〈教育〉 10歳の心に寄り添うために
〈教育〉 10歳の心に寄り添うために
2025年8月21日
すてきな大人への準備期間
すてきな大人への準備期間
10歳前後の子どもは、親の言葉に反発したり、人間関係で悩みを抱えたりしやすい時期です。この年齢の子の成長や、親の関わり方について、『10歳からのこころケア』(くもん出版)の監修者で、臨床心理学が専門の上智大学教授、横山恭子さんに聞きました。
10歳前後の子どもは、親の言葉に反発したり、人間関係で悩みを抱えたりしやすい時期です。この年齢の子の成長や、親の関わり方について、『10歳からのこころケア』(くもん出版)の監修者で、臨床心理学が専門の上智大学教授、横山恭子さんに聞きました。
上智大学教授 横山恭子さん
上智大学教授 横山恭子さん
「思春期」の始まり
「思春期」の始まり
10歳前後は、思春期に入る前の大切な時期で、「前思春期」とも呼ばれます。女の子は小学校5年生(11歳)ごろから、男の子は少し遅れて第2次性徴が始まり、心身ともに大人へ近づくこの変化の時期を「思春期」といいます。思春期は、突然始まるわけではなく、9~10歳ごろから少しずつ始まります。
小学校低学年までは、多くの子が「親や先生の言うことが正しい」と素直に信じ、身近な大人に憧れを抱きます。しかし、中学年になると、物の見方が変わり始めます。親や先生の言うことに対して「本当にそうなのかな?」と疑問をもったり、今まで気にならなかったことに違和感を覚えたりすることが増えてきます。
こうした内面の変化は、子どもの描く絵にも表れます。低学年では、横から見た平面的な絵が多いですが、高学年になると遠近法を取り入れるようになり、中学年は、横から見た絵と真上から見た絵が混在する描き方が多くなるといわれています。物事を多角的に見られるようになる変化は、大人へと成長するために不可欠です。
見た目はまだまだ幼くても、内面では着実に変化が起きています。すごく子どもっぽい言動をみせたかと思えば、急に大人びたことを言って、周囲を驚かせることもあるでしょう。
10歳前後は、思春期に入る前の大切な時期で、「前思春期」とも呼ばれます。女の子は小学校5年生(11歳)ごろから、男の子は少し遅れて第2次性徴が始まり、心身ともに大人へ近づくこの変化の時期を「思春期」といいます。思春期は、突然始まるわけではなく、9~10歳ごろから少しずつ始まります。
小学校低学年までは、多くの子が「親や先生の言うことが正しい」と素直に信じ、身近な大人に憧れを抱きます。しかし、中学年になると、物の見方が変わり始めます。親や先生の言うことに対して「本当にそうなのかな?」と疑問をもったり、今まで気にならなかったことに違和感を覚えたりすることが増えてきます。
こうした内面の変化は、子どもの描く絵にも表れます。低学年では、横から見た平面的な絵が多いですが、高学年になると遠近法を取り入れるようになり、中学年は、横から見た絵と真上から見た絵が混在する描き方が多くなるといわれています。物事を多角的に見られるようになる変化は、大人へと成長するために不可欠です。
見た目はまだまだ幼くても、内面では着実に変化が起きています。すごく子どもっぽい言動をみせたかと思えば、急に大人びたことを言って、周囲を驚かせることもあるでしょう。
ギャングエイジ
ギャングエイジ
10歳前後は、仲間意識が強まり、集団での行動を重視する「ギャングエイジ」と呼ばれる時期でもあります。自分たちだけに通じる言葉やルールを作り、仲間に認められることを何よりも大切にします。
一方で、親に妙に甘えてくる場合があります。これは、もうすぐ訪れる本格的な思春期を前に、親との安定した関係を確認したい気持ちの表れかもしれません。普段からベタベタしすぎるのが良いとは思いませんが、子どもが甘えてきたら、温かく受け止めてあげてください。
親に強く反発する子もいますが、多くの場合、冷静になると自分にも悪いところがあったと理解しています。それでも、親にぶつかるのは、自分の気持ちや感情を整理し、自分自身を確認しようとしているからではないでしょうか。親御さんはどっしり構え、子どもが安心してぶつかる「壁」になっていただけたらと思います。
「それは八つ当たりなんじゃないかな」「友達がうらやましかったのかな」など、親が子どもの気持ちを言葉にしてあげることも大切です。耳の痛い言葉だとしても、自分の感情を表す言葉を知ることで、気持ちを客観的に捉えられるようになります。
言動を注意する時は、「損するよ」という伝え方がおすすめです。例えば、「乱暴な人だと思われたら損するように思うけど?」と冷静に伝えると、子どもは受け入れやすいです。
10歳前後は、仲間意識が強まり、集団での行動を重視する「ギャングエイジ」と呼ばれる時期でもあります。自分たちだけに通じる言葉やルールを作り、仲間に認められることを何よりも大切にします。
一方で、親に妙に甘えてくる場合があります。これは、もうすぐ訪れる本格的な思春期を前に、親との安定した関係を確認したい気持ちの表れかもしれません。普段からベタベタしすぎるのが良いとは思いませんが、子どもが甘えてきたら、温かく受け止めてあげてください。
