〈文化〉 ドラマチックバレエの傑作「オネーギン」14年ぶりの全幕上演を巡って 東京バレエ団団長/斎藤友佳理さん
〈文化〉 ドラマチックバレエの傑作「オネーギン」14年ぶりの全幕上演を巡って 東京バレエ団団長/斎藤友佳理さん
2026年10月19日
文豪プーシキンの原作を基に、純粋な少女タチヤーナと貴公子オネーギンの悲劇的な恋をチャイコフスキーの音楽に乗せて描くドラマチックバレエの傑作「オネーギン」。20世紀を代表する振付家の一人、ジョン・クランコの代表作をこの秋、東京バレエ団が14年ぶりに上演する。「『オネーギン』が私の人生を豊かにしてくれました」と話す団長の斎藤友佳理さんに、再演に臨む思いなどを聞いた。
文豪プーシキンの原作を基に、純粋な少女タチヤーナと貴公子オネーギンの悲劇的な恋をチャイコフスキーの音楽に乗せて描くドラマチックバレエの傑作「オネーギン」。20世紀を代表する振付家の一人、ジョン・クランコの代表作をこの秋、東京バレエ団が14年ぶりに上演する。「『オネーギン』が私の人生を豊かにしてくれました」と話す団長の斎藤友佳理さんに、再演に臨む思いなどを聞いた。
14年ぶりの「オネーギン」全幕上演に臨む柄本弾さんと沖香菜子さん Phote:Shinji Hosono
14年ぶりの「オネーギン」全幕上演に臨む柄本弾さんと沖香菜子さん Phote:Shinji Hosono
14年ぶりの「オネーギン」全幕上演に臨む宮川新大さんと秋山瑛さん Photo:Shinji Hosono
14年ぶりの「オネーギン」全幕上演に臨む宮川新大さんと秋山瑛さん Photo:Shinji Hosono
◆「表現したいのは、人間の精神であり魂。“言葉のない世界”だからこそ、心をつかむ芸術家になってほしい」
◆「表現したいのは、人間の精神であり魂。“言葉のない世界”だからこそ、心をつかむ芸術家になってほしい」
〈演劇性が高く“言葉を踊りの動きに翻訳する”ともいわれるクランコの作品。チャイコフスキーの叙情豊かな音楽に乗せた「オネーギン」も1965年の世界初演(67年に改訂版初演)以来、第1幕“鏡のパ・ド・ドゥ”や第3幕の“手紙のパ・ド・ドゥ”などで、著名なダンサーたちが名舞台を残してきた。
斎藤さんも2010年と12年、東京バレエ団の全幕初演と再演時に、オネーギン役の木村和夫さん(東京バレエ団バレエスタッフ)とペアを組み、タチヤーナ役を踊った〉
バレエダンサーのキャリアで、タチヤーナの役をはじめ「オネーギン」という作品を経験するとしないとでは全く違う。芸術監督になった時からそんな思いがありました。自分自身が「オネーギン」を通して人生を豊かにしてもらったからです。
私は物事を5年単位で考えるようにしています。芸術監督になった時も、最初の5年と次の5年で必ず、目指す方向にバレエ団を持っていこうと決めました。一番大切な目標を10年先に置き、達成するためには何が必要かを考えて「今日はこれ」「この1時間はこれ」と、一歩一歩、歩みを進めてきたのです。
公演でいえば、チャイコフスキー作曲の三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」で確固としたテクニックを養い、複雑なリフト(男性が女性の体を高く持ち上げる動作)に対応できるようにクランコ版「ロミオとジュリエット」を経験した上で「オネーギン」に挑む。こんな計画を描いて、実際に積み重ねてきました。
バレエが表現しているのは人間の精神や魂です。三大バレエのようなクラシックバレエは決められた動きや技の一つ一つで表現しますが、テクニックは内面を表現するための言語であり、手段。それが「言葉」になっていなければ意味がありません。
