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〈Seikyo Gift〉 聴力低下を防ぐ耳のケア 〈健康PLUS〉 2025年5月31日

馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長 木村至信さん

 耳は、音を感知して脳に情報を送り、平衡感覚もつかさどる重要な感覚器官です。耳の機能を守る方法や気を付けたい生活習慣について、神奈川県の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長の木村至信さんに聞きました。
 
 

《ポイント》
①難聴の多くは改善できる
②1時間に1回は休ませる
③イヤホンよりヘッドホンを
◆耳だって疲れている

 目を酷使すると「目が疲れた」と感じるのと同様に、耳を酷使すると「耳が疲れる」ということをご存じでしょうか。
 大きな騒音にさらされたり、長時間、イヤホンで音楽を聴いたりすることは、耳を疲れさせます。疲れがたまると、耳が聞こえにくい状態(難聴)になったり、頭痛やめまい、耳鳴りなどの不調が起こったりします。
 難聴になると、人とのコミュニケーションが取りづらくなり、認知症やうつ病のリスクが高くなります。
一般的に40~50代から聞こえにくさを自覚する人が増えますが、最近では若い人にも増加しています。
 難聴には「感音性難聴」「伝音性難聴」「混合性難聴」の3種類があります。
 「感音性難聴」は、加齢や騒音にさらされることなどにより、聴覚神経に障害が生じて起こります。音が飛び飛びに聞こえる傾向があります。
 「伝音性難聴」は、外耳炎(耳の穴から鼓膜までの外耳道の炎症)や中耳炎(鼓膜の奥にある中耳の炎症)などによって「鼓膜の動き」が悪くなることで起こります。自分の声が頭の中で響き、こもったように聞こえます。大人から子どもまで幅広い世代で発症します。
 「混合性難聴」は前述の二つが混ざったものです。
 一度壊れた聴覚神経は再生しないため、「感音性難聴」の改善は難しいですが、「伝音性難聴」は治療によって改善できます。難聴の多くが「混合性難聴」のため、伝音性の症状を軽減することにより、ある程度、聴力を回復することができます。
 聴力の回復に効果的な「難聴リセット法」を紹介します(下記参照)。自覚症状がない方も、予防のために行うことが大切です。
 「耳鳴り」もよく見られますが、たまにキーンというような音を感じる程度で、日常生活に支障がなければ、特に問題ありません。耳鳴りが強くなったり、めまいを併発したりする場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
 突然、片方の耳が聞こえなくなる「突発性難聴」は、症状が現れたら早急に受診してください。2週間以内に治療しないと聴力が改善しない可能性が高くなります。
 もし、家族から「最近、聞き返すことが多い」「耳が遠くなった」と指摘されたら、一度、耳鼻科を受診しましょう。会社員の方の場合、健康診断の聴力検査で引っかかったら、必ず再検査してください。
 
 
 

◆生活習慣や食事も影響

 耳の健康を維持するためには、耳に負担をかけない生活習慣を心がけることが大切です。例えば、音楽を聴いたり、テレビを視聴し続けたりする際は、1時間に1回(5~10分)は休憩することを推奨します。長くても2時間以内にとどめてください。そもそも、大音量で聴くことは避けましょう。
 工事現場やBGMが大きな店など、騒音下で働いている方は耳栓を着けることをおすすめします。
 また以前、お子さんの大きな泣き声をずっと聞いているうちに、耳鳴りや頭痛などの不調が出てきた子育て中の患者さんがいました。聴力検査をしても異常はなく、「耳の疲れ」に加えて、夜泣き対応による睡眠不足や自律神経の乱れも重なって出てきた症状でした。投薬ではなく、ご家族にお子さんを預けて、静かな部屋で好きなことをして休憩することが一番の治療になったケースもありました。
 食生活も、耳の健康に影響を与えます。過度な飲酒や糖分の取り過ぎは血流を悪化させ、耳の細胞に栄養が行き渡らなくなり、聴力の悪化につながります。バランスの良い食生活を心がけましょう。
 ビタミンB群は耳のために積極的に取りたい栄養素です。特に、ビタミンB12は耳の機能を改善し、細胞の機能を正常に保ちます。シジミなどの貝類、サンマやイワシなどの青魚、牛・豚・鶏肉のレバー、卵やチーズに多く含まれます。
 また、内耳の蝸牛(音の振動を電気信号に変える器官)に多く含まれる「亜鉛」も、不足させてはいけない栄養素です。牡蠣、カタクチイワシ、牛・豚肉のレバー、ワカメなどに多く含まれます。意識して摂取できるとよいでしょう。
 大切な人の声が聞こえることは、実はとても幸せで、生きる糧になると思います。視力や歯と同じように、聴力のことも気にしてほしいです。耳が寿命を全うできるように、耳を大切に使う感覚を持っていただけたらうれしく思います。
 