親に強く反発する子もいますが、多くの場合、冷静になると自分にも悪いところがあったと理解しています。それでも、親にぶつかるのは、自分の気持ちや感情を整理し、自分自身を確認しようとしているからではないでしょうか。親御さんはどっしり構え、子どもが安心してぶつかる「壁」になっていただけたらと思います。
「それは八つ当たりなんじゃないかな」「友達がうらやましかったのかな」など、親が子どもの気持ちを言葉にしてあげることも大切です。耳の痛い言葉だとしても、自分の感情を表す言葉を知ることで、気持ちを客観的に捉えられるようになります。
言動を注意する時は、「損するよ」という伝え方がおすすめです。例えば、「乱暴な人だと思われたら損するように思うけど?」と冷静に伝えると、子どもは受け入れやすいです。
「さなぎ」の時期
「さなぎ」の時期
小学校中学年は、「いじめ」が深刻になりやすい時期でもあります。低学年でもいじめはありますが、前思春期になると悪意のあるいじめや陰湿な悪口が増える傾向にあります。
子どもは時間感覚が大人と異なり、視野が狭いため、「今うまくいかなかったら、ずっとダメだ」「もう自分の人生は終わりだ」と極端に考え、絶望する子も多くいます。
元気がない、食欲がないなど、問題を抱えていそうな様子があれば、「最近うまくいってないみたいだけど、どうしたの?」と、声をかけてみましょう。暴力的な行動や不眠など、心配な状況であれば、「それはあなた一人の手に負えないと思うんだけど、どうしたい?」「一人で解決できない時は、お父さんやお母さん、先生も手伝うよ」と子どもの意思を確認した上で、必要に応じて学校やいじめ相談窓口などの専門機関に相談してください。
私も、相談に来た子どもが悩みを話してくれた時は「どうしたらいいか一緒に作戦を考えよう。試してみてダメなら作戦2も、作戦3も考えられるから、また教えてね」と伝えてきました。
子どもから大人になる過程は、アオムシがさなぎからチョウになるように、とても大きな変化だと思います。さなぎに閉じこもる子もいれば、外に出て荒れる子もいます。親も子も大変な時期ですが、時間が過ぎれば、やがてみんなチョウになります。
すてきな大人になるための準備期間だと思って、温かく見守っていただけたらと思います。
小学校中学年は、「いじめ」が深刻になりやすい時期でもあります。低学年でもいじめはありますが、前思春期になると悪意のあるいじめや陰湿な悪口が増える傾向にあります。
子どもは時間感覚が大人と異なり、視野が狭いため、「今うまくいかなかったら、ずっとダメだ」「もう自分の人生は終わりだ」と極端に考え、絶望する子も多くいます。
元気がない、食欲がないなど、問題を抱えていそうな様子があれば、「最近うまくいってないみたいだけど、どうしたの?」と、声をかけてみましょう。暴力的な行動や不眠など、心配な状況であれば、「それはあなた一人の手に負えないと思うんだけど、どうしたい?」「一人で解決できない時は、お父さんやお母さん、先生も手伝うよ」と子どもの意思を確認した上で、必要に応じて学校やいじめ相談窓口などの専門機関に相談してください。
私も、相談に来た子どもが悩みを話してくれた時は「どうしたらいいか一緒に作戦を考えよう。試してみてダメなら作戦2も、作戦3も考えられるから、また教えてね」と伝えてきました。
子どもから大人になる過程は、アオムシがさなぎからチョウになるように、とても大きな変化だと思います。さなぎに閉じこもる子もいれば、外に出て荒れる子もいます。親も子も大変な時期ですが、時間が過ぎれば、やがてみんなチョウになります。
すてきな大人になるための準備期間だと思って、温かく見守っていただけたらと思います。
●こんな時は?●
●こんな時は?●
Q 子どもが悩みを話してくれません。
Q 子どもが悩みを話してくれません。
A 「信頼されていないのでは」と感じる親御さんもいますが、それが理由とは限りません。「親が大好きだから、がっかりさせたくない」「忙しそうだから、心配かけたくない」という、けなげな気持ちから打ち明けられない子も多くいます。悩んでいそうな場合は、「誰なら話せるかな」と聞いてみましょう。スクールカウンセラーや親戚など、第三者なら心の内を話せる場合もあります。
A 「信頼されていないのでは」と感じる親御さんもいますが、それが理由とは限りません。「親が大好きだから、がっかりさせたくない」「忙しそうだから、心配かけたくない」という、けなげな気持ちから打ち明けられない子も多くいます。悩んでいそうな場合は、「誰なら話せるかな」と聞いてみましょう。スクールカウンセラーや親戚など、第三者なら心の内を話せる場合もあります。
Q 忙しくて一緒に過ごす時間が短い。
Q 忙しくて一緒に過ごす時間が短い。
A 親子の信頼関係は、共に過ごす時間の長さではなく中身で決まります。1日10~15分でもいいので、一緒にゲームをしたり、お茶でも飲みながら話を聞いたりして、子どもとしっかり向き合う時間をつくりましょう。
A 親子の信頼関係は、共に過ごす時間の長さではなく中身で決まります。1日10~15分でもいいので、一緒にゲームをしたり、お茶でも飲みながら話を聞いたりして、子どもとしっかり向き合う時間をつくりましょう。