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〈てい談〉 核兵器のない世界へ 現状と課題――市民社会の声が軍縮進める大きな力
〈てい談〉 核兵器のない世界へ 現状と課題――市民社会の声が軍縮進める大きな力
2026年6月13日
- 「非核三原則」見直しは国際世論を核配備に向かわせる恐れがある
- 「非核三原則」見直しは国際世論を核配備に向かわせる恐れがある
核兵器を巡る緊張が国際的に高まり続ける中、日本国内でも非核三原則を見直す動きが出てくるなど、核なき世界への歩みは困難な状況に直面している。今後の展望や課題について、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員・会長の川崎哲氏と、「核兵器をなくす日本キャンペーン」コーディネーターの浅野英男氏、創価学会女性平和委員会ユース会議副議長の木下和美氏が語り合った。
核兵器を巡る緊張が国際的に高まり続ける中、日本国内でも非核三原則を見直す動きが出てくるなど、核なき世界への歩みは困難な状況に直面している。今後の展望や課題について、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員・会長の川崎哲氏と、「核兵器をなくす日本キャンペーン」コーディネーターの浅野英男氏、創価学会女性平和委員会ユース会議副議長の木下和美氏が語り合った。
ICAN国際運営委員・会長 川崎哲氏
ICAN国際運営委員・会長 川崎哲氏
核兵器をなくす日本キャンペーン 浅野英男氏
核兵器をなくす日本キャンペーン 浅野英男氏
女性平和委員会ユース会議 木下和美氏
女性平和委員会ユース会議 木下和美氏
木下 NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議が先月、会議の「成果文書」を採択することができずに終わりました。さまざまな報道がありますが、今回の会議をどのように評価していますか。
川崎 2000年に行われた再検討会議では、核兵器保有国も含めて核廃絶の方向で一致し、具体的な措置も決めていました。しかし今回は、その内容を再確認することすらできませんでした。
浅野 一方で、確かな希望も感じました。今回、被爆者をはじめ200人以上の市民が参加し、核兵器は絶対に使ってはいけないこと、対立ではなく連帯が大切であることを主張しました。こうした市民社会の声を世界に発信できたことは、大きな意義があると思います。
川崎 本年秋には、2021年に発効した核兵器禁止条約の第1回再検討会議が開催されることになっています。この条約は核兵器を全面的に禁じる条約です。世界の過半数の国が署名・批准または加入しており、国際社会の大多数が核兵器に“NO”であることを示す大きな機会になります。
ですが、日本はまだこの条約に署名も批准もしていません。一日も早い批准を望みますが、まずは会議へのオブザーバー参加を強く訴えたいと思います。
木下 NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議が先月、会議の「成果文書」を採択することができずに終わりました。さまざまな報道がありますが、今回の会議をどのように評価していますか。
川崎 2000年に行われた再検討会議では、核兵器保有国も含めて核廃絶の方向で一致し、具体的な措置も決めていました。しかし今回は、その内容を再確認することすらできませんでした。
浅野 一方で、確かな希望も感じました。今回、被爆者をはじめ200人以上の市民が参加し、核兵器は絶対に使ってはいけないこと、対立ではなく連帯が大切であることを主張しました。こうした市民社会の声を世界に発信できたことは、大きな意義があると思います。
川崎 本年秋には、2021年に発効した核兵器禁止条約の第1回再検討会議が開催されることになっています。この条約は核兵器を全面的に禁じる条約です。世界の過半数の国が署名・批准または加入しており、国際社会の大多数が核兵器に“NO”であることを示す大きな機会になります。
ですが、日本はまだこの条約に署名も批准もしていません。一日も早い批准を望みますが、まずは会議へのオブザーバー参加を強く訴えたいと思います。
核兵器禁止条約の締約国会議の関連行事で、創価学会の男女学生部の代表が「平和意識調査」の結果を発表(昨年3月、米ニューヨークの国連本部で)
核兵器禁止条約の締約国会議の関連行事で、創価学会の男女学生部の代表が「平和意識調査」の結果を発表(昨年3月、米ニューヨークの国連本部で)