せりふがある演劇と違ってバレエは言葉のない世界。だからこそ、ダンサーたちには舞台で役の人生を生き切って観客の方々の心をつかむアーティスト、芸術家になってほしい。新しい世代も含めて、みんながバレエダンサーとしての新しいステージ(段階、次元)に入ってきたと強く感じています。ようやくその時が来たという気持ちです。
〈演劇性が高く“言葉を踊りの動きに翻訳する”ともいわれるクランコの作品。チャイコフスキーの叙情豊かな音楽に乗せた「オネーギン」も1965年の世界初演(67年に改訂版初演)以来、第1幕“鏡のパ・ド・ドゥ”や第3幕の“手紙のパ・ド・ドゥ”などで、著名なダンサーたちが名舞台を残してきた。
斎藤さんも2010年と12年、東京バレエ団の全幕初演と再演時に、オネーギン役の木村和夫さん(東京バレエ団バレエスタッフ)とペアを組み、タチヤーナ役を踊った〉
バレエダンサーのキャリアで、タチヤーナの役をはじめ「オネーギン」という作品を経験するとしないとでは全く違う。芸術監督になった時からそんな思いがありました。自分自身が「オネーギン」を通して人生を豊かにしてもらったからです。
私は物事を5年単位で考えるようにしています。芸術監督になった時も、最初の5年と次の5年で必ず、目指す方向にバレエ団を持っていこうと決めました。一番大切な目標を10年先に置き、達成するためには何が必要かを考えて「今日はこれ」「この1時間はこれ」と、一歩一歩、歩みを進めてきたのです。
公演でいえば、チャイコフスキー作曲の三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」で確固としたテクニックを養い、複雑なリフト(男性が女性の体を高く持ち上げる動作)に対応できるようにクランコ版「ロミオとジュリエット」を経験した上で「オネーギン」に挑む。こんな計画を描いて、実際に積み重ねてきました。
バレエが表現しているのは人間の精神や魂です。三大バレエのようなクラシックバレエは決められた動きや技の一つ一つで表現しますが、テクニックは内面を表現するための言語であり、手段。それが「言葉」になっていなければ意味がありません。
せりふがある演劇と違ってバレエは言葉のない世界。だからこそ、ダンサーたちには舞台で役の人生を生き切って観客の方々の心をつかむアーティスト、芸術家になってほしい。新しい世代も含めて、みんながバレエダンサーとしての新しいステージ(段階、次元)に入ってきたと強く感じています。ようやくその時が来たという気持ちです。
東京バレエ団が「オネーギン」全幕を初演した2010年の舞台でタチヤーナ役を演じる斎藤さん㊧とオネーギン役の木村和夫さん Photo:Kiyonori Hasegawa
東京バレエ団が「オネーギン」全幕を初演した2010年の舞台でタチヤーナ役を演じる斎藤さん㊧とオネーギン役の木村和夫さん Photo:Kiyonori Hasegawa
2012年に東京バレエ団が再演した「オネーギン」の舞台で。タチヤーナ役の斎藤さんとオネーギン役の木村和夫さん Photo:Nobuhiko Hikiji
2012年に東京バレエ団が再演した「オネーギン」の舞台で。タチヤーナ役の斎藤さんとオネーギン役の木村和夫さん Photo:Nobuhiko Hikiji
〈舞台美術や衣裳などを含めた著作権管理の厳格さでも知られる「オネーギン」。
今回も、メインキャストの柄本弾さんと沖香菜子さん、宮川新大さんと秋山瑛さんをはじめ、トライアウト(配役のためのオーディション)が実施された。その厳しさや、「オネーギン」を踊る喜び、意味を人一倍、知るのが斎藤さんである。1991年に開かれた世界バレエフェスティバル。斎藤さんは、抜粋だが「オネーギン」のタチヤーナ役を踊ることになっていた〉
