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ノーベル平和賞受賞者 ムハマド・ユヌス博士の創価大学での記念講演(要旨) 2025年6月13日

  • 想像力が世界を変える

 バングラデシュの首席顧問でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士が5月30日、創価大学で記念講演を行った。ここでは講演の要旨を紹介する。

学生の挑戦に立ち会う喜び

 創価大学の皆さまの温かい歓迎、そして何より、学生の愛に満ちたまなざしに触れ、私はここに“帰ってきた”ような思いがしました。大学とは、私にとって常に心を揺さぶる場所です。学生の皆さんの挑戦に立ち会えることは、大きな喜びであり、学びとなります。
 
 私はいつも、若い人たちにこう伝えています。「学ぶことも大事。でも、もっと大事なのは“想像すること”です」と。
 
 「想像力」こそが、新しい世界を創る源です。もし「想像」できなければ、何も実現しません。逆に言えば、「想像」することができれば、きっと実現できる――。だから私は、「想像」する時間を、惜しまずつくってほしいと願います。

学生一人一人と握手を交わすムハマド・ユヌス氏
学生一人一人と握手を交わすムハマド・ユヌス氏
村人たちを“教師”として

 私が教壇に立っていた若い頃、こんな疑問を持ったことがあります。
 
 「大学は“知の宝庫”なのに、なぜ外には貧困があふれているのだろう」「私たちが持つ知識が、社会を変える力になっていないなら、それは本物の知識と言えるのか」
 
 そう思った私は、キャンパスの外へ出て、村人たちと向き合い始めました。やがて私は気付きました。そこが、私にとって“最高の大学”だったのだと。
 
 村での出会いから、やがて私は、銀行制度の根本に問題意識を抱くようになりました。
 
 「なぜ貧しい人ほど、銀行から遠ざけられてしまうのか」
 
 そして私は、世界で初めて“貧しい人のための銀行”――グラミン銀行(※)を創設しました。何度も失敗し、周囲から笑われながらも、諦めることなく進み続けました。それが、グラミン銀行の始まりとなったのです。

ムハマド・ユヌス氏が記念講演を行った創価大学名誉博士号授与式には、同大学で学ぶバングラデシュの留学生らも参加した(創大本部棟の国際会議場で)
ムハマド・ユヌス氏が記念講演を行った創価大学名誉博士号授与式には、同大学で学ぶバングラデシュの留学生らも参加した(創大本部棟の国際会議場で)
3つのゼロを私たちの手で

 そして今、私は深い危機感を抱くようになりました。世界は今、自らを破壊する道を歩んでいるのではないかと。
 
 ゴミや廃棄物による環境破壊、経済格差、そしてAI(人工知能)の発展による雇用の喪失――。私たちが「進歩」だと信じてきたものが、実は人間をむしばんでいるのではないか。このままでは、地球も、人も、未来を失ってしまうかもしれません。
 
 そこで私は、学生たちと「Three Zeros(スリーゼロ)」という新たな運動を始めました。「貧困ゼロ」「失業ゼロ」「二酸化炭素排出ゼロ」。この三つを目指す社会を、私たちの手で築いていこうという試みです。
 
 ビジネスは利益のためではなく、問題解決のための力です。本来、人間は皆、“起業家”として生まれてきていると思います。今ある仕事に就くだけでなく、自ら仕事を“創る”力を誰もが持っているのです。
 
 「想像」することができれば、世界は変わります。それは夢ではなく、確かな可能性です。
 
 私は創価大学のキャンパスに“戻って”きて、その希望を強く実感しました。
 
 ここには、未来を切り開く力と、行動する勇気が満ちている。皆さん一人一人の中に、世界を変える力が眠っている。そう私は、確信しています。

 【メモ】
 ※グラミン銀行 1983年にバングラデシュ政府の認可のもと正式に発足した銀行で、貧困に苦しむ人々に無担保で少額融資を行う。特に女性たちの起業や就労の機会をつくり、自立を支援する。

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