〈勇TURN 信仰体験〉No.5 島と世界を結ぶ懸け橋に
〈勇TURN 信仰体験〉No.5 島と世界を結ぶ懸け橋に
2025年8月20日
- 託された思い あふれ出す郷土愛
- 託された思い あふれ出す郷土愛
「奄美の魅力を語らずにはいられないっちょね」と上野さん。手作りのガイドブックで“映えスポット”やおいしいものを紹介する
「奄美の魅力を語らずにはいられないっちょね」と上野さん。手作りのガイドブックで“映えスポット”やおいしいものを紹介する
西の空に傾いた太陽が、海面に金色の道を描き出す。果てしない水平線を眺めながら、上野彩佳さん(27)=県池田華陽会キャップ=は自身に問いかける。何のために、ここで生きるのか――。迷った時はいつも、大浜のビーチに立つ。寄せては返す波音に包まれていると、決意は揺るぎないものになる。“島のみんなの幸せのため!”。やっぱり奄美は、大切なふるさと。
西の空に傾いた太陽が、海面に金色の道を描き出す。果てしない水平線を眺めながら、上野彩佳さん(27)=県池田華陽会キャップ=は自身に問いかける。何のために、ここで生きるのか――。迷った時はいつも、大浜のビーチに立つ。寄せては返す波音に包まれていると、決意は揺るぎないものになる。“島のみんなの幸せのため!”。やっぱり奄美は、大切なふるさと。
「大浜のビーチから見る夕日が大好き」と上野さん
「大浜のビーチから見る夕日が大好き」と上野さん
鹿児島県奄美市
鹿児島県奄美市
普段は車が行き交う道路が、今月10日は「八月踊り」の舞台になった。つるされたちょうちんの下、三線と太鼓の音に合わせて踊った。
その中で、〈いもりんしょーれ(いらっしゃい)〉と書かれた黄緑色の法被姿の上野さんは、一段と目立っていた。よく通る声で周囲の人に話しかけ、踊りの輪を広げていく。外国人観光客にも英語で「レッツ・ダンス!」と呼びかける。
あっという間に打ち解け、近くの年配女性に「おばあ。この人、アメリカから来たっちば」と紹介すれば、女性は「はげー(あらー)、いもりんしょーれ」とぺこり。上野さんが英語で訳すと、観光客もうれしそうにぺこり。国籍も年齢も超え、みんなが一つの輪になっていく。
その中心で、上野さんの笑顔が輝く。「奄美の良さは、人の良さ。最高の場所です」。そう思えるようになったのは、実は最近のこと。
普段は車が行き交う道路が、今月10日は「八月踊り」の舞台になった。つるされたちょうちんの下、三線と太鼓の音に合わせて踊った。
その中で、〈いもりんしょーれ(いらっしゃい)〉と書かれた黄緑色の法被姿の上野さんは、一段と目立っていた。よく通る声で周囲の人に話しかけ、踊りの輪を広げていく。外国人観光客にも英語で「レッツ・ダンス!」と呼びかける。
あっという間に打ち解け、近くの年配女性に「おばあ。この人、アメリカから来たっちば」と紹介すれば、女性は「はげー(あらー)、いもりんしょーれ」とぺこり。上野さんが英語で訳すと、観光客もうれしそうにぺこり。国籍も年齢も超え、みんなが一つの輪になっていく。
その中心で、上野さんの笑顔が輝く。「奄美の良さは、人の良さ。最高の場所です」。そう思えるようになったのは、実は最近のこと。
観光客と一緒に踊る上野さん。アメリカ人女性の住まいは、上野さんの留学先と同じ地域だった。「全てに意味があると、今なら思えます」と笑顔がはじける
観光客と一緒に踊る上野さん。アメリカ人女性の住まいは、上野さんの留学先と同じ地域だった。「全てに意味があると、今なら思えます」と笑顔がはじける
中学卒業後、島を出て関西創価高校へ進学。持ち前の明るさと方言を駆使し、クラスの盛り上げ役に。でも心の内では、勉強も人付き合いも自信が持てず、周りと比べては自己嫌悪に。笑顔の裏は、劣等感でいっぱいだった。
英語には自信があった。高校卒業後はアメリカの短期大学に進学。世界で活躍することを夢見た。しかし、現実は厳しかった。英語が聞き取れず、課題が出されたことすら気付かない。孤独と焦りで、毎日のように電話で母に泣きついた。
