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連載〈はなしの小箱〉 葛西聖司 2026年5月25日

◆「こえかぶ」連鎖劇に期待

 大正時代、演劇と無声映画を組み合わせた画期的な舞台が生まれ、「連鎖劇」といわれた。大道具では表現できない野外映像の中でスピーディーに芝居をし、前後の生芝居と連動させる斬新さがあったという。
 
 昭和55年(1980年)。二代目市川猿翁(三代目猿之助)が演出した「源平布引滝」は、琵琶湖を泳いで主家の旗を守った娘・小万を映像で見せ、「義賢最期」と「実盛物語」をつなぐ、昭和の新しい連鎖劇を成功させた。
 
 その精神を受け継いだ孫の市川團子が父・市川中車らとともに東京・新宿のシアターミラノ座で上演した「獨道中五十三驛」は令和の連鎖劇だ。これは、映像ではなく、松竹が「こえかぶ」と名付けた歌舞伎朗読劇と実演を合わせた。
 
 この作品は鶴屋南北の古典だが、セリフは現代語。朗読ではなくラジオドラマのように声優が老若男女、善人・悪人を一人で何役も演じ分け、軽快に進めてゆく。浪曲のようでもあり、三味線など黒御簾音楽を随所に入れて歌舞伎のテイストを出している。
 
 声優は、アニメなどで活躍している人たちが日替り出演し、そのファンも引き付ける効果がある。私が見た日は中学生の団体が観劇していた。解説がなくても、楽しめていたようだ。
 
 初音ミクというキャラクター映像と生舞台で共演する新機軸を打ち出した中村獅童の「超歌舞伎」も回を重ね、新たなファンを生み出しているが、この「こえかぶ」連鎖は、通し上演だと5時間はかかる物語が3時間と、すっきり効果。多彩な登場人物を目ではなく耳で知っておくことで敵・味方がはっきり分かり、中車の化け猫の宙乗りや、團子の十三役早替りといった実演のおいしい見どころが存分に生き、相乗効果を生んでいた。
 
 歌舞伎の難解さをクリアする「こえかぶ」。これからの進化が楽しみだ。(古典芸能解説者)

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