかぶり、裁判で真実を明らかにする道を選んだのです。
佐藤さんは言います。「池田先生がひとたび罪をかぶったのは、先生が弱かったからではありません。先生には、本当に守らなければいけないものが分かっていた。衰弱していた戸田先生がもしも投獄されていたら、亡くなりかねない状況でした」と。
15日間の獄中闘争を終え、池田先生が大阪拘置所から出獄したのは7月17日。現在、創価学園はこの日を「栄光の日」と定め、一人一人が創立者の精神を学んでいます。かつて先生は、学園生にこう語ったことがあります。
「私の人生で忘れられない日だ」「民衆をいじめる権力と、真っ向から、正義のために戦ったんだ」
池田先生は、4年半にわたる法廷闘争の中で、「恩師と学会に傷をつけてなるものか」と、事実に基づいた反論を重ねました。その結果、無罪を勝ち取るのです。
この「大阪事件」の歴史を確認しつつ、佐藤さんは語りました。
「人生では『一歩後退』のように見えて、実は『二歩前進』につながっていることがある。それを池田先生は身をもって示されたのです」
民衆の幸福を第一に
民衆の幸福を第一に
さらに「大阪事件」と「栄光の日」に関連して、佐藤さんは学園生たちを見つめながら「関西には大きな使命があると思う」と言いました。
池田先生は法廷闘争の際、84回の公判で23回出廷しています。裁判長が、会員の指導・激励に飛び回る先生に対し“法廷に毎回出てこなくても結構ですよ”と伝えた時、先生はこう答えています。「私の大事な大事な関西の同志がおりますから、まいります」。そして、関西のあの地この地で同志を励まし続けたのです。
佐藤さんは、その足跡に着目します。「池田先生は、『民衆を守る世界』を、関西に真っ先に築こうとされたのです」
そして、なぜ創価学園を創立したかについても――「池田先生は、教育を通して、民衆の幸福を第一とするリーダーを育もうと考えたのではないでしょうか」。
英知を磨くのは、何のため。栄光を目指すのは、何のため。学園生たちは、それぞれに、使命の自覚を新たにしたようでした。
さらに「大阪事件」と「栄光の日」に関連して、佐藤さんは学園生たちを見つめながら「関西には大きな使命があると思う」と言いました。
池田先生は法廷闘争の際、84回の公判で23回出廷しています。裁判長が、会員の指導・激励に飛び回る先生に対し“法廷に毎回出てこなくても結構ですよ”と伝えた時、先生はこう答えています。「私の大事な大事な関西の同志がおりますから、まいります」。そして、関西のあの地この地で同志を励まし続けたのです。
佐藤さんは、その足跡に着目します。「池田先生は、『民衆を守る世界』を、関西に真っ先に築こうとされたのです」
そして、なぜ創価学園を創立したかについても――「池田先生は、教育を通して、民衆の幸福を第一とするリーダーを育もうと考えたのではないでしょうか」。
英知を磨くのは、何のため。栄光を目指すのは、何のため。学園生たちは、それぞれに、使命の自覚を新たにしたようでした。
触発のある話に納得し、理解を深める関西創価高校生
触発のある話に納得し、理解を深める関西創価高校生
恋愛から宗教まで
恋愛から宗教まで
第2部は、学園生とのトークセッションです。初めの質問は「恋愛」について。『青春対話』には「“恋愛さえうまくいけば、他のことはどうでもいい”という『恋愛至上主義』になったり、“どんどん深みに入って傷つくことも美しい”と言わんばかりの『無責任な恋愛論』に、だまされてもいけない」とあります。佐藤さんはこの言葉を引用し、「世間の安易な恋愛論に流されず、性別関わりなしに良き友達をたくさんつくってください」と学園生に語りかけました。
すかさず、生徒から「佐藤さんは高校時代に、恋愛はされましたか」との質問が。佐藤さんは「告白して、思いっきり振られました。その子は関東圏の大学に進学すると言うから、私は顔を合わせるのがイヤだと思って、関西圏の大学に行ったんです」と。ユーモアを交えた応答に、場内が沸きました。
