〈教育本部ルポ・つなぐ〉第32回（完）＝関西創価小学校　「学力の向上」も「人間的な成長」も 〈教育本部ルポ・つなぐ〉第32回（完）＝関西創価小学校　「学力の向（こう）上（じょう）」も「人間的な成長」も 2025年8月20日

• テーマ:開示悟入がある授業
• テーマ:開（かい）示（じ）悟（ご）入（にゅう）がある授業

田代光章教諭（中央の男性）と春増利子教諭（その左の女性）が児童を見守り、関わる

田代光章教諭（中央の男性）と春増利子教諭（その左の女性）が児童を見守り、関わる

　授業中の写真である。これだけを見れば、「みんな立ち歩いているけれど……」と不思議に思う人もいるかもしれない。
　　
　先月15日に行われた、関西創価小学校3年1組の算数の時間。そのクライマックスの場面だ。

　授業中の写真である。これだけを見れば、「みんな立（た）ち歩（ある）いているけれど……」と不思議に思う人もいるかもしれない。
　　
　先月15日に行われた、関西創価小学校3年1組の算数の時間。そのクライマックスの場面だ。

　教室のホワイトボードには「29÷3」「56÷6」といった“割り算の問題”が並ぶ。児童が個々に考えて板書したもの。それぞれが、問題を選んで回答を自分のノートに書き、出題者のもとへ向かう。
　　
　「◯◯さん、お願いします！」。答え合わせは「正解です！」。回答者は「よし！」と小さくガッツポーズをして、次の問題へ。1問正解に付き1ポイント。合計5ポイントで「スーパー3年生」、10ポイントで「ミラクル3年生」という設定だ。

　教室のホワイトボードには「29÷（わる）3」「56÷（わる）6」といった“割（わ）り算（ざん）の問題”が並（なら）ぶ。児童が個（こ）々（こ）に考えて板（ばん）書（しょ）したもの。それぞれが、問題を選（えら）んで回答を自分のノートに書き、出題者のもとへ向（む）かう。
　　
　「◯◯さん、お願いします！」。答え合わせは「正解です！」。回答者は「よし！」と小さくガッツポーズをして、次の問題へ。1問正解に付（つ）き1ポイント。合計5ポイントで「スーパー3年生」、10ポイントで「ミラクル3年生」という設定だ。

　授業を進めるのは、総合学年主任で算数専科の田代光章教諭である。学級担任の春増利子教諭がフォローに当たる。二人して進捗を見守り、「スーパー3年生、現る！」と盛り上げたり、少しつまずいている子に寄り添ったりする。

　授業を進めるのは、総合学年主任で算数専科の田代光（みつ）章（あき）教諭である。学級担（たん）任（にん）の春（はる）増（まし）利（とし）子（こ）教諭がフォローに当たる。二人して進（しん）捗（ちょく）を見守り、「スーパー3年生、現（あらわ）る！」と盛（も）り上（あ）げたり、少しつまずいている子に寄（よ）り添（そ）ったりする。

田代光章教諭

田代光章教諭

　「楽しくて、分かりやすくて、しかも能率的でなければ創価教育ではない」。これが、初代会長・牧口常三郎先生の信念だった。関西創価小学校が目指すのは、そんな教育実践によって「学力の向上」と「人間的な成長」を両立すること。そのために、法華経方便品に説かれた「開示悟入」の法理を教育原理として応用している。牧口先生が実際に取り入れた教授法だ。

　「楽（たの）しくて、分かりやすくて、しかも能（のう）率（りつ）的（てき）でなければ創価教育ではない」。これが、初代会長・牧口常（つね）三（さぶ）郎（ろう）先生の信念だった。関西創価小学校が目指すのは、そんな教育実践によって「学力の向（こう）上（じょう）」と「人間的な成長」を両立すること。そのために、法（ほ）華（け）経（きょう）方（ほう）便（べん）品（ぼん）に説（と）かれた「開（かい）示（じ）悟（ご）入（にゅう）」の法（ほう）理（り）を教育原理として応用している。牧口先生が実際に取り入（い）れた教授法だ。

「開示悟入」が明かされる法華経方便品の箇所（妙法蓮華経並開結121ページ）。「仏は何のためにこの世に出現したのか」という問いへの答えとして、出てきた言葉である。それは、衆生をして仏の智慧を「①開かしめんがため」「②示さんがため」「③悟らしめんがため」「④入らしめんがため」――つまり、「一切衆生を成仏させること」が仏の目的だという

「開示悟入」が明かされる法華経方便品の箇所（妙法蓮華経並開結121ページ）。「仏は何のためにこの世に出現したのか」という問いへの答えとして、出てきた言葉である。それは、衆生をして仏の智慧を「①開かしめんがため」「②示さんがため」「③悟らしめんがため」「④入らしめんがため」――つまり、「一切衆生を成仏させること」が仏の目的だという

　その原理が今回の授業で、どう展開されたか。時計の針を40分戻し、振り返ってみよう。
　　
　まず「開」。子どもの心を算数の世界へ開き、一気に引き込む導入だ。フラッシュカードという教材を用いる。田代教諭が1枚ごとに1桁の数字が書かれたカードの束を持って、「3を足します」等と問いを出してから、高速でめくって見せる。

