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〈健康PLUS〉 手術で失った声をAIで再現 2026年4月4日

 健康や医療に関わる話題を紹介する「メディカルトピックス」。手術で声を失っても、収録アプリを活用して自分の声を再現できるAI技術について掲載します。また、高血圧予防には禁酒が効果的という研究結果などを紹介します。
 
 

◆手術前に収録し、アプリで「自分の声」を

 がんなどの手術で失われる声を収録し、手術の後にアプリで再現できないか――。声帯を含む喉頭の摘出手術は、命を救う手段である一方、慣れ親しんだ声を失い、手術後の生活に大きな影響を及ぼします。そうした患者の不安を和らげようと、名古屋大学の研究チームが、人工知能(AI)技術を使って「自分の声」をリアルタイムで再現する取り組みを進めています。
 
 
 

国内約3万人

 喉頭は首の前側、喉仏にある器官で、声帯による発声のほか、空気と食事を気管と食道に振り分ける役目があります。名古屋大学医学部耳鼻咽喉科の西尾直樹准教授によると、喉頭がんや咽頭がん以外にも、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など神経変性疾患でも誤嚥防止のために摘出される場合があり、摘出した患者は国内に約3万人いると推定されます。
 従来は手術後に、小型の機器を首に当てて声帯の代わりに振動を響かせる「電気式人工喉頭」や、人工弁で気管と食道をつないで肺の空気を食道に送って音を出す「シャント発声」などの代替発声法を用いています。しかし、機械的な音や感染リスクなど課題も多いほか、元の声とは大きく異なるため、外で話すことをためらう患者も少なくありません。
 「声を取るか、命を取るか。患者に厳しい選択を迫ることに悩みながら手術をしてきた」と話す西尾さん。「最新の技術で解決できないか」と2021年、名大情報基盤センターの戸田智基教授らと声の再現に向けたプロジェクトを始めました。
 
 
 

アプリを開発
 2024年に喉頭の摘出手術を受け、電気式人工喉頭で話す服部教介さん=名古屋市の名古屋大学病院
 2024年に喉頭の摘出手術を受け、電気式人工喉頭で話す服部教介さん=名古屋市の名古屋大学病院

 目指す仕組みはこうです。手術前に専用の収録アプリで患者に「今日も1日頑張りましょう」など最多で512の短い例文を読み上げてもらい、収録、保存します。手術後には、代替発声法を使って同じ例文を読んでもらって収録。これらをAIに学習させ、話し方の癖やイントネーションを含めて音声変換モデルをつくり、その人らしい声をアプリで再現します。
 アプリは名大発ベンチャー「TARVO(ターボ)」が開発に当たります。収録用は完成し、変換用もほぼリアルタイムでの再現が技術的には可能になりました。個人ごとのアプリをつくるにはさらに資金や人手がかかりますが、実用化に向けて声の収録を本格化させています。
 「声が出せなくなると言われ、『やっちまったな』と思った」。下咽頭がんのため24年1月に喉頭の摘出手術を受けた岐阜県多治見市の服部教介さんは当時を振り返ります。手術の数日前に声を収録。約1年後に電気喉頭を使って再度収録し、いずれもデータベースに保存済みです。電気喉頭で会話は可能ですが「また自分の声で電話に出たり、病気の診断前に免許を取ったアマチュア無線を楽しんだりしたい」と開発に期待します。
 
 
 

前向きになる
声を録音するマイクと専用アプリを搭載したタブレット端末の使い方を説明する西尾直樹名古屋大学准教授=同
声を録音するマイクと専用アプリを搭載したタブレット端末の使い方を説明する西尾直樹名古屋大学准教授=同

 西尾さんは「声を残せると分かるだけで、手術に前向きになる患者も多い」と語ります。名大病院では既に50人以上の声を収録、保存し、東京、新潟、静岡、愛媛の医療機関でも体制を整備中です。現在は電気喉頭の音声にだけ対応していますが、シャント発声にも拡大を予定しています。
 一方、対面では代替発声法の声と変換後の声が二重に聞こえて会話の支障となるのが課題で、当面は電話やオンライン通話での利用を想定します。将来は機器の改良を進め、スマートフォンやタブレットで日常会話に使える環境を整えた上で、自治体が購入費を補助する「日常生活用具」の適用を目指す考えです。
 西尾さんは「まずは取り組みを知ってもらい、一人でも多くの声を救える社会にしていきたい」と話しました。
 
 
 

◆「節酒でなく禁酒」が高血圧予防に

 1日1、2杯の少量の飲酒をしている人でも、禁酒をすれば血圧が下がるという研究結果を、東京科学大学や聖路加国際病院などのチームが米医学誌に発表しました。
 アルコールは高血圧の原因とされますが、少量の場合の影響は明らかではありませんでした。チームは「禁酒が高血圧の予防に有効だと証明できた」と話しています。
 これまでの研究では、大量飲酒者が禁酒すると血圧が下がることは指摘されていました。
 しかし、純アルコール量10~20グラムに当たる1日1、2杯(ビールで250~500ミリリットル)の少量飲酒をやめた場合の影響は不明で、特に女性を対象にした研究は乏しい現状がありました。
 チームは2012~24年に聖路加国際病院で毎年健康診断を受けている約5万9千人分、約36万回分のデータを解析。飲酒の頻度や1日当たりの飲酒量を酒の種類ごとに尋ね、飲酒量の変化と血圧との関連を調べました。
 解析の結果、日常的に飲酒する人が禁酒すると、飲む量が多い人ほど血圧降下の程度が大きいことが分かりました。
 1日1、2杯だった人が禁酒すると、女性は血圧の上(収縮期血圧)が0・78㎜Hg、下(拡張期血圧)が1・14㎜Hg、それぞれ降下していました。男性でも上が1・03㎜Hg、下が1・62㎜Hg下がっていました。
 一方で、飲酒を新たに始めた場合は、男女ともに飲酒量に比例して血圧が上昇。ビール、ワイン、日本酒など酒の種類による差はなかったといいます。
 研究に当たった東京科学大学の藤原武男教授(公衆衛生学)は「普段何となく1日1、2杯の飲酒をしている人は非常に多い。1杯でもリスクとなり、やめれば血圧が下がる恩恵があることを示す結果だ」と話しています。
 
 

◆膵臓がん細胞は3個に分裂
PIXTA
PIXTA

 細胞は通常1個が2個に分裂して増えますが、膵臓がんの細胞には3個に分裂するものがあると、東京都健康長寿医療センターなどのチームが発表しました。
 膵臓がんの進行が速く転移しやすい要因である可能性があるとしています。
 膵臓がん細胞を一つずつ培養し、15分おきに60時間撮影すると、比較的悪性度の低い細胞はあまり増えませんが、悪性度の高い細胞では時間内に2回分裂したり、一度に3個に増えたり、多様でした。
 同センターの石渡俊行研究部長は「細胞ごとの増殖の仕方や、それによる薬の効き方の違いを理解する基礎になる。治療法の改善にもつながりそうだ」と話しました。
 
 
 

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