続いての質問は「宗教」について。プロテスタントである佐藤さんは、仏法を実践する創価学会を高く評価しています。自分の信じる宗教があるのに、どうして他の宗教の素晴らしさをそこまで語れるのか――率直な疑問を抱いた生徒も、少なくないようです。
佐藤さんはキッパリと言います。「自分にとって正しいものがあると、人が正しいと信じているものを『軽々しく扱ってはいけない』『大切にしないといけない』と思えるのです」
特定の信仰を持つことは、他の思想・信条に対して排他的になることではありません。むしろ「確固たる信念」があるからこそ、世間の風評に流されることなく、「正しいものは正しい」「良いものは良い」と認識し、尊重する姿勢を貫けるのでしょう。
第2部は、学園生とのトークセッションです。初めの質問は「恋愛」について。『青春対話』には「“恋愛さえうまくいけば、他のことはどうでもいい”という『恋愛至上主義』になったり、“どんどん深みに入って傷つくことも美しい”と言わんばかりの『無責任な恋愛論』に、だまされてもいけない」とあります。佐藤さんはこの言葉を引用し、「世間の安易な恋愛論に流されず、性別関わりなしに良き友達をたくさんつくってください」と学園生に語りかけました。
すかさず、生徒から「佐藤さんは高校時代に、恋愛はされましたか」との質問が。佐藤さんは「告白して、思いっきり振られました。その子は関東圏の大学に進学すると言うから、私は顔を合わせるのがイヤだと思って、関西圏の大学に行ったんです」と。ユーモアを交えた応答に、場内が沸きました。
続いての質問は「宗教」について。プロテスタントである佐藤さんは、仏法を実践する創価学会を高く評価しています。自分の信じる宗教があるのに、どうして他の宗教の素晴らしさをそこまで語れるのか――率直な疑問を抱いた生徒も、少なくないようです。
佐藤さんはキッパリと言います。「自分にとって正しいものがあると、人が正しいと信じているものを『軽々しく扱ってはいけない』『大切にしないといけない』と思えるのです」
特定の信仰を持つことは、他の思想・信条に対して排他的になることではありません。むしろ「確固たる信念」があるからこそ、世間の風評に流されることなく、「正しいものは正しい」「良いものは良い」と認識し、尊重する姿勢を貫けるのでしょう。
今は「勉強」する時
今は「勉強」する時
「進路や勉学」についても、多くの質問が出ました。佐藤さんが一貫して訴えたのは、池田先生が常々、語っていた「何のため」を重視する姿勢です。
例えば、医師を目指すにしても――「お金を儲けられそうだから」「自分の成績が良いほうなので、医学部に行こう」といった短絡的な理由で志す人も、世の中にはいるかもしれない。けれど「資格をとって何がやりたいのかが大事です。現場で働きたいなら、“病気の人を助けたい”思いを忘れないことです」。医師になりたいという高校1年生には、そう伝えました。
また、「池田先生の心を継いで、平和のために今、何か主体的に行動を起こしたい」と話す高校1年生には、「今、皆さんがやるべきことは、とにかく勉強です」と即答しました。
地球的課題の原因は、複雑に絡み合っている。一時的なデモを起こすといったようなことで、簡単に解決するものではないと、佐藤さんは語ります。
若いからこそ、現実の不条理を目の当たりにして、衝動的な正義感に駆られることもある。しかし、今は決して焦らず、より大きなことを成し遂げられるよう、学問と努力を重ねるべきだというのです。そしてこう語りました。
「戸田先生の原水爆禁止宣言や、池田先生の平和提言などを皆で読み合って、どう考えたのかを語り合ってもいい。それは学園生だからこそできる、平和への具体的な取り組みでしょう」
「進路や勉学」についても、多くの質問が出ました。佐藤さんが一貫して訴えたのは、池田先生が常々、語っていた「何のため」を重視する姿勢です。
例えば、医師を目指すにしても――「お金を儲けられそうだから」「自分の成績が良いほうなので、医学部に行こう」といった短絡的な理由で志す人も、世の中にはいるかもしれない。けれど「資格をとって何がやりたいのかが大事です。現場で働きたいなら、“病気の人を助けたい”思いを忘れないことです」。医師になりたいという高校1年生には、そう伝えました。