 
 

●難聴リセット法●

 それぞれ1日3回(朝・昼・晩1回ずつ)。できるだけ毎日行う。鼓膜の位置を正して、動きを良くすることで聴力を改善する。

○あくび耳抜き法

 鼻をかみ、通りを良くしてから行う。耳鼻科の「通気治療」とほぼ同様の効果がある。
 
 

1、口を大きく開き、開けっ放しにし、自然とあくびが出るのを待つ(あくびが出なくても、出そうな感じがしたら、次に進んでOK)。

2、あくびで空気をいっぱい吸ったら、息を吐く前に口を閉じて、鼻をつまむ。

3、耳から空気が抜けるように息を鼻に集める(痛みを感じたら、すぐに息を吐く)。耳からパカッと空気が抜けたら、手を離す。

4、口を開けて、残りの空気を逃がす。
 
 

○ギョーザ耳

 耳の血行回復のためにも温かい手で行う。耳鼻科で行う「鼓膜マッサージ」とほぼ同様の効果が得られる。

1、手で耳全体を顔側に折り曲げ、圧をかけてしっかりと耳をふさぐ。この状態が「ギョーザ耳」。

2、「ギョーザ耳」の状態を1分程度続ける。その後、手を耳からパッと離す。
 
 
 

【質問コーナー】

Q イヤホンとヘッドホンは、どちらの方が耳に良い?

A イヤホンよりヘッドホンがおすすめ。イヤホンは音源から鼓膜までの距離が近いため、音圧がかかり、負担が大きい。耳を密閉するため、蒸れて外耳炎になる場合も。どうしてもイヤホンを使う場合は、耳に入れる部分がシリコンゴムで柔らかいものを選ぶ。耳をふさがない「骨伝導ヘッドホン」や「ネックスピーカー」も◎。イヤホン、ヘッドホンを問わず、音量を下げて使える「ノイズキャンセリング機能」付きのものを選ぶ。音量はできるだけ小さくし、1時間に1回(5~10分)は休憩を。左右で片方ずつ交互に聞くだけでも負担は軽減する。
 
 
 

Q いつもテレビやラジオをつけっ放しです。

A 大きい音量だと、「聴く」という神経を使うため、本人や同居する家族の耳が疲れます。消すか、音量を下げましょう。静寂が落ち着かない場合、「ちょうどいい雑音」としてBGM程度に、小さい音量で流すのはよいでしょう。
 
 
 

Q 正しい耳掃除のやり方を教えてください。

A 頻度は週に1回。お風呂上がりに、耳の入り口から1㎝くらいの部分を綿棒で掃除する。“中に子猫がいる”くらいのソフトなタッチで、奥まで入れ過ぎないよう注意。耳あかがべとべとしているタイプの人は、2~3カ月に1度、耳鼻科で耳掃除してもらう。耳毛は、抜くと毛穴が開いて感染しやすいため、鼻毛カッターなどで耳の入り口の部分だけをカットする。
 
 

 きむら・しのぶ 馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長。信州大学医学部卒業後、横浜市立大学大学院で医学博士号を取得。米国ネブラスカ州国立リサーチ病院に留学し遺伝子研究にも携わった。木村至信BANDのボーカルとしてもメジャーデビューし、シンガー・ソングライターとしても活動中。
 
 
 

 イメージ写真はPIXTA
 
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