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〈Seikyo Gift〉 シカの王さま〈子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険〉 2025年7月26日

 創作童話「子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険」では、主人公のミライが、仏教説話の世界を巡る冒険に出かけます。座談会の未来部コーナーなどでご活用ください!(イラスト 逸見チエコ)

優しい心が命を守る

 気がつくとミライは、シカになっていました。
 遠くで多くの人が、シカをつかまえているのが見えました。
 「やれ! そこだ!」
 次々と、シカが矢にうたれていきます。
 「なんてひどい……」

 他のシカといっしょにミライが逃げた先に、シカの王さまがいました。
 「人の王たちは、狩りを楽しみ、仲間たちの命を、うばっている」
 「人の王さまに会いに行こう! ミライもいっしょに行くよ」

 シカの王さまとミライは、人の王さまのもとへ。
 ミライが「これ以上、シカの命をうばうのはやめてください!」と言うと、シカの王さまも言いました。
 「あなたたち人間が生きるのに食べ物が必要なのであれば、1日に1頭のシカが、ここを訪れ、命を差し出しましょう」
 その日から、人の王さまは反省して、狩りをやめたのです。

 ある日のこと、人のもとへ行く順番が来たシカが言いました。
 「きょう、私が人のもとへ行く番です。しかし、おなかに子どもがいるのです。子どもが生まれるまで待ってもらえませんか」

 シカの王は代わりになってくれるシカがいないかと周りを見まわしますが、どのシカも、首を縦に振りません。皆、少しでも長く生きたいのです。
 「しょうがない。私が行こう」
 ミライは「そんな、シカの王さまが行かなければいけないなんて……」と悲しみながら、シカの王さまについていきました。

 やってきたシカの王を見て、人の王は驚いて言いました。
 「シカの王よ。なぜあなたがやってきた」
 「子どもが生まれる仲間のシカの代わりとなったのです」
 仲間のために、自分の命を差し出す優しい心を持つシカの王の姿に、人の王は衝撃を受けました。
 「私が間違っていた。もう、1頭のシカの命も、うばいはしない」

 それから、シカたちは安心して暮らせるようになったのです。

今回のお話の解説

 釈尊が、初めて教えを説いたとされる「鹿野苑」という場所についての説話が、今回のお話の基になっています。
 日蓮大聖人は、御書の中でこの説話に触れ、子を思う母の心がいかに深いかについて、つづっています(新1252・全929)。
 説話では、2つのシカのグループが、交互に人間へシカを差し出すことに。子を身ごもった母シカは、順番の交代を求めましたが、自らの王に断られてしまい、もう一方のグループのシカの王を頼ります。優しきシカの王は、子を思う母シカの心に打たれて、自ら身代わりに。その理由に驚き、感動した人間の国王は、園林をシカのために提供し、保護したそうです。これが「鹿野苑」の始まりであるとされています。
 平和な世界をつくっていくのは、誰かを大切に思う、優しい心なのです。

 こちらから、過去の連載の全話を読むことができます(8月31日まで無料)。

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