木下 日本は、唯一の戦争被爆国として核なき世界を訴えている一方で、最近、「非核三原則」について見直しを検討する動きがあります。お二人は先日、非核三原則に関するブックレットを発刊されましたが、改めてその意義とともに、なぜこのような流れが起きているのか教えていただけますでしょうか。
浅野 非核三原則は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする日本政府の根本方針、いわゆる「国是」とされています。
1967年に表明されましたが、実は安全保障をアメリカに依存する政府はそれまで、あまり乗り気ではありませんでした。しかし、2発の原爆投下、アメリカがビキニ環礁で行った核実験によって日本の漁船「第五福竜丸」などが被ばくしたことを受け、反核への世論が高まっていたことが、国是としての定着に大きく貢献しました。
市民社会の声が政府を非核の方向へと動かしたのです。
川崎 非核三原則の見直しというと、三つのシナリオが考えられます。一つ目は、日本が核を「持つ」ということ。二つ目は、日本がアメリカの核を国内に配備・貯蔵するということ。そして三つ目は、核搭載船の寄港を容認することです。
浅野 ただ、日本が核を持つことについては、とても現実的ではありません。
核保有は、国内法の「原子力基本法」と、国際法であるNPTによって禁止されています。さらに、日本が核を保有するとなると、かえって周辺国との緊張感が高まります。また、そもそも日本には核実験を行う土地もなく、国民が物価高で苦しむ昨今の状況において核開発は莫大なコストがかかるということも、核保有が現実的でない理由です。
問題は三つ目のシナリオです。核搭載船の寄港は、「持ち込ませず」の原則に抵触する可能性はありますが、法的な拘束力はありません。ここに見直しの議論が生まれつつあるのです。
川崎 核の再配備の動きは、日本だけでなくヨーロッパなどでも起きています。そうした状況の中で日本がどのような立場を示すのか、国際的にも非常に注目されています。
日本は核を認めないという姿勢を貫けば、周辺国や世界に安心感を与えることになります。反対に、非核三原則を見直すような動きになれば、連鎖的に国際世論も核配備の方向に進む恐れがあります。
そうした意味で、日本の非核三原則の意義は国際的にみても非常に大きいのです。
浅野 大学の講演会などに参加すると、不安定な国際情勢だからこそ核で安全を守る必要があるのではないかと、三原則の見直しに肯定的な声も少なからず寄せられます。
しかし先ほど申し上げたように、三原則を見直すことが私たちの生活や世界にどのような影響を与えうるのか、想像力を働かせることが大切です。
木下 日本は、唯一の戦争被爆国として核なき世界を訴えている一方で、最近、「非核三原則」について見直しを検討する動きがあります。お二人は先日、非核三原則に関するブックレットを発刊されましたが、改めてその意義とともに、なぜこのような流れが起きているのか教えていただけますでしょうか。
浅野 非核三原則は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする日本政府の根本方針、いわゆる「国是」とされています。
1967年に表明されましたが、実は安全保障をアメリカに依存する政府はそれまで、あまり乗り気ではありませんでした。しかし、2発の原爆投下、アメリカがビキニ環礁で行った核実験によって日本の漁船「第五福竜丸」などが被ばくしたことを受け、反核への世論が高まっていたことが、国是としての定着に大きく貢献しました。
市民社会の声が政府を非核の方向へと動かしたのです。
川崎 非核三原則の見直しというと、三つのシナリオが考えられます。一つ目は、日本が核を「持つ」ということ。二つ目は、日本がアメリカの核を国内に配備・貯蔵するということ。そして三つ目は、核搭載船の寄港を容認することです。
浅野 ただ、日本が核を持つことについては、とても現実的ではありません。
核保有は、国内法の「原子力基本法」と、国際法であるNPTによって禁止されています。さらに、日本が核を保有するとなると、かえって周辺国との緊張感が高まります。また、そもそも日本には核実験を行う土地もなく、国民が物価高で苦しむ昨今の状況において核開発は莫大なコストがかかるということも、核保有が現実的でない理由です。
問題は三つ目のシナリオです。核搭載船の寄港は、「持ち込ませず」の原則に抵触する可能性はありますが、法的な拘束力はありません。ここに見直しの議論が生まれつつあるのです。
