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〈Seikyo Gift〉 ワールドトゥデイ 世界の今――仏教発祥の地インド 2025年10月25日

英国統治時代の1931年に完成したインド門。デリーを象徴する高さ42メートルのこの門は、第1次世界大戦で戦死したインド人兵士の慰霊のために建設された。壁面には戦死者の名が刻まれている
英国統治時代の1931年に完成したインド門。デリーを象徴する高さ42メートルのこの門は、第1次世界大戦で戦死したインド人兵士の慰霊のために建設された。壁面には戦死者の名が刻まれている
人材の大河も“一人”から

 悠久の歴史と多彩な文化が息づくインド。仏教発祥のこの地に今、日蓮仏法の大光が旭日の勢いで広がっている。インド創価学会(BSG)の友は「アイ アム シンイチ・ヤマモト!(私は山本伸一だ!)」との誇りを胸に広布に励んでいる。去る2月、デリーと東部の大都市コルカタを訪れ、その模様を取材した。(記事=牧田功一、写真=吉橋正勝)(6月5日付)

 空港を出た瞬間、じわりとした湿気が肌を包んだ。通りではクラクションの音を響かせながら、車やバイクがひしめき合って走る。首都ニューデリーの街には活気があふれている。
 
 ここからさらに東へ約1500キロ。詩聖タゴールを生んだ知の都コルカタに足を運ぶと、街の空気はどこか柔らかい。風景を撮影しようとシャッターを切ると、カメラに気付いた人々が屈託のない笑顔をレンズに向ける。おしゃべり好きで人懐っこい温かさが、街のあちこちにあった。
 
 1961年1月、池田大作先生が初めてインドを訪れた時、同国に会員は一人もいなかった。その後、メンバーが誕生し、3度目の訪問となった79年2月には、デリーに集った40人ほどの同志を励ましている。
 
 「ガンジス川の悠久の流れも一滴から始まります。と同じく、今はメンバーは少なくとも、自身がその一滴であるとの自覚で、洋々たる未来を信じて前進していきましょう」
 
 2002年、会員は1万人を突破。本年2月、デリーの新「インド文化会館」の開館式を目指し、一人一人がかつてない題目を唱えながら師弟共戦の対話拡大に取り組んだ。新型ウイルスで多くの命が奪われ、若者の就職難などの課題を抱えながら、懸命に生きる人々への希望の語らいは、約30万人の陣列として実を結ぶ。学会創立100周年となる2030年に「100万人の地涌の陣列」の構築を目指す前進の勢いは止まらない。
 
 人材の大河も“一人”の励ましから――師の闘争に連なり、インドの各地で目の前の友に尽くし抜く弟子の姿を見た。

1200年頃に建てられたクトゥブ・ミナール。インドに残る最古のイスラム建築といわれている。塔の高さは72・5メートル。1993年に世界文化遺産に登録された。1961年2月、池田先生はアジア初訪問の折、クトゥブ・ミナール遺跡を訪れた(デリー)
1200年頃に建てられたクトゥブ・ミナール。インドに残る最古のイスラム建築といわれている。塔の高さは72・5メートル。1993年に世界文化遺産に登録された。1961年2月、池田先生はアジア初訪問の折、クトゥブ・ミナール遺跡を訪れた(デリー)
社会を変える人間革命のドラマを
プージャ・カタルさん(写真中央、めがねの女性)が創立した学校で学ぶ子どもたちと共に
プージャ・カタルさん(写真中央、めがねの女性)が創立した学校で学ぶ子どもたちと共に

 「全ての子どもに学ぶ権利を」――自身がデリーに開設した学校を運営するプージャ・カタルさんは23年前、「十界論」を友から学び、「どんな苦境にあっても仏界の生命を開くことができる」という哲学に希望を見いだし、学会に入会した。
 
 借金を抱え、家も手放さざるを得なかった彼女は、信心の力で立ち上がり、2年後には夫と2人の娘も創価家族の一員に加わった。そして、信心根本に困難を乗り越え、8年かけて借金を完済した。
 
 「人は境遇に左右されず、必ず幸せになれる」――信仰を通して得たこの確信が、彼女を教育の道へと突き動かした。
 
 ユネスコなどの報告によるとインドでは、数多くの子どもたちが初等・中等教育を受けられていない。特に貧困層やカースト制度の影響を受ける地域では、子どもたちは幼いうちから働かざるを得ない現実がある。カタルさんは学校の教師だった経験を生かし、経済的な困難を抱える子どもたちのためにNGOを立ち上げ、小さな学びやを開校。これまでに延べ500人以上の子どもたちがその学校で学び、自信と希望を胸に社会へ羽ばたいている。
 
 自らの人生をもって「一人の女性の決意が社会を変える」ことを証明し続けるカタルさん。その挑戦は、インドの子どもたちの未来に、確かな光を届けている。

学生部の友を励ますイプシタ・グプタさん㊨
学生部の友を励ますイプシタ・グプタさん㊨

 「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」――小説『新・人間革命』の研さん運動が定着しているBSGでは、その主題を心に深く刻み、一人一人が“人間革命のドラマ”を演じ抜こうと奮闘している。その生き方は、次の世代へと確かに受け継がれる。
 
