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◆価値創造への挑戦 課題解決型の教育プログラム「SAGE JAPAN」を運営 2023年6月9日

【創大・短大マガジン】
教育学部 宮崎ゼミ
高大連携プロジェクトで社会貢献の意識育てる

 米国で誕生した、高校生と大学生が一緒になって社会貢献プロジェクトを考案・実践する教育プログラム「SAGE」。創大・教育学部の宮崎猛ゼミでは、その日本版である「SAGE JAPAN」を国内でゼロから立ち上げ、10年間にわたって運営を担ってきた。その奮闘を取材した。

3年生と4年生が集まり、「SAGE JAPAN CUP」に向けた取り組みを語り合う“自主ゼミ”の様子(5月、東京・八王子の創価大学で)
3年生と4年生が集まり、「SAGE JAPAN CUP」に向けた取り組みを語り合う“自主ゼミ”の様子(5月、東京・八王子の創価大学で)
触発の学び

 ステージに照明がともると、会場の空気がピンと張り詰める。社会に新たな価値をつくろうと熱弁を振るう若者たちの表情は、舞台の上で輝いて見えた。
  
 高校生たちが社会貢献プロジェクトを考え、その実践について発表する「第10回SAGE JAPAN CUP」が3月21日、東京・文京区の文京学院大学で開催された。4年ぶりに対面での実施となった今大会は、都内と愛知県から8校11チームが参加した。
  
 「SAGE」とは、2002年に米国で生まれた教育プログラム。社会課題の解決に取り組むことで、問題解決能力や起業家精神、協働性などを養う。現在、五大陸30カ国以上で実施され、そこで育まれた人材やアイデアは、SDGs(持続可能な開発目標)の大きな推進力にもなっている。
  
 創大・教職大学院の宮崎猛教授が担当する教育学部の宮崎ゼミでは、同プログラムの日本版である「SAGE JAPAN」を13年に立ち上げ、10年間にわたって運営を担ってきた。
  
 「高校生の取り組みを、大学生がしっかりサポートする高大連携の“触発の学び”が、SAGE JAPANの特徴です」
  
 本年度、SAGE JAPANの代表を務める安田暉生さん(4年)が教えてくれた。
  
 SAGE JAPANは、主役となる高校生に「大学生サポーター」が加わり、チームを構成。企業や学識者の協力も得ながら、プロジェクトを形にしていく。その集大成として開催するのが、高校生によるプレゼンテーション大会「SAGE JAPAN CUP」だ。優勝チームは、「SAGE WORLD CUP(世界大会)」への出場権が得られ、これまで、ウクライナや南アフリカ等での大会に出場してきた。
  

やり遂げる姿

 「3月に大会が終わり、4月には新年度の取り組みを開始します。サポート役の私たちにとっても大きな学びの機会です」と安田さんが語る通り、SAGE JAPANの運営は、宮崎ゼミの献身的な取り組みに支えられている。
  

「SAGE」の頭文字である「S」を手でつくり笑顔でカメラに納まる宮崎教授(前列左端)とゼミ生たち(3月、東京・文京学院大学で)
「SAGE」の頭文字である「S」を手でつくり笑顔でカメラに納まる宮崎教授(前列左端)とゼミ生たち(3月、東京・文京学院大学で)

 同ゼミでは、毎週水曜日、通常のゼミの授業が終わった後に、3年生と4年生が集まり、“自主ゼミ”と呼ばれる活動を実施。各高校への電話による参加呼び掛け、大学生サポーターの募集、講演会や勉強会の企画など、SAGE JAPANに関する、あらゆる取り組みを推進していく。この学生主体の取り組みは、ゼミの外にも大きな触発を与えている。
  
 佐藤裕輝さんは、早稲田大学2年の時に、大学生サポーターとして、SAGE JAPANの取り組みに参加した。
  
 「何度も壁にぶつかりながら、高校生がプロジェクトをやり遂げる姿に感銘を受けました。3年生の時は、宮崎ゼミ生になりきって(笑)、運営に携わりました」
  
 昨年、NPO法人を立ち上げ、現在も通信機器メーカーに勤める傍ら、SAGE JAPANの運営をサポートする。
  
 詹卉さん(4年)は、中国・西安外国語大学から創価大学に留学し、宮崎ゼミに所属。当初、授業などで交わされる日本語が理解できず、自信をなくしていた。
  
 「そんな時、海外出身の高校生が、緊張しながらも、SAGE JAPANに挑戦している姿に触れて、勇気をもらったんです」
  
 “私も、人々に希望を送る存在に成長しよう”と猛勉強し、今では日本語で後輩にアドバイスを送る。将来は、故郷の中国で日本語教師になることを目標に、向学の日々を送っている。
  

