新企画〈グローバル新時代〉 日本で活躍する外国籍の人々のストーリー
新企画〈グローバル新時代〉 日本で活躍する外国籍の人々のストーリー
2026年4月28日
現在、日本国内には約412万5000人(2025年12月現在)の外国籍の人が暮らしています。新連載「グローバル新時代」では、日本国内で共生社会の実現に貢献する海外出身者や日本人のメンバーなどを紹介します。第1回は、ブラジルとインド出身の友です。
現在、日本国内には約412万5000人(2025年12月現在)の外国籍の人が暮らしています。新連載「グローバル新時代」では、日本国内で共生社会の実現に貢献する海外出身者や日本人のメンバーなどを紹介します。第1回は、ブラジルとインド出身の友です。
最初は目も合わなかった児童が……? 日本語指導補助員として奮闘
最初は目も合わなかった児童が……? 日本語指導補助員として奮闘
ニシ・バショ・エリカさん
(ブラジル→島根)
ニシ・バショ・エリカさん
(ブラジル→島根)
「いつでも声をかけてね」――放課後や長期休みには、学校併設の児童クラブでも子どもたちを見守る
「いつでも声をかけてね」――放課後や長期休みには、学校併設の児童クラブでも子どもたちを見守る
教室のチャイムが鳴る。授業が始まると、ニシ・バショ・エリカさんはブラジル出身の児童の隣に座り、目線を合わせて優しく声をかける。
「何か分からないことは、あるかな?」
島根・出雲市には、製造業の雇用を背景に3000人以上のブラジル人が暮らしている。公立小学校にも同国にルーツを持つ児童が多く通い、バショさんは「日本語指導補助員」として、そうした児童の学校生活を支えている。
教室のチャイムが鳴る。授業が始まると、ニシ・バショ・エリカさんはブラジル出身の児童の隣に座り、目線を合わせて優しく声をかける。
「何か分からないことは、あるかな?」
島根・出雲市には、製造業の雇用を背景に3000人以上のブラジル人が暮らしている。公立小学校にも同国にルーツを持つ児童が多く通い、バショさんは「日本語指導補助員」として、そうした児童の学校生活を支えている。
バショさんは、ブラジルで生まれ育った日系3世。2019年、夫と幼い娘と共に来日した。母国では専門学校の講師をしていた彼女は「日本の教育現場で働きたい」という思いを抱いていたが、来日当初は言葉の壁に苦労し、何度も悔しい思いをした。それでも日本語を一から学び、現在の仕事に出合った。
「自身が経験してきた苦労や葛藤が、子どもたちへの共感につながっていると感じます」
国内で日本語指導が必要な外国籍の児童・生徒は、この10年で倍増し、全国的に支援の必要性が高まっている。子どもたちの中には、母国では勉強が得意だったが、日本では思うように力を発揮できず、自信を失ってしまうケースもあるという。
「だからこそ、一人一人の可能性を信じ、声をかけています」
ある時は、漢字を学ぶ目的が分からないといった児童に対し、「これを覚えれば、おうちの人を助けることにもつながるんだよ」と語った。例えば、「入口」「出口」やエレベーターの「開」「閉」など、日本語に不慣れな人には分かりづらい表示を、家族に教えられるようになると伝えた。以来、その子は懸命に漢字を学ぶようになったという。
バショさんは、ブラジルで生まれ育った日系3世。2019年、夫と幼い娘と共に来日した。母国では専門学校の講師をしていた彼女は「日本の教育現場で働きたい」という思いを抱いていたが、来日当初は言葉の壁に苦労し、何度も悔しい思いをした。それでも日本語を一から学び、現在の仕事に出合った。
「自身が経験してきた苦労や葛藤が、子どもたちへの共感につながっていると感じます」
国内で日本語指導が必要な外国籍の児童・生徒は、この10年で倍増し、全国的に支援の必要性が高まっている。子どもたちの中には、母国では勉強が得意だったが、日本では思うように力を発揮できず、自信を失ってしまうケースもあるという。
「だからこそ、一人一人の可能性を信じ、声をかけています」
