諸外国と長く交流してきた沖縄には、各地に外国人の墓地がある。那覇市泊の専用墓地では、中国人や米国ペリー艦隊の乗員、ベトナム戦争の戦死者も眠っている▼この地に外国人墓地が造られたのは琉球王国時代。近隣に外国漂着民を受け入れる施設があったからだという。当時は悪天候等で船の漂流が頻発していた。生存者は王府の手で祖国に帰されたが、助からなかった者は琉球で手厚く葬られた。“命に国境なし”――沖縄に脈打つ生命尊厳の精神を物語る歴史だ▼先月、沖縄を訪れた作家の佐藤優氏と、未来部・青年世代の代表が懇談会を行った。その際、一人の女子中等部員が質問した。「なんで戦争はなくならないのでしょうか……」▼声を詰まらせる彼女に、とても難しい問題と述べた上で、氏は続けた。「われわれにも確実にできることがある。それは、自分自身が戦争を起こさない人間になることです」。そして、世界の惨状に涙する「あなたのその心のありようを大切にしてほしい」と▼戦争は人間の心から始まる。ならば、平和も人間の心から広げられるはずだ。自らが縁した一人また一人に、信念の対話を重ねる。それこそが生命尊厳の世界を築く、最も地道にして確実な歩みとなる。(壹)
諸外国と長く交流してきた沖縄には、各地に外国人の墓地がある。那覇市泊の専用墓地では、中国人や米国ペリー艦隊の乗員、ベトナム戦争の戦死者も眠っている▼この地に外国人墓地が造られたのは琉球王国時代。近隣に外国漂着民を受け入れる施設があったからだという。当時は悪天候等で船の漂流が頻発していた。生存者は王府の手で祖国に帰されたが、助からなかった者は琉球で手厚く葬られた。“命に国境なし”――沖縄に脈打つ生命尊厳の精神を物語る歴史だ▼先月、沖縄を訪れた作家の佐藤優氏と、未来部・青年世代の代表が懇談会を行った。その際、一人の女子中等部員が質問した。「なんで戦争はなくならないのでしょうか……」▼声を詰まらせる彼女に、とても難しい問題と述べた上で、氏は続けた。「われわれにも確実にできることがある。それは、自分自身が戦争を起こさない人間になることです」。そして、世界の惨状に涙する「あなたのその心のありようを大切にしてほしい」と▼戦争は人間の心から始まる。ならば、平和も人間の心から広げられるはずだ。自らが縁した一人また一人に、信念の対話を重ねる。それこそが生命尊厳の世界を築く、最も地道にして確実な歩みとなる。(壹)