人道的競争の場

 創価教育の実践者として、教育を通じて、いかに社会に貢献していくべきか――約10年前、当時の宮崎ゼミの学生たちは真剣に議論したという。
 その具体的な方法を模索していた時、出合ったのが米国で誕生した「SAGE」だった。
 “これを日本でも実施しよう”
 しかし、実現までの道には多くの困難が立ちはだかっていた。
 当時、ゼミ生だった本多由佳さんが振り返る。
 「全てが手探りでした。何より苦労したのは、高校生に参加してもらうことでした」
 実績も知名度もない。生徒だけではなく、学校や保護者の理解を得ながら参加者を募るのは、容易ではなかった。
 一校一校電話をして、参加を促すも、返ってくる心ない言葉に、胸を痛めることもあった。それでも、ゼミ生同士で励まし合い、伝え方に工夫を重ねて、誠実に語っていった。その結果、二つの高校がエントリーしてくれ、「第1回SAGE JAPAN CUP」の開催にこぎつけた。
 2チームから始まった同プログラムは、生徒の成長と斬新なアイデアによって、徐々に理解が広がり、今では10チーム以上が参加。予選会を行う学校もあるという。
 「私たちが実現したのは立ち上げまでで、あとは後輩たちが理念を受け継いで、発展させてくれたものです」と本多さん。現在、国内最大手の損害保険会社の支社で、社員の育成を担うチームリーダーを務めるなど、社会の第一線で価値創造に挑む。

「第10回SAGE JAPAN CUP」では、郁文館夢学園のチームが優勝し、世界大会への切符を手にした(同)
「第10回SAGE JAPAN CUP」では、郁文館夢学園のチームが優勝し、世界大会への切符を手にした(同)

       ◇
  
 「僕たちの目的は世界の課題解決なので、今回の優勝は一つのマイルストーン(道しるべ)だと思っています」
  
 3月のSAGE JAPAN CUPで優勝した郁文館夢学園の生徒は語った。
  
 この大会で、代表を務めた宗像佳子さんはほほ笑む。
  
 「価値創造の教育を、創大の外にも大きく広げていくことが私たちの目標です。その意味で、高校生たちが生き生きと輝く姿を見ることが、何よりもうれしいです」
  
 長年、ゼミの指導を務めてきた宮崎教授は、言葉に力を込める。
  
 「創価教育の父・牧口常三郎先生は、『軍事的競争』『経済的競争』の次に来るべきは『人道的競争』であると提唱されました。まさに、『人道的競争の場』としてSAGE JAPANを運営してきました。より良い未来をつくり、社会を変えようと挑む高校生たちを先頭に、多くの人々が成長できる機会を提供できるよう、これからも取り組んでいきます」
  
  

◆識者の声
ジャーナリスト
伊藤芳明さん
※本人提供
※本人提供

 「SAGE JAPAN」が結成されたのは2013年。SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されるより前でしたが、その先駆けともいえる取り組みだと思います。
  
 国際機関を取材してきた経験上、この種の取り組みは、一部の人々の間にとどまりがちだと感じてきましたが、高校生と大学生が力を合わせて課題解決に挑むプロジェクトが、日本で立ち上がっていたことに、とても驚き、感心しました。
  
 第6・7回大会で審査委員長を務めましたが、登壇者たちは、知識先行型に偏らず、身近な課題から具体的な解決策を導き出していました。サポート役の大学生が兄や姉のように寄り添い、探究してきた成果でしょう。
  
 発表の巧拙にかかわらず、懸命に学んできた努力は、必ず見る人に伝わり、人生の財産になります。初挑戦する学校も増えてほしい。創価大学の皆さんにはこの価値ある取り組みを、自信をもって続けてほしいと思います。
  
 (元日本記者クラブ理事長。元毎日新聞社専務・主筆)
  
  

◆News&Topics
創大・短大でオープンキャンパス
8月5日(土)、6日(日)、27日(日)開催!

 創価大学、創価女子短期大学では、8月5日(土)、6日(日)、27日(日)に、オープンキャンパスを開催する。詳細は、各ホームページを参照。
 問い合わせは「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉、「創価女子短期大学入試事務室」〈042(691)9480〉まで。

   
 創価大学
  
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THE日本大学ランキング2023

創大が「国際性」で第6位に!

 創価大学は、英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が3月23日に発表した「THE日本大学ランキング2023」において、「国際性」の分野で6位(首都圏2位)に入り、4年連続トップ10入りを果たした。
  
 「国際性」の評価は、外国人学生比率、外国人教員比率、日本人学生の留学比率、外国語で行われている講座の比率をもとに、国際的な教育環境の充実度を数値化して決定される。
  
 創大は、2014年に採択された文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業の中間評価で、1回目(18年2月)、2回目(21年3月)と、いずれも最高ランクの「S」を獲得。世界の大学との学術交流協定も増加し、グローバル教育が一段と進化している。
  
  

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