初演からこの作品を踊ってきたシュツットガルト・バレエ団のマリシア・ハイデが来日して指導してくれました。彼女が貸してくれた衣裳を着て最終リハーサルも終えたのですが、直前になって、著作権の関係で、もしかしたら踊れないかもしれないと聞かされたのです。
連絡が届いたらすぐに踊れるよう、衣裳もメークも髪型も整え、トゥシューズを履き、体を温め続けて舞台袖で待ち続けました。舞台まで、あと数メートル、数センチ。結局、連絡は届かず、踊ることはできませんでした。
お客さまがいないリハーサルの舞台で、衣裳を着けて踊った10分足らずのタチヤーナの役。この時、自分のバレエ観が全て変わりました。その後、膝の大けがで踊れない時期もありましたが、「やり切るまではやめられない」という強い思いが支えになって続けることができたと言っても過言ではありません。
今回はミラノ・スカラ座の舞台美術と衣裳を使用しますが、著作権や経済的なことなど、大きな壁がありました。でも、輝いているダンサーたちの「今」を逃したくなかった。諦めなくて本当によかったと感じています。
素晴らしい先生に愛され、惜しみなく教えていただいたことを自分だけのものにすることなく、かけがえのない存在であるダンサーたちに伝えていきたい。人から人に伝える。私はそこにバレエの大きな魅力を感じています。
同じ作品を踊っても、パートナーや指揮者、お客さまが違うと、全く違うものが生まれます。一回として同じ舞台はありません。私も、幕が開いた時にお客さまの温かい空気が伝わってきて助けられたことが何度もありました。
一回一回の舞台が、そこに人生をかけてきたアーティストとお客さまが共有する二度とない時間。一期一会の舞台をお届けし続けていきます。
〈舞台美術や衣裳などを含めた著作権管理の厳格さでも知られる「オネーギン」。
今回も、メインキャストの柄本弾さんと沖香菜子さん、宮川新大さんと秋山瑛さんをはじめ、トライアウト(配役のためのオーディション)が実施された。その厳しさや、「オネーギン」を踊る喜び、意味を人一倍、知るのが斎藤さんである。1991年に開かれた世界バレエフェスティバル。斎藤さんは、抜粋だが「オネーギン」のタチヤーナ役を踊ることになっていた〉
初演からこの作品を踊ってきたシュツットガルト・バレエ団のマリシア・ハイデが来日して指導してくれました。彼女が貸してくれた衣裳を着て最終リハーサルも終えたのですが、直前になって、著作権の関係で、もしかしたら踊れないかもしれないと聞かされたのです。
連絡が届いたらすぐに踊れるよう、衣裳もメークも髪型も整え、トゥシューズを履き、体を温め続けて舞台袖で待ち続けました。舞台まで、あと数メートル、数センチ。結局、連絡は届かず、踊ることはできませんでした。
お客さまがいないリハーサルの舞台で、衣裳を着けて踊った10分足らずのタチヤーナの役。この時、自分のバレエ観が全て変わりました。その後、膝の大けがで踊れない時期もありましたが、「やり切るまではやめられない」という強い思いが支えになって続けることができたと言っても過言ではありません。
今回はミラノ・スカラ座の舞台美術と衣裳を使用しますが、著作権や経済的なことなど、大きな壁がありました。でも、輝いているダンサーたちの「今」を逃したくなかった。諦めなくて本当によかったと感じています。
素晴らしい先生に愛され、惜しみなく教えていただいたことを自分だけのものにすることなく、かけがえのない存在であるダンサーたちに伝えていきたい。人から人に伝える。私はそこにバレエの大きな魅力を感じています。
同じ作品を踊っても、パートナーや指揮者、お客さまが違うと、全く違うものが生まれます。一回として同じ舞台はありません。私も、幕が開いた時にお客さまの温かい空気が伝わってきて助けられたことが何度もありました。
