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〈Seikyo Gift〉 ロンドン五輪メダリスト 競泳・鈴木聡美選手にインタビュー 〈アスリート~超える力〉 2026年4月25日

  • 自分を変える勇気を。そこから未来は光りだす

 2012年、ロンドン五輪100メートル平泳ぎで銅、200メートルで銀、400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得した鈴木聡美選手。その後、東京五輪の落選等を経て、24年のパリ五輪200メートルでは12年ぶりの五輪決勝の舞台で4位に。昨年は15年ぶりに日本選手権で3冠、自己ベストを2回更新。28年のロサンゼルス五輪を見据え、常識を覆す挑戦を続ける理由を聞きました。(3月15日付)

 ――ここ数年、自己ベストを連発しています。好調の要因は?
  
 何でですかね(笑)。本当に自分でも不思議に思うくらいで。でも、一つは変化を受け入れられるようになったことですかね。ロンドン五輪の翌年から社会人になって、“理想の社会人スイマー像”を目指してやってはみたものの、「この練習はやりたくない」「私はこういう泳ぎがしたい」と頑固になってしまって、なかなか思うような結果が出せませんでした。

 もう辞めるべきなのかな、って思った時も正直ありましたけど、自分で考えてうまくいかないんだから、全部お任せしようと。監督やトレーナーさんからのアドバイスや方針を、とにかく積極的に取り入れました。それからは、ありとあらゆるものが良い方向にいきましたね。そしたらいつの間にか35歳になっちゃいました(笑)。
  
 ――30歳で泳法を変えたそうですが、今まで積み上げてきたものを崩すことは、とても勇気のいることだと思います。
  
 「積極的に諦めた」んです。「諦める」だけを切り取ると、どうしてもネガティブな印象に捉えられるんですけど、新しい可能性に挑戦するために、一度、積極的に総崩しした。土台はもちろん残しておくんですけど、これまでの形に固執したままだと良くないっていうことに気付かされて。

 ロンドン五輪の映像をたまに見返すんですけど、「うわ、まだ全然伸びしろある泳ぎしてるな」と(笑)。当時はめちゃめちゃ上手だと思ってたんですけど、今の泳ぎの方が断然上手なんですよね。

昨年のジャパンオープンで優勝(2025年11月、東京で)=写真:共同通信社
昨年のジャパンオープンで優勝(2025年11月、東京で)=写真:共同通信社

 ――そんなに違うんですね。
  
 全然違いますね。「もっと急いで!」って言いたくなるような泳ぎをしてます(笑)。

 でも、泳ぎを崩すとなると、最初のうちはどうしても記録につながらないから、実を結ぶまでは大変でした。周りがどんどん突き抜けていく中、泥くさく、地道に。

 タイムが遅いことが受け入れられなくて、「やっぱり今までのフォームがいい」ってなりがちなんですが、監督やトレーナーさんの言葉に、とても助けられました。「今はできなくて当たり前なんだから、大丈夫だよ!」と。この「大丈夫だよ」っていうフレーズが一番、安心材料になりました。「じゃあ今はこれでいいか!」って(笑)、できない自分も受け止めることができた。これも「積極的な諦め」ですね。

パリ五輪200メートル平泳ぎ決勝で力泳(2024年8月)=写真:共同通信社
パリ五輪200メートル平泳ぎ決勝で力泳(2024年8月)=写真:共同通信社
パリ五輪400メートルメドレーリレーのメンバーと(2024年8月)=写真:共同通信社
パリ五輪400メートルメドレーリレーのメンバーと(2024年8月)=写真:共同通信社

 ――山梨学院大学に入学して以来16年以上、神田忠彦監督の指導を受けています。
  
 私は考え過ぎて殻に閉じこもってしまう癖があるので、“そんなこと考えなくていい、とりあえず今はこれをやって”と、監督やトレーナーさんがやるべきことを示してくださるのが、非常にありがたいです。2人の存在は大きいですね。

 ぶつかり合うこともたまにありますけど、半分家族みたいなものなので、ただの親子げんかであり、きょうだいげんかです(笑)。監督が父で、トレーナーさんが兄ポジション。

 監督は私をオリンピックに行かせたいという気持ちが人一倍強いので、コロナ禍の時は、私が身の入らない練習ばかりやってたから、すごく怒られました。今となってはすごく申し訳なかったなって思うんですけど、当時は「水泳を続けていていいのかな」と悩んでたので、お互いぶつけ合いになって。今は「あの時はお互いすごい嫌な人間だったな」とか言ってます(笑)。
  
 ――今も学生と一緒に練習し、1日1万メートルほどを泳いでいるそうですが、なぜここまでモチベーションを保ち続けられるのでしょうか。
  
 一番は、自己ベストを更新したいっていうことですね。

 昨年7月の世界水泳の100メートルは自己ベストを出せたものの、4位だったんです。やっぱり4位っていうのが悔しくて。「もうちょっといけたんじゃないのかな」と。悔しいからこそ頑張りたいっていう気持ちが、レース直後から湧き出てくるので、「もう終わりかな」みたいな満足感が毎回ないんです。負けず嫌いなので、やっぱり悔しさが自分の原動力になってるんでしょうね。

 昨年2回目のベスト(100メートル)が出た9月の国スポ(国民スポーツ大会)の時は、腰の痛みがピークで。だからベストを出そうというモチベーションで臨んでなかったのに、泳いでみたら「私、めっちゃ速いじゃん!」って(笑)。だからそこも満足はしてないんですよね。

日々、山梨学院大学の学生と共に練習を
日々、山梨学院大学の学生と共に練習を

 ――余計な力が抜けた、というのもあるんですかね。今後の目標を聞かせてください。
  
 まずは今月控えている日本選手権の50、100、200メートルの3種目で、自信が持てる泳ぎができたらなと。特に50と100メートルでは、夏に向けてスピードを意識して、自己ベストを狙っていきたいです。そしてアジア大会、パンパシフィック選手権の代表に選ばれた上で、昨年のように自己ベストを更新できたらと思っています。

 あとは、記録を更新できても、やっぱりメダルが欲しいです。世界には強豪がいますけど、記録的にはメダルを狙える位置にいると思うので、まずは記録を見据えて、一つ一つ取り組んでいきたいです。

 すずき・さとみ 1991年、福岡県生まれ。ミキハウス所属。2012年ロンドン五輪では、日本競泳女子史上初の1大会で三つのメダルを獲得。16年、24年五輪代表。昨年は日本選手権で3冠、世界水泳選手権の100メートル平泳ぎで4位に。50メートル平泳ぎ日本記録保持者。

memo

 座右の銘は「捲土重来」。“一度戦いに負けた者が、勢いを盛り返して、再び攻めてくること”の意。「中学か高校の国語の授業で習った時に、『これかっこいい! いいじゃん』って思ってから、ずっと掲げてます」。2016年のリオ五輪では準決勝で敗退し、その後5年間、日本代表から遠ざかった。それでも過去の自分を超えたいと、過酷な練習を地道に積み重ね、完全復活を遂げた。座右の銘のままに、今、さらなる進化を続けている。

●インタビューの感想は、こちらからお寄せください。

【記事】横田世奈
【写真】手面香

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