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〈信仰体験〉 創業70年 「真心手仕上げ」のクリーニング店 2026年4月23日

  • 焦らず信じて笑顔で待つ
受付でお客を迎えるみどりさん。「接客は第一印象で決まるんです」と、朝の決意の祈りから毎日を出発する。奥で作業するのが夫の勝利さん
受付でお客を迎えるみどりさん。「接客は第一印象で決まるんです」と、朝の決意の祈りから毎日を出発する。奥で作業するのが夫の勝利さん

 【東京都世田谷区】家並みの続く一本路地に、飲食や雑貨の店が点々と散らばっている。そんな閑静な住宅街の一角に、「クリーニングもろはし」がある。梁川みどりさん(62)=支部女性部長=の両親の代から始まった商売を夫婦で継ぎ、今年で創業70年。みどりさんが“戦友”と呼ぶ夫と二人三脚で、どんな課題も乗り越えてきた。

包装を終えたワイシャツが、お客の来店を待っている
包装を終えたワイシャツが、お客の来店を待っている
しみ抜きをするみどりさん
しみ抜きをするみどりさん

 みどりさんが担当するのは受付、しみ抜き、包装など。
 お客が来店すると、「丁寧に洗い、仕上げさせていただきます!」と、みどりさんの弾んだ声が、こぢんまりとした店内に響く。
  
 仕上げやドライ洗いは夫・勝利さん(63)=副区長=の仕事。
 誠実な作業で互いの持ち場を守り、真心で仕上げた衣服を、お客の手元へ戻す。

プレス機を囲む梁川夫婦の息はぴったり
プレス機を囲む梁川夫婦の息はぴったり

 分業する中でも、シーツなど大きなものは、二人でプレス機を囲み、蒸気でしわを伸ばす。
 シーツの両端をつかみ、勝利さんの「そこを引っ張って」の一言に、みどりさんが元気よく「はい!」と返す。
 会話は必要最小限でも、あうんの呼吸で流れるように作業が進んでいく。
  
 「前日に夫婦げんかをすると、仕事に影響が出るんですよ」と笑う勝利さんも、ひとたびアイロンを手にすると、口をぐっと結び、職人の顔つきに変わる。

勝利さんが仕上げのアイロンに取りかかる
勝利さんが仕上げのアイロンに取りかかる

 二人が夫婦になったのは1990年(平成2年)のこと。
 当時、勝利さんは食品会社の営業職で、夜が更けてから帰る生活が続いていた。
  
 ある日の朝、同居するみどりさんの父・諸橋一さんが、鼻歌交じりに仕上げのアイロンがけをしていた。
 「手に職を付けたい」と考えていた勝利さんは、「その背中から喜びが伝わってきて、自分もこんな仕事をやりたいと思った」と。
  
 寡黙で職人かたぎの父と、営業で鍛えられた陽気な夫が、同じ場所に立てるのか――。
 「でも夫は、私が反対しても、一度決めたことは変えないから(笑)」とみどりさん。

創業当時のみどりさんの両親
創業当時のみどりさんの両親
●仲むつまじい両親を目指して

 幼い頃から店でも家庭でも、父と母・正子さんの「お風呂も一緒に入るぐらい」仲むつまじい姿を見てきた。
 そんな両親に憧れ、夫とともに両親の後を継ぐと決めた。
  
 案の定、仕事場で夫と父の意思疎通がうまくいかず、ぶつかることも。
 そのたびにみどりさんは、二人の思いをくみながら、仲介役となって間を取り持った。
 数年がたち、仕事が様になってきた頃、夫婦は試練にぶつかった。

みどりさんの両親は、晩年まで夫婦で御本尊の前に座り「最後まで信心を教えてくれました」
みどりさんの両親は、晩年まで夫婦で御本尊の前に座り「最後まで信心を教えてくれました」

 3人のわが子が相次いで不登校に。制服を手にしても袖に腕が通せない。学校に向かっても途中で引き返す。
 みどりさんは、家族には努めて笑顔を見せながら、一人になると“いつまで続くんだろう”と頭を抱えた。
  
