〈Seikyo Gift〉 冬に増える「心筋梗塞」「脳卒中」を防ぐ〈健康PLUS〉
〈Seikyo Gift〉 冬に増える「心筋梗塞」「脳卒中」を防ぐ〈健康PLUS〉
2025年12月27日
国立循環器病研究センター
予防医学・疫学情報部部長
西村邦宏さん
国立循環器病研究センター
予防医学・疫学情報部部長
西村邦宏さん
〈ポイント〉
①血圧の上昇が主因に
②飲酒後は特に警戒を
③夜間・明け方も注意
〈ポイント〉
①血圧の上昇が主因に
②飲酒後は特に警戒を
③夜間・明け方も注意
間もなく冬本番。「心筋梗塞」や「脳卒中」の危険性が高まる時季でもあります。独立行政法人「国立循環器病研究センター」予防医学・疫学情報部部長の西村邦宏さんに冬季の心疾患・脳血管疾患の対策について聞きました。(11月15日付)
間もなく冬本番。「心筋梗塞」や「脳卒中」の危険性が高まる時季でもあります。独立行政法人「国立循環器病研究センター」予防医学・疫学情報部部長の西村邦宏さんに冬季の心疾患・脳血管疾患の対策について聞きました。(11月15日付)
動脈硬化が影響
動脈硬化が影響
「心筋梗塞」は、心臓に血液を供給する冠動脈が血栓(血の塊)によって詰まることで発症します。
「脳卒中」は「脳梗塞」と「脳出血」に分けられます。「脳梗塞」は脳に血液を供給する動脈が血栓によって詰まることで、「脳出血」は脳の血管が破裂することで起こります。
血管が詰まる、破裂する――現象に違いはあるものの、動脈硬化の悪化が共通した主な原因です。
動脈硬化が進むと、血管内に脂質などが蓄積して血流の通り道が狭くなったり、血管自体の弾力性が失われたりします。結果、血栓の形成や血管の破裂につながります。
つまり、「心筋梗塞」「脳卒中」は、動脈硬化が進んでいると発症の危険性が高まります。血圧やLDLコレステロール値、血糖値が高い方、喫煙者は動脈硬化が進んでいる可能性が高くて要注意です。加えてホルモンの影響などで男性は女性の約2倍発症しやすくなります。
これらの危険な要素が一つでもあると、発症リスクは2~3倍上昇します。
そして、危険な要素が複数あると、リスクは、かけ算で高まります。
「心筋梗塞」は、心臓に血液を供給する冠動脈が血栓(血の塊)によって詰まることで発症します。
「脳卒中」は「脳梗塞」と「脳出血」に分けられます。「脳梗塞」は脳に血液を供給する動脈が血栓によって詰まることで、「脳出血」は脳の血管が破裂することで起こります。
血管が詰まる、破裂する――現象に違いはあるものの、動脈硬化の悪化が共通した主な原因です。
動脈硬化が進むと、血管内に脂質などが蓄積して血流の通り道が狭くなったり、血管自体の弾力性が失われたりします。結果、血栓の形成や血管の破裂につながります。
つまり、「心筋梗塞」「脳卒中」は、動脈硬化が進んでいると発症の危険性が高まります。血圧やLDLコレステロール値、血糖値が高い方、喫煙者は動脈硬化が進んでいる可能性が高くて要注意です。加えてホルモンの影響などで男性は女性の約2倍発症しやすくなります。
これらの危険な要素が一つでもあると、発症リスクは2~3倍上昇します。
そして、危険な要素が複数あると、リスクは、かけ算で高まります。
PIXTA
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血管が収縮して
血管が収縮して
厚生労働省の人口動態統計や総務省消防庁の救急蘇生統計などから、心筋梗塞が寒い時季に増えるのは明らかです。2004年の人口動態統計では、心疾患・脳血管疾患による死亡者は冬季(12月~3月)に最も多いことが示されています。
冬季に増える最大の理由は「血圧の上昇」です。
人間は気温の低下で寒さを感じると、血管を収縮させて体温を維持しようとします。この血管収縮で血圧は上昇します。
血圧が上昇すると、血管に負荷がかかり、血栓ができやすくなったり、細い血管は破裂しやすくなったりします。
血圧が正常な人でも、血管収縮による血圧の上昇は起こり、これが繰り返されることで、動脈硬化の進展につながる場合があります。
寒さに体が慣れていないと、血圧は上昇しやすくなり、寒くなり始めた時季は特に危険です。また、寒さが厳しさを増す夜間や明け方にも十分な注意が必要です。
