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「話す」よりも「聞く」こと! すぐに実践できる“雑談革命” 2023年7月15日

  • 【電子版連載】〈WITH あなたと〉インタビュー 『世界最高の雑談力』著者・岡本純子さん #コミュニケーション
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 海外では、コミュニケーションは科学として研究され、「話し方」「聞き方」が学校や職場で教えられています。しかし、日本では、そのような機会があまりなく、6割の日本人が「コミュニケーションは苦手だ」と感じているそうです。『世界最高の雑談力』(東洋経済新報社)の著者である岡本純子さんに、雑談・会話の必勝ルールを聞いてみました。(取材=松岡孝伸、宮本勇介)

■「マウントを取る」「自分の思いばかり」になっていませんか?

 ――大人になると、新しい出会いから仲が深まる機会が減っているように感じます。自分の話し方を改善することで、状況は変わるでしょうか?

 「人生はコミュニケーションで決まる」と言っても過言ではありません。話し方や接し方を改善することで、人間関係は劇的によくなります。

 男性、女性を区別して、コミュニケーションの在り方を一律に論じたくはありませんが、傾向として、女性は「コラボレーション」が目的で、男性は「コンペティション」(競争)が目的になりやすい傾向があります。

 男性は、職場等で上下関係に基づくコミュニケーションが多いため、自分の優位性を示そうと、マウントを取るような言動になりがちです。周囲に弱みを見せて、共感を得たり、関係を密にしたりすることが女性と比べると少ない。逆に、女性は目の前の人の気持ちを読み取りすぎて、人前での話が苦手と言う人が多い傾向にあります。

 また、男女問わず、自分の思いばかりを伝えて、相手の話を聞かない人が少なくありません。人は「しゃべりたくて仕方ない生き物」だと認識すると、今後のコミュニケーションが改善されていくと思います。

■世界のエリートが雑談・会話において心がけていること

 ――岡本さんは、新聞記者やPRコンサルタントを経て、社長や役員など、1000人を超える人たちに話し方の指導を行ってきました。相手との関係性を深める会話をするには、どのような点を心がければいいでしょうか。

 皆さんは、「どんな話題で相手に興味を持ってもらうか」「どのように話して相手に印象付けるか」など、「自分が何を話すか」ばかりを意識していないでしょうか。

 人は大抵、相手が話したことは覚えていません。しかし、「あなたによってどんな気分になったか」は、ずっと記憶に残っているものです。

 ですから、世界のエリートが雑談・会話において心がけているのは、ずばり、「話さない」ことです。相手を主人公にし、相手の話を上手に引き出すために、「聞く」ことに徹しているのです。

■無限質問の方程式! 6種類の「ど」✖️3つの「お」

 ――「聞く」姿勢が大切なんですね! 会話のきっかけをつかむ上でアドバイスはありますか?

 「How are you?」(お元気ですか?)
 「What’s up?」(最近、どう?)

 英語の会話のように、まずは質問から始めればいいんです。
 ぜひ、「ど」から始まる質問を意識してみてください。いわゆる、「5W1H(What、Who、When、Where、Why、How)」で始まる質問を日本語に置き換えると、全て「ど」から始めることができるんです。
 この6種類の「ど」の質問に「①お好きですか?」「②おすすめですか?」「③思いますか?」の三つの「お」を掛け合わせると、質問は無限につくれます。

 ①どんな○○が、お好きですか?
 ②どんな○○が、おすすめですか?
 ③○○について、どう思いますか?
 ④どうしたらいいと思いますか?
 ⑤調子はどうですか?
 ⑥どこの出身ですか?

 まずは「最近どう?」という簡単な質問でいいと思います。大切なのは、そうした導入の後に、掘り下げる質問をすることです。

 あなた:どんな趣味をお持ちなんですか?(導入質問)
 相手:温泉マニアなんですよ。
 あなた:へえ、温泉なんですか。いいですよねー。どの温泉が好きなんですか?(掘り下げる質問)

 質問攻めにならない程度に、「相手6:自分4」くらいの割合で話ができればいいと思います。
 相手の話を聞くだけでは疲れてしまいます。そのためにも、掘り下げる質問をしながら、お互いの共通点を見つけていくことが大切です。自分も興味がある話であれば、会話していても楽しいはずです。

■最強の質問フレーズ「〇〇ください」

 ――掘り下げる質問が、なかなか難しい人のために、“これさえあれば”というフレーズがあればいいのですが……。

 そんな最強のフレーズがあるんです。それは「アドバイスをください」「教えてください」という言葉です。

 人は「助けてくれた人」だけでなく、実は、「助けてあげた人」にも好感を持ちます。アドバイスを求められた場合、ほとんどの人は頼りにされていることを、うれしく感じるものです。人は誰でも「誰かの役に立ちたい」という欲求を持っているのです。

