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〈インタビュー〉 塚本連平監督 映画「35年目のラブレター」 2025年3月6日

  • 3月7日(金)全国公開

 「君は、僕と結婚して幸せでしたか?」
 
 過酷な幼少時代を過ごし、文字の読み書きができない西畑保(笑福亭鶴瓶)は、定年退職を機に夜間中学校に通い始める。長年連れ添ってくれた妻の皎子(原田知世)に宛てたラブレターを書き上げるためだ――。感動の実話を映画化した「35年目のラブレター」が、あす7日(金)に全国公開される。本作の監督・脚本を務める塚本連平さんに作品への思いを聞いた。

塚本連平監督
塚本連平監督

 ――涙なしには見られない感動の物語でした。
 
 妻から実際のエピソードを聞いて、早速インターネットで調べてみると、保さんが書いたラブレターの一ページ目が載っていたんです。映画でもそのまま使っていますが、「クリスマス」が「クルスマス」になっていたりして。だけど文字自体に気持ちがこもっていて、文章は素朴で童話のような温かさでした。

 愛を伝えるために文字を覚えようとトライするなんて、それだけで胸に迫るものがあります。保さんの人生から感じる全てのメッセージを丸ごと盛り込んで、皆さんに伝えたいと思いました。

2人の娘も巣立ち、夫婦の思い出の味であるたこ焼きを頰張る保㊧と皎子 ⓒ2025「35年目のラブレター」製作委員会
2人の娘も巣立ち、夫婦の思い出の味であるたこ焼きを頰張る保㊧と皎子 ⓒ2025「35年目のラブレター」製作委員会

 ――キャストの魅力を引き出すための秘訣はありますか。
 
 一番心がけているのは「邪魔をしない」こと。先回りして何かを押しつけちゃうと自分が思った通りにはなっても、自分が思うこと以上にはなりません。とにかく芝居しやすい環境を用意して、余計なことはしないことです。私があまりに何も言わないので、鶴瓶さんは、(私が)早く帰りたいだけじゃないかって心配されていたかもしれません(笑)。
 
 ――本作を通して、感謝を伝えたいのはどなたでしょうか。
 
 やっぱり家族ですね。父母、妻、子どもたち……。あとは仲間にもたくさんの感謝を伝えたい。実は、安田顕さんが演じる夜間中学校の“谷山先生”という役名は、私が通った中学校の恩師の名前です。他にも、家族の名前を役名に使いました。自分のできるやり方で“感謝を形にして”恩返しを続けたいですね。

二人三脚の人生をスタートした、若き日の保(重岡大毅)㊧と皎子(上白石萌音)
二人三脚の人生をスタートした、若き日の保(重岡大毅)㊧と皎子(上白石萌音)
◆大切な人に「ありがとう」を伝えるきっかけになれば

 ――映画製作において大切にしていることは?
 
 小学生の頃に映画館で洋画を見てから、映画が大好きになりました。中学生の頃には進路相談で「映画監督になるんだ」って言ったら、先生から「やめとけ」と。それでも他の道は考えられないほど映画が大好きでした。そんな時、愛情を込めて関わってくれたのが谷山先生でした。
 
 作品を通じて自分が勇気づけられたり、心を動かされたりしたように、多くの人に「生きる力になる作品」を届けたいと思っています。
 
 ――最後に、公開を楽しみに待つ方へメッセージをお願いします。
 
 保さんの人生をお借りして、夫婦や家族の絆、生涯学び続けること、“何歳からでも挑戦できるよ”という人間の可能性など、何かが伝わったらいいなと思います。そして、見た人が温かい気持ちになって、大切な人に「ありがとう」と伝えるきっかけになればうれしいです。僕も家に帰ったら、真っ先に家族へ「ありがとう」と伝えます。

作品への思いを笑顔で語る塚本監督
作品への思いを笑顔で語る塚本監督
◆編集後記

 柔和な笑顔が印象的で、落ち着いた声色ながら、不思議と本作へのひたむきで熱い思いが伝わってくる。
 
 そんな監督は、SNSに載る自身の作品への感想をよく見るそうだ。寄せられた温かい声が力になるのだという。感動を生む作品を編む力の源は、自らの“心が動かされる瞬間”を大切にしていることなのかもしれない。
 
 「35年目のラブレター」から受け取ったメッセージを、監督へ届けてみてはいかがだろうか。

 【記事】鈴木将大 【インタビュー写真】石川大樹

◆プロフィル

 つかもと・れんぺい 1963年2月24日生まれ、岐阜県出身。ドラマ「ドラゴン桜」(2005年)、「特命係長 只野仁」シリーズなどの人気作を数多く手がける。「ゴーストシャウト」(04年)で映画監督デビュー。その他の主な作品に「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(08年)、「今日も嫌がらせ弁当」(19年)など。

◆あらすじ

 65歳の保(鶴瓶)は、貧しい家に生まれたことで学校に通えず、文字の読み書きができずにいた。そんな彼を長年支えてきたのは、しっかり者の妻・皎子(原田)だった。

 「妻に感謝のラブレターを書きたい」。保は、定年退職を機に夜間中学校に通い始める。だが、物覚えが悪くなってきたこともあり、気が付くと5年以上の月日が経過し、結婚からも35年目を迎えていた。
 
 なかなか書き上げられずにいたラブレターがようやく形になろうとしていた頃、皎子が病に襲われてしまう……。
 
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