対策は「暖かくする」ことです。室内を暖め、外出時は暖かい服装を心がけてください。室温は20~25度を保つといいでしょう。
就寝前から寝室を暖かくし、暖かい寝具・服装で就寝しましょう。
起床時は血圧が上昇するタイミングです。気温が低いことに加え、自律神経が交感神経優位になるからです。
また、「体内の脱水」も発症リスクを上昇させます。
脱水状態になると、血液は粘性が増してドロドロになり、動脈硬化が進んだ血管では血流が詰まりやすくなるためです。
脱水の主な原因は飲酒です。アルコールには利尿作用があるからです。これから、忘年会や年末年始などで飲酒の機会が増える方は要注意です。
寒くなりがちな室内の対策、脱水にならないポイント、代表的な初期症状を紹介します(下記)。
厚生労働省の人口動態統計や総務省消防庁の救急蘇生統計などから、心筋梗塞が寒い時季に増えるのは明らかです。2004年の人口動態統計では、心疾患・脳血管疾患による死亡者は冬季(12月~3月)に最も多いことが示されています。
冬季に増える最大の理由は「血圧の上昇」です。
人間は気温の低下で寒さを感じると、血管を収縮させて体温を維持しようとします。この血管収縮で血圧は上昇します。
血圧が上昇すると、血管に負荷がかかり、血栓ができやすくなったり、細い血管は破裂しやすくなったりします。
血圧が正常な人でも、血管収縮による血圧の上昇は起こり、これが繰り返されることで、動脈硬化の進展につながる場合があります。
寒さに体が慣れていないと、血圧は上昇しやすくなり、寒くなり始めた時季は特に危険です。また、寒さが厳しさを増す夜間や明け方にも十分な注意が必要です。
対策は「暖かくする」ことです。室内を暖め、外出時は暖かい服装を心がけてください。室温は20~25度を保つといいでしょう。
就寝前から寝室を暖かくし、暖かい寝具・服装で就寝しましょう。
起床時は血圧が上昇するタイミングです。気温が低いことに加え、自律神経が交感神経優位になるからです。
また、「体内の脱水」も発症リスクを上昇させます。
脱水状態になると、血液は粘性が増してドロドロになり、動脈硬化が進んだ血管では血流が詰まりやすくなるためです。
脱水の主な原因は飲酒です。アルコールには利尿作用があるからです。これから、忘年会や年末年始などで飲酒の機会が増える方は要注意です。
寒くなりがちな室内の対策、脱水にならないポイント、代表的な初期症状を紹介します(下記)。
具体的な対策――①暖かくする
具体的な対策――①暖かくする
室内で寒くなりがちな場所が「トイレ」です。いきみの動作が加わると、血圧は50㎜Hg程度上昇し、一気に心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。戦国武将の上杉謙信が亡くなったのは、冬にトイレで、脳卒中を発症したからといわれています。朝起きて、すぐに寒いトイレに行く時は特に注意が必要です。
また「脱衣所」も気を付けたい場所。寒い脱衣所から熱い湯船に入ると、血圧が乱高下して心臓に負担がかかります。トイレや脱衣所には小型の電気ヒーターを設置し、暖かくすることをおすすめします。
室内で寒くなりがちな場所が「トイレ」です。いきみの動作が加わると、血圧は50㎜Hg程度上昇し、一気に心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。戦国武将の上杉謙信が亡くなったのは、冬にトイレで、脳卒中を発症したからといわれています。朝起きて、すぐに寒いトイレに行く時は特に注意が必要です。
また「脱衣所」も気を付けたい場所。寒い脱衣所から熱い湯船に入ると、血圧が乱高下して心臓に負担がかかります。トイレや脱衣所には小型の電気ヒーターを設置し、暖かくすることをおすすめします。
具体的な対策――②脱水にならない
具体的な対策――②脱水にならない
就寝時には、体内の水分量が200~500ミリリットル失われるといわれます。飲酒した日は特に危険です。
飲酒後はしっかりと水分を摂取してください。
就寝前にコップ1杯程度の水分を補給し、起床後にも水分を摂取することが大切です。