中学卒業後、島を出て関西創価高校へ進学。持ち前の明るさと方言を駆使し、クラスの盛り上げ役に。でも心の内では、勉強も人付き合いも自信が持てず、周りと比べては自己嫌悪に。笑顔の裏は、劣等感でいっぱいだった。
英語には自信があった。高校卒業後はアメリカの短期大学に進学。世界で活躍することを夢見た。しかし、現実は厳しかった。英語が聞き取れず、課題が出されたことすら気付かない。孤独と焦りで、毎日のように電話で母に泣きついた。
関西創価高校の卒業式で母・郁代さんと
関西創価高校の卒業式で母・郁代さんと
現地のSGIメンバーがいつもそばにいてくれた。「あなたが一番、池田先生の心に近いから、大丈夫」。そう言って励ましてくれたが、「ここより距離が近かっただけだよ」。彼女たちの方が、ずっと師の心に近いと思った。
結局、大学を辞めて1年で帰国。夢を諦め切れず、今度は沖縄の米軍基地で通訳に。そこでも英語力で悩み、人間関係で落ち込む日々だった。
人に嫌われたくない。誰かの役に立ちたい。そう思えば思うほど、自分の心が削られていき、ついにはポキッと折れた。不安障害と診断され、2023年(令和5年)、上野さんは奄美大島へ帰郷した。
現地のSGIメンバーがいつもそばにいてくれた。「あなたが一番、池田先生の心に近いから、大丈夫」。そう言って励ましてくれたが、「ここより距離が近かっただけだよ」。彼女たちの方が、ずっと師の心に近いと思った。
結局、大学を辞めて1年で帰国。夢を諦め切れず、今度は沖縄の米軍基地で通訳に。そこでも英語力で悩み、人間関係で落ち込む日々だった。
人に嫌われたくない。誰かの役に立ちたい。そう思えば思うほど、自分の心が削られていき、ついにはポキッと折れた。不安障害と診断され、2023年(令和5年)、上野さんは奄美大島へ帰郷した。
大好きな家族と(前列右から時計回りに上野さん、姉・伸代さん、母・郁代さん、父・伸二さん、妹・真心さん)
大好きな家族と(前列右から時計回りに上野さん、姉・伸代さん、母・郁代さん、父・伸二さん、妹・真心さん)
“帰ったら負けだと思っていたのに”。実家で膝を抱えていると、女性部の先輩が訪ねてきた。「悩んだ時は、読み返してみて」と、小説『人間革命』『新・人間革命』を勧められた。ページをめくるたび、感動で涙があふれた。上野さんは池田先生との原点を思い出す。
15年(平成27年)3月16日、在校生として参加した学園の卒業式。会場に池田先生の声が響いた。音声をつないでの突然の参加に、“何があっても負けない”と誓った。
あの日の感動と決意がよみがえる。「会合で奄美の歴史を発表してほしい」と頼まれたのは、そんな時だった。華陽会メンバーと研さんに励んだ。学会への無理解に挑み続けた、草創の先輩たちの戦いに胸が熱くなった。
“帰ったら負けだと思っていたのに”。実家で膝を抱えていると、女性部の先輩が訪ねてきた。「悩んだ時は、読み返してみて」と、小説『人間革命』『新・人間革命』を勧められた。ページをめくるたび、感動で涙があふれた。上野さんは池田先生との原点を思い出す。
15年(平成27年)3月16日、在校生として参加した学園の卒業式。会場に池田先生の声が響いた。音声をつないでの突然の参加に、“何があっても負けない”と誓った。
あの日の感動と決意がよみがえる。「会合で奄美の歴史を発表してほしい」と頼まれたのは、そんな時だった。華陽会メンバーと研さんに励んだ。学会への無理解に挑み続けた、草創の先輩たちの戦いに胸が熱くなった。
迎えた会合当日。信心の大先輩たちを前に緊張しながら、研さんの成果と池田先生の言葉を朗読した。
〈奄美は確かに遠い。しかし、奄美の同志の心は、私に最も近い。私とともにあるといってよい〉
会場の温度が上がったのが分かった。この言葉を抱き締めて、「いぬちんかぎり、きばらんば(命の限り、頑張らなければ)」と、自らを燃え立たせてきた人たちの情熱だった。
終了後、一人の壮年が近づいてきて言った。「奄美には、あんたが必要だ」。その力強い目に、大切なものを託されたんだと思った。
“私の使命って何だろう”。祈り、考える中で知ったのが、外国人旅行者に、英語で観光案内や歴史・文化の解説をする「地域通訳案内士」だった。