 そんな中、勝利さんが家族の心が軽くなるように、冗談を飛ばし、夜、二人になると「いつも頑張ってるんだから、早く休んでくれ。俺が祈るから大丈夫」と、優しく声をかけてくれた。

女性部の友と歩くみどりさん(左端)。子どもたちから学んだ「信じ抜く」ことは、学会活動にも生かされている
女性部の友と歩くみどりさん(左端)。子どもたちから学んだ「信じ抜く」ことは、学会活動にも生かされている

 ある日、希望を求めて開いた「大白蓮華」に、池田先生の言葉があった。
  
 〈どんな人も見放さない。決めつけない。切り捨てない。信じ抜き、手を差し伸べて、仏性を呼び起こす。これが仏法の人間主義だ〉
  
 心を射抜かれた。諦めそうになってしまう自分を、師に見抜かれた気がした。
 朝、夫婦で題目を唱えて一日を出発する。
 「法華経に名をたて身をまかせ給うべし」(新1791・全1360)
 ありのまま、御本尊に向かった。
 祈りを重ねるほどに、焦らず、子どもたちを「信じ抜こう」「待ち続けよう」とする気持ちが、ふつふつと湧いた。

バイクで集配に向かう夫・勝利さん。遠方のお客や来店が難しい高齢者など、集配を求める声は多いという
バイクで集配に向かう夫・勝利さん。遠方のお客や来店が難しい高齢者など、集配を求める声は多いという
●“当たり前”の中にありがたみを感じた

 心が変われば、見える景色にも彩りが生まれる。「『祈って笑顔で待つ』と決めた時から、子どもたちが家にいてくれるだけで十分なんだと思えるようになったんです」
  
 テレビを見ながら手をたたいて笑うわが子がいる。“それだけで幸せなんだ”と、涙があふれた。
  
 心の変化は、店に立つ姿勢にも表れた。キャッチフレーズは「真心手仕上げ」。
 隣に立つ夫に、小さなことでも「ありがとう」と言えるようになった。
 「夫とは朝から晩まで、ずっと一緒。苦楽をともにしてきた“戦友”なんです」

みどりさん㊨は夫・勝利さんと、一日の大半をともにする。「にぎやかな夫と長年いると、おとなしい性格だった私も、いつの間にか明るくなっていました」と
みどりさん㊨は夫・勝利さんと、一日の大半をともにする。「にぎやかな夫と長年いると、おとなしい性格だった私も、いつの間にか明るくなっていました」と

 店には、そんな夫がいて、その先には大切な洋服を預けてくれるお客がいる。
 今まで“当たり前”と感じていた日常の一つ一つに、ありがたみを感じるようになった。
  
 他店で断られた汚れにも向き合い、諦めずに何度も挑戦する。
 「お客さまの喜ぶ顔が楽しみで」
  
 服をきれいにするだけではなく、心に寄り添う言葉を届ける。
 経机にある御祈念帳には「お客様の健康、長寿、幸せ」と記されている。
 3人の子どもたちは、計9年間に及んだ不登校の期間を乗り越えた。

年季の入った機械がクリーニング店の歴史を物語っている
年季の入った機械がクリーニング店の歴史を物語っている

 長男・利明さん(34)=男子部副本部長=は、編集者として活躍しながら、男子部の友を励ましに歩く。
 長女と次女も芸術、美容の分野に進み、きょうだいそれぞれが家庭を築き、独立した。
  
 苦労と共に時を刻んできたクリーニング店は、創業70年を迎える。昨年、95歳まで店に立ち続けた父と、認知症を患いながらも、穏やかに過ごした母が霊山へ。
 店は静かに次の時代へと歩み出した。
  
 みどりさんの胸には、夫婦で築いた不屈の信心がある。
 今日もまた、「丁寧に洗い、仕上げさせていただきます!」と、確信の一声で人々を迎えている。

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