川崎 核の再配備の動きは、日本だけでなくヨーロッパなどでも起きています。そうした状況の中で日本がどのような立場を示すのか、国際的にも非常に注目されています。
日本は核を認めないという姿勢を貫けば、周辺国や世界に安心感を与えることになります。反対に、非核三原則を見直すような動きになれば、連鎖的に国際世論も核配備の方向に進む恐れがあります。
そうした意味で、日本の非核三原則の意義は国際的にみても非常に大きいのです。
浅野 大学の講演会などに参加すると、不安定な国際情勢だからこそ核で安全を守る必要があるのではないかと、三原則の見直しに肯定的な声も少なからず寄せられます。
しかし先ほど申し上げたように、三原則を見直すことが私たちの生活や世界にどのような影響を与えうるのか、想像力を働かせることが大切です。
女性平和委員会ユース会議が各地で取り組む被爆・戦争体験の聴講(2023年11月、都内で)
女性平和委員会ユース会議が各地で取り組む被爆・戦争体験の聴講(2023年11月、都内で)
木下 先ほど市民社会の声が政府を動かした歴史を紹介していただきましたが、現在の状況を打開するために、市民社会にできることは何でしょうか。
浅野 日本では、各地の自治体が1980年代に次々と「非核平和都市宣言」を行いました。今や、宣言をした自治体は全国の94%に上ります。核軍縮を希求する市民の願いが、大きな連帯となった一つの例です。
川崎 世界に目を向けると、2017年に核兵器禁止条約が採択された際には、被爆者やNGO関係者、その他、人道支援に関わっている人々といった、市民団体が大きな役割を果たしました。
各国でそうした平和に対して熱心な人々が上げた声が核軍縮を進めてきましたし、“一人”の声には大きな力があるのです。
木下 女性平和委員会ユース会議でも、各地で被爆証言を伺い不戦への思いを継承するとともに、それを自らの決意に変え、身近な人たちに語り、平和の連帯を広げる取り組みを進めています。
浅野 重要な取り組みだと思います。
個人のレベルでもさまざまなアプローチがあると思います。一つは、核の問題を考えるイベントなどに参加してみることや、友人・家族を誘ってみることも大きな一歩です。
加えて、選挙で非核化の立場を表明する候補に投票するなど身近にできることはたくさんあります。まずは心軽く、一歩踏み出すことが重要ではないでしょうか。
川崎 実際に声に出してみることも大切だと思います。
身近な人には話しづらい話題かもしれませんが、思い切って口に出してみると、「実は気になっていたんだよね」と、案外関心を持っていた、ということは珍しくありません。勇気を出して口にした結果、共感が広がるという経験には、大きな希望を感じます。
そうして、人々がつながっていくことによって世論が形成され、変化を起こしていけると確信しています。
木下 先ほど市民社会の声が政府を動かした歴史を紹介していただきましたが、現在の状況を打開するために、市民社会にできることは何でしょうか。
浅野 日本では、各地の自治体が1980年代に次々と「非核平和都市宣言」を行いました。今や、宣言をした自治体は全国の94%に上ります。核軍縮を希求する市民の願いが、大きな連帯となった一つの例です。
川崎 世界に目を向けると、2017年に核兵器禁止条約が採択された際には、被爆者やNGO関係者、その他、人道支援に関わっている人々といった、市民団体が大きな役割を果たしました。
各国でそうした平和に対して熱心な人々が上げた声が核軍縮を進めてきましたし、“一人”の声には大きな力があるのです。
木下 女性平和委員会ユース会議でも、各地で被爆証言を伺い不戦への思いを継承するとともに、それを自らの決意に変え、身近な人たちに語り、平和の連帯を広げる取り組みを進めています。
浅野 重要な取り組みだと思います。
個人のレベルでもさまざまなアプローチがあると思います。一つは、核の問題を考えるイベントなどに参加してみることや、友人・家族を誘ってみることも大きな一歩です。
加えて、選挙で非核化の立場を表明する候補に投票するなど身近にできることはたくさんあります。まずは心軽く、一歩踏み出すことが重要ではないでしょうか。
川崎 実際に声に出してみることも大切だと思います。
身近な人には話しづらい話題かもしれませんが、思い切って口に出してみると、「実は気になっていたんだよね」と、案外関心を持っていた、ということは珍しくありません。勇気を出して口にした結果、共感が広がるという経験には、大きな希望を感じます。
そうして、人々がつながっていくことによって世論が形成され、変化を起こしていけると確信しています。