ある時は、漢字を学ぶ目的が分からないといった児童に対し、「これを覚えれば、おうちの人を助けることにもつながるんだよ」と語った。例えば、「入口」「出口」やエレベーターの「開」「閉」など、日本語に不慣れな人には分かりづらい表示を、家族に教えられるようになると伝えた。以来、その子は懸命に漢字を学ぶようになったという。
ブラジル出身メンバーの座談会で(前列左から2人目がバショさん)
ブラジル出身メンバーの座談会で(前列左から2人目がバショさん)
子どもたちがぶつかる壁は、言葉の壁だけではない。文化や習慣の違いから、学校になじめないことも多い。日本の食事が口に合わず、給食が食べられない子もいれば、掃除の時間に行う「雑巾がけ」など、母国にはない習慣に戸惑うこともある。
だが、そうした背景を知り、ブラジル出身の児童に歩み寄るようになった日本人の児童もいるという。
昨年、授業の一環で、ブラジル出身の児童が自らの思いを発表する場面があった。ある子は「日本で友達ができるか不安だったけど、優しく日本語を教えてくれた子がいて、うれしかった」と語った。聞いていた日本人児童の中には、涙を浮かべる子もいた。「ジェスチャーも交えながら、ブラジルの友達ともっと話してみたい」といった声も上がった。
子どもたちがぶつかる壁は、言葉の壁だけではない。文化や習慣の違いから、学校になじめないことも多い。日本の食事が口に合わず、給食が食べられない子もいれば、掃除の時間に行う「雑巾がけ」など、母国にはない習慣に戸惑うこともある。
だが、そうした背景を知り、ブラジル出身の児童に歩み寄るようになった日本人の児童もいるという。
昨年、授業の一環で、ブラジル出身の児童が自らの思いを発表する場面があった。ある子は「日本で友達ができるか不安だったけど、優しく日本語を教えてくれた子がいて、うれしかった」と語った。聞いていた日本人児童の中には、涙を浮かべる子もいた。「ジェスチャーも交えながら、ブラジルの友達ともっと話してみたい」といった声も上がった。
バショさんは日々、学習支援だけでなく、子どもたちの「心のケア」にも努めている。
あるブラジル出身の児童は、自分の気持ちがうまく表現できず、授業や諸活動にも全く参加しようとしなかった。バショさんとも目を合わせようとせず、どう関わればよいか悩み、支援を諦めかけたこともあった。それでも彼女は思った。“この子も世界の宝物なんだ”――。その日から毎日欠かさず、声をかけた。やがて児童は心を開いてくれるようになり、自ら悩みを打ち明け、笑顔も見せてくれるようになった。
一人一人と真剣に向き合うバショさん。こうした振る舞いの根底には、“皆が等しく尊い”という仏法の「生命の尊厳」の哲理、そして“一人を大切にするところから、平和は始まる”との信念がある。
地域では、夫と共にブラジル出身メンバーの座談会にも力を入れ、内外の友に励ましを送っている。
まっすぐな瞳で彼女は語った。
「社会には不寛容な風潮や分断も見られます。でも私は、一人一人の命の尊さを信じ、対話を通して希望を広げていきたいと思っています」
バショさんは日々、学習支援だけでなく、子どもたちの「心のケア」にも努めている。
あるブラジル出身の児童は、自分の気持ちがうまく表現できず、授業や諸活動にも全く参加しようとしなかった。バショさんとも目を合わせようとせず、どう関わればよいか悩み、支援を諦めかけたこともあった。それでも彼女は思った。“この子も世界の宝物なんだ”――。その日から毎日欠かさず、声をかけた。やがて児童は心を開いてくれるようになり、自ら悩みを打ち明け、笑顔も見せてくれるようになった。
一人一人と真剣に向き合うバショさん。こうした振る舞いの根底には、“皆が等しく尊い”という仏法の「生命の尊厳」の哲理、そして“一人を大切にするところから、平和は始まる”との信念がある。
地域では、夫と共にブラジル出身メンバーの座談会にも力を入れ、内外の友に励ましを送っている。
まっすぐな瞳で彼女は語った。
「社会には不寛容な風潮や分断も見られます。でも私は、一人一人の命の尊さを信じ、対話を通して希望を広げていきたいと思っています」