就寝時には、体内の水分量が200~500ミリリットル失われるといわれます。飲酒した日は特に危険です。
飲酒後はしっかりと水分を摂取してください。
就寝前にコップ1杯程度の水分を補給し、起床後にも水分を摂取することが大切です。
代表的な初期症状
代表的な初期症状
心筋梗塞や脳卒中は早く治療できれば、後遺症がない軽度な症状で食い止められる可能性が高くなります。
心筋梗塞の代表的な初期症状は、経験したことがないような胸痛です。息切れや吐き気を伴うこともあります。
脳梗塞ではろれつが回らない、顔のゆがみなどです。脳出血では、経験したことがない頭痛に襲われることがあります。これらの症状を感じたら、直ちに医療機関を受診してください。
日本人は我慢強い傾向がありますが、我慢は禁物です。
心筋梗塞や脳卒中は早く治療できれば、後遺症がない軽度な症状で食い止められる可能性が高くなります。
心筋梗塞の代表的な初期症状は、経験したことがないような胸痛です。息切れや吐き気を伴うこともあります。
脳梗塞ではろれつが回らない、顔のゆがみなどです。脳出血では、経験したことがない頭痛に襲われることがあります。これらの症状を感じたら、直ちに医療機関を受診してください。
日本人は我慢強い傾向がありますが、我慢は禁物です。
40代から予防を
40代から予防を
発症リスクが高いのは一般的には高齢者ですが、40、50代でも、先述の危険な要素がいくつも重なると発症リスクがあります。
心筋梗塞や脳卒中は発症すると、命に関わるとともに高い確率で後遺症をもたらします。
また、動脈硬化が進んだ血管は元に戻らず、発症を繰り返すこともあります。40代以降から動脈硬化を抑制することが重要です。
そのためには、塩分と脂肪分を取り過ぎる食生活を避けて肥満を予防すること。適度な運動も心がけるといいでしょう。
循環器病は、複数のリスクが重なって発症します。何か一つを注意すればいいわけではありません。
血圧、コレステロール値、血糖値などを正常に保ち、過度な飲酒を避けて禁煙を心がける――生活習慣の全般を見直すことが大切です。
発症リスクが高いのは一般的には高齢者ですが、40、50代でも、先述の危険な要素がいくつも重なると発症リスクがあります。
心筋梗塞や脳卒中は発症すると、命に関わるとともに高い確率で後遺症をもたらします。
また、動脈硬化が進んだ血管は元に戻らず、発症を繰り返すこともあります。40代以降から動脈硬化を抑制することが重要です。
そのためには、塩分と脂肪分を取り過ぎる食生活を避けて肥満を予防すること。適度な運動も心がけるといいでしょう。
循環器病は、複数のリスクが重なって発症します。何か一つを注意すればいいわけではありません。
血圧、コレステロール値、血糖値などを正常に保ち、過度な飲酒を避けて禁煙を心がける――生活習慣の全般を見直すことが大切です。
国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部部長
西村邦宏さん
国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部部長
西村邦宏さん
にしむら・くにひろ 医学博士。神戸大学医学部特命教授。京都大学医学部卒業。米・ハーバード大学大学院修士課程修了後、神戸大学大学院博士課程を修了。「国立循環器病研究センター」予防医学・疫学情報部EBM・リスク解析室長などを経て現職。2014年には「日本動脈硬化学会」年間最優秀論文賞を受賞。循環器病疫学の第一人者として活躍する。
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にしむら・くにひろ 医学博士。神戸大学医学部特命教授。京都大学医学部卒業。米・ハーバード大学大学院修士課程修了後、神戸大学大学院博士課程を修了。「国立循環器病研究センター」予防医学・疫学情報部EBM・リスク解析室長などを経て現職。2014年には「日本動脈硬化学会」年間最優秀論文賞を受賞。循環器病疫学の第一人者として活躍する。
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