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〈世界のザダンカイ〉 イギリス――自由な「語らい」の熱気 2025年8月21日

笑顔の花が咲く、“おしゃべり座談会”(ブリッジェンドで)
笑顔の花が咲く、“おしゃべり座談会”(ブリッジェンドで)

 しゃべって、笑って、またしゃべる――。日本から約1万キロ離れた、ヨーロッパの島国イギリス。この地でも、学会伝統の座談会が毎月、楽しく開かれています。聞くと、イギリスSGI(創価学会インタナショナル)の座談会には“式次第がない”のだとか……⁉ 真相を確かめるべく、同国の二つの地区座談会を取材しました。(記事=田川さくら、写真=外山慶介)

 のどかな時が流れる。思わず駆け出したくなるような、広大な丘に、澄んだ青空。放牧された羊たちは思い思いに草をはみ、黄色い花をつけたバターカップが可憐に揺れている。

 イギリスの構成国の一つであるウェールズの首都カーディフから車で30分。ここブリッジェンドは、かつて農業市場が栄えた街だ。古城が残り、緑の中に歴史が息づく。20世紀に入ると、住宅街としても発展してきた。

 木々に囲まれた小道を行くと、レンガ調の家が顔を出した。座談会場である、マシュー・ブレイフォードさん(ブリッジェンド・イースト地区・地区部長)、リアさん(同地区婦人部長)夫妻の自宅だ。これからブリッジェンド・イースト地区とブリッジェンド・ウエスト地区の合同座談会が開かれるという。昨年まで1地区だったが、部員が増えたため、本年、2地区に発展した。

 座談会の開始は午後8時。だが、7時半には多くのメンバーが集まっていた。一日の終盤であることを忘れそうになるほど、皆、満々たる生命力。これから一緒に、勤行・唱題をするという。大切な同志のこと、そしてこれから始まる座談会の成功を祈るのだ。

「待っていたよ!」――続々と集うメンバーをブレイフォード地区部長㊨がお出迎え(ブリッジェンドで)
「待っていたよ!」――続々と集うメンバーをブレイフォード地区部長㊨がお出迎え(ブリッジェンドで)
「元気にしていた?」と互いにハグを(ブリッジェンドで)
「元気にしていた?」と互いにハグを(ブリッジェンドで)

 唱題を終えると、メンバーは「暑い、暑い」と服をパタパタ。取材に訪れたのは5月だが、この日の気温は11度。窓からは冷たい風が吹き込み、震えるような寒さである。

 だが、メンバーは「祈ると、心も体もアツくなりますね」と扇風機をかけ、大爆笑。「私たちの地区は、いつも笑いが絶えないんですよ」と、そばにいたメンバーが教えてくれた。

 時計の針は午後8時。「では始めましょう!」と、マシューさんの進行で、座談会が幕を開けた。

 イギリスの座談会には、式次第がない。60分間、一つのトピックをもとに、皆が自由に語り合う、まさに“座談”の場。主題となるのは、イギリスSGIの機関誌「アート・オブ・リビング」に掲載される月間テーマだ。

 この日のテーマは「対話」について。式次第がない分、座談会の成否は司会者にかかっている。だから、草創の同志はよく言った。“司会者は責任重大。役割を受けたその日から、座談会の成功を誰よりも真剣に祈ろう”

 皆が嫌な思いをしないように、広布の勢いを加速させられるように――この日、進行を務めたマシューさんも、当日まで唱題を重ねてきた。

ちょっぴりシャイな9歳のレン・エバンズさん㊨は座談会が大好き。メンバーに囲まれると、大きな瞳がキラキラと輝いていた(ブリッジェンドで)
ちょっぴりシャイな9歳のレン・エバンズさん㊨は座談会が大好き。メンバーに囲まれると、大きな瞳がキラキラと輝いていた(ブリッジェンドで)

 マシューさんは、機関誌に掲載された池田先生の指針を紹介し、「対話」にまつわる自身のエピソードを話し始めた。

 実は、10年前に仏法対話をした友人から、先日、突然の連絡が。聞くと、娘が乳がんの宣告を受け、絶望の日々の中で、当時のマシューさんの言葉を思い出したという。

 「彼女は“信心がしたい”と言ってきてね。私たちがまいた仏の種は、その時すぐに芽が出なくても、いつか必ず花開くと、身をもって感じました。皆さんも何かエピソードはありますか。どんな話でも大丈夫ですよ」

 「そういえば」と、キャロル・ブラウンさん(本部総合婦人部長)が口を開く。

 「この前、オーストラリアに行った時、タクシーの運転手と世間話をしてね。“私、仏教を信じているの”と伝えたら、彼女は“南無妙法蓮華経?”って! 聞くと、SGIメンバーだけど、しばらく学会活動から離れていたみたい。でも、私との会話を機に再び活動を始めたって、後から連絡をくれたの」

 “弘教の闘士”と呼ばれるブラウンさんは、白いワンピースを着こなす80歳。この日も、青年世代の友人を連れて、座談会に参加していた。

一家で最初に信心を始めたブラウンさん。娘と孫も広布の人材に
一家で最初に信心を始めたブラウンさん。娘と孫も広布の人材に

 流れるように、皆が次々と話していく。「対話とは、相手の言っていることを単に聞くことではなく、“相手の心”に耳を傾けることだと思います」「その模範こそ、池田先生です」

