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〈幸齢社会〉 バスに乗り込み、冒険へ飛び出そう 2023年8月9日

 生活の足として活躍するバス。普段見かける路線バスに少し工夫を加えることで、旅を創ることができます。バス旅の楽しみ方やオススメコースを、バスジャパン・ハンドブックシリーズ(BJエディターズ)編集長の加藤佳一さんに聞きました。

バスジャパン・ハンドブックシリーズ編集長
加藤佳一さん

 路線バスの魅力は、街中を走ること。家も店もみな車道を向いています。街の正面を味わう。電車よりゆっくりだから、ディテール(細部)をじっくり観察することができます。
 マイカーでいいと思うかもしれません。しかし、マイカーはプライベート空間、自宅の延長です。乗客同士の会話や、運転士と常連客のやり取り。地元に溶け込む体験は、バスならではです。
 旅の醍醐味の一つは、知らない世界を見ること。近所の路線バスを旅に変える最初のコツは、使ったことがない路線で、名前を知っているバス停まで乗車することです。例えば、近くの駅行きなど。バスの車窓は、普段と違う気付きを与えてくれます。同じ駅行きで、複数ルートを乗り比べるのもオススメ。
 座席は、景色を楽しむなら一番前、“普段着の生活”に浸るなら中ドアのすぐ後ろに座ってください。
 一つの路線を満喫したら、次は路線を組み合わせる乗り方にも挑戦。乗り換える停留所が重要です。目的地までの最短ルートが、良いとは限りません。乗り換え時に、トイレや涼む所はあるか。バス会社のホームページなどを参考に、自分なりの経路を考えましょう。
 地元を堪能したら、ぜひ他地域へも。全国屈指の旅先を七つのテーマに分けて紹介します。路線バスを使って、冒険へ出かけませんか。

●どこまで続く長距離路線

 ・八木新宮線(奈良交通)
 奈良県の近鉄大和八木駅と和歌山県のJR新宮駅を結ぶ1日3往復のローカルバス。全長169.8㎞、停留所数168、所要約6時間半~7時間で、一般道を走るバスとしては日本最長。十津川村民の生活路線だが、十津川温泉、世界遺産「小辺路」などの観光にも使える。

 ・快速あまくさ号(産交バス)
 熊本市内と天草下島の本渡を結ぶ1日10往復、所要約2時間40分の快速バス。観光スタイルのハイデッカー(座席位置の高いバス)で、宇土半島から天草五橋を渡る車窓が楽しめる。世界遺産の三角西港、天草四郎ミュージアム、天草松島など、途中下車したいスポットも点在する。

●かつての鉄路をひた走る

 ・かしてつバス(関鉄グリーンバス)
 2007年に廃止された鹿島鉄道線の代替バスで、茨城県の石岡駅と新鉾田駅を結んでいる。このうち石岡駅~四箇村間では廃線跡のバス専用道を走行しており、まるで列車に乗っているかのような気分を味わえる。一部の便は途中で分岐して茨城空港に発着している。

 ・伊集院~加世田~枕崎(鹿児島交通)
 1984年に廃止された鹿児島交通枕崎線の代替バスで、JR伊集院駅とJR枕崎駅を結んでいる。途中の加世田駅跡はバスターミナルとなっており、蒸気機関車や腕木式信号機、駅名標などが保存されている。また鉄道の資料や写真を展示している南薩鉄道記念館もある。

●面影をとどめる旧街道へ

 ・箱根旧街道線(箱根登山バス)
 箱根登山鉄道の箱根湯本駅と芦ノ湖の元箱根港を結ぶバスには、国道1号を走る箱根新道線と、旧東海道に寄り添う箱根旧街道線がある。箱根旧街道線は峠を越える旅人たちが休んだ畑宿の集落や甘酒茶屋の前を通る他、いまなお残る石畳の旧街道を横切るように走る。

 ・中仙道線(千曲バス)
 JR中込駅~JR佐久平駅~立科町役場間のバス路線はその名も中仙道線。旧中山道の岩村田宿、塩名田宿、八幡宿、望月宿、芦田宿を結んで走る。宿場の面影をとどめる町並みの中に旧本陣や常夜燈、一里塚などの史跡が残り、それらを車窓から望むことができる。

●終着駅のさらに奥を行く

 ・三厩駅~龍飛線(外ケ浜町営バス)
 JR津軽線の終着駅・三厩と津軽半島最北端の龍飛崎を結ぶ町営バス。漁港の集落の人たちだけでなく、観光客の足でもあり、かつて終点だった龍飛漁港から龍飛崎灯台まで延長された。なお、JR津軽線は大雨被害により蟹田以北が運休中で、代行バスが運行されている。

 ・志賀島島内線(西日本鉄道)
 海の中道と呼ばれる砂州に延びるJR香椎線。その終着駅・西戸崎から出る西鉄バスが、陸続きの志賀島へ渡っている。左右双方に海が広がる絶景を見ながら志賀島に上陸すれば、海鮮料理の店が軒を連ね、終点の勝馬は高級イチゴ・あまおうの産地として知られる。

●離島ならではの生活密着

 ・八丈島(八丈町営バス)
 フェリー港がある三根地区を起終点に運行されている。沿線に樫立向里温泉「ふれあいの湯」、末吉温泉「みはらしの湯」などいくつもの温泉があり、島民が洗面道具を持って乗ってくる。バス乗り放題・温泉入り放題のチケットBU・S・PA(バスパ)が販売されている。

 ・小豆島(小豆島オリーブバス)
 フェリーが発着する土庄港、坂手港、福田港などを起終点に運行されている小豆島オリーブバス。路線は島内全域をカバーしており、島民の暮らしを支えている。観光客用のフリー乗車券もあり、二十四の瞳映画村、紅雲亭、中山千枚田などを訪ねることができる。

●レトロの車体に身を任せ

 ・福山市内定期観光バス(鞆鉄道)
 JR福山駅を起終点として、4月上旬~12月中旬の土日祝日に運行されている市内定期観光バス。その車両は1958年式のいすゞ製ボンネットバスである。下車観光地は、バスによく似合うクラシックカーの博物館、国宝の古刹、そして潮待ちの港として栄えた鞆の浦である。

 ・南城線・南城~結の街線(沖縄バス)
 本土復帰6年後の1978年7月30日に右側通行から左側通行に変わった沖縄県。この時に導入された右ハンドル・左乗降口のバス、通称730(ナナサンマル)車が2台現存している。その1台である沖縄バスの三菱製車両は、毎週日曜日に南城線・南城~結の街線を走っている。

●観光地を隅々まで味わう

 ・元町・ベイエリア周遊号(函館バス)
 函館駅前を起終点に市街地の観光スポットを循環する。函館バスの一般路線車とは異なるピンク色のボディーが目印。朝市、金森赤レンガ倉庫、函館山のロープウエー駅を経て教会と洋館が立ち並ぶ元町へ。急な坂道に沿って続く町並みなので、バスを上手に使いたい。

 ・城下まち金沢周遊バス(北陸鉄道)
 金沢駅東口を起終点に市街地の観光スポットを循環する。北鉄バスの一般路線車とは異なるレトロ調の車両で、右回りは赤色のボディーに緑色の屋根、左回りは緑色のボディーに黄色の屋根が目印。近江町市場、香林坊、寺町、兼六園、ひがし茶屋街などを結んでいる。

 八木新宮線の記者リポートは、こちらから

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認定NPO法人フローレンス会長。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、社会課題解決のため、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組など数々の福祉・支援事業を運営。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長

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