一回一回の舞台が、そこに人生をかけてきたアーティストとお客さまが共有する二度とない時間。一期一会の舞台をお届けし続けていきます。
メインキャストの4人。左から柄本弾さん、沖香菜子さん、秋山瑛さん、宮川新大さん Photo:Shoko Matsuhashi
メインキャストの4人。左から柄本弾さん、沖香菜子さん、秋山瑛さん、宮川新大さん Photo:Shoko Matsuhashi
11月の公演に向け、リハーサルが続けられている。タチヤーナ役の秋山瑛さん㊨とオネーギン役の宮川新大さん Photo:Shoko Matsuhashi
11月の公演に向け、リハーサルが続けられている。タチヤーナ役の秋山瑛さん㊨とオネーギン役の宮川新大さん Photo:Shoko Matsuhashi
プロフィル
プロフィル
さいとう・ゆかり 神奈川県生まれ。6歳から母のもとでバレエを始め、ロシアに短期留学を重ねてマリーナ・セミョーノワやエカテリーナ・マクシーモワに師事。1987年、東京バレエ団に入団。主要な古典全幕作品で主役を演じ、ベジャール、キリアン、ノイマイヤー作品でも活躍。海外での客演も多い。2009年、ロシア国立舞踊大学院バレエマスターおよび教師科を首席で卒業。15年に東京バレエ団芸術監督、24年から団長。芸術選奨文部科学大臣賞、服部智恵子賞、紫綬褒章など。
さいとう・ゆかり 神奈川県生まれ。6歳から母のもとでバレエを始め、ロシアに短期留学を重ねてマリーナ・セミョーノワやエカテリーナ・マクシーモワに師事。1987年、東京バレエ団に入団。主要な古典全幕作品で主役を演じ、ベジャール、キリアン、ノイマイヤー作品でも活躍。海外での客演も多い。2009年、ロシア国立舞踊大学院バレエマスターおよび教師科を首席で卒業。15年に東京バレエ団芸術監督、24年から団長。芸術選奨文部科学大臣賞、服部智恵子賞、紫綬褒章など。
11月6~8日、東京・初台の新国立劇場
11月6~8日、東京・初台の新国立劇場
東京バレエ団のジョン・クランコ振り付け「オネーギン」全3幕は11月6日(金)から8日(日)まで、東京・初台の新国立劇場オペラパレスで上演される。
◆11月6日(金)午後7時
◆11月7日(土)午後1時/同6時半
◆11月8日(日)午後1時
【入場料金】
S:1万8000円、A:1万4000円、B:1万1000円、C:8000円、D:6000円
※ペア割引(S・A)、親子割引(同)、U35シート(公演当日小学1年生~35歳が対象)の各種割引あり
【申し込み・問い合わせ】
NBSWEBチケット=https://www.nbs.or.jp/ NBSチケットセンター=03(3791)8888 ※電話は平日午前10時~午後4時(土日祝は休み)
このほか、e+(イープラス)、チケットぴあ、ローソンチケット、楽天チケットでも取り扱いあり
東京バレエ団のジョン・クランコ振り付け「オネーギン」全3幕は11月6日(金)から8日(日)まで、東京・初台の新国立劇場オペラパレスで上演される。
◆11月6日(金)午後7時
◆11月7日(土)午後1時/同6時半
◆11月8日(日)午後1時
【入場料金】
S:1万8000円、A:1万4000円、B:1万1000円、C:8000円、D:6000円
※ペア割引(S・A)、親子割引(同)、U35シート(公演当日小学1年生~35歳が対象)の各種割引あり
【申し込み・問い合わせ】
NBSWEBチケット=https://www.nbs.or.jp/ NBSチケットセンター=03(3791)8888 ※電話は平日午前10時~午後4時(土日祝は休み)
このほか、e+(イープラス)、チケットぴあ、ローソンチケット、楽天チケットでも取り扱いあり