• ルビ
  • 音声読み上げ
  • シェア
  • メール
  • CLOSE

〈SDGs×SEIKYO〉 “当たり前”の価値の大きさ――タウン誌を発案した地元経営者 2023年5月2日

3:26

 岡山県瀬戸内市の事業者有志は一昨年、タウン情報誌を作りました。発案者の宮本靖夫さん(51)=副本部長=が、発行を通して気付いたこと。それは「市外から来た新住民や観光客こそが、地元の魅力を教えてくれる」ということでした。(今回はSDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」について考えます。取材=石塚哲也、写真=石井和夫)
 

この記事のテーマは「住み続けられるまちづくりを」

 
 「住み続けられるまち」であるためには、雇用の創出、教育や医療環境の充実など、さまざまな条件が挙げられる。

 とともに宮本さんは「“住みたい”と思ってもらえるよう、わが街の魅力を自覚し、発信することが大切だ」と言う。コロナ禍という危機から、それを学んだ。
 

創業から100年以上続くジュエリーショップを経営する宮本さん
創業から100年以上続くジュエリーショップを経営する宮本さん

 
 瀬戸内市は岡山市中心部から車で40分ほどの距離にある。“日本のエーゲ海”瀬戸内海に面した風光明媚な牛窓町、国宝の刀剣「山鳥毛」で知られる長船町、詩人画家である竹久夢二の故郷・邑久町を擁する「歴史と文化の街」だ。

 2020年春以降、コロナ禍により瀬戸内市内でも、多くの人が外出を控えた。宮本さんは、100年以上続くジュエリーショップの4代目社長を務める。自身の店の経営も打撃を受けたが、飲食、宿泊、観光業に携わる経営者仲間の状況には胸が締め付けられた。誰もが先の見えない不安に耐えていた。

 “何かアクションを起こせないか”

 熟考の末、宮本さんはPRに特化したタウン誌の制作を思い立つ。“割引券や特典も盛り込み、市内外から瀬戸内を訪ねてもらうきっかけにしたい”。感染状況も注視しつつ、宮本さんは協賛の輪を広げるべく経営者や店主のもとを回った。
 

瀬戸内市牛窓町にあるコーヒーショップでスタッフに「まちづくり」について意見を聞く宮本さん
瀬戸内市牛窓町にあるコーヒーショップでスタッフに「まちづくり」について意見を聞く宮本さん

 
 予想に反し、賛同の輪は、すぐには広がらなかった。「うちの店はそこまで危機的状況にない」「新たにタウン誌を発行する必要があるのか」などの声が聞かれた。

 宮本さんは、どの考えも一理あると思い、むしろ相手に感謝した。「相手の本音を知ることが、心を通わせる第一歩」であると、創価学会の活動の中で学んできたからだ。宮本さんには大切にしている指針がある。それはかつて池田先生が示したキング博士の言葉だ。

 〈力強く生きるということは常に、そのように自己の魂と自己の置かれた状況に打ち勝つことを含んでいるのである〉

 青年時代に経験した父の死去、経営難、その後のパニック障がいや潰瘍性大腸炎――転機となる出来事が起こるたび、この指針を胸に仏法対話に励み、12人に弘教が実った。宮本さんは、「入会に至らなかった人との対話にも、学びがたくさんありました」と振り返る。
 

夢二郷土美術館 夢二生家記念館で(岡山県瀬戸内市邑久町本庄2000-1)
夢二郷土美術館 夢二生家記念館で(岡山県瀬戸内市邑久町本庄2000-1)

 
 地域の店主や経営者らと対話を重ねる中、宮本さんも自分の思いを言葉にし、自覚することができた。

 「経営難の有無を超えて、みんなで街を盛り上げたい」
 「生き生きと働く大人の姿を、未来を担う子どもたちにも見せたい」と。

 店主たちも、「そこまでの理念でやるのなら」と、一人また一人と賛同してくれた。地元育ちの経営者もいれば、市が「まちづくり」に注力する中、古民家を再生して店舗を構えた移住者も。資金はクラウドファンディングでも集めた。

 そして50を超える事業者が一つのチームとなって、21年、有力雑誌の付録にする形で「タウン情報せとうち」を発行した。やがて情報誌片手に瀬戸内市を訪れる観光客の姿が見え始め、少しずつ、街に活気が戻ってきた。
 

昨年「世界で最も素晴らしい場所」50選に選ばれた瀬戸内の景色
昨年「世界で最も素晴らしい場所」50選に選ばれた瀬戸内の景色

 
 昨年5月、宮本さんは要請を受け、「瀬戸内市観光協会」の理事に就任。観光客をはじめ、人との出会いも増えた。

 「日本刀が大好きなんです」と目を輝かせて語る“刀剣好きな女性ファン”。いつも見ていた瀬戸内海の“多島美”をカメラに収める外国人観光客。田んぼに映り込む夕日をスマートフォンで撮影する移住者。瀬戸内市で生まれ育った宮本さんにとって、「当たり前にあったもの」。その価値の大きさを教わる毎日だという。

 「“住み続けられるまち”には魅力がたくさん詰まっている。その魅力を私たちが深く自覚し、広げていきたい。池田先生が言われた『立正安世界』に学び、私の決意として“立正安瀬戸内”ともいえる街の繁栄を実現していきたいんです」

 SDGsの目標は、街の内外を問わず、人と人が交流し、風土の魅力を語らう中で、達成されていくのかもしれない。
 

「ぜひ、瀬戸内市に来てください!」――瀬戸内市観光協会の理事としてPRは忘れない
「ぜひ、瀬戸内市に来てください!」――瀬戸内市観光協会の理事としてPRは忘れない

 
【SDGs×SEIKYO特設HPはこちら】
※バックナンバーが無料で読めます※

●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ、ご感想をお寄せください→ sdgs@seikyo-np.jp

動画

SDGs✕SEIKYO

SDGs✕SEIKYO

連載まとめ

連載まとめ

Seikyo Gift

Seikyo Gift

聖教ブックストア

聖教ブックストア

デジタル特集

DIGITAL FEATURE ARTICLES デジタル特集

YOUTH

劇画

劇画
  • HUMAN REVOLUTION 人間革命検索
  • CLIP クリップ
  • VOICE SERVICE 音声
  • HOW TO USE 聖教電子版の使い方
PAGE TOP