 私もこれまでいろいろな人にアドバイスを求めてきましたが、断られたことは一度もありませんし、むしろ多くの場合、喜んで助言をしてくれました。自分も相手もハッピーになれる、こんな最強な言葉はありません。

 この言葉は、特にリーダーの方に使っていただきたい。これまで、日本の組織の多くは「上意下達」でやってきました。「お前ら、俺の言うことについてこい」というのが今までのリーダーの在り方でした。
 しかし、これからの時代に必要なのは、そうした「強さ」ではなく、「弱さ」――脆弱性です。自分の弱さを認めた上で、率直に助けを求め、チーム全体で力を高めていく。例えばWBCの栗山監督や、サッカーW杯の森保監督がまさに、そのお手本です。

■人前で緊張してしまう人は、“意識の矢”の向きを変えよう

 ――そもそも、話が苦手な人もいるかと思います。そんな人は、どうすればいいのでしょうか。

 実は私も、自分に自信が持てず、昔は人前に立つと緊張ばかりしていました。そんな自分の内向的で人見知りなところを変えたい!と渡米。真っ先に向かったのが「恥ずかしがり屋研究所」(Shyness research institute)という研究機関でした。
 
 そこで言われたのが「あなたは自分のことをシャイだと言っているけれども、実はナルシシストです」ということ。「目の前に人がいるのに、その人のことはそっちのけで、自分の姿ばかり気にするのはナルシシストでしかない」と。
 その言葉に衝撃を受けると同時に、たしかに私は「自分が人からどう思われるのか、どう見えるのか」ばかりを気にして、まるで「目の前の『鏡』に映る自分の姿を見ている」だけだと思ったのです。

岡本さんの新著『世界最高の伝え方』㊧と著書『世界最高の雑談力』
岡本さんの新著『世界最高の伝え方』㊧と著書『世界最高の雑談力』

 人前が苦手な人、緊張してしまう人というのは、意識の「矢」が、相手ではなく、全て自分に向いてしまっている状態ともいえます。であれば、その「矢」を反転させ、徹底的に相手に向けていくことです。
 「自分が相手にどう見られるか」ではなく、「自分が相手をどう見るか」に変える。「相手がどんな人か知りたい」「この人と話したい」と興味の方向を自分から相手へと180度転換していけばいいのです。

■「話す」ことへの執着を「手放す」と、コミュニケーションはうんと楽に

 ――コロナ禍によって、社会は大きなダメージを受けました。しかし、その一方でコミュニケーションの在り方について考え直す機会にもなったと思います。

 コロナ禍でなかなか人に会えない状況が続き、「話したい・聞いてほしい」という人は、これまでにないほど増えていると感じています。自分の話を聞いてくれることは、誰にとってもうれしいものです。今こそ、雑談が求められています。

 「どうやったら、人と上手に雑談ができるのか」を研究し続けてたどり着いた私の結論は、「話す」ことへの執着を「手放す」ことでした。「相手に喜んでもらいたい」――利己から利他に視点をシフトした結果、コミュニケーションがうんと楽に、そして楽しくなりました。

 雑談や会話など、話をすることは脳内ホルモン「ドーパミン」を分泌させ、健康や幸福感を高めてくれます。また、雑談は職場の潤滑油になり、思いがけないイノベーションを生む源泉にもなります。
 日本の職場では「おしゃべりは無駄」という考えが根強くありますが、アメリカのラトガーズ大学などによる調査では、「オフィスのおしゃべりのメリットはデメリットを大きく上回る」という結果が出ています。

 意識すれば雑談力はすぐに向上します。雑談力を磨くことで、人生は大きく変わります。ぜひ、読者の皆さんも、会話・雑談に花を咲かせていってください。

【プロフィル】
 おかもと・じゅんこ エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。読売新聞社経済部記者、電通パブリックリレーションズコンサルタントを経て、2015年7月に株式会社グローコムを設立。米ニューヨークで学んだグローバルスタンダードをもとに、企業経営者や幹部を対象にコミュニケーションノウハウを伝授している。22年5月に、次世代グローバルリーダーのコミュニケーション力育成のための「世界最高の話し方の学校」を開校。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、英ケンブリッジ大学院国際関係学修士。米MIT元客員研究員。著書に、シリーズ累計20万部を突破した『世界最高の話し方』『世界最高の雑談力』などがあり、新著は『世界最高の伝え方』(共に東洋経済新報社)。

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認定NPO法人フローレンス会長。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、社会課題解決のため、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組など数々の福祉・支援事業を運営。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長

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