ブラジル出身メンバーが満面の笑みで(最前列左から2人目がバショさん)
ブラジル出身メンバーが満面の笑みで(最前列左から2人目がバショさん)
夫のメンジエタ・マイケルさん㊨、娘のメンジエタ友佳さん㊥と
夫のメンジエタ・マイケルさん㊨、娘のメンジエタ友佳さん㊥と
2桁の掛け算を2秒で解く!?――インド政府公認「ヴェーダ数学」専門家
2桁の掛け算を2秒で解く!?――インド政府公認「ヴェーダ数学」専門家
グハ・レイ・ニルマリヤさん
(インド→福岡)
グハ・レイ・ニルマリヤさん
(インド→福岡)
「パターンを覚えれば、計算が速くなるんですよ」――ヴェーダ数学を教えるレイさんの表情は、いつも柔和だ
「パターンを覚えれば、計算が速くなるんですよ」――ヴェーダ数学を教えるレイさんの表情は、いつも柔和だ
ホワイトボードに「58×52=」の数式。「この2桁のかけ算、私なら2秒で解けます」
そう言うと、グハ・レイ・ニルマリヤさんは、すらすらと「3016」と書き出した。それも筆算をすることなく――。
「暗記しているわけではありません。これが“インド数学”なんです」と、ニコニコ。
古代インドを起源とする「ヴェーダ数学」。数字の持つ性格から計算のパターンを導き出すことで、速算が可能になるインド式の計算だ。レイさんは、インド政府が公認する「ヴェーダ数学専門家」の資格を持つスペシャリスト。
「速い計算が簡単にできるだけでなく、創造力と集中力が付き、頭が柔らかくなります。算数嫌いの子も、楽しくなりますよ!」
ホワイトボードに「58×52=」の数式。「この2桁のかけ算、私なら2秒で解けます」
そう言うと、グハ・レイ・ニルマリヤさんは、すらすらと「3016」と書き出した。それも筆算をすることなく――。
「暗記しているわけではありません。これが“インド数学”なんです」と、ニコニコ。
古代インドを起源とする「ヴェーダ数学」。数字の持つ性格から計算のパターンを導き出すことで、速算が可能になるインド式の計算だ。レイさんは、インド政府が公認する「ヴェーダ数学専門家」の資格を持つスペシャリスト。
「速い計算が簡単にできるだけでなく、創造力と集中力が付き、頭が柔らかくなります。算数嫌いの子も、楽しくなりますよ!」
熱心に教えるレイさん(右端)
熱心に教えるレイさん(右端)
きっかけは2020年。コロナ禍の影響で同国プネー市の自宅で待機していた時、インターネットでヴェーダ数学のサイトを見つけた。その名は知っていたものの、じっくりとインド式計算に触れるのは初めて。数字の持つ可能性や面白さに、一気に魅了された。8カ月かけて政府公認資格を取得した。
ちょうどこの頃、妻・恵理香さんの実家がある日本への移住を検討していた。
「ヨガがインドから日本への“贈り物”となったように、魅力あるインド数学を日本への“贈り物”として伝え広めることを、自分の使命にしたいと思うようになりました」
23年、恵理香さんの地元・福岡の柳川市に一時来日し、インド数学塾「ヴェーダンク・アカデミー」を開講した。市民会館や中学校などでワークショップを行うと、どの回も大反響。うわさを聞きつけた地元テレビ局から取材を受けると、さらに受講者が増加し、大きな手応えを感じた。
米国に本社を置く勤務先のIT企業に相談すると、特例で日本法人への異動の辞令を出してくれた。
きっかけは2020年。コロナ禍の影響で同国プネー市の自宅で待機していた時、インターネットでヴェーダ数学のサイトを見つけた。その名は知っていたものの、じっくりとインド式計算に触れるのは初めて。数字の持つ可能性や面白さに、一気に魅了された。8カ月かけて政府公認資格を取得した。
ちょうどこの頃、妻・恵理香さんの実家がある日本への移住を検討していた。
「ヨガがインドから日本への“贈り物”となったように、魅力あるインド数学を日本への“贈り物”として伝え広めることを、自分の使命にしたいと思うようになりました」
23年、恵理香さんの地元・福岡の柳川市に一時来日し、インド数学塾「ヴェーダンク・アカデミー」を開講した。市民会館や中学校などでワークショップを行うと、どの回も大反響。うわさを聞きつけた地元テレビ局から取材を受けると、さらに受講者が増加し、大きな手応えを感じた。