　その原理が今回の授業で、どう展（てん）開（かい）されたか。時計の針（はり）を40分戻（もど）し、振（ふ）り返（かえ）ってみよう。
　　
　まず「開（かい）」。子どもの心を算数の世界へ開（ひら）き、一気に引（ひ）き込（こ）む導（どう）入（にゅう）だ。フラッシュカードという教材を用（もち）いる。田代教諭が1枚（まい）ごとに1桁（けた）の数字が書かれたカードの束（たば）を持って、「3を足（た）します」等と問（と）いを出してから、高（こう）速（そく）でめくって見せる。

　“2”と書かれていたら「5！」、“7”と書かれていたら「10！」と全員で次々と答えるのだ。掛け算も加わる。さらに個々で机の上の問題用紙に向かう「計算タイム」へ。ここまで約5分。

　“2”と書かれていたら「5！」、“7”と書かれていたら「10！」と全員で次々と答えるのだ。掛（か）け算（ざん）も加（くわ）わる。さらに個（こ）々（こ）で机（つくえ）の上の問題用紙に向（む）かう「計算タイム」へ。ここまで約5分。

　次に「示」。今日の課題を示す段階だ。田代教諭が問う。「シールが26枚あります。1人に6枚ずつ配ります。何人に分けられて、何枚余りますか」。余りの出る割り算がテーマだ。ここは、ゆっくり丁寧に、解き方を確認する。“これならできそうだ”と、児童の表情に安心感が浮かぶ。

　次に「示（じ）」。今日（きょう）の課題を示（しめ）す段（だん）階（かい）だ。田代教諭が問（と）う。「シールが26枚（まい）あります。1人に6枚（まい）ずつ配（くば）ります。何人に分けられて、何枚余（あま）りますか」。余りの出る割（わ）り算（ざん）がテーマだ。ここは、ゆっくり丁（てい）寧（ねい）に、解（と）き方（かた）を確（かく）認（にん）する。“これならできそうだ”と、児童の表情に安心感が浮（う）かぶ。

　続いて「悟」。文章問題をどう解いたか、隣の席の友達と説明し合う。すると「そうやればいいのか！」と理解を深め、納得していく。

　続いて「悟（ご）」。文章問題をどう解いたか、隣（となり）の席（せき）の友（とも）達（だち）と説明し合う。すると「そうやればいいのか！」と理解を深め、納（なっ）得（とく）していく。

　ここまでのリズムとテンポが絶妙だ。田代教諭は常に児童の発言や振る舞いに目と耳と心を研ぎ澄ませ、「分かりやすい発表だね！」「ノートの書き方が素晴らしい！」等と、励ましのフィードバックを欠かさない。
　　
　授業は終盤へ。記事冒頭の場面である。「余りの出る割り算の問題をつくって、解き合おう！」

　ここまでのリズムとテンポが絶（ぜつ）妙（みょう）だ。田代教諭は常（つね）に児童の発言や振（ふ）る舞（ま）いに目と耳と心を研（と）ぎ澄（す）ませ、「分かりやすい発表だね！」「ノートの書き方が素（す）晴（ば）らしい！」等と、励（はげ）ましのフィードバックを欠（か）かさない。
　　
　授業は終（しゅう）盤（ばん）へ。記事冒（ぼう）頭（とう）の場面である。「余りの出る割（わ）り算（ざん）の問題をつくって、解き合おう！」

　一人一人が生き生きと動き出す。自分の問題を友達がうれしそうに解いてくれる。自分もどんどん解きたくなる。協働学習のうねりで教室全体が揺れるよう。

　一人一人が生（い）き生きと動き出す。自分の問題を友（とも）達（だち）がうれしそうに解いてくれる。自分もどんどん解きたくなる。協（きょう）働（どう）学習のうねりで教室全体が揺（ゆ）れるよう。

　残り時間は2分。田代教諭が言う。「まだ誰にも自分の問題を解いてもらっていない人？」。3人の手が挙がった。「3人の問題は難しいね。解けた子は2ポイントにしよう！」。皆がその子たちのもとへ。熱中は頂点に――。

　残り時間は2分。田代教諭が言う。「まだ誰（だれ）にも自分の問題を解いてもらっていない人？」。3人の手が挙（あ）がった。「3人の問題は難（むずか）しいね。解けた子は2ポイントにしよう！」。皆（みな）がその子たちのもとへ。熱（ねっ）中（ちゅう）は頂（ちょう）点（てん）に――。

余りの出る割り算の問題を自分でつくり、みんなで解く。ミッション成功！　拍手が起こる

余りの出る割り算の問題を自分でつくり、みんなで解く。ミッション成功！　拍手が起こる

　チャイムが鳴った。
　「一人も置き去りにしない」学びの温かさが、教室を包んでいる。「もっとやりたい！」「家でも、お父さんやお母さんとやろうかな」。そんな余韻が広がっている。これが「入」――自発的な行動の流れに「入らしめる」ことに違いない。
　　
　「学習」と「成長」が授業の中でつながった。

　チャイムが鳴（な）った。
　「一人も置（お）き去（ざ）りにしない」学びの温（あたた）かさが、教室を包（つつ）んでいる。「もっとやりたい！」「家でも、お父さんやお母さんとやろうかな」。そんな余（よ）韻（いん）が広がっている。これが「入（にゅう）」――自発的な行動の流（なが）れに「入（い）らしめる」ことに違（ちが）いない。
　　
　「学習」と「成長」が授業の中でつながった。

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●※ルポ「つなぐ」の連載まとめは、こちらから。子どもや保護者と心をつなぎ、地域の人と人とをつなぐ教育本部の友を取材しながら、「子どもの幸福」第一の社会へ私たちに何ができるかを考えます。

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