 すると、14歳のエティ・ケンプソンさんも会話の中へ。

 「この前、友達から“いつも話を聞いてくれてありがとう。大変だった時、あなたのおかげで心が軽くなった”と手紙をもらったよ」

 ケンプソンさんは普段から、両親に信心の質問をたくさんするそうだ。そして、座談会等のディスカッションで、いろいろな考え方に触れ、それは時に思春期の悩みへの答えになるという。

 話のテーマは「心の対話」に。「直接、会ったことがなくても、池田先生の言葉に感動するのは、先生が心で対話されているからだと思います」「対話とは、自分の心との対話でもある。だから、唱題が大事であり、師匠を持つことが大事なんですね」と、深みを増していった。

 笑いあり。でも、時には真剣に。相手の発言は否定しない。話すのが苦手なら、話さなくても大丈夫。互いへの尊敬の心が光る1時間のディスカッションは、瞬く間に幕を閉じた。

 今、両地区は2030年に向けて、大きな目標を掲げている。それは“地区を本部に発展させる”ということ――。

 止まらない勢い。その秘訣を尋ねると、両地区の地区部長・婦人部長の答えは、いたってシンプルだった。

 「池田先生ならどうされるかと、考え抜いてきたからです」

 皆で何度も、先生の地区幹部への指導を読み合わせた。“とにかく一対一の励ましに徹しよう”。なかなか会えないメンバーとは、信心の話を抜きに、友人としてつながり続けた。

 そして、三代の会長が大切にしてきた座談会――。“また来たい”“話したい”と思ってもらえるよう、一人一人への配慮を忘れず、温かな雰囲気づくりを心がけた。これまで多くの友が、座談会への参加を機に入会している。

 午後9時過ぎ。リーダーたちは笑顔で手を振り、こう言った。「明日は早速、きょう来られなかったメンバーに会いに行ってきます。この熱気を伝えなきゃ!」

「座談会、最高!」――ブリッジェンドの友がにこやかに
「座談会、最高!」――ブリッジェンドの友がにこやかに

 数日後、向かった先は、大都市ロンドンの北部にあるミルヒル。ここは閑静な住宅街。公園のベンチでは、木漏れ日の中で女性が本を読み、優雅な朝を送っている。車を走らせると、次なる座談会場であるトモコ・イムピーさん(ミルヒル地区・地区部長)の自宅が見えてきた。

 都心部から近く、インドや日本出身のメンバーも多い地区。午前10時半、皆で祈りを共にした後、こちらも「対話」をテーマに、語らいに花を咲かせた。

ミルヒル周辺には閑静な住宅街が広がる
ミルヒル周辺には閑静な住宅街が広がる

 この日、ミルヒル地区には、青年世代の友人2人が参加。彼らは2年間、ほぼ毎月、座談会に参加しているという。きっかけは、座談会に感銘を受けた一人の友人が、もう一人の友人を誘って参加するようになったこと。座談会の魅力を尋ねると、間髪を入れずに、こう言った。

 「まず、メンバーのエネルギー! そして、これほど“開かれた対話の場”を見たことがありません」

 「温かくて、思いやりにあふれている。幅広い年齢層の人から、人生についての話を聞けるのも貴重です」

 この日は、一人の友人の誕生日。座談会終了後、イムピーさん手作りのホールケーキを囲み、皆でバースデーソングを歌った。

 「まるで、家族のようでしょう?」。そう記者に語りかけてきたのは、イムピーさんと二人三脚で走ってきた、俳優のパメラ・ノンベッテさん(地区副婦人部長)。

 「ミルヒル地区が、皆にとって“第二の家”となるように、メンバーと関わっています。それが池田先生に教えていただいたことですから」

「この間ね……」――ノンベッテ地区副婦人部長㊥の楽しい話に皆、ニコニコ(ミルヒルで)
「この間ね……」――ノンベッテ地区副婦人部長㊥の楽しい話に皆、ニコニコ(ミルヒルで)

 なぜ、これほどまでに、イギリスで座談会が愛されているのか。ある壮年は熱っぽく語った。

 「イギリスには今もなお、階級社会の風潮が残っています。昔ほどではないものの、自然と階級ごとに集まってしまう。だけど、SGIの座談会では、そうしたことは関係ない。また、人種や民族も関係ありません。皆が平等に、対等に、何でも話せる。こんな場所はSGIだけです」

 今、社会では増加する移民の問題などを巡り、差別や分断の風潮が広がっている。人種や文化など、差異を理由とした対立も次々に生まれている。だが「差異」があるからこそ、「学び」と「尊敬」が生まれるのではないだろうか――。そのことが体現された創価の座談会。きっと、この美しさと安心感が、多くの人を引きつけるのだろう。

 かつて、池田先生はつづった。「学会の座談会こそ、多種多彩なメンバーが集い合って場を共にし、皆が平等に語り合う、平和と文化と幸福のオアシスです」

 きょうも、イギリスのメンバーのおしゃべりは止まらない。人間共和の縮図が、ここにある。

「きょうも楽しかった!」――充実のひとときを過ごしたミルヒルの友
「きょうも楽しかった!」――充実のひとときを過ごしたミルヒルの友

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