米国に本社を置く勤務先のIT企業に相談すると、特例で日本法人への異動の辞令を出してくれた。
休日には畑で農作業。地域の人たちとキャベツを収穫する(左から2人目がレイさん)
休日には畑で農作業。地域の人たちとキャベツを収穫する(左から2人目がレイさん)
翌年8月、満を持して柳川へ。
日本での生活は、挑戦の連続だった。とりわけ日本語は「スーパーチャレンジ」。ひらがな、カタカナ、漢字を組み合わせる独特の言語構造に苦戦した。それでも、週末の夜に日本語のオンライン講座を受講するなど、習得への努力を忘れない。
数学塾の評判が広がる一方で、同年9月からは、市内の高校に招かれ、国際科と情報科の非常勤講師に就任。週5日、午前中は教壇に立ってインド数学とITの科目を担当し、午後からは本業のリモートワークに励む生活を送る。
授業は、「成績よりも数学の楽しさをつかむことを第一」に心がけ、時には翻訳アプリも活用して、生徒と直接話す時間を大切にする。優しく、誠実なレイさんの人柄に触れた生徒たちは心を寄せ、“母親の誕生日のビデオメッセージに、登場してほしい”と依頼してきたことも。
先月からは、「インド数学をもっと多くの人に知ってもらい、地域に貢献したい」と、柳川市のボランティアに登録した。
翌年8月、満を持して柳川へ。
日本での生活は、挑戦の連続だった。とりわけ日本語は「スーパーチャレンジ」。ひらがな、カタカナ、漢字を組み合わせる独特の言語構造に苦戦した。それでも、週末の夜に日本語のオンライン講座を受講するなど、習得への努力を忘れない。
数学塾の評判が広がる一方で、同年9月からは、市内の高校に招かれ、国際科と情報科の非常勤講師に就任。週5日、午前中は教壇に立ってインド数学とITの科目を担当し、午後からは本業のリモートワークに励む生活を送る。
授業は、「成績よりも数学の楽しさをつかむことを第一」に心がけ、時には翻訳アプリも活用して、生徒と直接話す時間を大切にする。優しく、誠実なレイさんの人柄に触れた生徒たちは心を寄せ、“母親の誕生日のビデオメッセージに、登場してほしい”と依頼してきたことも。
先月からは、「インド数学をもっと多くの人に知ってもらい、地域に貢献したい」と、柳川市のボランティアに登録した。
共に畑仕事をする仲間たちと(左端は妻・恵理香さん)
共に畑仕事をする仲間たちと(左端は妻・恵理香さん)
休みの日には、地域の人々と共同で使う畑で、野菜作りに精を出す。
「周りは70代や80代の先輩ばかり。でも自分より広い畑を軽々と耕していて尊敬します(笑)」
共に汗を流し、収穫した喜びを分かち合う中で、国籍を超えた強い絆が結ばれている。
学会活動も欠かさない。座談会や壮年部の会合には全て参加。訪問・激励に1人で通うこともある。
「池田先生がされてきたように、地域の人たちに自ら声をかけ、接していく姿勢をこれからも大事にしたい」――地道な対話と交流から、確かな異文化理解が生まれている。
休みの日には、地域の人々と共同で使う畑で、野菜作りに精を出す。
「周りは70代や80代の先輩ばかり。でも自分より広い畑を軽々と耕していて尊敬します(笑)」
共に汗を流し、収穫した喜びを分かち合う中で、国籍を超えた強い絆が結ばれている。
学会活動も欠かさない。座談会や壮年部の会合には全て参加。訪問・激励に1人で通うこともある。
「池田先生がされてきたように、地域の人たちに自ら声をかけ、接していく姿勢をこれからも大事にしたい」――地道な対話と交流から、確かな異文化理解が生まれている。
畑で収穫したタマネギを持って
畑で収穫したタマネギを持って
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https://www.seikyoonline.com/intro/form/kansou-input-gaishin.html
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