 イプシタ・グプタさんは、12歳の時に母と共に入会した。「祈りは叶う」との言葉を信じ、自ら具体的な目標を掲げ、題目に挑んだ日々。受験という人生の節目では、その祈りが力となり、第1志望の大学に合格するという勝利を手にした。
 
 現在は、環境保全のための技術開発に従事する一方、インド学生部の圏リーダーとして、多くの学生と向き合っている。「一人でも多くの友に希望を届けたい」と、毎日1人以上の友への励ましを欠かさない。
 
 「天晴れぬれば地明らかなり。法華を識る者は世法を得べきか」(新146・全254)との御聖訓の通り、自身の信仰体験を語りながらメンバーに寄り添い、共に信心の挑戦を繰り広げている。
 
 「祈りは必ず叶う。そして、誰かの幸せを祈る時、自分の可能性が大きく開かれていく」――そう励ましを送るグプタさんの姿に、信仰の力で未来を切り開こうとする学生たちが陸続と続いている。

師弟不二を貫くトゥニル・サハさん
師弟不二を貫くトゥニル・サハさん

 こうした「励ましの心」はインドの各地に広がる。
 
 コルカタ在住のトゥニル・サハさんは、17歳の時、家族の不仲と将来への不安に押しつぶされそうになっていた。そんな時、いとこから学会のことを聞き、入会。まるで家族のように寄り添い、励ましてくれる同志たちの存在に、心が救われた。
 
 「励まされる側から、今度は自分が励ます側に」。サハさんは、自身が家庭環境で苦闘した経験を生かし、社会的に弱い立場にある家庭を支えるNGOに就職した。コルカタには依然として公共サービスが行き届きにくいスラム地域が存在し、さまざまな支援が求められている。
 
 「まずは、つながること。励ますこと。そして、目の前の人の小さな変化に気付けるように」
 
 そう語るサハさんは、社会的に孤立した人々などの家を訪ね、励ましを重ねている。BSGの活動を通して培った「一人を大切にする精神」の発露であり、彼の実践が、地域の人々の心を温かく照らしている。
 
 サハさんは、「入会前は自身の境遇を嘆いていましたが、今では親に感謝できるまでになりました」と笑顔を見せた。

前進を誓うウトゥカルシュ・サヘーさん
前進を誓うウトゥカルシュ・サヘーさん

 世界でも模範となる広布拡大を遂げているBSG。しかし、そこに「特別な方法」や「秘策」があるわけではない。
 
 メンバーが、「目の前の友人を幸せにしたい」という真剣な思いを胸に、一人また一人と対話を重ねる。街角でも、職場でも、家庭でも――そこかしこで、自然に、そして情熱的に対話が繰り広げられている。
 
 ウトゥカルシュ・サヘーさんが学会と出あったのは2023年、職場の同僚に誘われて参加した会合がきっかけだった。当時、仕事のストレスと人間関係の悩みに押しつぶされそうになっていた彼は、半信半疑で唱えた題目で、心が不思議な温かさに満たされた。「何とも言えない気持ちが込み上げてきたんです」
 
 翌年から本格的に学会活動に取り組むようになったが、環境はすぐには変わらなかった。転職を試みるも難航。そんな時、支えとなったのは同志の存在だった。
 
 共に祈る中で“負けじ魂”が胸に熱く燃え上がった。くじけそうになる心を何度も鼓舞して、題目根本の実践を続けた。とうとう、願っていた通りの条件で再就職を勝ち取ることができた。
 
 「ただ外の環境が変わったのではないんです」とサヘーさん。気付けば、短気だった性格は穏やかになり、未入会の家族が学会活動に理解を示し、会合などの送迎をしてくれるようにもなった。「信仰で磨かれた自分の振る舞いこそが、信頼を広げる最良の方法だと実感しています」

会合運営スタッフ「BTS」(Behind The Scene=陰に徹する)の友が新宝城完成の喜びにあふれて(2月、デリーのインド文化会館で)
会合運営スタッフ「BTS」(Behind The Scene=陰に徹する)の友が新宝城完成の喜びにあふれて(2月、デリーのインド文化会館で)

 こうした無数の「一人の人間革命」の積み重ねが今、インド全土に広がっている。約30万人のBSGメンバーが連帯し、励まし合い、地域社会の中で確かな信頼の陣列を築いている。
 
 池田先生は、1961年1月のインド初訪問を振り返り、当時の真情をこうつづる。
 
 「私がインド訪問の第一歩を印した当時、現地のメンバーとお会いすることはなかった。夕闇迫るガンジス川のほとりに立ち、広布の展望に思いを凝らしながら『無数の地涌の菩薩を出現させてみせる』と深く決意した」
 
 本年はインドに初めての地区が誕生して55周年。師の思いに応えるように、各地で青年を中心とした地涌の菩薩が躍り出る。“一人を大切に”との精神を根本に据えた励まし運動は、時代を超えて受け継がれている。

マリーゴールドなどの花の香りが立ち込める国内最大のフラワーマーケット。早朝から花を求める人々でにぎわい、周囲は活気に満ちている(コルカタ)
マリーゴールドなどの花の香りが立ち込める国内最大のフラワーマーケット。早朝から花を求める人々でにぎわい、周囲は活気に満ちている(コルカタ)

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