また、「池田先生の心を継いで、平和のために今、何か主体的に行動を起こしたい」と話す高校1年生には、「今、皆さんがやるべきことは、とにかく勉強です」と即答しました。
地球的課題の原因は、複雑に絡み合っている。一時的なデモを起こすといったようなことで、簡単に解決するものではないと、佐藤さんは語ります。
若いからこそ、現実の不条理を目の当たりにして、衝動的な正義感に駆られることもある。しかし、今は決して焦らず、より大きなことを成し遂げられるよう、学問と努力を重ねるべきだというのです。そしてこう語りました。
「戸田先生の原水爆禁止宣言や、池田先生の平和提言などを皆で読み合って、どう考えたのかを語り合ってもいい。それは学園生だからこそできる、平和への具体的な取り組みでしょう」
トークセッションで、生徒の代表が質問を寄せる
トークセッションで、生徒の代表が質問を寄せる
小説から師弟を学ぶ
小説から師弟を学ぶ
最後の質問は「創立者の思想をどのように深めていけば良いか」。
佐藤さんは、池田先生が書いた小説『人間革命』『新・人間革命』を通読してほしいと語ります。できれば「個人の黙読」に加え、「グループでの輪読」にも挑戦してほしいと望みました。
この二つの小説には、池田先生が自身の師匠である戸田先生と過ごした日々や、当時の心情が描かれているからだと言います。
池田先生の人生を貫くものは「師弟」です。創価学園を創立する原点も、師匠への誓いがあったからにほかなりません。「師弟は理屈では説明できません。小説の形で描かれた本を通して、皆さん自身が池田先生の人生を追体験することが大事です」と、佐藤さんは語りました。
あらゆる悩みに対する答えは、先生の著作の中にあり、開けばいつでも“池田先生に相談できる”。読めば読むほど、そんな感覚を強めていけることが理想だと、佐藤さんは訴えました。
東西の学園生との交流を経て、佐藤さんには強い感銘を受けたことがありました。それは、学園生が「創立者の思いをどう継いでいくか」「今後の学園をどうするべきなのか」という“当事者意識”を強く持っている点です。
「みんな本当によく、まじめに考えています。学園生には、自身の力を過小評価してほしくない」。一人一人が、これから一段と成長していく様子を、思い浮かべたのでしょうか。学園のキャンパスを後にしながら、佐藤さんは言葉を継ぎました。「またお会いするのが楽しみです」
最後の質問は「創立者の思想をどのように深めていけば良いか」。
佐藤さんは、池田先生が書いた小説『人間革命』『新・人間革命』を通読してほしいと語ります。できれば「個人の黙読」に加え、「グループでの輪読」にも挑戦してほしいと望みました。
この二つの小説には、池田先生が自身の師匠である戸田先生と過ごした日々や、当時の心情が描かれているからだと言います。
池田先生の人生を貫くものは「師弟」です。創価学園を創立する原点も、師匠への誓いがあったからにほかなりません。「師弟は理屈では説明できません。小説の形で描かれた本を通して、皆さん自身が池田先生の人生を追体験することが大事です」と、佐藤さんは語りました。
あらゆる悩みに対する答えは、先生の著作の中にあり、開けばいつでも“池田先生に相談できる”。読めば読むほど、そんな感覚を強めていけることが理想だと、佐藤さんは訴えました。
東西の学園生との交流を経て、佐藤さんには強い感銘を受けたことがありました。それは、学園生が「創立者の思いをどう継いでいくか」「今後の学園をどうするべきなのか」という“当事者意識”を強く持っている点です。
「みんな本当によく、まじめに考えています。学園生には、自身の力を過小評価してほしくない」。一人一人が、これから一段と成長していく様子を、思い浮かべたのでしょうか。学園のキャンパスを後にしながら、佐藤さんは言葉を継ぎました。「またお会いするのが楽しみです」
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