迎えた会合当日。信心の大先輩たちを前に緊張しながら、研さんの成果と池田先生の言葉を朗読した。
〈奄美は確かに遠い。しかし、奄美の同志の心は、私に最も近い。私とともにあるといってよい〉
会場の温度が上がったのが分かった。この言葉を抱き締めて、「いぬちんかぎり、きばらんば(命の限り、頑張らなければ)」と、自らを燃え立たせてきた人たちの情熱だった。
終了後、一人の壮年が近づいてきて言った。「奄美には、あんたが必要だ」。その力強い目に、大切なものを託されたんだと思った。
“私の使命って何だろう”。祈り、考える中で知ったのが、外国人旅行者に、英語で観光案内や歴史・文化の解説をする「地域通訳案内士」だった。
早速、資格を取得したが、課題に気付く。それは、案内士と旅行者をつなぐ環境が整備されていないこと。せっかく資格を持っていても活躍の場がない。それなのに、島には「観光難民」がいて、街の片隅でコンビニ弁当を食べる姿も見られた。
「私が、その橋渡しになろうと思って」。案内士と観光客を結ぶマッチングサイト〈うがでぃ〉の立ち上げを決意。これが想像以上に大変だった。
早速、資格を取得したが、課題に気付く。それは、案内士と旅行者をつなぐ環境が整備されていないこと。せっかく資格を持っていても活躍の場がない。それなのに、島には「観光難民」がいて、街の片隅でコンビニ弁当を食べる姿も見られた。
「私が、その橋渡しになろうと思って」。案内士と観光客を結ぶマッチングサイト〈うがでぃ〉の立ち上げを決意。これが想像以上に大変だった。
手作りのガイドブックを使って英語で奄美を紹介する
手作りのガイドブックを使って英語で奄美を紹介する
ホームページを作ったことはないし、行政との連携も必要。右も左も分からない中でのスタートだった。目の前の高い壁に“もう、やめてやる”と思う。今までだったら、とっくに諦めていたかも。でも、今回は違う。「奄美には、あんたが必要だ」と言ってくれた人がいる。師から託された広布への情熱がある。
「その国の仏法は貴辺にまかせたてまつり候ぞ」(新1953・全1467)。題目を唱え、智慧と勇気を奮い立たせる。くじけそうになるたび、卒業式での池田先生の声が聞こえる。上野さんに踏ん張る力をくれる。
“私は絶対に負けません!”
一つ一つ難題をクリアし、現在、〈うがでぃ〉の運用に向け、準備を進めている。
ホームページを作ったことはないし、行政との連携も必要。右も左も分からない中でのスタートだった。目の前の高い壁に“もう、やめてやる”と思う。今までだったら、とっくに諦めていたかも。でも、今回は違う。「奄美には、あんたが必要だ」と言ってくれた人がいる。師から託された広布への情熱がある。
「その国の仏法は貴辺にまかせたてまつり候ぞ」(新1953・全1467)。題目を唱え、智慧と勇気を奮い立たせる。くじけそうになるたび、卒業式での池田先生の声が聞こえる。上野さんに踏ん張る力をくれる。
“私は絶対に負けません!”
一つ一つ難題をクリアし、現在、〈うがでぃ〉の運用に向け、準備を進めている。
池田華陽会の友と
池田華陽会の友と
「みんなの幸せにつながるって信じてる」
「みんなの幸せにつながるって信じてる」
観光客の増加を、良しとしない人もいる。だが、美しい自然と伝統ある文化を伝え、世界中の人に奄美を好きになってもらう。それが、「この島のみんなの幸せにつながるって、私は信じてる」。
外国人旅行者を案内する時、上野さんは手作りのガイドブックを使う。そこには奄美への愛が、いっぱいに詰まっている。そのガイドブックを手に、上野さんは島中を駆け回る。
〈奄美を広宣流布の理想郷に〉との師の指針は、華陽の友に確かに受け継がれている。
観光客の増加を、良しとしない人もいる。だが、美しい自然と伝統ある文化を伝え、世界中の人に奄美を好きになってもらう。それが、「この島のみんなの幸せにつながるって、私は信じてる」。
外国人旅行者を案内する時、上野さんは手作りのガイドブックを使う。そこには奄美への愛が、いっぱいに詰まっている。そのガイドブックを手に、上野さんは島中を駆け回る。
〈奄美を広宣流布の理想郷に〉との師の指針は、華陽の友に確かに受け継がれている。