〈教育本部ルポ・つなぐ〉第13回=保育士4年目 “心音”に耳を傾けながら
〈教育本部ルポ・つなぐ〉第13回=保育士4年目 “心音”に耳を傾けながら
2024年11月10日
- テーマ:保育・幼児教育②
- テーマ:保育・幼児教育②
保育士の方々が友人や知人から一度は言われたり、SNSで目にしたりする言葉があるという。「保育士さんって、子どもと一緒に遊んでいるだけだよね?」
本当に“それだけ”の仕事であれば、帰宅後にグッタリするほど心身共に疲れることも、時に夜も寝付けないほど悩むこともないだろう。それでも頑張り続けられるのは、「子どもが好き」で「一人一人の“成長の瞬間”に立ち会えるから」――都内の認可保育園に勤める鯨井美貴さん(池田華陽会・千代田区サブキャップ)は笑顔で言う。
保育士の方々が友人や知人から一度は言われたり、SNSで目にしたりする言葉があるという。「保育士さんって、子どもと一緒に遊んでいるだけだよね?」
本当に“それだけ”の仕事であれば、帰宅後にグッタリするほど心身共に疲れることも、時に夜も寝付けないほど悩むこともないだろう。それでも頑張り続けられるのは、「子どもが好き」で「一人一人の“成長の瞬間”に立ち会えるから」――都内の認可保育園に勤める鯨井美貴さん(池田華陽会・千代田区サブキャップ)は笑顔で言う。
鯨井美貴さん
鯨井美貴さん
地元の未来っ子たちと楽しく遊ぶ
地元の未来っ子たちと楽しく遊ぶ
小学生の頃から幼い子の世話が得意。将来の夢も保育士一択。大変な仕事だと分かっていたが、最初に勤務した保育園は「想像以上でした」。
“命を預かっている”という緊張感。園児の予測外の行動も念頭に置いた事故対策が、月齢・年齢に応じて求められる。急な発熱や嘔吐もしばしば。子ども同士のけんかも日常茶飯事。運動会や発表会といった行事の準備も忙しい。
個々をこまやかに見たいのは、やまやま。だが、そうもいかないのが実情だ。例えば3歳児クラスだと、「1人の保育士が担当する子どもは15人」というのが国の現行基準だが、慢性的な保育士不足で基準を満たせない園も少なくない。
小学生の頃から幼い子の世話が得意。将来の夢も保育士一択。大変な仕事だと分かっていたが、最初に勤務した保育園は「想像以上でした」。
“命を預かっている”という緊張感。園児の予測外の行動も念頭に置いた事故対策が、月齢・年齢に応じて求められる。急な発熱や嘔吐もしばしば。子ども同士のけんかも日常茶飯事。運動会や発表会といった行事の準備も忙しい。
個々をこまやかに見たいのは、やまやま。だが、そうもいかないのが実情だ。例えば3歳児クラスだと、「1人の保育士が担当する子どもは15人」というのが国の現行基準だが、慢性的な保育士不足で基準を満たせない園も少なくない。
“心をなくしそうな”日々の中で、保育士を志した“初心”に立ち返らせてくれたのが、創価家族だった。女性部の先輩や池田華陽会の仲間たちが、「美貴ちゃんなら大丈夫」と、揺るがずに信じて祈ってくれた。話に耳を傾け、思いの丈を受け止めてくれた。鯨井さんは、御本尊に向かう力を取り戻した。目の前の一人の可能性を信じ抜き、対話を重ねる――「私がしたかった保育も、これだったじゃないか」。
“心をなくしそうな”日々の中で、保育士を志した“初心”に立ち返らせてくれたのが、創価家族だった。女性部の先輩や池田華陽会の仲間たちが、「美貴ちゃんなら大丈夫」と、揺るがずに信じて祈ってくれた。話に耳を傾け、思いの丈を受け止めてくれた。鯨井さんは、御本尊に向かう力を取り戻した。目の前の一人の可能性を信じ抜き、対話を重ねる――「私がしたかった保育も、これだったじゃないか」。
本年4月に行われた、千代田区の華陽カレッジで
本年4月に行われた、千代田区の華陽カレッジで
保育士4年目の今春、新たな職場へ。発達特性のある子もいるクラスを受け持つことに。「対話」といっても、園児は「言葉」をうまく使えない。そこで適切な「見立て」と「手立て」が重要になる。
