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“子どもはなんて美しいのだろう”を描きたくて 映画「わたしの知らない子どもたち」 映画監督・西川美和さん 〈インタビュー〉 2026年8月6日

  • 10月16日(金)全国公開
映画監督の西川美和さん
映画監督の西川美和さん

 アジア・太平洋戦争の後、子どもたちはどう生き延びたのか。今秋10月16日(金)に全国公開される映画「わたしの知らない子どもたち」では、戦後の荒廃と混乱にあった日本で、その日を生きようと懸命にもがいた子どもたちを描く。本作の原案・脚本・監督を務めたのは、西川美和さん。彼女は、子どもたちの姿を通して何を伝えたかったのか――。

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.
©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

 ――刑務所出所者の社会復帰を描いた映画「すばらしき世界」(2021年)を手がける中、戦争孤児たちの歴史に触れたことが今作のモチーフ(題材)になったそうですね。タイトルにある「わたし」とは誰を指しているのでしょうか。
 
 元々は私自身のことです。一人で小説として書き始め、私が知らない話だから、とストレートに付けました。でも、結果的には見てくださる方の一人称になっていくんだろうなという実感です。
 
 気構えるテーマに感じるかと思いますが、作品の出発点は、戦争直後をひたむきに生きる子どもたちをみずみずしく撮って、“子どもはなんて美しいのだろう”というのを描きたかった。そんな姿を見ていただきたいですね。
 
 
 ――本作には、たくさんの子役が登場します。その皆さんとは一緒に資料館を訪れたり、映画の舞台となった東京・上野を散策したりしたそうですね。
 
 子どもたちは、空襲後のショッキングな写真にも、じっと見入って、特に幼い子は「戦争は絶対嫌なことなのに、なんでこんなことになるの?」という反応でした。気持ちを言葉にするのも難しいとは思いますが、子どもたちなりに受け止めてくれている印象で。作品の背景にある過酷さは認識してもらったようです。

 ――主人公の茅野琴子(小八重葵美)は、理不尽な扱いを受ける女性を目にしたことで“少年”として生きる決心をします。
 
 少女が路上生活するのは相当過酷だし、性暴力にもさらされやすい。劣悪な環境の施設に放り込まれても、少年たちのように逃げ出さず、飢え死にしたり、里子に出されて労働を強いられたりしたことも多くあったようです。そんな状況下、彼女たちは自分たちが危険な目に遭わないよう、少年の格好をして街で過ごしていたという記述も、資料にちらほら出てくるんですね。
 
 特に思春期の少女という体や心の変化がある中で、戦争の時代であったらどうなるかを身近にたぐり寄せながら、役や物語を構築していきました。こうしたことを描けるのも「今」だからで、ジェンダーや性について多くの人が言葉にできるようになり、見る人にも受け止めてもらえる空気ができたからだと思います。
 
 
 ――一方で、軍国主義に翻弄された大人として、二階堂ふみさん演じる琴子の担任・曽根文美子の人生も描かれます。
 
 国をあげて飢餓状態になった時、子どもが煙たい存在になり、世間の雰囲気も変わっていったと記載がありました。手を差し伸べられる状況ではなくなった時に、誰もが罪の意識はありながらも、見過ごさざるを得ない状況になるのではと感じたんです。彼女を捨ててしまったという自責の念を持った教師の曽根を、大人の代表として描きました。

◆戦争を身近に考える「一歩目」となれば

 ――今この時も、争いが地球の至る所で続いています。
 
 「戦争はダメ」って思うのは簡単なんですよ。終わってから人々は「国にだまされた」って言ったけど、“だまされたほうに罪はないのか”と。
 
 失敗を経験した人がいなくなった先に、失敗がまたある気がします。“あの戦争”を知らない私が語るおこがましさはありますが、戦争を知らない親世代が「この映画だったら子どもに見せてもいいな」と、戦争に関する本や映画に触れる「一歩目」になればと願っています。

 【記事】鈴木将大 【写真】工藤正孝

◆プロフィル

 にしかわ・みわ 1974年7月8日生まれ、広島県出身。2003年公開の映画「蛇イチゴ」で監督デビュー。長編映画2作目の「ゆれる」(06年)は、第59回カンヌ国際映画祭に出品される。また、「すばらしき世界」(21年)は、第45回日本アカデミー賞で優秀作品賞や脚本賞を受けた。オリジナル脚本の長編映画を撮る中で執筆した小説なども評価され、『きのうの神さま』『永い言い訳』が直木賞候補などに選ばれた。

◆ストーリー

 12歳の少女・茅野琴子(小八重葵美)は、戦争によって家も家族も、大好きだった音楽も奪われる。一方、琴子の担任であった曽根文美子(二階堂ふみ)も敗戦とともに、信じていた軍国主義が崩壊し、教師としての尊厳も失ってしまう。
 二人は、疎開先から一緒に、街の駅まで戻る。曽根は、琴子が一人になることを知りながらも手を差し伸べられず、生徒を見捨てる選択をした。
 琴子は路上生活を余儀なくされ、売春の脅威が目の前に迫っていた。自身を守るために、琴子は長い髪を切り、親からもらった名前を変え、少女として生きることを捨てる……。
 
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