「見立て」とは、園児の言動の“奥”にある思いに心をはせ、「どんな言葉をかけたら安心するかな。やる気が湧くかな」「手をつないだほうがいいかな。それとも見守ったほうがいいかな」等と想像力を働かせること。「手立て」とは、そうした「見立て」に基づいて具体的な対応を取ることだ。保育士の専門性は、この「見立て」の感度の高さにこそ表れる。「私にとって毎日の唱題が、それを高める方法なんです」(鯨井さん)
保育士4年目の今春、新たな職場へ。発達特性のある子もいるクラスを受け持つことに。「対話」といっても、園児は「言葉」をうまく使えない。そこで適切な「見立て」と「手立て」が重要になる。
「見立て」とは、園児の言動の“奥”にある思いに心をはせ、「どんな言葉をかけたら安心するかな。やる気が湧くかな」「手をつないだほうがいいかな。それとも見守ったほうがいいかな」等と想像力を働かせること。「手立て」とは、そうした「見立て」に基づいて具体的な対応を取ることだ。保育士の専門性は、この「見立て」の感度の高さにこそ表れる。「私にとって毎日の唱題が、それを高める方法なんです」(鯨井さん)
秋の運動会を前に、クラス演目である踊りの全体練習に参加しようとしないA君がいた。もともと、友達と広く関わるのが苦手。鯨井さんは保育士のクラスリーダーである先輩と相談し、彼に寄り添い続けた。皆が園庭で練習をする中、室内でA君の隣に座り、一言また一言を紡ぎ、待ち続けた。沈黙の時間も、彼の成長を祈り、“心音”に耳を傾ける思いで――。
3日間、1週間、2週間……ある日の夕刻、一人の園児が突然、室内で「踊りを練習したい」と言い出した。すると、A君が「自分もやる!」。鯨井さんは驚いた。そこから全体練習にも加わることができ、本番では見事な演技を披露。以来、A君は普段から友達とも積極的に関わるようになったのである。
秋の運動会を前に、クラス演目である踊りの全体練習に参加しようとしないA君がいた。もともと、友達と広く関わるのが苦手。鯨井さんは保育士のクラスリーダーである先輩と相談し、彼に寄り添い続けた。皆が園庭で練習をする中、室内でA君の隣に座り、一言また一言を紡ぎ、待ち続けた。沈黙の時間も、彼の成長を祈り、“心音”に耳を傾ける思いで――。
3日間、1週間、2週間……ある日の夕刻、一人の園児が突然、室内で「踊りを練習したい」と言い出した。すると、A君が「自分もやる!」。鯨井さんは驚いた。そこから全体練習にも加わることができ、本番では見事な演技を披露。以来、A君は普段から友達とも積極的に関わるようになったのである。
何が決め手となったかは分からない。ただ鯨井さんたち保育士の関わりが織り成す点と点がつながって線となり、クラスの心のつながりも強くなったことは事実だろう。わが子のより良い変化を保護者の方々も感じ取り、喜んでくれた。
保育士は大変だ。けれど、これほど楽しく、驚きと感動に満ちた仕事もないと鯨井さんは思う。子どもたちからもらった手紙を見返すたび、誇りと感謝を新たにする。
何が決め手となったかは分からない。ただ鯨井さんたち保育士の関わりが織り成す点と点がつながって線となり、クラスの心のつながりも強くなったことは事実だろう。わが子のより良い変化を保護者の方々も感じ取り、喜んでくれた。
保育士は大変だ。けれど、これほど楽しく、驚きと感動に満ちた仕事もないと鯨井さんは思う。子どもたちからもらった手紙を見返すたび、誇りと感謝を新たにする。
鯨井さんが、前任園の園児たちからもらった手紙。「みんなのことささえてくれてありがとう。しょうがっこうにいってもわすれないよ」
鯨井さんが、前任園の園児たちからもらった手紙。「みんなのことささえてくれてありがとう。しょうがっこうにいってもわすれないよ」
【ご感想をお寄せください】
kansou@seikyo-np.jp
※ルポ「つなぐ」では、子どもや保護者と心をつなぎ、地域の人と人とをつなぐ教育本部の友を取材しながら、「子どもの幸福」第一の社会へ私たちに何ができるかを考えます。
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